哀歌-aika-【R-18】

鷹山みわ

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哀歌

哀歌-5-※暴力表現あり

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苦しいのに、どこか快感だった。
今、自分は死にかかっているのに。
彼は名前を繰り返し呼んでいる。視線はずっと自分に向けている。
叫ぶように自分の名前が部屋にこだましている。
「ウッ……」
強く気道が塞がれて、思わず剛史を直視した。
顔が歪だった。自分を手に掛けている彼の表情は、苦痛と愉悦が入り混じっていた。自分によって喜んでいる事も苦しんでいる事も何かもかもが嬉しい。このままゆっくり底に連れて行ってほしかった。

強く握られて口を開けた。もはや言葉にならない声を上げる。
目が半開きのまま彼を見つめ続ける。息が通ってこない。視界がぼやけてきた。体が浮かぶ感覚を覚える。
心が喜んでいる。体が貪欲に剛史を求めている。その証拠に……瑞々しく濡れてきた。
彼の膝が濡れている部分に触れて、目を見開く。
悦びに口元が吊り上がった。


「……もっと……しテ……
……モット……シメテ」




近づくために体を動かし、膝をずらした時、ぴちゃっと音がして剛史は震えた。
彼女から液が漏れているのに気づく。

ああ、こんなに興奮して悦んでいる。
この行為は、ただの、人殺しなのに。

そして自分はとてつもない勘違いを起こした。
これは彼女の願望で、自分はそれが出来る唯一の人間であると。
息を止めるのは自分だけなのだと。
もっと首を絞めてほしいと微笑みながら彼女は言った。
剛史も頬が吊り上がっていた。そのまま両手で強く彼女の首を握りしめる。
声が溢れてくる。
「ああ、愛してる…………あいしてる」
名前を呼ぶことと愛の告白しかできない。語彙がどんどん無くなっていく。面倒な言葉はいらなかった。
彼女には、ただ愛を伝えればいい。
「ウ……ア」
「胡桃は……俺のものだ……誰にも、渡さない……」

ふいにあの男が脳内に出てきた。彼女の隣にいて彼女に笑いかけていたあの男。自分とは真逆の透明な男。
それは、悪魔の囁きだった。
このままではあの男が彼女を連れて行く。彼女を攫っていく。取られてしまう。
もっと、強く結ばなければ、繋がらなければ、いけない。
強く、強く、その力を両手に込める。気道を塞ぐ。
彼女を永遠に縛り付けたい。

これが、外道で人でなしの俺の本当の姿か。

……そうか。
最初から、こうすれば良かったのだ。

「……アァ……ア…………キモチ……イイ」
「ああ……おれも……」
「モット……モッ……ト」
「っああ、おれのものっ」
体中から汗が噴き出る。無我夢中になった。止まらなかった。
首の骨を折りたい、もっと気持ち良くさせたい、と思い込む。
このまま犯してしまおうか。性器を挿入させて動かして滅茶苦茶にしてしまおうか。そうすればこの白い箱に閉じ込めておける。

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