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【第2話:対の契り】
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翌日、オレはいつものように昨日受けた依頼の達成報告に冒険者ギルドに訪れていた。
「はいよ。今日は珍しくCランク依頼だから5ポイントつけて……あと報酬の銀貨20枚だよ」
今回はさすがに指ではじくわけにはいかず、机に置いて差し出してくる。
「いつも、ありがと」
オレはいつものようにお礼を言って受け取るのだが、サクナおばさんが不思議そうにこちらを見ているのに気づく。
「ん? どうしたんです?」
少し気になったので、何かあるのかとサクナおばさんに問いかけてみると、
「いやぁね。あんたってほんと不思議な人だなぁって思ってねぇ」
今までも何度か聞いた気がする同じ言葉を投げかけてきた。
「まぁこんな寂れた村に住み着く冒険者なんて変わり者しかいないだろうからな」
オレはいつも通りそう返すのだが、どうもそういう事ではないようだ。
「ばかだねぇ。テッドが変わり者な事なんて当たり前だろ。この村でテッドの事を変わり者じゃないっていう奴がいたら連れてきて欲しいね。そうじゃなくてその実力とか剣とかだよぉ」
散々な言われようだな……変わり者なのは当たり前なのか……。
内心軽くショックを受けていると、サクナおばさんは言葉を続ける。
「薬草採取の依頼を次の日に持ってくるのは別に当たり前のことだけどさぁ。あんた昨日受けたオーク討伐とかも難易度関係なく必ず依頼受けたその日のうちに達成して次の日の朝一に報告にくるだろ? おまけに腰にはちょっと禍々しいけど立派な剣をさしてるのに魔法でしか戦わないときてる」
この世界には魔剣や魔法剣、精霊の杖など名のある様々な武器が存在する。
そしてそれらの名のある武器の中でも上位に位置する物は、ある契約を交わす事で大きな力を行使する事が出来るようになる。
その契約は【対の契り】と呼ばれ、大きな力を得る事が出来る代わりに他の一切の武器が使えなくなるのだ。
オレもこの対の契りを交わしているので、
「いやぁ。オレ、この剣と契っちゃってるから杖持てないんですよねぇ」
とおどけてみせる。
おどける必要はないのだろうが、魔法使いに有利な杖が持てないのは本当の事だ。
「え? あんた魔法使いなんだよね?」
「そうですね。でも、ギルドの冒険者登録時に書いたと思うけど一応剣も体術も使えますよ。だからって、無理に危ない近接戦闘をする事もないでしょ? それにこの剣の力で召喚魔法も少し使えますし、安全第一ですよ」
「なんだいそんな理由かい。テッドらしいと言えばテッドらしいけど……それにしても……召喚魔法使えるんだったよねぇ?」
オレは徐々にジト目になるサクナおばさんに何か嫌な予感がして後ずさりしながら、
「……え? ドウシタノデスカ?」
と、とぼけて……聞いてみる。
「たま~にスケルトンが出たとか騒ぎが起きてた気がするんだけど、あれって……「テッドおじさん!! やっと見つけた!!」」
サクナおばさんが ヨクワカラナイコト を話し始めたその時、ギルドの扉が勢いよく開いて一人の救世主……じゃなくて少年が飛び込んできたのだった。
~
「おぉぉ! セナ~! どうしたんだい?」
オレはサクナおばさんとの会話を華麗に中断して一瞬でセナの前まで移動すると、少し大仰に話しかけてみる。
「ん? テッドおじさんどうしたの? 何か変だよ? まぁいつも変だけど?」
思いっきり怪しまれた……。
と言うか非常事態だったからツッコミ損ねたけど、
「いつも変って何!? あと、おじさんじゃなくてお兄さんと呼びなさい。テッドお兄さんと」
オレの見た目はあの時以来、……28歳で止まっている……。
だ~か~ら~! 見た目が28歳なのにおじさんと呼ばれるのは納得がいかない!
この世界の肉体年齢は能力による補正が入るので、20歳の時点で高い能力を手にしていたオレは特に若いはずなのだ。
今はあれから15年も経ってしまっているから実際の年齢は思いっきりおじさんなんだが……、誰が何と言おうとここだけは譲れない。
「え~~じゃぁテッドお兄さんって言われたいなら、せめてその不潔な無精ひげとかやめて見た目もう少し気を使ってよね~」
不潔……。
「……はい……」
「だいたいテッドさんは 強いし 頭良いし ちゃんとしたら絶対モテるはずなのに、そのだらしない感じが全部台無しにしてるんだよ? わかってる?」
だらしない……。台無し……。
「……はい……」
「それにねぇ……「だぁー! わかった! 参った! もう少し気を配るから!」」
もうオレの心にこれ以上致死級ダメージを与えないでくれ……。
「それで探してたって何なんだ?」
とりあえず気を取り直して話題を修正しておこう。
「そうそう! これ見て!!」
セナはそう言って首にかけているギルドタグを嬉しそうに、そして少し照れくさそうにオレに見せてきた。
「オォー!! 試験合格シタノカ! トウトウ冒険者カ! オメデトオ!!」
オレは心の底から本気で嬉しくて祝福したんだが、何故か後ろでサクナおばさんが「あちゃ~」って手で顔を押さえている。
「もう!! 何だよ! 驚かせようと思ったのに知ってたのかよ! サクナおばさんだな!」
あれ? なんでバレたんだ?
