38 / 46
【第38話:核の破壊】
しおりを挟む
「じゃぁ、さっそく向かってもらえるかしら? モンスターウェーブの中心地に」
そして「もちろん暁の羊たちのメンバーも一緒にね」と続けるマリアンナさん。
「ちょちょ!? モンスターウェーブの中心地!?」
先にサギットさんが驚くから、なんか僕は驚きそびれてしまいました。
「ちょちょ。どうしてモンスターウェーブのど真ん中に行く必要があるんですか? ちょちょ」
あ、なんかサギットさんが凄いジト目でこちらを見てきますが、僕は言論の自由を主張します!
図書館の本に、今はこの国では保障されている権利だって書いてましたし。
それはどうでも良いのですが、マリアンナさんがニコニコしながら僕を見ています。
一緒に暮らしているのでわかりますが、この表情をする時のマリアンナさんは……、
「そうね~。ちょちょ。それならフォレンティーヌから聞いたけど、あなたの異能で直接見てもらった方がいいかしら? ちょちょ」
マリアンナさんも使いたかったんですね。ちょちょ……。
サギットさんが遠い目をしていますが、それよりも今は『衛生射撃』です。
僕はすぐさま第2の視界に意識を向けて、その表示範囲を街の外へと拡大していきます。
すると、シグルスの街から南西に80kmほどの場所に、徐々にその数を増やしている魔物の群れを見つけました。
上空から見下ろす形なので良くわかりますが、ある場所を中心に魔物が増え続けていますね。
「この街から南西80kmあたりに魔物の群れを見つけました。ある地点を中心に波紋が広がるように魔物が増え続けているようなんですが、この中心を確認すればいいですか?」
「あらぁ? もうそこまで見えたのね。これからダインが協力してくれたら、対応が凄く楽になりそうだわ~」
胸の前で手をあわせて喜ぶマリアンナさんは、「そこであっているから中心部分を見てみてちょうだい」と続けました。
「わかりました。ちょっと確認してみますね」
僕は中心部分に何やら薄っすらと光るものがあるのを見つけると、その部分を中心に映像を拡大していきます。
しかし、今回の第3ウェーブは第1ウェーブを上回る規模になりそうですね。
ベヒモスクラスの大型の魔物もかなり増えているように感じます。
状況を確認したらマリアンナさんに許可を貰って先手を打っておきたい所です。
そんな事を考えている間も第二の視界は拡大を続け、やがて……ある物体を見つけました。、
「これは……黒曜石みたいな石が見えました。大きさは1mぐらい? 宙に浮いてゆっくりと回転しています」
どうやらこの石が薄っすらと黒い光を発するたびに魔物が増えていっているように見えます。
「見つけたのね。その石はハヤトの異能によって創り出されたモンスターウェーブの核よ。しかし、1mもあるのね。これは何とか破壊しないと街が危ないかもしれないわね……」
「モンスターウェーブの核……そんなものがあるんですね。じゃぁ、これを破壊すればいいんですね」
ハヤトという人が発生させているという話でしたが、その核を媒介して発生させているのなら、自分の手のものに運ばせる事で、世界中でモンスターウェーブを起こすことが出来ますね。
でも……これを破壊するだけで良いなら、話を聞き終わったらさっそく『衛星射撃』で破壊できるか試してみましょう。
「そうよ。モンスターウェーブは、その核が小さくなって消滅するか、破壊されるまで続くの。サバロンたちには、その核を破壊しに向かって貰ったんですけど、護衛にグリムベル財団直属の部隊がついていてね。今は少し離れたところでチャンスを窺っているはずだわ」
そりゃぁ街の中をいくら探しても、フォレンティーヌさんを発見できなかったわけですね。
そんな風に納得していると、その核の近くに人影を発見しました。
「!? マリアンナさん、核の近くに人がいるみたい……誰か立っています」
「そんな!? 魔物はグリムベルの者でも無差別に襲うはずよ? いえ……待ってダイン!?」
何かマリアンナさんが焦り始めましたが、僕は既にその人物を第2の視界で捉えていました。
「……小さな……全身黒ずくめの……子供?」
「子供!? ダイン!! すぐに異能を解除しなさい!! 早く!!」
マリアンナさんが慌てて叫ぶ声を聞いた直後でした。
(目が合った!? まさか、こちらに気付いた!?)
そう思った瞬間、僕は見知らぬ場所に立っていたのでした。
~
「そ、外? いったい何が……」
今まで何度か痛みに襲われた時に垣間見えた、追体験のような記憶ではありません。
僕は修練場にいたはずなのに、確かに今、現実に草原の中に……、
「ハッ!? ここはさっき僕が見ていた!?」
周りにいる無数の魔物の姿が目に飛び込んできました。
僕は一気に警戒レベルを引き上げ、戦闘態勢を取り、『身体強化』と『気功法衣』を強化したのですが、それを嘲笑うように僕の目の前に一人の人物が現れました。
(!? この距離まで気付けなかった!?)
