哀歌-miele-【R-18】

鷹山みわ

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プール

プール-2-

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そこそこ多かった。
元々人気のあるレジャー施設だったが、平日でもカップルや赤ちゃん連れが水の中で楽しそうに遊んでいる。
遊園地とプールとショッピングが同時に楽しめるという売りだった。プールはウォータースライダーや流れるプールなど定番なものが多くて大人から子どもまで飽きない作りになっているらしい。
更衣室から出てきた胡桃は、思った以上に人がいて急に恥ずかしくなってきた。人前で水着を見せているみたいで……


剛史さんにバレたら怒られそう


彼には伝えていなかった。
相変わらず仕事は忙しく、合間を縫って会いに来てくれる。
「一つ厄介な仕事ができた」とこの前ベッドの中で吐き捨てていた。基本、何でも貪欲にやるというスタイルの彼が嫌がっているのが意外で、仕事内容を聞いたが教えてくれなかった。言いたくなさそうで胡桃も深追いはしなかった。


「なんか人数制限が掛けられてるみたいよ」


美歩も青い水着に着替えて胡桃の隣に立つ。


「珍しいね。でも入口のスタッフさんが人数を気にしてたから何かあるのかな」
「これは……大物芸能人でも来てる予感ね」


期待の眼差しになった美歩に苦笑する。
よく撮影などで芸能人が来る場合、来館者を減らしたり最悪貸し切りにしたり、お店側は色々と気を遣っているらしい。その影響で売り上げが伸びるメリットもあるわけだが。
隣に美歩がいてくれるので、胡桃は恥ずかしさが抜けた。一人でなければ大丈夫みたいだった。


「さあて、男を見つけるわよー」
「……ええっ?」


いきなり爆弾発言をしてきた彼女に目を見開く。全くの初耳だった。
舌を出しながら楽しそうに笑っている。


「もちろん胡桃と目いっぱい遊ぶのが目的だけどさ、ここに来たからには男の一人か二人くらい引っかけたいわ」


目が点になった。でも、美歩ならあり得た話だった。最近、付き合っている彼氏が素っ気ないらしい。
テストと講座で最初の夏が過ぎて、バイトにも明け暮れた胡桃は、もちろん朋香と遊んだり実家に戻ったり有意義な夏休みを過ごした。剛史と会って彼の家で過ごした日々も充実していた。
一方の美歩は彼氏の件で物足りなさを感じていたらしい。
「あいつ、最近やる気がないんだよね」と水着を買った日にぼやいていたが、まさかここで男探しをするとは。さすがに本気ではないと信じているけれど。


「まあ安心して。気になった男を見つけたら報告するからさ。胡桃は楽しんでて」
「うう……美歩ちゃん」


友達がいなくなった場合どう楽しめばいいのだろうか。素朴な疑問を持ったが、特に言わないでおく。
とりあえず今は、美歩と一緒に眼前に広がる水の楽園に足を踏み入れた。




軽く水浴びをしてから、まず広いセンタープールに足を入れる。親子が浮き輪を使って浮かんでいたりビーチボールで遊んでいたり、自由に楽しめる場所だった。
二人で水を掛け合ってプールにゆらゆら浮かぶ、程よい冷たさで今の時期にはちょうど良かった。


すると隣を擦れ違ったカップルの女性が興奮したように話している声が聞こえる。


「奥のジャグジーで撮影やってるみたい」
「マジか、誰?」
「よく見えなかったけどモデルじゃない?」


二人は顔を見合わせた。美歩は俄然やる気を出している。珍しいものには突っ込むタイプの子だった。


「ちらっと見に行かない?」
「美歩ちゃんならそう言うと思った」


微笑した。彼女の性格で自分は救われた。大学で友達が増えたのも美歩が仲介してくれた事が大きかったし、彼女のペースに周りが良い意味で巻き込まれていくので空気は明るかった。
他にも友人が多い中で胡桃と一緒にいてくれる。
「あんたといると何倍も楽しい」と言ってくれたので、感謝しかなかった。
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