「はいよ。今日は珍しくCランク依頼だから5ポイントつけて……あと報酬の銀貨20枚だよ」
今回はさすがに指ではじくわけにはいかず、机に置いて差し出してくる。
「いつも、ありがと」
オレはいつものようにお礼を言って受け取るのだが、サクナおばさんが不思議そうにこちらを見ているのに気づく。
「ん? どうしたんです?」
少し気になったので、何かあるのかとサクナおばさんに問いかけてみると、
「いやぁね。あんたってほんと不思議な人だなぁって思ってねぇ」
今までも何度か聞いた気がする同じ言葉を投げかけてきた。
「まぁこんな寂れた村に住み着く冒険者なんて変わり者しかいないだろうからな」
オレはいつも通りそう返すのだが、どうもそういう事ではないようだ。
「ばかだねぇ。テッドが変わり者な事なんて当たり前だろ。この村でテッドの事を変わり者じゃないっていう奴がいたら連れてきて欲しいね。そうじゃなくてその実力とか剣とかだよぉ」
散々な言われようだな……変わり者なのは当たり前なのか……。
内心軽くショックを受けていると、サクナおばさんは言葉を続ける。
「薬草採取の依頼を次の日に持ってくるのは別に当たり前のことだけどさぁ。あんた昨日受けたオーク討伐とかも難易度関係なく必ず依頼受けたその日のうちに達成して次の日の朝一に報告にくるだろ? おまけに腰にはちょっと禍々しいけど立派な剣をさしてるのに魔法でしか戦わないときてる」
この世界には魔剣や魔法剣、精霊の杖など名のある様々な武器が存在する。
そしてそれらの名のある武器の中でも上位に位置する物は、ある契約を交わす事で大きな力を行使する事が出来るようになる。
その契約は【対の契り】と呼ばれ、大きな力を得る事が出来る代わりに他の一切の武器が使えなくなるのだ。
オレもこの対の契りを交わしているので、
「いやぁ。オレ、この剣と契っちゃってるから杖持てないんですよねぇ」
とおどけてみせる。
おどける必要はないのだろうが、魔法使いに有利な杖が持てないのは本当の事だ。
「え? あんた魔法使いなんだよね?」
「そうですね。でも、ギルドの冒険者登録時に書いたと思うけど一応剣も体術も使えますよ。だからって、無理に危ない近接戦闘をする事もないでしょ? それにこの剣の力で召喚魔法も少し使えますし、安全第一ですよ」
「なんだいそんな理由かい。テッドらしいと言えばテッドらしいけど……それにしても……召喚魔法使えるんだったよねぇ?」
オレは徐々にジト目になるサクナおばさんに何か嫌な予感がして後ずさりしながら、
「……え? ドウシタノデスカ?」
と、とぼけて……聞いてみる。
「たま~にスケルトンが出たとか騒ぎが起きてた気がするんだけど、あれって……「テッドおじさん!! やっと見つけた!!」」
サクナおばさんが ヨクワカラナイコト を話し始めたその時、ギルドの扉が勢いよく開いて一人の救世主……じゃなくて少年が飛び込んできたのだった。
~
「おぉぉ! セナ~! どうしたんだい?」
オレはサクナおばさんとの会話を華麗に中断して一瞬でセナの前まで移動すると、少し大仰に話しかけてみる。
「ん? テッドおじさんどうしたの? 何か変だよ? まぁいつも変だけど?」
思いっきり怪しまれた……。
と言うか非常事態だったからツッコミ損ねたけど、
「いつも変って何!? あと、おじさんじゃなくてお兄さんと呼びなさい。テッドお兄さんと」
オレの見た目はあの時以来、……28歳で止まっている……。
だ~か~ら~! 見た目が28歳なのにおじさんと呼ばれるのは納得がいかない!
この世界の肉体年齢は能力による補正が入るので、20歳の時点で高い能力を手にしていたオレは特に若いはずなのだ。
今はあれから15年も経ってしまっているから実際の年齢は思いっきりおじさんなんだが……、誰が何と言おうとここだけは譲れない。
「え~~じゃぁテッドお兄さんって言われたいなら、せめてその不潔な無精ひげとかやめて見た目もう少し気を使ってよね~」
不潔……。
「……はい……」
「だいたいテッドさんは 強いし 頭良いし ちゃんとしたら絶対モテるはずなのに、そのだらしない感じが全部台無しにしてるんだよ? わかってる?」
だらしない……。台無し……。
「……はい……」
「それにねぇ……「だぁー! わかった! 参った! もう少し気を配るから!」」
もうオレの心にこれ以上致死級ダメージを与えないでくれ……。
「それで探してたって何なんだ?」
とりあえず気を取り直して話題を修正しておこう。
「そうそう! これ見て!!」
セナはそう言って首にかけているギルドタグを嬉しそうに、そして少し照れくさそうにオレに見せてきた。
「オォー!! 試験合格シタノカ! トウトウ冒険者カ! オメデトオ!!」
オレは心の底から本気で嬉しくて祝福したんだが、何故か後ろでサクナおばさんが「あちゃ~」って手で顔を押さえている。
「もう!! 何だよ! 驚かせようと思ったのに知ってたのかよ! サクナおばさんだな!」
あれ? なんでバレたんだ?
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