「おい。そこのお前、お前いったいだれだ? なにこそこそ覗いてんだ?」
その声を聞いた瞬間、いえ、その黒ずくめの子供を視界に収めた瞬間、僕の胸が早鐘を打ちはじめます。
(僕は、あの子の事が……怖いのか……?)
今まであまり感じた事のない感情が溢れ出し、その事に驚き、咄嗟に反応する事ができません。
「お~い。聞こえてるか~? 面白いギフト持ってるようだから見逃してやったんだぞ? 答えねぇなら……殺すよ?」
その瞬間、僕は『解析の片眼鏡』で自分の状況を解析。
すぐさま『次元遮断』でサングラスのように自分の目の周りを空間遮断しました。
「!? お前……本当に何者だ? どうやって俺様の『視線吸引』を無効化しやがった……」
僕がここに連れてこられたのは、恐らくこの異能の能力でしょう。
この子に視線を向けると自動的に発動する異能のようで、複数の能力を併せ持つかなり強力な異能のようです。
状況の解析結果から推測する限りでは、視線を感じ取れる能力、視線を自分に固定できる能力、さらに、一番厄介な効果として視線の主を目の前に引き摺りだす能力を併せ持っていると思われました。
そこで僕は、この子に直接視線が通らないように『次元遮断』を僕の目を覆うサングラスのように展開し、視線そのものにフィルターを掛けてみたのですが……どうやら上手くいったようで良かった。
この手の異能力者同士の戦いは、相手の異能が概念上どのように作用しているかを予測して対抗手段を打つのが大事ですからね。
「答えてもいいですが、そういうの敵対的な態度を向けている相手に聞いちゃうタイプの人なんですか~?」
とりあえず、このまま少し煽って、感情的にさせる事が出来ないか試してみました。
「く!? 言うじゃねぇか……てめぇ、俺様が誰かわかって口聞いてんだろうなぁ?」
本当なら『解析の片眼鏡』をこの子に使って調べたい所ですが、残念ながら僕のこの異能も視線を向ける必要がある異能なので、今は使用する事ができません。
でも、この子が誰なのかぐらいは僕にもわかりました。
「たぶんわかっていますよ? ハヤトっち」
あれ? 僕はなんで「ハヤトっち」なんて愛称でこの子を呼んだんでしょう?
状況から見て、さっき説明を受けたグリムベル財団代表のハヤトって人だと言うのは予想していたのですが……。
「え……? お前いったい……!? あ……そ、その白い髪……もしかして……ダイちゃん……なのか?」
その言葉に思わず振り返って周りを見てみますが、もちろん僕しかいません……。
どうしよう? 知らないって言ったら傷ついちゃうかな……?
そして「もちろん暁の羊たちのメンバーも一緒にね」と続けるマリアンナさん。
「ちょちょ!? モンスターウェーブの中心地!?」
先にサギットさんが驚くから、なんか僕は驚きそびれてしまいました。
「ちょちょ。どうしてモンスターウェーブのど真ん中に行く必要があるんですか? ちょちょ」
あ、なんかサギットさんが凄いジト目でこちらを見てきますが、僕は言論の自由を主張します!
図書館の本に、今はこの国では保障されている権利だって書いてましたし。
それはどうでも良いのですが、マリアンナさんがニコニコしながら僕を見ています。
一緒に暮らしているのでわかりますが、この表情をする時のマリアンナさんは……、
「そうね~。ちょちょ。それならフォレンティーヌから聞いたけど、あなたの異能で直接見てもらった方がいいかしら? ちょちょ」
マリアンナさんも使いたかったんですね。ちょちょ……。
サギットさんが遠い目をしていますが、それよりも今は『衛生射撃』です。
僕はすぐさま第2の視界に意識を向けて、その表示範囲を街の外へと拡大していきます。
すると、シグルスの街から南西に80kmほどの場所に、徐々にその数を増やしている魔物の群れを見つけました。
上空から見下ろす形なので良くわかりますが、ある場所を中心に魔物が増え続けていますね。
「この街から南西80kmあたりに魔物の群れを見つけました。ある地点を中心に波紋が広がるように魔物が増え続けているようなんですが、この中心を確認すればいいですか?」
「あらぁ? もうそこまで見えたのね。これからダインが協力してくれたら、対応が凄く楽になりそうだわ~」
胸の前で手をあわせて喜ぶマリアンナさんは、「そこであっているから中心部分を見てみてちょうだい」と続けました。
「わかりました。ちょっと確認してみますね」
僕は中心部分に何やら薄っすらと光るものがあるのを見つけると、その部分を中心に映像を拡大していきます。
しかし、今回の第3ウェーブは第1ウェーブを上回る規模になりそうですね。
ベヒモスクラスの大型の魔物もかなり増えているように感じます。
状況を確認したらマリアンナさんに許可を貰って先手を打っておきたい所です。
そんな事を考えている間も第二の視界は拡大を続け、やがて……ある物体を見つけました。、
「これは……黒曜石みたいな石が見えました。大きさは1mぐらい? 宙に浮いてゆっくりと回転しています」
どうやらこの石が薄っすらと黒い光を発するたびに魔物が増えていっているように見えます。
