絶対抱かれない花嫁と呪われた後宮

あさ田ぱん

文字の大きさ
上 下
5 / 58
一章

5.どうやら子育てと仕事の両立を要求されているようです

しおりを挟む
 朝食を終えた俺は自室で、末の王女シャーロットと遊んだ。いや…遊ばされて…いや、召使のように扱われていた。
「いやーっ!だめぇー!」
  髪が邪魔そうだから縛ってやったらキレられた。どうやら大変な癇癪持ちの模様。メアリーも呆れて、そっと姿を消してしまった。…あいつ、また逃げやがった!

 遡ること一時間前…。
 朝食後、メアリーに匹敵する年老いた老紳士がげっそりとした表情で俺のところにやって来た。

「アルノー殿下。実は末のシャーロット王女殿下の事なのですが、昨日から乳母が風邪を引きまして、本日も風邪が拗れたとのことで休んでおり…他に乳母がおらず、難儀しております。」
 俺は風邪、と聞いてピンと来た。この、後宮にだけ流行してる風邪だろ?!どうせ!
「はぁ、でもシャーロット王女は三歳だから乳離はしているでしょう?乳母でなくても…。」
「乳母といっても母親代わりでしたので代役がなかなか…」
 母が亡くなって、乳母にまで逃げられた…シャーロット王女に同情した俺は快く遊び相手を引き受けてしまったのだ。

「わぁーーーん!」
「じゃ、やっぱり解く?」
「いゃぁーーーっ!」
「結び方が違った?」
「きぃーーー!!」
 手がつけられない!だめだこりゃ!

 俺は孤児院にいたし、自分も八人兄弟の末っ子だから子供の扱いは慣れてる!そう思っていたが、女の子は全然違うな。孤児院も、俺の兄弟も男ばっかりだったから初めての女の子に困惑した。どうしたら良いかわからない。ただ何か不満なのだろう。
 俺は考えうる全てを提案したがダメだった。仕方なく、シャーロットを抱っこして泣き止むのを待つことにした。次第に「結び方が乳母と違うこと」「リボンの色が嫌だったこと」が判明し、ようやく解決に至ったのはもう、まもなく昼食という時間だった。
 シャーロットは泣き疲れて眠ってしまった。

 シャーロットが泣き止んだ頃、現れたメアリーは「昼食はどうなさいますか?」と聞いて来た。
「俺は良いや…。シャーロット王女の分は起きたら食べられるように、何か用意して欲しい。」
「かしこまりました。それと、今少し宜しいですか?アルノー殿下にお目通を、というものが参っております。」
 そう言われて俺はシャーロットを寝室に寝かせると、すぐ隣の応接室に向かった。

 応接室には男性が三人待っていた。
「アルノー殿下。早速引き継ぎをお願いいたします。」
  彼らは後宮の官吏らしい。俺の前にどさどさと紙の束を置き、説明を始めた。
「こちらが後宮の予算と支出でございます。稟議も出ておりますので決済をお願いいたします。それとこちらは人事。召使の採用、退職について決済をお願いいたします。それとこちはら豊穣祭関連です。こちらはですね、実行委員が立ち上がりますが、それの理事になっていただきます。こちらも会員等のお目通しをお願いいたします。」
 官吏は言うだけ言うと、立ち上がった。「ここに長くいるとまずい。」そんな態度である。でも俺はざっと聞いただけで頭痛がした。なになに、これ全部?!ちょっとおー!一人じゃ無理だよ!!
 俺も慌てて立ち上がったが、ちょうど寝室から泣き叫ぶ声がして追いかけられなくなった。シャーロットが目を覚ましたのだ。
 まってー!仕事と子育てを両立しなきゃいけないなんて聞いてない!陛下からは後宮の仕事だけって言われてましたよ?!あ、ひょっとして子育ても仕事って考え?
しかも、地味に花粉のダメージがひどい…。

 俺が涙を流すと、メアリーはくす、と笑った。

「泣きっ面に蜂ですね?」

 言い返すのさえ馬鹿らしい。俺は取り敢えず、全力でシャーロットをあやした。
 シャーロットは俺が面白い顔をしたら、にこりと笑う。金髪に碧眼のシャーロットはどこか、陛下を彷彿とさせた。陛下が笑ったらこんな感じだろうか?
 俺もシャーロットに微笑んで返した。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

俺達の関係

すずかけあおい
BL
自分本位な攻め×攻めとの関係に悩む受けです。 〔攻め〕紘一(こういち) 〔受け〕郁也(いくや)

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。

N2O
BL
愛想皆無の竜人 × 竜の言葉がわかる人間 ファンタジーしてます。 攻めが出てくるのは中盤から。 結局執着を抑えられなくなっちゃう竜人の話です。 表紙絵 ⇨ろくずやこ 様 X(@Us4kBPHU0m63101) 挿絵『0 琥』 ⇨からさね 様 X (@karasane03) 挿絵『34 森』 ⇨くすなし 様 X(@cuth_masi) ◎独自設定、ご都合主義、素人作品です。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

僕だけの番

五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。 その中の獣人族にだけ存在する番。 でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。 僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。 それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。 出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。 そのうえ、彼には恋人もいて……。 後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。

弟、異世界転移する。

ツキコ
BL
兄依存の弟が突然異世界転移して可愛がられるお話。たぶん。 のんびり進行なゆるBL

処理中です...