哀歌-aika-【R-18】

愛欲の果て

愛欲の果て-2-

剛史の右手が、閉じた彼女の口を開ける。
まだ体温があるのに口は全く抵抗しなかった。
恐る恐る舌を入れた。絡んでくれないが、自ら彼女の歯茎と歯の隙間まで愛撫していく。

……気持ち良い。唾液の音を聞きながらキスを続けていると、口元が痺れてきた。
唇、舌、あらゆる部位が痛い。びりびりするが、キスをやめるつもりはない。
それは絶えるまで繋がっていたいという欲望だった。
両手はそれぞれが触りたい体を勝手に撫でている。右手は彼女の胸と乳首を撫で回し、左手は背中をさする。足は彼女のと交差している。
シーツの擦れる音は自分の動く音だけだった。

突然、激しい吐き気に襲われる。思わず口に手を添えた。
うぐっと濁った声と共に吐しゃ物が手に付く。赤い血が滴る。
「……ああ……」
真っ赤だな、と単純な感想しか出なかった。これが綺麗な赤色なんだろうか。
昔、好きだった赤い薔薇を思い出す。彼女も好きだった花。
口に付いた血を拭って、手に付いたものはそのまま彼女の口に含ませる。口紅を塗るようになぞった。
また自分の証になったようで優越感に浸る。
「きれいだ……」
体中に電気が帯電しているようで痺れて痛い。痛くて苦しい。呼吸が詰まり始める。
それでもまだ、自分の体は生きていた。証拠に精液が溢れてきている。
……彼女と一緒だ。死にかかっても尚、快楽を求める。自分の体を満たしたくなる。
――はあ、はあ、はあ
吐く息が荒々しい。息苦しさか興奮しているからか分からない。

彼女の右足を手で上げた。彼女の穴を見つける。密かに閉じていた場所が剛史に反応して悦びに開いているようだった。誘われる。
さっきは彼女の願いのため、首を絞める手だけに集中していた。
まだ重なっていない。足りない。内側から湧き出てくる。もう剛史自身でも制御が効かないと分かった。
濡れた自分のものを彼女の中にゆっくり入れた。
入る瞬間、体中の痛みと苦しみが一気に飛ぶ。
「あああっ」


――どうして今まで気づかなかったんだろう。
ただ、体を重ねるだけで満足していたが、そんなのは微々たるものだった。
最初から彼女を手に入れておけば良かった。このコテージでの数日だけなんて、足りなさすぎる。初めてセックスした瞬間から彼女と結婚して妻にしていれば、毎日悦びに溢れていたのに。

最期だと理解していると、これまでの出来事が脳内に駆け巡る。
彼女と出会った時、初めて重なった時、それから自分が裏切るまでの彼女との日々、結婚したくせに別れたくないと彼女に告げた時。罪を重ね続けていた時。