「見つけたのね。その石はハヤトの異能によって創り出されたモンスターウェーブの核よ。しかし、1mもあるのね。これは何とか破壊しないと街が危ないかもしれないわね……」
「モンスターウェーブの核……そんなものがあるんですね。じゃぁ、これを破壊すればいいんですね」
ハヤトという人が発生させているという話でしたが、その核を媒介して発生させているのなら、自分の手のものに運ばせる事で、世界中でモンスターウェーブを起こすことが出来ますね。
でも……これを破壊するだけで良いなら、話を聞き終わったらさっそく『衛星射撃』で破壊できるか試してみましょう。
「そうよ。モンスターウェーブは、その核が小さくなって消滅するか、破壊されるまで続くの。サバロンたちには、その核を破壊しに向かって貰ったんですけど、護衛にグリムベル財団直属の部隊がついていてね。今は少し離れたところでチャンスを窺っているはずだわ」
そりゃぁ街の中をいくら探しても、フォレンティーヌさんを発見できなかったわけですね。
そんな風に納得していると、その核の近くに人影を発見しました。
「!? マリアンナさん、核の近くに人がいるみたい……誰か立っています」
「そんな!? 魔物はグリムベルの者でも無差別に襲うはずよ? いえ……待ってダイン!?」
何かマリアンナさんが焦り始めましたが、僕は既にその人物を第2の視界で捉えていました。
「……小さな……全身黒ずくめの……子供?」
「子供!? ダイン!! すぐに異能を解除しなさい!! 早く!!」
マリアンナさんが慌てて叫ぶ声を聞いた直後でした。
(目が合った!? まさか、こちらに気付いた!?)
そう思った瞬間、僕は見知らぬ場所に立っていたのでした。
~
「そ、外? いったい何が……」
今まで何度か痛みに襲われた時に垣間見えた、追体験のような記憶ではありません。
僕は修練場にいたはずなのに、確かに今、現実に草原の中に……、
「ハッ!? ここはさっき僕が見ていた!?」
周りにいる無数の魔物の姿が目に飛び込んできました。
僕は一気に警戒レベルを引き上げ、戦闘態勢を取り、『身体強化』と『気功法衣』を強化したのですが、それを嘲笑うように僕の目の前に一人の人物が現れました。
(!? この距離まで気付けなかった!?)
「おい。そこのお前、お前いったいだれだ? なにこそこそ覗いてんだ?」
その声を聞いた瞬間、いえ、その黒ずくめの子供を視界に収めた瞬間、僕の胸が早鐘を打ちはじめます。
(僕は、あの子の事が……怖いのか……?)
今まであまり感じた事のない感情が溢れ出し、その事に驚き、咄嗟に反応する事ができません。
「お~い。聞こえてるか~? 面白いギフト持ってるようだから見逃してやったんだぞ? 答えねぇなら……殺すよ?」
その瞬間、僕は『解析の片眼鏡』で自分の状況を解析。
すぐさま『次元遮断』でサングラスのように自分の目の周りを空間遮断しました。
「!? お前……本当に何者だ? どうやって俺様の『視線吸引』を無効化しやがった……」
僕がここに連れてこられたのは、恐らくこの異能の能力でしょう。
この子に視線を向けると自動的に発動する異能のようで、複数の能力を併せ持つかなり強力な異能のようです。
状況の解析結果から推測する限りでは、視線を感じ取れる能力、視線を自分に固定できる能力、さらに、一番厄介な効果として視線の主を目の前に引き摺りだす能力を併せ持っていると思われました。
そこで僕は、この子に直接視線が通らないように『次元遮断』を僕の目を覆うサングラスのように展開し、視線そのものにフィルターを掛けてみたのですが……どうやら上手くいったようで良かった。
この手の異能力者同士の戦いは、相手の異能が概念上どのように作用しているかを予測して対抗手段を打つのが大事ですからね。
「答えてもいいですが、そういうの敵対的な態度を向けている相手に聞いちゃうタイプの人なんですか~?」
とりあえず、このまま少し煽って、感情的にさせる事が出来ないか試してみました。
「く!? 言うじゃねぇか……てめぇ、俺様が誰かわかって口聞いてんだろうなぁ?」
本当なら『解析の片眼鏡』をこの子に使って調べたい所ですが、残念ながら僕のこの異能も視線を向ける必要がある異能なので、今は使用する事ができません。
でも、この子が誰なのかぐらいは僕にもわかりました。
「たぶんわかっていますよ? ハヤトっち」
あれ? 僕はなんで「ハヤトっち」なんて愛称でこの子を呼んだんでしょう?
状況から見て、さっき説明を受けたグリムベル財団代表のハヤトって人だと言うのは予想していたのですが……。
「え……? お前いったい……!? あ……そ、その白い髪……もしかして……ダイちゃん……なのか?」
その言葉に思わず振り返って周りを見てみますが、もちろん僕しかいません……。
どうしよう? 知らないって言ったら傷ついちゃうかな……?
0
お気に入りに追加
412
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる