39 / 48
哀歌
哀歌-5-※暴力表現あり
しおりを挟む
苦しいのに、どこか快感だった。
今、自分は死にかかっているのに。
彼は名前を繰り返し呼んでいる。視線はずっと自分に向けている。
叫ぶように自分の名前が部屋にこだましている。
「ウッ……」
強く気道が塞がれて、思わず剛史を直視した。
顔が歪だった。自分を手に掛けている彼の表情は、苦痛と愉悦が入り混じっていた。自分によって喜んでいる事も苦しんでいる事も何かもかもが嬉しい。このままゆっくり底に連れて行ってほしかった。
強く握られて口を開けた。もはや言葉にならない声を上げる。
目が半開きのまま彼を見つめ続ける。息が通ってこない。視界がぼやけてきた。体が浮かぶ感覚を覚える。
心が喜んでいる。体が貪欲に剛史を求めている。その証拠に……瑞々しく濡れてきた。
彼の膝が濡れている部分に触れて、目を見開く。
悦びに口元が吊り上がった。
「……もっと……しテ……
……モット……シメテ」
近づくために体を動かし、膝をずらした時、ぴちゃっと音がして剛史は震えた。
彼女から液が漏れているのに気づく。
ああ、こんなに興奮して悦んでいる。
この行為は、ただの、人殺しなのに。
そして自分はとてつもない勘違いを起こした。
これは彼女の願望で、自分はそれが出来る唯一の人間であると。
息を止めるのは自分だけなのだと。
もっと首を絞めてほしいと微笑みながら彼女は言った。
剛史も頬が吊り上がっていた。そのまま両手で強く彼女の首を握りしめる。
声が溢れてくる。
「ああ、愛してる…………あいしてる」
名前を呼ぶことと愛の告白しかできない。語彙がどんどん無くなっていく。面倒な言葉はいらなかった。
彼女には、ただ愛を伝えればいい。
「ウ……ア」
「胡桃は……俺のものだ……誰にも、渡さない……」
ふいにあの男が脳内に出てきた。彼女の隣にいて彼女に笑いかけていたあの男。自分とは真逆の透明な男。
それは、悪魔の囁きだった。
このままではあの男が彼女を連れて行く。彼女を攫っていく。取られてしまう。
もっと、強く結ばなければ、繋がらなければ、いけない。
強く、強く、その力を両手に込める。気道を塞ぐ。
彼女を永遠に縛り付けたい。
これが、外道で人でなしの俺の本当の姿か。
……そうか。
最初から、こうすれば良かったのだ。
「……アァ……ア…………キモチ……イイ」
「ああ……おれも……」
「モット……モッ……ト」
「っああ、おれのものっ」
体中から汗が噴き出る。無我夢中になった。止まらなかった。
首の骨を折りたい、もっと気持ち良くさせたい、と思い込む。
このまま犯してしまおうか。性器を挿入させて動かして滅茶苦茶にしてしまおうか。そうすればこの白い箱に閉じ込めておける。
今、自分は死にかかっているのに。
彼は名前を繰り返し呼んでいる。視線はずっと自分に向けている。
叫ぶように自分の名前が部屋にこだましている。
「ウッ……」
強く気道が塞がれて、思わず剛史を直視した。
顔が歪だった。自分を手に掛けている彼の表情は、苦痛と愉悦が入り混じっていた。自分によって喜んでいる事も苦しんでいる事も何かもかもが嬉しい。このままゆっくり底に連れて行ってほしかった。
強く握られて口を開けた。もはや言葉にならない声を上げる。
目が半開きのまま彼を見つめ続ける。息が通ってこない。視界がぼやけてきた。体が浮かぶ感覚を覚える。
心が喜んでいる。体が貪欲に剛史を求めている。その証拠に……瑞々しく濡れてきた。
彼の膝が濡れている部分に触れて、目を見開く。
悦びに口元が吊り上がった。
「……もっと……しテ……
……モット……シメテ」
近づくために体を動かし、膝をずらした時、ぴちゃっと音がして剛史は震えた。
彼女から液が漏れているのに気づく。
ああ、こんなに興奮して悦んでいる。
この行為は、ただの、人殺しなのに。
そして自分はとてつもない勘違いを起こした。
これは彼女の願望で、自分はそれが出来る唯一の人間であると。
息を止めるのは自分だけなのだと。
もっと首を絞めてほしいと微笑みながら彼女は言った。
剛史も頬が吊り上がっていた。そのまま両手で強く彼女の首を握りしめる。
声が溢れてくる。
「ああ、愛してる…………あいしてる」
名前を呼ぶことと愛の告白しかできない。語彙がどんどん無くなっていく。面倒な言葉はいらなかった。
彼女には、ただ愛を伝えればいい。
「ウ……ア」
「胡桃は……俺のものだ……誰にも、渡さない……」
