上 下
7 / 36

7 コミュ障ボッチだった僕にも友達ができました!

しおりを挟む
 最近、僕には悩んでいることがあった。
 超絶イケメンのエレンくんとクラス公認カップルになれたのは嬉しいんだけど、そのせいで僕を目の敵にする者が増えたのだ。


「ちょっと、北条ほうじょうくん! どうして、こんな簡単な問題が分からないのッ⁉︎ こんなの誰でも分かる問題よ!」


 英語の羽座井うざい先生はぴっちりしたスーツの腰に手を当て、苦々しく斜め上から僕を見下ろしてくる。まるで僕のΩとしての魅力を値踏みしてやろうとしているみたいに……。
 僕は胸のうちでこっそりため息を吐いた。これは予想以上に嫌われているようだ。見た目は華やかで男受けの良さそうな先生だけど、僕に対してのみはあからさまに嫌悪感を露わにしてくる。まるで常に女としての自分の地位が損なわれることを恐れているかのような……。
 ぴっちりスーツの羽座井うざい先生は、メガネの奥をまたぎろりと光らせる。


「こんなにも頭の悪い子じゃ、白川しらかわくんもお気の毒ね。白川しらかわくんに捨てられるのも時間の問題なんじゃないかしらwww」


 羽座井うざい先生は背を向け、恥ずかしくなるほどヒップに貼りついたスカートを揺らして去った。


かなでくん、あんなクソビッチなオバサンの言うことなんか気にしちゃダメだからね。いい歳こいてピッチピチの服着て男子にチヤホヤされるのが大好きなもんだから、エレンくんに振り向いてもらえない腹いせに八つ当たりしてるんだよwww」


 僕を元気付けてくれたのは乳美ちちみさんを倒すのに協力してくれた喪女軍団のリーダー格である貴腐寺院きふじいん 喪子もこさんだ。
 貴腐寺院きふじいんさんは中性的な顔立ちで背も高く、髪型も刈り上げにしているせいか、女子の制服を着ていなければ一見して女だとは分からない人だった。
 前回の一件以来、貴腐寺院きふじいんさんとは少し仲良くなり、席も近いからよく話しかけられる。まあ、僕はコミュ障だから自分から話しかけることは絶対にないけど……。


「僕、ああいうタイプの女の人って苦手……。オッパイやお尻を強調さえしてれば、人生すべて上手くいくとか思ってるんじゃないかなぁ?」
「でしょうね。身体目当ての男ならいくらでも寄ってくるでしょうよ、あの格好だったらwww」


 普通に考えればそうだろう。けれど、僕の愛するエレンくんはそんな軽薄な男なんかじゃない。


かなでくんも、もっとΩとしての色気を身につけないと他の人たちにエレンくんを取られちゃうかもよぉ~」
「Ωとしての色気?」


 僕の反応に貴腐寺院きふじいんさんは舐め回すような視線を向けて言った。


「αの男を落とすためのテクニックを身につけろってこと♡ Ωに対してαが求めるものといえば……もう言わなくても分かるでしょwww」
「……セックスなら一応もうしてるよ」


 貴腐寺院きふじいんさんは驚愕の表情を浮かべながら、僕に顔を近づけて尋ねる。


「何回くらい?」
「もう何回かしてる……」
「セックスする時間は?」
「休みの日なら、ほぼ一日中してるかな……」


 貴腐寺院きふじいんさんは先を越されたとでも言わんばかりに、さらに尋問してくる。


「初体験はどれくらい痛かった?」
「ちょっとだけかな……相手がエレンくんだったから平気だったよ♡」
「なるほど、相手にもよるわけか。やっぱり、経験豊富な人にしてもらうのが一番だよね。相手がクラスの男子とかだったら、触っただけでもピュッて終わっちゃうだろうしwww」


 貴腐寺院きふじいんさんはそう言ってケラケラ笑った。


「私みたいな喪女でも、いつか経験することがあるのかなぁ~?」


 悲観的になっている貴腐寺院きふじいんさんを元気付けるために僕はコミュ障なりに励ましの言葉をかける。


貴腐寺院きふじいんさんは優しい人だから、きっとエレンくんよりも素敵なイケメンが現れてくれるはずだよ」


 貴腐寺院きふじいんさんは在り来たりな世辞を言う僕をしげしげと見た。


かなでくんでも、そういう気の利いたこと言えるなんてビックリだよ。彼氏が出来てからかなでくんも人間的に成長したじゃん♡」
「そうかなぁ? 僕は正直に思ったことを言っただけだよ」


 そう返すと、貴腐寺院きふじいんさんは嬉しそうに言った。


「喪女に優しい言葉をかけれるだけでも立派だよ。ただのコミュ障ボッチなヤツだと思ってたけど、かなでくんならエレンくんとの交際を認めてあげなくもないかな♡」


 貴腐寺院きふじいんさんは手を出すと小指を立てた。


「必ずエレンくんと一緒に幸せになりなよ。私、かなでくんのこと応援してるから♡」
「ありがとう♡」


 僕は微笑むと貴腐寺院きふじいんさんの小指に自分の小指を絡めて指切りをした。


「なんだかかなでくんと一緒にいると、自分は生まれてくる性別を間違えちゃったんじゃないかと思えるよ……。私がαの男だったら、今すぐかなでくんのことを押し倒してたかも♡」
「えぇ? なんで?」
「いや、こっちの話。気にしないで……」


 貴腐寺院きふじいんさんは切なげに流し目をこちらに送ってくると、足早に僕のもとから去っていくのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

高校生の僕は、大学生のお兄さんに捕まって責められる

天災
BL
 高校生の僕は、大学生のお兄さんに捕まって責められる。

童貞が建設会社に就職したらメスにされちゃった

なる
BL
主人公の高梨優(男)は18歳で高校卒業後、小さな建設会社に就職した。しかし、そこはおじさんばかりの職場だった。 ストレスや性欲が溜まったおじさん達は、優にエッチな視線を浴びせ…

たとえ性別が変わっても

てと
BL
ある日。親友の性別が変わって──。 ※TS要素を含むBL作品です。

上司に連れられていったオカマバー。唯一の可愛い子がよりにもよって性欲が強い

papporopueeee
BL
契約社員として働いている川崎 翠(かわさき あきら)。 派遣先の上司からミドリと呼ばれている彼は、ある日オカマバーへと連れていかれる。 そこで出会ったのは可憐な容姿を持つ少年ツキ。 無垢な少女然としたツキに惹かれるミドリであったが、 女性との性経験の無いままにツキに入れ込んでいいものか苦悩する。 一方、ツキは性欲の赴くままにアキラへとアプローチをかけるのだった。

僕が玩具になった理由

Me-ya
BL
🈲R指定🈯 「俺のペットにしてやるよ」 眞司は僕を見下ろしながらそう言った。 🈲R指定🔞 ※この作品はフィクションです。 実在の人物、団体等とは一切関係ありません。 ※この小説は他の場所で書いていましたが、携帯が壊れてスマホに替えた時、小説を書いていた場所が分からなくなってしまいました😨 ので、ここで新しく書き直します…。 (他の場所でも、1カ所書いていますが…)

手作りが食べられない男の子の話

こじらせた処女
BL
昔料理に媚薬を仕込まれ犯された経験から、コンビニ弁当などの封のしてあるご飯しか食べられなくなった高校生の話

イケメン大学生にナンパされているようですが、どうやらただのナンパ男ではないようです

市川パナ
BL
会社帰り、突然声をかけてきたイケメン大学生。断ろうにもうまくいかず……

女装趣味がバレてイケメン優等生のオモチャになりました

都茉莉
BL
仁科幸成15歳、趣味−−女装。 うっかり女装バレし、クラスメイト・宮下秀次に脅されて、オモチャと称され振り回される日々が始まった。

処理中です...