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【第46話:真実を求めて】

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 待ち受ける魔物の群れを全て撃破し、ようやく城塞都市国家シグルスの城壁が見えて来た時、突然街の中から何かの爆発音が聞こえてきました。

「なに!? 街の中から聞こえたけど?」

 衛星射撃で確認してみますが、どうやら魔物の仕業ではなさそうです。

「ハヤトっちですね。既に街の中深くまで侵入しているので、ちょっと急がないと不味そうです」

 どうせならまた『視線吸引』で引き寄せてくれないかと思って、わざわざ次元遮断を解除してじろじろ覗いてみたのですが、無視されてしまいました。

「ダイン……何か無茶する時は、先に説明してね。今、何か凄い悪寒が走ったんだけど?」

 さすがフォレンティーヌさん、中々鋭いですね。
 まぁでも、教えても藪蛇になるので言いませんけど。

「とりあえず、サバロンさんたちとはここで一旦お別れです。そのまま鬼蜘蛛に乗っていって貰いますが、もし僕が死ぬと動かなくなるので、その点だけは注意してください」

「おいおい。そんな不吉な事言うなよ? お前はハヤトに勝つための切り札みたいな存在なんだ。負けそうなら、何を犠牲にしてでも逃げて生き延びてくれ」

「そうだぜ! オレたちがいくら生き残っても、ハヤトには勝てねぇからな」

「大の大人がこれだけ揃って情けないがなぁ」

 みんな気遣ってくれますが、僕にとってはこの街が、セリア達が大事なので、それを見捨てる選択肢は存在しません。

「ありがとうございます。でも、勝負が決着する時は一瞬でしょうから、逃げる暇はないと思いますよ。だから……全力で勝ちに行きます」

 その後、短い別れの挨拶を交わし、それぞれの目的地に向けて進んだのでした。

 ~

 南門の前まで辿り着くと、門の上から誰何されます。

「今は有事のため門は閉ざしている! お前たちはいったい何者だ!?」

 門を破壊して先に進むのは簡単ですが、そうすると後でもし南門にも魔物が押し寄せてきた場合、あっという間に街に侵入を許してしまう事になるので悪手です。

 僕がどう答えるか悩んでいると、一緒に鬼蜘蛛に乗っているフォレンティーヌさんが代わりに答えてくれました。

「私は七枚盾セブンズシールドのフォレンティーヌよ! 街に危険人物が侵入したの! 追っているからすぐに門を開けて!」

 そして、疑われるのを予想して真横に樹氷を出現させます。

「なっ!? これは!? 間違いない! すぐに門を開けるので、隙間から素早く入ってください!」

 そう言って、周りに指示をだしてくれます。

 半分だけ開けて貰った門の隙間から素早く街に入ると、さきほどの衛兵さんが待っていました。

「ありがとう。すぐに開けてくれて助かったわ」

「いえ。それより、危険人物とはいったい?」

 後ろで門がすぐさま閉じられていくのを感じながら、急いでいる事を簡潔に伝えます。

「すみません。今は1秒でも時間が惜しいので、通して貰えませんか? あとで必要なら詰め所に報告に向かいます」

 しかし、僕を一瞥したあと、フォレンティーヌさんに視線を戻し話を続けます。

「その少年は?」

「この子は……私の教え子よ。とにかく急いでいるのは本当なの。通っても良いかしら?」

「……わかりました。でも、出来れば落ち着いたら、どういうことなのか報告をお願いしますね」

「わかったわ。それじゃぁ、行くわね。ダイン、急いで」

 僕の言葉だけでは、ちょっと時間がかかるところでしたが、フォレンティーヌさんのネームヴァリューのお陰で、すぐに門を通る事ができました。

「はい。しっかり掴まっていてください」

 本当なら目立つので街中を鬼蜘蛛に乗って移動するのは避けたいところですが、今はそんな事は言っていられません。
 鬼蜘蛛に指示をだして、街中で出せる限界までスピードをあげてハヤトっちを追いかけます。

「ハヤトがどこに向かっているかはわかるの?」

「絶対とは言えませんが、方角からしておそらく守護者養成学校に向かっていると思います」

 そしてそこには……マリアンナさんがいます。

「本当にマリアンナさんの命を狙っているようね。あんな良い人がちょっと信じられないんだけど」

「わかりません。僕も真実を知りたいです。でも、そのためにはハヤトっちにマリアンナさんを殺させるわけにはいかない。必ず止めてみせます」

 僕自身、何が本当で何が間違っているのかわからず、迷いが生じてしまっています。
 しかし一つだけ言えるのは、ハヤトっちは恐らく手段を選ばないという事です。

 今、養成学校にはローズもセリアもいます。
 もしハヤトっちに核撃などを連発されれば、いくら養成学校が頑丈に作られているといっても、あっけなく崩壊してしまうでしょう。

 焦る気持ちを押し殺して鬼蜘蛛を走らせていると、前方で大きな爆発が発生しました。

「!? もう養成学校までわずかのところまで……フォレンティーヌさん、僕は先にいきます。鬼蜘蛛は残していきますので、そのまま乗ってきてください」

「わかったわ。早く行ってあげて」

 一瞬、悔しそうな顔を見せたフォレンティーヌさんでしたが、すぐにその表情を飲み込み、早く行けと送りだしてくれました。

「ありがとうございます」

 僕は一言そう伝えると、身体強化を限界まで行います。
 強化が終わるとそのまま鬼蜘蛛の背を蹴り、立ち並ぶ建物の屋根に飛び乗り駆け出しました。
 駆ける速度は鬼蜘蛛とそこまで変わりませんが、建物を無視して直進するぶんかなり早く着くはずです。

 そして、その判断は間違っていなかったようです。

「ハヤトっちぃぃ!!!」

 今まさに門を核撃で破壊し、養成学校に入ろうとしているハヤトっちの後ろ姿を捉えたのでした。
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