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初夜
初夜-4-
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「剛史……さん……わたし」
言うより先に、彼の手が下降して際どい部分に触れようとする。瑞々しい音がした。
「あっ……だめ」
「だめ?こんなに濡れていて、おれ、我慢できないよ」
「あの……少しだけ……こわい」
初めて、だった事を思い出した。剛史は笑ってまた頭を優しく撫でてくれる。
「ゆっくりするから、大丈夫……深呼吸してみて」
すう……はあ…………
いつもより大きく息を吸って、時間をかけて吐く。沸騰していた熱に余分なものがなくなっていくようだった。純度の高いものだけが残る。怖さよりも、彼と繋がってみたいという願望が勝り始める。我慢できないはずなのに、彼は黙って自分を見守っていた。
「どう?」
「……落ち着きました」
「……入れてもいい?」
「はい」
満面の笑みになって、着ていた黒の襟付きシャツを脱いだ。
初めて男性の肉体を眺める。痩せ型の印象だったのに、体の筋肉はしっかり付いていて凜々しい形をしていた。力一杯抱かれたら体が圧迫されそうな気さえした。ベルトを外してジーパンをずらした時、胡桃の目は自然と下を見てしまった。窮屈そうな形になっていた。
「あ……」
「胡桃も、脱がせて」
ボタンを全て外されて下に脱ぎ捨てられる。下着だけになった。急に布がなくなって体に空気が直接あたってくる。
ショーツに手を入れられた。思わず目を閉じる。
「ああ、やっぱりベトベトだ」
「っ……わたし……」
足を上げられてベッドの下に空しく落とされた。足の付け根まで垂れてきそうで顔が火照る。
互いに裸になっていて、やっぱり夢かもしれないと思い始める。
置いていた鞄の中から一つ小さな箱を取り出して、剛史は付けていた。最初からこの展開を考えていたのか。
手慣れていて、彼は初めてじゃない、と分かると途端に心が沈みかける。有名人だから当たり前だと言われそうだけど。
寝かされて、その上に跨ってくる。唾を飲み込む音。胡桃が見上げると、彼は手を口にあてながら呼吸を浅くしていた。ぎらつく瞳はもう野獣のようで、自分が餌になったよう。どのメディアでも見たことのない顔をしていた。
「胡桃」
「……はい」
「胡桃が好きだ。俺と付き合ってほしい」
「え…………」
夢だ。あり得ない。
だってほんの数日前まで、私には誰かと付き合うなんて考えたことはなくて。
普通に大学に通って、バイトをしていただけで、それが当たり前だと思っていたのに。
自分が上から眺めている彼は、遠い世界の人なのに。
「ゆめ……ですか」
「夢じゃないよ、これで分かるだろ」
ふっと笑った彼が最後の下着を外して、ゆっくり自分にそれを重ねてくる。
「あっ」
生温かいものが体中を、全てに伝染していく。
夢じゃないと教えてくれる、彼の欲望。
言うより先に、彼の手が下降して際どい部分に触れようとする。瑞々しい音がした。
「あっ……だめ」
「だめ?こんなに濡れていて、おれ、我慢できないよ」
「あの……少しだけ……こわい」
初めて、だった事を思い出した。剛史は笑ってまた頭を優しく撫でてくれる。
「ゆっくりするから、大丈夫……深呼吸してみて」
すう……はあ…………
いつもより大きく息を吸って、時間をかけて吐く。沸騰していた熱に余分なものがなくなっていくようだった。純度の高いものだけが残る。怖さよりも、彼と繋がってみたいという願望が勝り始める。我慢できないはずなのに、彼は黙って自分を見守っていた。
「どう?」
「……落ち着きました」
「……入れてもいい?」
「はい」
満面の笑みになって、着ていた黒の襟付きシャツを脱いだ。
初めて男性の肉体を眺める。痩せ型の印象だったのに、体の筋肉はしっかり付いていて凜々しい形をしていた。力一杯抱かれたら体が圧迫されそうな気さえした。ベルトを外してジーパンをずらした時、胡桃の目は自然と下を見てしまった。窮屈そうな形になっていた。
「あ……」
「胡桃も、脱がせて」
ボタンを全て外されて下に脱ぎ捨てられる。下着だけになった。急に布がなくなって体に空気が直接あたってくる。
ショーツに手を入れられた。思わず目を閉じる。
「ああ、やっぱりベトベトだ」
「っ……わたし……」
足を上げられてベッドの下に空しく落とされた。足の付け根まで垂れてきそうで顔が火照る。
互いに裸になっていて、やっぱり夢かもしれないと思い始める。
置いていた鞄の中から一つ小さな箱を取り出して、剛史は付けていた。最初からこの展開を考えていたのか。
手慣れていて、彼は初めてじゃない、と分かると途端に心が沈みかける。有名人だから当たり前だと言われそうだけど。
寝かされて、その上に跨ってくる。唾を飲み込む音。胡桃が見上げると、彼は手を口にあてながら呼吸を浅くしていた。ぎらつく瞳はもう野獣のようで、自分が餌になったよう。どのメディアでも見たことのない顔をしていた。
「胡桃」
「……はい」
「胡桃が好きだ。俺と付き合ってほしい」
「え…………」
夢だ。あり得ない。
だってほんの数日前まで、私には誰かと付き合うなんて考えたことはなくて。
普通に大学に通って、バイトをしていただけで、それが当たり前だと思っていたのに。
自分が上から眺めている彼は、遠い世界の人なのに。
「ゆめ……ですか」
「夢じゃないよ、これで分かるだろ」
ふっと笑った彼が最後の下着を外して、ゆっくり自分にそれを重ねてくる。
「あっ」
生温かいものが体中を、全てに伝染していく。
夢じゃないと教えてくれる、彼の欲望。
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