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48話 マイの修行

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「ここで大丈夫ですか?」
「ごめんね。ウェン。ここまでで平気だから」
「お迎えはいつにしましょう?」
「大丈夫! 実験に成功したら必要なくなるし絶対成功させるから!」

 ぐっ! と親指を上に向けて見せるマイに、

「それなら安心です」

 それでは、とウェンは龍形態となりギルドへと戻って行った。そんなウェンを見送り、

「思ったよりも早く帰省する事になったな~」

 マイは実家のある魔法使いの国オズワルドに来ていた。というのも、

「暇」
「だったら、仕事行けば~、ウェンみたいに~」

ギルドにて、マイとアズサが飲み会を昼からしていた。

「魔法使いが1人で~。それはやだよ」
「ウェンと行けば良いじゃん」
「ウェンに支援魔法いると思う?」
「思わないね」
「だから一緒に行く意味がないんだよ~」

 と、うだうだ言うマイに、

「だったら、逆の立場は? ウェンに支援させてマイが攻撃担当」
「一回それをやったんだけどさ~。簡単すぎて他の人とパーティーを組んだ時に駄目になりそう」

 マイの言うように、ウェンが支援役兼楯役をやるとマイの呪文準備があっさり出来てしまい最上級の攻撃魔法による一撃必殺が出来てしまったのだ。しかも、相手はAランク以上Sランク未満のモンスターだ。そんな相手に楯役を出来るのはSランクでも一握りだ。それだと他とパーティーを組むのは厳しいと判断したのだ。

「そんな相手を一撃で討伐出来るなら攻撃魔法に関しては修行する必要がなさそうだね~」
「まぁね。学院で学べる最上級の魔法は攻撃も支援も学び尽くしたからな~」

 と、言うマイにアズサは、

「学院で学べないなら実家は?」

 と、提案するが、マイがあからさまに、げっ!? という顔をする。

「あんな出来事があって実家に帰るのはちょっと無理」

 と、否定するが、

「そんな事言わずにさ~。まずは連絡取るだけでもさ~。拒否られたら諦めればいいんだから~」

 と言うアズサに、

(どうせ、駄目だろうし聞くだけ聞くか)

 と、駄目もとで連絡を取ったところでまさかのOKが出たのだ。そんな訳で現在帰省したのだ。

「来たからには習得したい魔法や作成したい魔法があるんだよね」

 そう言って、マイは入国するのであった。



「た・・・・ただいま~」

 おそるおそる実家の扉を開ける。すると、

「おかえりなさいませ!! マイお嬢様!!」

 使用人たちが出迎えてくれた。

「当主様は自室におられます」

 そう言ってマイからコートを受け取りつつ、執事の1人が当主の場所を教えてくれた。

「ありがとうございます。早速会いに行きます」

 そう言って、当主の自室へと向かう。そうして、父の自室の扉をコンコンッと、ノックすると、

「入りなさい」
「失礼します」

 入ると、部屋の椅子にて何やら本を読んでいる父親の姿があった。その父親の前に行き、

「久しぶりです。お父様」

 そう言って頭を下げるマイ。

「よく来たな。それよりも旅の疲れは癒さなくても良いのか?」
「それは問題ありません。それよりも魔法について聞きたいのですが」
「時魔法と空間魔法だな」
「はい」

 今回の目的は、時魔法と空間魔法だ。どちらも無属性における最上級にして最古の魔法であり使える人物は当代では魔法学院の学院長とマイの父親のドーガ・クルルガのみだ。学院長は多忙のため無理だろうから、息子に次代当主として仕事を任せてやや引退気味の父親に頼るしかないのだ。

「時魔法は知らない間に『自動学習オートラーニング』で頭の中に知識があって1秒なら止められるようになってたんですよ」
(たった一回でそこまで使えるのか! 我が娘ながら恐ろしい才能だな)