ふいにあの男が脳内に出てきた。彼女の隣にいて彼女に笑いかけていたあの男。自分とは真逆の透明な男。
それは、悪魔の囁きだった。
このままではあの男が彼女を連れて行く。彼女を攫っていく。取られてしまう。
もっと、強く結ばなければ、繋がらなければ、いけない。
強く、強く、その力を両手に込める。気道を塞ぐ。
彼女を永遠に縛り付けたい。
これが、外道で人でなしの俺の本当の姿か。
……そうか。
最初から、こうすれば良かったのだ。
「……アァ……ア…………キモチ……イイ」
「ああ……おれも……」
「モット……モッ……ト」
「っああ、おれのものっ」
体中から汗が噴き出る。無我夢中になった。止まらなかった。
首の骨を折りたい、もっと気持ち良くさせたい、と思い込む。
このまま犯してしまおうか。性器を挿入させて動かして滅茶苦茶にしてしまおうか。そうすればこの白い箱に閉じ込めておける。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
【完結】【R18】淫らになるというウワサの御神酒をおとなしい彼女に飲ませたら、淫乱MAXになりました。
船橋ひろみ
恋愛
幼馴染みから、恋人となって数ヶ月の智彦とさゆり。
お互い好きな想いは募るものの、シャイなさゆりのガードが固く、セックスまでには至らなかった。
年始2日目、年始のデートはさゆりの発案で、山奥にある神社に行くことに。実はその神社の御神酒は「淫ら御神酒」という、都市伝説があり……。初々しいカップルの痴態を書いた、書き下ろし作品です。
※「小説家になろう」サイトでも掲載しています。題名は違いますが、内容はほとんど同じで、こちらが最新版です。
性欲の強すぎるヤクザに捕まった話
古亜
恋愛
中堅企業の普通のOL、沢木梢(さわきこずえ)はある日突然現れたチンピラ3人に、兄貴と呼ばれる人物のもとへ拉致されてしまう。
どうやら商売女と間違えられたらしく、人違いだと主張するも、兄貴とか呼ばれた男は聞く耳を持たない。
「美味しいピザをすぐデリバリーできるのに、わざわざコンビニのピザ風の惣菜パンを食べる人います?」
「たまには惣菜パンも悪くねぇ」
……嘘でしょ。
2019/11/4 33話+2話で本編完結
2021/1/15 書籍出版されました
2021/1/22 続き頑張ります
半分くらいR18な話なので予告はしません。
強引な描写含むので苦手な方はブラウザバックしてください。だいたいタイトル通りな感じなので、少しでも思ってたのと違う、地雷と思ったら即回れ右でお願いします。
誤字脱字、文章わかりにくい等の指摘は有り難く受け取り修正しますが、思った通りじゃない生理的に無理といった内容については自衛に留め批判否定はご遠慮ください。泣きます。
当然の事ながら、この話はフィクションです。
【R18】今夜、私は義父に抱かれる
umi
恋愛
封じられた初恋が、時を経て三人の男女の運命を狂わせる。メリバ好きさんにおくる、禁断のエロスファンタジー。
一章 初夜:幸せな若妻に迫る義父の魔手。夫が留守のある夜、とうとう義父が牙を剥き──。悲劇の始まりの、ある夜のお話。
二章 接吻:悪夢の一夜が明け、義父は嫁を手元に囲った。が、事の最中に戻ったかに思われた娘の幼少時代の記憶は、夜が明けるとまた元通りに封じられていた。若妻の心が夫に戻ってしまったことを知って絶望した義父は、再び力づくで娘を手に入れようと──。
【共通】
*中世欧州風ファンタジー。
*立派なお屋敷に使用人が何人もいるようなおうちです。旦那様、奥様、若旦那様、若奥様、みたいな。国、服装、髪や目の色などは、お好きな設定で読んでください。
*女性向け。女の子至上主義の切ないエロスを目指してます。
*一章、二章とも、途中で無理矢理→溺愛→に豹変します。二章はその後闇落ち展開。思ってたのとちがう(スン)…な場合はそっ閉じでスルーいただけると幸いです。
*ムーンライトノベルズ様にも旧バージョンで投稿しています。
※同タイトルの過去作『今夜、私は義父に抱かれる』を改編しました。2021/12/25
ミックスド★バス~家のお風呂なら誰にも迷惑をかけずにイチャイチャ?~
taki
恋愛
【R18】恋人同士となった入浴剤開発者の温子と営業部の水川。
お互いの部屋のお風呂で、人目も気にせず……♥
えっちめシーンの話には♥マークを付けています。
ミックスド★バスの第5弾です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる