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【第5話:魔物の位階】
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焦る気持ちにいつの間にか駆け足となって村に向かっていた。
オレが村の入口に設けられた簡素な門に辿り着くと、村に二人しかいない衛兵のうちの一人がこちらに気付いて駆け寄ってくる。
「テッドさん! 無事だったんですね!」
「どういう事? オレは無事だけど……ゴドー、それより村が騒がしいようだけど何があったんだ?」
出迎えてくれたのは、オレがたまに剣術の練習を手伝ってやっている村出身の衛兵のゴドーだった。
いつも明るく笑顔でいることの多いゴドー。その純朴な青年の顔には疲れが滲んでいた。
「それが……この辺りにいないはずの魔物が次々と現れているようで、何人かの村人が襲われて怪我をしているんです」
話を詳しく聞いてみると、オレが調査依頼で向かった祠周辺以外にも、通常では見かけない魔物が数種発生しているようだった。
この村周辺では普段なら高くても位階2に属するオークや森狼までしか見かけないはずなのだが、どうやら位階3に属する魔物が目撃されているようだった。
位階3の魔物で確認されているのは、先ほど戦った戦士蟻やゴブリンリーダー、それにオーガの3種が目撃されている。
魔物の位階に対する強さは、角兎のようなレベル1の魔物なら村にいる一般の成人男性が武器を持てば大概勝てる。
勿論戦闘に不慣れなものが戦えば、怪我などは避けれないだろうし、運が悪ければ命を落とす事もあるだろうが、これが衛兵や冒険者のような戦闘に慣れた者ならまず間違いなく勝てる。
位階2の魔物であっても一般的なDランクの冒険者や衛兵なら、数が同程度なら負ける事はないだろう。
この村の自警団の人たちでも数で有利な状況なら問題なく勝てる。
しかし、オーガなどのような位階3に属する魔物からは話が違ってくる。
魔力が魔物の肉体を大幅に強化しており、例え剣を持っていても自警団のような一般人の攻撃は通らないだろう。
対抗するには、数多くの魔物を倒す事で同じく魔力による肉体強化を受けた、冒険者ならCランク以上、衛兵だとベテランクラスの者でないと攻撃が通らないのだ。
それに、その者たちが戦ったとしても、そもそも攻撃が通るからといって勝てるとは限らない……。
幸い今のところ不意を突かれて襲ってきたのはいずれもレベル2以下の魔物だったようで、怪我をした者も命に別状はなく、何とか逃げ延びたようだが、非常に不味い状況に変わりはない。
「オレが村を離れていたのはたった一晩だぞ……いったい何が起こっているんだ……」
「本当に何が起こったんでしょうか……俺たち衛兵は二人しかいないし、正直レベル2の魔物で手一杯です。情けない話ですがテッドさん、助けて下さい!」
この村には衛兵は二人しかおらず、二人ともレベル2の魔物と1対1で何とか勝てる程度の強さだろう。
オレは訳あって今は本気で戦えないのだが、それでも今村に迫っている位階3の魔物程度なら何とかなる。
そもそもこの慣れ親しんだトーマスの村を見捨てる気はサラサラない。
「勿論だ! ちょっとサクナおばさんとこに報告行ってくるから、戻ったら今後の作戦を練ろう。それまではここを頼んだぞ」
「ありがとうございます! あ!? あと、出来れば冒険者のシグっちもいたら連れて来てもらえませんか? 私の権限じゃ直接依頼はできませんが、きっと村の防衛なら特別依頼扱いで後で報酬も出ると思うので」
ゴドーの言う『シグっち』というのは、オレがこの村に来る前からこの村で冒険者をやっている青年だ。
確かこのゴドーと同じくこの村の者で幼馴染だから、間違いなく力になってくれるだろう。
今、この村にいるオレ以外の唯一の冒険者なので、オレもよく話をするが気さくで良い奴だ。
「任せておけ! 見つけたら嫌がっても一緒に連れてくるさ!」
と、そこまで答えた所でオレは恐ろしい事に気付いてしまった。
今この村にいる冒険者はオレとシグの二人だけではない!?
