上 下
51 / 77

第51話 男性器のソテーを食べた件〜前編〜

しおりを挟む
 SNSではカジュアルにΩが強姦、輪姦、死姦される様が投稿され、男に殺害されたΩの数は年間数十万人に達していた。
 Ωは相変わらず使い捨てオナホとして気軽にレイプされ、気軽に殺されていた。
 だが、それだけの状況ならば未だしもマシだと思えるほどに事態は深刻化していくことになる。
 食料自給率が年々減少の一途を辿る我が国ではΩの身体を食肉に利用することを正式に認める法案が可決されてしまったのだ。
 そのせいで容姿の悪いΩはミンチ肉として安価で流通されるようになり、容姿の良いΩは個別に高値で売買されるようになった。
 学校給食やコンビニ弁当、飲食店などでもΩの肉が普通に使われるようになり、肉を食べることに抵抗を覚えるΩが急増した。


「はぁ~、Ωはついに家畜と同じ扱いになっちゃったね……」


 道行く男たちは僕を単なる家畜か、性処理肉便器ぐらいにしか思っていないのだ。そんな状況で今、自分が生きているのは奇跡と言っても過言でない。


「僕も一護いちごくんと同じαに生まれたかったぁ~」


 そう言って、いつものように僕は一護いちごくんに泣きついた。


「大丈夫だ、アオイは俺が守ってやる! アオイの美味しそうな身体は誰にも食わせねえぜ♡」
「もぉ~、美味しそうとか言われると、なんか恐いんだけど!」
「うへへ、アオイは本当に可愛いなぁ♡ 俺がアオイを食うわけないだろwww」


 そんなことは分かりきっている。でも、Ωの身体が食肉として利用されている現実が背景にあるせいで、ちょっとしたことにも敏感に反応してしまうのだ。


「色んな意味でΩを喰らいたくなるのが男の生理現象だということは分かってるよ。でも、いくら生理現象だからと言っても、やっていいことと悪いことがあると思うんだ……」
「そうだよなぁ。食欲と性欲が強すぎて、Ωを身も心も支配することでしか男は生き甲斐を感じられなくなりつつあるのかもしれない。男女が共存不可能だったように、性別が多様化した現代社会は、もはや限界が近づいているんだろうなぁ」


 遥か遠い昔のこと、この世には男と女の2つしか性別がない時代があったらしい。
 だが、2つしか性別がない時代は男女ともに偏狭なジェンダー規範に縛られ、お互いに疲弊し合い、いつしか男女は距離を取り合うようにまでなってしまった。
 危機感を覚えた政府は性を多様化させることでジェンダーに縛られない理想的な社会を築こうと考え、人間を品種改良し、この世にα、β、Ωの3種類(男女合わせて計6種類)の性別を作り出すことに成功した。
 それによって人類はジェンダーから解放され、男らしくない人も女らしくない人も誰もが自由に生きられるはずだったのだが……。
 ――現実はそうはいかなかった。
 この政策によって、確かに男女という枠組みは崩壊した。しかし、人類は新たなるジェンダー規範に縛られ、再び同じ歴史を辿っていったのだ。その最大の犠牲者がΩであった。
 男女という概念が意味をなさなくなったことで純粋に力の強いαが男社会を形成し、そのカースト外に置かれたΩは人権を剥奪され、αの従属物として人間扱いされない生活を強いられることになったのだ。
 性別が多様化したことで、多文化共生社会特有の歪みも発生し、軋轢が生ずるようになったことで社会情勢は不安定になり、治安は悪化の一途を辿っていった。そのツケはΩが支払わされ、犯罪被害の9割方はΩでも誰にも同情されず、肉体的にも精神的にもボロボロになるまで理不尽な搾取を受ける羽目になっていった。


「どんなに完璧な社会を築いたとしても、この世に人間がいる限り、貧困も犯罪もジェンダー格差もなくなることはないんだろうなぁ……」


 Ωの身体の一部分を加工して組み合わされた装飾品や家具が売っている店の前を通りながら僕は溜め息をついた。


「たとえΩが人間扱いされない世界であったとしても、必ずアオイを幸せにしてみせるぜ! これから俺がアオイに、とびっきり美味~い料理を振舞ってやるからなぁ♡」


 プロ級に料理が上手い一護いちごくんの作る夕食が楽しみ過ぎて、僕は一気に憂鬱な気分が吹き飛んだ。




ーーー




「今日は『男性器』のソテーを作ってみたぞ! 俺が独自に編み出した料理で試しにこの間、尾芽牙おめがに食わせて見たら好評だったぜwww」
「ふぇぇッ~、オチンチン食べるなんて恐いよぉ~」


 げんなりとした表情を浮かべる僕とは対照的に何故か隣にいる尾芽牙おめがくんは凄く嬉しそうな顔をしている。
 それにしても尾芽牙おめがくんは当たり前のように、しょっちゅう我が家にいるよなぁ……。


「いやはや、実に楽しみだよ♡ 男のアレがあんなに美味しいなんて食べる前は思いもしなかったからねwww」


 尾芽牙おめがくんが男性器をムシャムシャ食べる姿を想像したら、ついつい笑いが込み上げてくる。


「安心しろ、アオイ♡ 街でΩをレイプした挙句、その子の首を絞めて殺す様を面白おかしく撮影してる男共がいたから、そいつらの首を絞めてチンポを根こそぎ狩ってきたんだ。なかなか活きのいいチンポだぞwww」
「あぁ、なるほどね……」


 それを聞いて罪悪感はなくなったけれど、ホントに野郎のチンポなんか食べられるのだろうか……?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

非リアだったけど、イケメンに成長した幼馴染と再会したら人生変わりました!

