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58 話ダンジョン攻略

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「よし! 終わったな!」

 そう言ってヒビキは辺りを見渡すとそこはモンスターの死骸でいっぱいになっていた。

「皆んな強くなってるから私は補助魔法を使うだけだから楽でいいよ」
「そんなあなたの補助のおかげですよ。強くなったとはいえこれだけのSランクモンスターが相手だともう少し手間がかかりますからね」

 マイの言葉にレイがすかさずにフォローを入れる。

「そうですね。体力を温存出来ますしギルマスの補助魔法はダンジョン攻略に必要不可欠ですよ」

 そうやって談笑している運命の宿木陣営に、

「おい! くっちゃべってないで奥に進むぞ! 新参者共!」

 今回のダンジョン攻略のリーダー、暗闇の一等星の現No.1冒険者である剣使いのドルド・ルドルドが怒声を飛ばす。

「本当にアイツがリーダーで良かったの?」

 ルイが元暗闇の一等星所属のレイに聞くと、

「傲慢ですが実力はありますよ。それに却下すると余計うるさいのでこれがベストですよ」

 そう語る。ダンジョンに突入前に攻略組の中からリーダー決めをしたのだが、

「俺がリーダーだ。No.1ギルドにおいてNo. 1の冒険者である俺に任せろ!」

 そんな事をドルドは言ったのだ。運命の宿木陣営は新参者ではあるので下手に立候補しても争いの種になるので黙っていたのだが、

「このワタシが男にリーダーを譲ると思ってるの?」

 レオナが突っかかる。大事なクエストであっても男嫌いは健在であり男であるドルドにリーダーをやらせるのは気に入らないらしい。

「お前に意見なんて聞いてない! Aランク風情の冒険者が出しゃばるな!」

 そんな言葉に切れたレオナが鞭によりドルドの首を絞めようとしたのでレイが間に入り鞭を掴む。

「まぁまぁ落ち着いて。彼がヘマをしたらあなたがリーダーになれば良いでしょう。まだ入り口で揉めたらグランドマスターに怒られますよ」

 そう言って視線をグランドマスターのダンに向けさせる。ダンは、

(喧嘩すんな!!)

 とでも言いたげな視線を向けていた。

「もう。分かったわよ。その代わりにあいつがヘマしたら絶対にあたしがリーダーよ」

 レオナは引き下がる。そんなレオナに、

「ヘマするかよ! 変態レズ女!」

 と暴言を吐いたドルドにまた鞭を向けそうになったので運命の宿木と薔薇の花園の女性陣で取り押さえる事態になって出発が遅れたりした経緯がある。

「まさか突入前に揉めるなんてね。報酬の分担で揉めるのは良く聞く話だけど」

 そんなマイの言葉に、

「何せ国を代表するギルドが揃ってますからね。一癖も二癖もありますよ」

 ゴウが補足する。こうした話をしながら攻略メンバーは奥を目指す。ダンジョンにはモンスターがいるだけでなく落とし穴といったトラップなどもあり攻略組の行手を塞いでくるが息は合わずとも各々の実力がトップレベルであるので難なく奥へと進んで行くのであった。結果として攻略組は疲れで多少の疲労は見えるもののダンジョンの奥まで辿り着いた。

「よ~し!! 後発組を呼んでお宝の回収だ!!」

 ドルドが言葉を発した瞬間には現れて、

「ドルド!! 逃げなさい!!」

 レイが声を荒げ、ルイとヒビキは駆け出すが、

「あん?」

 その言葉を最期にしてドルドは絶命した。突如として現れたそれはドルドの頭を吹っ飛ばしてしまい胴体だけが残された。

「きゃああああ!!!!」

 薔薇の花園のメンバーの一人が悲鳴を上げたのをは確認するとドルドと同じように殺そうとしたのを、

「うちの娘に手を出すな!!」

 レオナは瞬時にそれの手に鞭で捕えるとそのまま壁に叩きつけようとするが、

(びくともしない!!)

 動かす事が出来ずに驚いたのが隙となり逆に投げ飛ばされてしまう。投げ飛ばしたそれは悲鳴を上げたメンバーを殺そうとして拳を振り下ろすが、バギン!!という音と共に拳が弾かれる。ギリギリの所でマイが張った結界であったがあっさりと砕けてしまう。そこへ追撃が飛んできたが襲われた冒険者をレイが抱えて逃げる。

「ありがとうございます」

 泣きながら感謝の言葉を送られて、

「気にしないで。それよりも」

 と言葉を切ってから、

「腕に自信のない方はすぐに避難を!! 相手はリザードマンの変異体の可能性があります!!」

 指示を飛ばす。それに、

「裏切り者が指示出してんじゃねぇ!!」

 暗闇の一等星のサーマが口を挟むが、

「今はそれ所じゃねぇのも分かんねぇのか!! ザコ!!」

 ヒビキが辛辣な言葉を言う。

「ザ、ザコだと!? 新参者風情が!」

 そんなサーマにリザードマン? が襲いかかりそれをヒビキがガードする。

「ほらな! 反応出来てねぇ!」

 そのままヒビキはリザードマン? と戦闘を始める。

「レオナさん! 大丈夫ですか!?」

 ルイはレオナに駆け寄る。

「大丈夫よ。それよりもうちの娘を助けてくれてありがとう」
「お礼の言葉はレイさんに。それよりもまだいけますか?」
「もちろんよ」

 そう言ってルイとレオナも戦闘に加わる。

「あの3人とやり合っておまけにSランクを余裕で殺すは本当にリザードマンか? 戦闘した事が昔あるがあれほど強くはなかったぞ」

 ゴウの言葉に、

「ですね。変異体と言ってみましたが強さ的には別物かもしれませんね」

 レイも同意する。

「だったら2人も戦闘に加わってよ」

 マイが戦闘に加わるように促すが、

「急に現れたのが気になります。もしかしたらまだいるかもしれないのでうかつに動けません」

 もちろんあの3人なら勝てるだろうが突如現れた理由が分からない以上は下手に動けない。しかし、

「このままじゃメンツが丸潰れだ。いくぞ!!」

 ソーマたちが戦闘に加わろうとした瞬間にもう一体のリザードマン(仮)が現れると一人の心臓を貫手で貫くとソーマも殺そうとしたところで、

「流石ですね」

 レイが助ける前にレイが所属した当時の暗闇の一等星のNo.3である、ルーク・レオナルドが攻撃を愛用の剣で防いだ。しかし、

「レイ!! ヘルプ!!」

 その言葉が言い終わる前にレイは刀を振り抜きリザードマン(仮)に傷をつける。リザードマン(仮)は距離を取る。

「ゴウさんも手伝ってください」
「了解!! ギルマスは総本部の冒険者と戦えない薔薇の花園のメンバーと共に避難を!!」
「分かった!! みんな!! 気をつけてね!!」

 マイは指示通りに避難するが、

「ちょ! それはダメだろう!」

 ゴウが驚きの声を出す。まさかの3体目のリザードマン(仮)が現れてマイたちを追ったのだ。しかも、

「まだ出るのかよ!! いい加減にしろや!!」

 ヒビキがキレるのも無理はない。2体現れた。これで奥の間には合計で4体のリザードマン(仮)がいる事になる。

「こうなったら速攻で終わらせましょう。向こうだって精鋭部隊のメンバーです。瞬殺されはしないでしょう」

 レイはより激しく攻撃を加えていくが鱗が硬く芯まで斬れないでいた。

「お前の斬撃であの程度の傷となると長丁場になるぞ」

 ルークが言うようにリザードマン(仮)に対してレイでは有効打が打てずにいた。

(アレを使えば瞬殺出来るとはいえ他にもいるのが邪魔ですね)

 アレとは『死閃』である。見様見真似ではあるがそれでもSランクどころか伝説のモンスターをも瞬殺出来るレイの使える大技であるが隙がデカいし相手が複数なので使えずにいる。

(一体はこちらが、一体はルイとレオナが、もう一体はヒビキとサーマが相手をして最後の一体は的確に私たちの邪魔をしてきてますね。知能も高い。一体こいつらは何なのでしょう?)

 リザードマン(仮)の正体を気にしつつも戦闘に集中するレオナであった。そしてマイたちはというと、

「追いつかちゃった。やるしかないのかな?」

 追いつかれてしまい戦闘態勢に入る。

「前衛は自分たちが。マイさんは補助魔法を、ムイさんはチャンスがあれば攻撃魔法を」

 そう言って前衛に総本部のSランク冒険者のハンマー使いのズー・ルルが仲間たちと出る。マイと薔薇の花園の魔法使いのエルフであるムイ・フールは杖を構える。

「どっせい!!」

 掛け声と共にに思いっきりハンマーを振り抜くそこへ、

「風よ!!」

 ムイが突風でハンマーの勢いをより強くする。これによりリザードマン(仮)は勢い良く吹っ飛ぶ。

「よし!! ヒットアンドウェイでいくぞ!! グラマスたちと合流すれば数で殺せる!!」

 そうして、マイたちは攻撃しては下り攻撃しては下りのヒットアンドウェイをする事によりダンジョンから脱出する。

「グラマスたちに至急援護に来るよう伝えろ!!」

 Sランク冒険者であるズーの言葉が焦ってるのを感じてダンジョン入り口近くにいた後発組の人間が急いで報告に向かう。それを見届けた瞬間をリザードマン(仮)は見逃さなかった。

「危ない!!」

 仲間の2人が割って入りズーも危ないという声に反応してガードするが3人纏めて吹っ飛ばされてしまい重症を負う。そんな3人に追撃してくるリザードマン(仮)に、

「天空からの神の一撃よ!! 敵を滅ぼせ!! 『蒼雷』」

 詠唱により威力最大となったマイの最大攻撃魔法が炸裂する。これには魔法使いが本職であふエルフの里出身のムイも驚く。

(凄い!! 里長レベルの人間の魔法使いを始めて見た!!)

 しかし、

「ウソでしょ」

 リザードマン(仮)はまだ動く。邪魔された怒りをぶつけるためにマイに襲いかかるが、

「「「おらぁ!!!!」」」

 ダン、ログ、テンランの現役を退いたとはいえSランク冒険者3人の一斉攻撃によりリザダーマン(仮)はようやく討伐された。その死体をダンが確認すると、

「おいおい! これはじゃないか? 研究員!! 確認頼む!」

 ダンに言われて数人の研究員が確認すると、

「間違いないです。竜人です。流石はダンジョンですね。大昔に絶滅してしまったはずなんですけどね」

 どうやら現れたリザードマンに似たモンスターは竜人と呼ばれるモンスターらしい。竜人は初代剣聖がいた時代に猛威を振るったモンスターでありドラゴンの力を人型に押し込んだモノであったのだがその強さを危険視した人々により絶滅させられたのだ。

「他は?」

 ダンに聞かれて、

「今も竜人と戦ってるはずです」

 マイの言葉に、

「まだいるのか!! すまんがズーとマイは儂らと来い!!」

 そう言って5人でダンジョンへと入り急いで最奥へと向かうと、

『死閃』

 竜人2体を同時に真っ二つにするレイがいた。他の攻略メンバーも多少の怪我や疲労が見えるが竜人を討伐をしているようだった。

「お前ら良く無事に討伐したな」

 ダンが驚きに満ちた表情で攻略メンバーを見る。自分たちはズーやマイが追い詰めたというのもあり討伐したが竜人はそんな簡単に討伐出来るモンスターではないからだ。

「無事ではありません。何しろ攻略メンバー2名を失う事になってるんですから」

 そう言ってレイが向けた視線を見ると暗闇の一等星の冒険者2名の死体があった。それを見たログは、

「ふざけんな!! 何でうちの奴だけ死んでんだ!! テメェら見捨てやがったのか!!」

 怒りを露わにして怒鳴り散らす。それを、

「やめんか!! みっともない!! 冒険者である以上は死のリスクはある。それを他のギルドの者のせいにするな!!」

 ダンは叱る。そんなダンに、ちっ! と舌打ちをしてログは生き残った2人の所に向かう。

「すまんな。だが、分かってやってくれ。ギルドの主力2名を失った奴の心情をな」
「えぇ。それに私たちの実力が低いから助けられなかったのですから」
「お主らじゃなかったらそもそも全滅じゃろう? 運命の宿木が休止に入った時は心配したがどうやら杞憂だったらしいの」

 そう言って笑ったダンの背後に突然、人1人位が入れそうな穴が開いたと思えばそこから現れたのはかつて龍帝により殺されたの人型であった。全員会った事などない。それでも全員がそれがヤバいモノだと理解して臨戦態勢を取る。それでも、

「ギルマス!!」

 マイをゴウが突き飛ばす。

「きゃあ!!」

 倒れ込むマイ。そんなマイが顔を上げると右腕が千切れたゴウと脇腹を抉られたダンがいた。ゴウの千切れた部分からは絶え間なく血が流れる。ゴウは即座に止血をする。そんなゴウに急いでマイは回復魔法をかけるが、

「な、何で?! 何で回復魔法が効かないの?!」

 最上級の回復魔法を使ってるのだが全く治る兆しがない。エリクサーを飲ませても効果がない。

「グラマス!! 気をしっかり持って下さい!!」

 ズーがダンのもとに駆け寄り応急処置を施すがゴウよりも酷い状態で長くは持ちそうにない。そんな惨劇を引き起こした相手にルイ、ヒビキ、レイ、レオナ、ルークの5人による同時攻撃でも、

「ビクもしねぇのかよ!!」

 全員が全力の一撃を放っているが傷らしい傷すらつけれずにいた。しかも、

「敵とすら認識してませんね」

 レイがギリッ! と歯軋りをする。骸龍にとってこの場にいる人間は虫ケラ同然だからだ。そんな状況を冥府から、

「試作品の試運転には若干物足りないがまぁ良しとしよう」

 冥府の神は玉座でふんぞりかえるのであった。
 

 



 
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