 婚約騒動の時に一度だけ時間停止の魔法を使ったのだがそれだけで知識を身につけた娘の才能に恐怖しながらも、

「そこまで出来るなら後は魔法構築の修正だけだろうから最初は時魔法からだな」
「成程。ご教授よろしくお願いします」

 そうして、早速時魔法の習得に挑んだのだが、魔法構築の修正のみだったのでまさかの一日で終わった。

「空間魔法に関しては魔法学院の学長の方が詳しいが資料ならここにもあるから明日はそれをメインに活動しなさい。私は仕事でいないが1人でも充分だろう」
「勿論です。ありがとうございます」

 そうして、兄も帰ってきて家族で夕食を食べた。その際に、

「あのバカ皇子は新しく出来た魔法研究機関に連れて行かれたらしいぜ」

 と兄から聞かされた。王族の品位を貶めた罰らしい。そうしてたわいもない話をしてその日の残りを過ごした。
 翌日は徹底的に資料の研究となった。しかし、

「難しい!? これを結界魔法にまでダウングレードして色んな魔法使いに教えた学院長凄すぎない!?」

 結界魔法は空間魔法をダウングレードしたものだ。それだけ難しい代物でありそれを解析して結界魔法にした学院長の凄さをマイは改めて確認する結果になった。

「でもな~、空間魔法が使えたら連絡手段や国家間の移動にも使えるのにな~」

 マイが空間魔法を習得してやりたい事はその2つなのだ。これだけで世界がひっくり返るレベルではあるがそれをやってみたいのだが、

「仮に成功しても魔力量が多い人じゃないと出来ないと意味ないんだよな」

 そう言って頭をボリボリとかく。

「アズサに協力してもらって道具を使う? そうなると一旦帰る? そうすれば学院長が暇になった際に空間魔法について聞けるし」

 そうと決まればと帰り支度をしようとして、

「ウェンに大口叩いて迎えいらないって言っちゃったの忘れてた」

 それに気づいて床をゴロゴロと転がる。そうして落ち着きを取り戻して、

「こうなったら意地でもやってやる!!」

 そうやって夜まで資料と睨めっこしたのだ。そしてついには、

「出来た!! 私1人なら国家間の移動が出来る!!」

 完成させた。しかし、

「マーキングをつけなきゃいけないから結局向こうに帰らないといけないから明日にでも帰ります」

 と、夕食の時に父親に話すマイ。

「それはいいが国家間の移動となると手続きがないとうちの国の魔法使いだとしても捕まるぞ」

 その父親の言葉に、

「しまった」

 考えもしなかったのか焦るマイに、

「まぁ、魔法の発展に必要なものだから今度国王に進言しておくから今回は国の外にでもマーキングをつけなさい」
「ありがとうございます」

 礼を言うマイに、

(それにしてもたった1人で更に一日で空間魔法を使えるようになるとは。何か問題が起きないといいが)

 心配する父親であった。

「お世話になりました」
「そんな畏まるな。お前に家なんだからいつでも帰ってこい」

 翌日、お別れを済ませて馬車でガルド王国へと向かった。

「ただいま~」
「おかえり~」

 ギルドに帰るとアズサが出迎えてくれた。

「ヒカリとウェンは?」
「ハクの散歩に行ったよ~。それよりもどうだった~。収穫はあったの~?」
「もちろんあったよ」

 そう言って帰った目的でもある遠距離連絡のための道具の製作をアズサに頼む。

「それはいいけどさ~。相当難しいよ~。必要素材も多いからね~」
「素材は何が必要?」
「魔石だね。それ以外はマイの魔法陣があれば良いとは思うよ」
「魔石か。ウェンに頼るしかないよね」

 魔石は魔力を吸収してそれを増幅する特性がある。ただしそれは貴重な物であり、採掘出来る場所にはドラゴンが住んでいる事が多々あるのだ。今は主力メンバーがほとんど居ないのでウェンの協力が必要不可欠なのだ。そんな訳を帰ってきたウェンに話すと、

「分かりました。ハクの運動にもなりそうです」

 との事で承諾を貰えた。

「後はガルドとオズワルドの長距離移動は許可さえ貰えば出来るし時間の問題だね」

 そう言ってルンルン気分になるマイなのであった。
 
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