M
BL
Ωとして生まれた僕、北条 奏(ほうじょう かなで)は掛け値なしの無償の愛を求めながらも、それが得られないことに絶望する日々を送っていた。 不登校の僕は出席日数がヤバイことになり、仕方なく学校へ登校する途中、DQNグループに絡まれ、レイプされそうになったところを幼馴染の親友、白川(しらかわ) エレンに救われる。 昔とは見た目も雰囲気もイケメンに成長したエレンくんとの関係は親友の一線を越え、激しい官能の世界へと僕を導いていくのだった――。 ※オメガバースという性別設定を使用しています。α男×Ω男、SM、男がアンアン喘ぐ、男性妊娠などの各種特殊性癖要素を含みます。ムーンライトノベルズにも同作を公開中。

上司に連れられていったオカマバー。唯一の可愛い子がよりにもよって性欲が強い

papporopueeee
BL
契約社員として働いている川崎 翠(かわさき あきら)。 派遣先の上司からミドリと呼ばれている彼は、ある日オカマバーへと連れていかれる。 そこで出会ったのは可憐な容姿を持つ少年ツキ。 無垢な少女然としたツキに惹かれるミドリであったが、 女性との性経験の無いままにツキに入れ込んでいいものか苦悩する。 一方、ツキは性欲の赴くままにアキラへとアプローチをかけるのだった。

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

アルファ嫌いの子連れオメガは、スパダリアルファに溺愛される

川井寧子
BL
オメガバース/オフィスラブBL/子育て/スパダリ/溺愛/ハッピーエンド ●忍耐強く愛を育もうとするスパダリアルファ×アルファが怖いオメガ●  亡夫との間に生まれた双子を育てる稲美南月は「オメガの特性を活かした営業で顧客を満足させろ」と上司から強制され、さらに「双子は手にあまる」と保育園から追い出される事態に直面。途方に暮れ、極度の疲労と心労で倒れたところを、アルファの天黒響牙に助けられる。  響牙によってブラック会社を退職&新居を得ただけでなく、育児の相談員がいる保育園まで準備されるという、至れり尽くせりの状況に戸惑いつつも、南月は幸せな生活をスタート!  響牙の優しさと誠実さは、中学生の時の集団レイプ事件がトラウマでアルファを受け入れられなかった南月の心を少しずつ解していく。  心身が安定して生活に余裕が生まれた南月は響牙に惹かれていくが、響牙の有能さが気に入らない兄の毒牙が南月を襲い、そのせいでオメガの血が淫らな本能を剥き出しに!  穏やかな関係が、濃密な本能にまみれたものへ堕ちていき――。

アルファだけの世界に転生した僕、オメガは王子様の性欲処理のペットにされて

天災
BL
 アルファだけの世界に転生したオメガの僕。  王子様の性欲処理のペットに?

【BL】SNSで人気の訳あり超絶イケメン大学生、前立腺を子宮化され、堕ちる?【R18】

NichePorn
BL
スーパーダーリンに犯される超絶イケメン男子大学生 SNSを開設すれば即10万人フォロワー。 町を歩けばスカウトの嵐。 超絶イケメンなルックスながらどこか抜けた可愛らしい性格で多くの人々を魅了してきた恋司(れんじ)。 そんな人生を謳歌していそうな彼にも、児童保護施設で育った暗い過去や両親の離婚、SNS依存などといった訳ありな点があった。 愛情に飢え、性に奔放になっていく彼は、就活先で出会った世界規模の名門製薬会社の御曹司に手を出してしまい・・・。

普段は優しいけど夜はドSのDOM彼氏ができました

いちみやりょう
BL
▲Dom/Subユニバースの設定をお借りしてる上にもしかしたら変えてしまっているかもしれません▲ 「んっ、はぁ……はぁ」 「いいこですね。ほら、Look目をそらさないで」 先生を見つめると優しく微笑んで頭を撫でてくれる。 「えらいですよ。いいこ、いいこ」 その僕を褒める声が低く心地いいから、僕はすごく安心するんだ。 先生と付き合える人はどんな人なんだろう。 きっとすごく可愛いsubなんだろうな。 神崎先生はものすごく優しいプレイをするし、きっとパートナーは甘やかしたいタイプなんだろうなぁ。 そう、思っていたのに……。 「やっぱり透はドMだったんですね。Cum《イけ》、イきなさい、透」 「ぁぁああ、ぁ、ん」 「Cum《イけ》、Cum《イけ》 ……ああ、イってる最中の透の中、うねうねして最高に気持ちいいですよ」 「はぁ、んぁ、もう、むりぃ……んっぁ」 「無理? まだ大丈夫でしょう? ほらCum《イけ》 、イきなさい、Cum《イけ》」 「ひ、んっぁぁあああ!!」 パートナーになったらこんなにドSだったなんて……。 ーーーーーーーーー

モブだけど貴重なオメガなので一軍アルファ達にレイプされました。

天災
BL
 オメガが減少した世界で、僕はクラスの一軍アルファに襲われることになる。

処理中です...