一度冒険者ギルドに向けた足をもう一度ゴドーのいる門に向けると、オレは叫んでいた。
「ゴドー!! セナは!? セナは村に戻っているのか!?」
オレの様子に驚くゴドーだったが、すぐに平静を取り戻すと思い出そうと考え込む。
「え、えっと……セナってあの農家の息子のことですよね?」
「あぁそうだ。村に戻っているか!? 昨日、冒険者ギルドの依頼で村の外に出ているはずなんだ!!」
「え!? セナって冒険者になっていたんですか!?」
普通の村人なら村から出かけても必ずその日のうちに戻る。
戻ってこない危険性は低いので衛兵も気にしておらず、冒険者や狩人などの森の奥深くの危険な場所に向かう者だけしかあまり注意を払っていなかった。
「ついこないだ冒険者になったんだ! 村に戻っているか覚えていないのか!?」
オレがゴドーに詰め寄っていると、少し離れた所にいた王都所属のもう一人の衛兵の男が近寄り話しかけてきた。
「その子なら戻っていないかもしれない……甥っ子に似ているから見間違えはしていないはずだ」
普段から無口で余り話したことはないが、真面目そうな奴なのでたぶんその通りなのだろう。
「く!? 急いでギルドで依頼内容を聞いてくる!」
そう言ってオレは、ギルドに向かって駆け出したのだった。
オレが村の入口に設けられた簡素な門に辿り着くと、村に二人しかいない衛兵のうちの一人がこちらに気付いて駆け寄ってくる。
「テッドさん! 無事だったんですね!」
「どういう事? オレは無事だけど……ゴドー、それより村が騒がしいようだけど何があったんだ?」
出迎えてくれたのは、オレがたまに剣術の練習を手伝ってやっている村出身の衛兵のゴドーだった。
いつも明るく笑顔でいることの多いゴドー。その純朴な青年の顔には疲れが滲んでいた。
「それが……この辺りにいないはずの魔物が次々と現れているようで、何人かの村人が襲われて怪我をしているんです」
話を詳しく聞いてみると、オレが調査依頼で向かった祠周辺以外にも、通常では見かけない魔物が数種発生しているようだった。
この村周辺では普段なら高くても位階2に属するオークや森狼までしか見かけないはずなのだが、どうやら位階3に属する魔物が目撃されているようだった。
位階3の魔物で確認されているのは、先ほど戦った戦士蟻やゴブリンリーダー、それにオーガの3種が目撃されている。
魔物の位階に対する強さは、角兎のようなレベル1の魔物なら村にいる一般の成人男性が武器を持てば大概勝てる。
勿論戦闘に不慣れなものが戦えば、怪我などは避けれないだろうし、運が悪ければ命を落とす事もあるだろうが、これが衛兵や冒険者のような戦闘に慣れた者ならまず間違いなく勝てる。
位階2の魔物であっても一般的なDランクの冒険者や衛兵なら、数が同程度なら負ける事はないだろう。
この村の自警団の人たちでも数で有利な状況なら問題なく勝てる。
しかし、オーガなどのような位階3に属する魔物からは話が違ってくる。
魔力が魔物の肉体を大幅に強化しており、例え剣を持っていても自警団のような一般人の攻撃は通らないだろう。
対抗するには、数多くの魔物を倒す事で同じく魔力による肉体強化を受けた、冒険者ならCランク以上、衛兵だとベテランクラスの者でないと攻撃が通らないのだ。
それに、その者たちが戦ったとしても、そもそも攻撃が通るからといって勝てるとは限らない……。
幸い今のところ不意を突かれて襲ってきたのはいずれもレベル2以下の魔物だったようで、怪我をした者も命に別状はなく、何とか逃げ延びたようだが、非常に不味い状況に変わりはない。
「オレが村を離れていたのはたった一晩だぞ……いったい何が起こっているんだ……」
「本当に何が起こったんでしょうか……俺たち衛兵は二人しかいないし、正直レベル2の魔物で手一杯です。情けない話ですがテッドさん、助けて下さい!」
この村には衛兵は二人しかおらず、二人ともレベル2の魔物と1対1で何とか勝てる程度の強さだろう。
オレは訳あって今は本気で戦えないのだが、それでも今村に迫っている位階3の魔物程度なら何とかなる。
そもそもこの慣れ親しんだトーマスの村を見捨てる気はサラサラない。
「勿論だ! ちょっとサクナおばさんとこに報告行ってくるから、戻ったら今後の作戦を練ろう。それまではここを頼んだぞ」
「ありがとうございます! あ!? あと、出来れば冒険者のシグっちもいたら連れて来てもらえませんか? 私の権限じゃ直接依頼はできませんが、きっと村の防衛なら特別依頼扱いで後で報酬も出ると思うので」
ゴドーの言う『シグっち』というのは、オレがこの村に来る前からこの村で冒険者をやっている青年だ。
確かこのゴドーと同じくこの村の者で幼馴染だから、間違いなく力になってくれるだろう。
今、この村にいるオレ以外の唯一の冒険者なので、オレもよく話をするが気さくで良い奴だ。
「任せておけ! 見つけたら嫌がっても一緒に連れてくるさ!」
と、そこまで答えた所でオレは恐ろしい事に気付いてしまった。
今この村にいる冒険者はオレとシグの二人だけではない!?
一度冒険者ギルドに向けた足をもう一度ゴドーのいる門に向けると、オレは叫んでいた。
「ゴドー!! セナは!? セナは村に戻っているのか!?」
オレの様子に驚くゴドーだったが、すぐに平静を取り戻すと思い出そうと考え込む。
「え、えっと……セナってあの農家の息子のことですよね?」
「あぁそうだ。村に戻っているか!? 昨日、冒険者ギルドの依頼で村の外に出ているはずなんだ!!」
「え!? セナって冒険者になっていたんですか!?」
普通の村人なら村から出かけても必ずその日のうちに戻る。
戻ってこない危険性は低いので衛兵も気にしておらず、冒険者や狩人などの森の奥深くの危険な場所に向かう者だけしかあまり注意を払っていなかった。
「ついこないだ冒険者になったんだ! 村に戻っているか覚えていないのか!?」
オレがゴドーに詰め寄っていると、少し離れた所にいた王都所属のもう一人の衛兵の男が近寄り話しかけてきた。
「その子なら戻っていないかもしれない……甥っ子に似ているから見間違えはしていないはずだ」
普段から無口で余り話したことはないが、真面目そうな奴なのでたぶんその通りなのだろう。
「く!? 急いでギルドで依頼内容を聞いてくる!」
そう言ってオレは、ギルドに向かって駆け出したのだった。
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