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22.【最終話】道程、高木聡
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童貞……高村…じゃない、高木聡。
入れる前に我慢はできない。終わった後に謝罪は出来る。
――ごめんね、先っぽだけでいっちゃって。
俺が素直に謝罪すると、牧くんは笑った。
「俺も先にいってたから…。気にしないで 」
いや、気にするっ!っていうか気に病む!!
情けない、実に情けない…。
まぁ怪我の巧妙で、薄い壁の寮であんあん言わせなくて済んだ。そして今度はちゃんとホテルで…、という約束を取り付けた!わーい、わーい!
しかし喜んでばかりはいられない。
俺はまもなく関西に転勤してしまうのだ。いきなり遠距離、週末婚になってしまうのだ…。嫌だ、嫌すぎるー!
牧くんは週末会えるよ、というが…。毎週来てくれる?いや俺も行くけどさ。けど週末婚はやっぱり寂しすぎて、俺は転職も脳裏を過ぎった。転職するなら三十歳まで、なーんて誰かが言っていたような気もする…。
その日も、俺は心ここにあらずで外回りをしていた。「ハローワーク」の看板を見つけて、吸い寄せられそうになったが業務中だからなんとか耐えて、会社に戻った。
会社に戻ると、玄関ロビーで事務のパートさんが待っていた。外回りから戻った俺の顔を見て、少しイライラした顔をする。
え、何?!
「高木くん、電話したのに何で出ないの?!とにかく、ミーティングルームに集まって!急いで!」
そのままでいいから!と促されて、俺は小走りでミーティングルームへ向かう。
ミーティングルームには、営業二課の面々と久世次長、牧くんまで顔を揃えていた。あと、俺が名前を知らない人も数人いる。
え、何だ?!
俺が入室すると、全員が拍手をした。
え?本当に、なに?!俺のお別れ会からの、俺と牧くんの結婚発表?!まだ誰にも言ってないけど…。嫁が先走っちゃった?!
事態が飲み込めない俺に、部長は拍手を一旦止めるように手で合図をしてから咳払いした。
「子豚の花ちゃんの運営会社である”CHAOFAN”から、親会社”もえみ”と友好的TOBを実施し、合併する意向だと連絡がありました。そして、M&Aアドバイザリー業務を当行が引き受けます。先方の要望もあって、今後は高木くんに担当してもらう事になりました 」
「え、俺?!でも俺は…!」
関西に転勤するはずじゃあ、と俺が言おうとすると、部長は少し慌てて咳払いした。
「ちょうど、新田くんが関西支社に転勤になったから、まあ、そういうことだ 」
つまり、大っきい仕事をとった俺が本社に残る事に決まったって事?!まさかの、下剋上からの別居回避―!
新田も「高木くん!おめでとう」と言った。なんだか申し訳ない気もしたが、それを察したのか新田は少し笑った。
「社長ご夫妻は、長らく合併について話し合っていたものの人事面で折り合いが付かずに二の足を踏んでいたそうです。でも、高木くんの説得で、これからの厳しい時代を生き抜いていくために考えを改められました。高木くん、悔しいけどこの仕事は高木くんが担当するべきだわ。私も関西に行って、高木くんみたいにお客様にアドバイス出来るような営業担当に...いえ、高木くん以上にもっと成長したいと思います!」
新田はそう言い終わると、もう俺を上目遣いで見たりはしなかった。同僚として、握手で称えてくれた。
新田の話が終わると、部長は久世次長を見た。久世次長はにやりと笑う。
「今後、M&Aについては専門の我々、ファイナンス部とチームで動くから。担当はこのメンツだ。よろしく。」
久世次長は牧くん達を指さした。
え?!別居回避したうえに、牧くんと一緒に仕事できるの!?
俺は素直に喜んだのだが。
「こっちのメイン担当は牧にする。高木くんは、年下上司に虐められるのが好きだからちょうど良いだろ?牧は見た目によらず、仕事は鬼だぞ。覚悟しておけ 」
まじで?!そんなの、昼の顔と夜の顔のギャップに萌えちゃうんじゃないの?!俺の身体、持つ…?!いろんな意味で!
牧くんを見ると、目が合った。仕事の鬼、何て嘘のように優しく微笑んでいる。
「担当になりました、牧です。高木くん、よろしくお願いします。早速ですが、準備してもらいたい資料があるのでこの後直ぐ、打ち合わせ良いですか?」
牧くんはなかば強引に俺を別のミーティングルームに連れていった。入室して直ぐに鍵をかける。
牧くんは俺に抱きついてキスした。
「良かった… 」
…ああ、また同じ気持ちだった。
俺たちは抱き合ってもう一度キスした。
そして胸を弄ろうと手を伸ばすと…。牧くんに手を押さえられてしまった。
「じゃ、高木くん、用意してもらいたい資料あるから。はい、メモとって 」
牧くんは上司らしくテキパキと指示を出していく。それに今後のスケジュールも。えげつないタスク量で、手帳がどんどん埋まる…。
「牧くん、マジで鬼なの?!」
「え?!全然優しくしてるのに?」
このスケジュールの半分は牧くんの優しさで出来ていたらしい。
俺はダイエットの結果、希望通り優しくてかわいいお嫁さんをゲットしたのだ!
俺は牧くんと一緒に埋めたスケジュールを眺めながら、これからの新婚生活に思いを馳せた。
ーーーーーーーーーーー
本編一旦終わりですが
その後の二人の話が
あと三話ほど続きます
ーーーーーーーーーーー
入れる前に我慢はできない。終わった後に謝罪は出来る。
――ごめんね、先っぽだけでいっちゃって。
俺が素直に謝罪すると、牧くんは笑った。
「俺も先にいってたから…。気にしないで 」
いや、気にするっ!っていうか気に病む!!
情けない、実に情けない…。
まぁ怪我の巧妙で、薄い壁の寮であんあん言わせなくて済んだ。そして今度はちゃんとホテルで…、という約束を取り付けた!わーい、わーい!
しかし喜んでばかりはいられない。
俺はまもなく関西に転勤してしまうのだ。いきなり遠距離、週末婚になってしまうのだ…。嫌だ、嫌すぎるー!
牧くんは週末会えるよ、というが…。毎週来てくれる?いや俺も行くけどさ。けど週末婚はやっぱり寂しすぎて、俺は転職も脳裏を過ぎった。転職するなら三十歳まで、なーんて誰かが言っていたような気もする…。
その日も、俺は心ここにあらずで外回りをしていた。「ハローワーク」の看板を見つけて、吸い寄せられそうになったが業務中だからなんとか耐えて、会社に戻った。
会社に戻ると、玄関ロビーで事務のパートさんが待っていた。外回りから戻った俺の顔を見て、少しイライラした顔をする。
え、何?!
「高木くん、電話したのに何で出ないの?!とにかく、ミーティングルームに集まって!急いで!」
そのままでいいから!と促されて、俺は小走りでミーティングルームへ向かう。
ミーティングルームには、営業二課の面々と久世次長、牧くんまで顔を揃えていた。あと、俺が名前を知らない人も数人いる。
え、何だ?!
俺が入室すると、全員が拍手をした。
え?本当に、なに?!俺のお別れ会からの、俺と牧くんの結婚発表?!まだ誰にも言ってないけど…。嫁が先走っちゃった?!
事態が飲み込めない俺に、部長は拍手を一旦止めるように手で合図をしてから咳払いした。
「子豚の花ちゃんの運営会社である”CHAOFAN”から、親会社”もえみ”と友好的TOBを実施し、合併する意向だと連絡がありました。そして、M&Aアドバイザリー業務を当行が引き受けます。先方の要望もあって、今後は高木くんに担当してもらう事になりました 」
「え、俺?!でも俺は…!」
関西に転勤するはずじゃあ、と俺が言おうとすると、部長は少し慌てて咳払いした。
「ちょうど、新田くんが関西支社に転勤になったから、まあ、そういうことだ 」
つまり、大っきい仕事をとった俺が本社に残る事に決まったって事?!まさかの、下剋上からの別居回避―!
新田も「高木くん!おめでとう」と言った。なんだか申し訳ない気もしたが、それを察したのか新田は少し笑った。
「社長ご夫妻は、長らく合併について話し合っていたものの人事面で折り合いが付かずに二の足を踏んでいたそうです。でも、高木くんの説得で、これからの厳しい時代を生き抜いていくために考えを改められました。高木くん、悔しいけどこの仕事は高木くんが担当するべきだわ。私も関西に行って、高木くんみたいにお客様にアドバイス出来るような営業担当に...いえ、高木くん以上にもっと成長したいと思います!」
新田はそう言い終わると、もう俺を上目遣いで見たりはしなかった。同僚として、握手で称えてくれた。
新田の話が終わると、部長は久世次長を見た。久世次長はにやりと笑う。
「今後、M&Aについては専門の我々、ファイナンス部とチームで動くから。担当はこのメンツだ。よろしく。」
久世次長は牧くん達を指さした。
え?!別居回避したうえに、牧くんと一緒に仕事できるの!?
俺は素直に喜んだのだが。
「こっちのメイン担当は牧にする。高木くんは、年下上司に虐められるのが好きだからちょうど良いだろ?牧は見た目によらず、仕事は鬼だぞ。覚悟しておけ 」
まじで?!そんなの、昼の顔と夜の顔のギャップに萌えちゃうんじゃないの?!俺の身体、持つ…?!いろんな意味で!
牧くんを見ると、目が合った。仕事の鬼、何て嘘のように優しく微笑んでいる。
「担当になりました、牧です。高木くん、よろしくお願いします。早速ですが、準備してもらいたい資料があるのでこの後直ぐ、打ち合わせ良いですか?」
牧くんはなかば強引に俺を別のミーティングルームに連れていった。入室して直ぐに鍵をかける。
牧くんは俺に抱きついてキスした。
「良かった… 」
…ああ、また同じ気持ちだった。
俺たちは抱き合ってもう一度キスした。
そして胸を弄ろうと手を伸ばすと…。牧くんに手を押さえられてしまった。
「じゃ、高木くん、用意してもらいたい資料あるから。はい、メモとって 」
牧くんは上司らしくテキパキと指示を出していく。それに今後のスケジュールも。えげつないタスク量で、手帳がどんどん埋まる…。
「牧くん、マジで鬼なの?!」
「え?!全然優しくしてるのに?」
このスケジュールの半分は牧くんの優しさで出来ていたらしい。
俺はダイエットの結果、希望通り優しくてかわいいお嫁さんをゲットしたのだ!
俺は牧くんと一緒に埋めたスケジュールを眺めながら、これからの新婚生活に思いを馳せた。
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本編一旦終わりですが
その後の二人の話が
あと三話ほど続きます
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