上 下
57 / 87

57 アルファ喪女VSキモオタ放火犯〜後編〜

しおりを挟む
「こ、これはッ⁉︎ 一体どうしたというんだッ⁉︎」

 監督が狼狽していると、外から「火事だぁ~!!!」と絶叫する声が聞こえてきた。

「喪子姉さん、火事だって! 早く逃げようッ!!!」
「そ、そうね! え~と……出口はッ⁉︎」

 部屋の外に出ると、私たちの目の前で紅蓮の炎が燃え盛っている。いや、目の前だけじゃない。知らない間に四方八方を炎の壁に取り囲まれていた。

「そんなッ⁉︎ 火って、こんなにも一瞬で燃え広がるものなのッ⁉︎」

 私が狼狽していると、オメガは冷静に状況を分析して言った。

「たぶん誰かが広範囲にガソリンを巻いたんだ!」

 オメガはそう言うと、必死になって周囲を見まわす。
 私たちは血眼になって炎の壁を見透かした。けれど逃げ道らしい所は全然見つからない。

「ひとまず、この場から喪子姉さんを離脱させないとね。僕に捕まってッ!」

 オメガは私の腕をつかみ、炎の壁の一番薄いところに突っ込んだ。私たちの頭上に真っ赤に燃える材木が降りそそぎ、火の粉がきらきら光りながらオメガの肩に舞い落ちた。それでもオメガは私を先導しながら必死になって走った。

「わぁ~ッ、あっつ~ッ!」

 私はごうごうと燃え盛る床の上で、両脚をかわりばんこにあげさげしている。しかしオメガは危機的状況でも冷静な表情を浮かべて周囲を見まわしていた。

「あぢぢぢぢ~ッ、あっつぃ~!!!」
「大丈夫だよッ! 喪子姉さんは僕が守るから♡」

 オメガは騒ぎまくる私のウエストをつかみ、まるでジャケットか何か、軽いものを肩に引っかけるように、私をひょいと肩に担ぎ上げた。

「もう、ダメかも……」
「ダメじゃないよ。とにかく逃げようッ!」

 燃え盛る炎の壁を突き破り、私たちは灼熱地獄を駆け抜ける。
 オメガは焼け焦げた扉を蹴り開けた。その向こうに回廊がある。強烈な熱風に背中を押されるようにして飛び出し、ようやく外まで出られると、オメガは全ての力を使い果たしたかのようにその場へ倒れ込んだ。

「オメガ……しっかりしてッ! オメガ~ッ!!!」

 私は絶叫しながらオメガのもとへ駆け寄った。
 オメガの美しかった肌がところどころ焼けただれている。私の方はオメガがずっと盾になってくれたおかげで軽い火傷で済んだ。

「酷い……酷過ぎるッ! いったい誰がこんなにも恐ろしいことをッ⁉︎」

 深紅の炎は天をも焦がさんばかりの勢いで燃えあがり、狂気アニメーションの全てを灰に変えていく。
 私は思わずペタンとその場に座り込んで深呼吸していると、火達磨になったデブなキモオタが狂気アニメーションの中から走って出てきた。

「アイツだッ! あのキモオタが会社にガソリンを巻いて火をつけたんだ!!!」

 生き残った狂アニの社員が声を張り上げて言った。
 火達磨になったキモオタは身長180センチを優に超える巨漢で、ぴっちぴちのTシャツを着ているせいで乳首が浮き出ている。100キロ以上は確実にあるであろうデブな体格で、男のくせに女の私より胸が出ていたwww

「狂アニにパクられたッ! パクリやがってッ! 俺は悪くない!!! みんな、狂アニが悪いんだwww」

 火達磨になっているにもかかわらず、キモオタ放火犯はハンマーを振り回しながら、こちらに襲いかかってくる。

「俺様の天才的な小説をパクった狂アニスタッフは皆殺しにしてやるッ! 俺の小説をパクったことを、あの世で悔いるがいいwww」

 どうやら正真正銘の精神異常者らしく、私のことを狂アニスタッフだと勘違いしたキモオタ放火犯は支離滅裂な電波妄想を炸裂させながらハンマーを振り下ろす。
 ハンマーが振り下ろされる前に、私はキモオタが飛び掛かるタイミングに合わせて、振り向きざまに本気の上段回し蹴りを股間めがけてカウンターで放つ。

「48の喪女技の一つ、金玉潰しッ!!!」

 思わず技名のようなモノを叫んでしまった私の咆哮は一筋の矢となり、脚部をキモオタの股間にクリーンヒットさせることに成功した。

「うぎゃああああああああああああッ!!!」

 悲鳴をあげるキモオタの股間から不吉な軋みが響いたかと思うと、次の瞬間ヒビ割れが広がってボロボロと崩れていく。

「パ、パク……パクリやが……って」

 ふいに、重い音が地面に響いた。
 火達磨になっているキモオタの手から、ハンマーが滑り落ちた音だった。
 後を追うようにキモオタの身体が地面に倒れ込む。
 ついに紅蓮の炎がキモオタの全身をすっぽりと包み込み、二度と醜い巨体が起き上がってくることはなかった。
 その後、私とオメガは救急車で搬送され、病院で手当てされることになった。
 オメガはω特有の超再生能力によって1週間で傷を完治させることができた。ωの男の子は能力面ではαに遅れを取るが、肉体的な面では数多くの赤ちゃんを産めるように常人よりも遺伝子的なレベルでタフにできている。

「良かったわ、後遺症もないみたいで……オメガが生きててくれて本当に良かった♡」
「ありがとう、心配してくれて。喪子姉さんみたいな優しい女の人が奥さんで僕、とっても幸せだよ♡」

 どちらからともなく抱き合って貪るようにディープな口付けを交わす。
 やがて私たちは結合し、互いの肉体を確かめ合った。

「もっと僕に喪子姉さんを感じさせて~♡」
☆……3次元の喪女の愛をとくと味あわせてあ・げ・る♡」

 我が社のエロゲに夢中になっている哀れなキモオタ共が一生味わうことができないであろう本当の愛あるセックスを私たちは肌身で実感するのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

御曹司とお試し結婚 〜3ヶ月後に離婚します!!〜

鳴宮鶉子
恋愛
御曹司とお試し結婚 〜3ヶ月後に離婚します!!〜

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

私の部屋で兄と不倫相手の女が寝ていた。

ほったげな
恋愛
私が家に帰ってきたら、私の部屋のベッドで兄と不倫相手の女が寝ていた。私は不倫の証拠を見つけ、両親と兄嫁に話すと…?!

初めて家事代行に訪れた先は巷で有名な極道の邸でした

あまき
恋愛
家事代行サービス『いいね!』の会社に勤めて、初めてのお仕事が西のトップと言われる極道“玉城組”のお邸だった話。 強強ごりごり女組長玉城雪乃と不運続きの気弱な家事代行人田中悠也が織りなす、血で血を洗うラブストーリー。 他サイトでも掲載中

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

お母様が国王陛下に見染められて再婚することになったら、美麗だけど残念な義兄の王太子殿下に婚姻を迫られました!

奏音 美都
恋愛
 まだ夜の冷気が残る早朝、焼かれたパンを店に並べていると、いつもは慌ただしく動き回っている母さんが、私の後ろに立っていた。 「エリー、実は……国王陛下に見染められて、婚姻を交わすことになったんだけど、貴女も王宮に入ってくれるかしら?」  国王陛下に見染められて……って。国王陛下が母さんを好きになって、求婚したってこと!? え、で……私も王宮にって、王室の一員になれってこと!?  国王陛下に挨拶に伺うと、そこには美しい顔立ちの王太子殿下がいた。 「エリー、どうか僕と結婚してくれ! 君こそ、僕の妻に相応しい!」  え……私、貴方の妹になるんですけど?  どこから突っ込んでいいのか分かんない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...