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【第34話:グリムベル】
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「じゃぁ、今から僕の質問に答えてもらいますよ?」
僕のその言葉に目を伏せ、悔しそうに歯をくいしばるサギットさん。
「くっ……やはりグリムベルのものだったんだな。しかし、まさかここまで強いとは……」
そう言いながら、何とか逃れようと後ずさるサギットさんに詰め寄り、まずはその素性を問い詰めます。
「もう逃げられないですよ。サギットさん。あなたはいったい何者なんですか?」
しかし、僕のその質問に少し不思議そうな表情を見せ、
「何者って、わかってるんじゃねぇのか?」
サギットさんを解析して、所持しているのがギフトではなく、3つの異能である事はわかっていますが、さすがに素性まではわかりません。
「あなたが異能を持つグリムベル出身の人だという事しか知りませんよ?」
「あん? どういう事だ? おめぇグリムベルから派遣された処刑人じゃねぇのか?」
んん? 何か話しが噛み合わないぞ?
「処刑人って何ですか? そもそも、フォレンティーヌさんをどうしたんですか?」
「はっ???」
「は?」
側から見れば、僕たちは少し間の抜けた表情を浮かべて見えたかもしれません。
なんだかお互い勘違いがあるようですね。
「もしかして、サギットさんってフォレンティーヌさんの同志とかなのですか?」
僕は最初、フォレンティーヌさんが失踪したこのタイミングに問答無用で戦闘を仕掛けてきたサギットさんが、攫った張本人なのかと疑っていました。
しかし、サギットさんと少し話しただけで、そうでは無いというのがわかりました。
嘘が下手だと言うのはきっと本当なのでしょう。
人の表情を機微を読むのが苦手な僕でもわかるぐらいですから。
そうなると、同じくグリムベルのやり方に不満を持つ同志なのじゃないかと思ったのです。
「ちょちょ、ちょっと待て……本当にダインは処刑人じゃねぇのか? フォレンティーヌを攫ったんじゃねぇのか? いや、でも、お前たしかに異能を使ったよな?」
「異能は使えますよ。記憶は曖昧ですが、グリムベル第13孤児院の出身であるのも間違いないと思います。でも、さっきからサギットさんが言っている『処刑人』とか言うのでは無いと思いますよ?」
「そ、そうか……フォレンティーヌの行方がわからなくなったのがダインと接触した翌日だったから、俺はてっきりお前が本部から派遣された処刑人かと思ったんだが……くそっ! 勘違いで死ぬことになるとはな……」
「え? なんで死ぬことになるんですか?」
僕がそうたずねると、
「はっ???」
「は?」
また二人で少し間抜けな表情を晒してしまいます。
「俺を殺ろさねぇのか?」
「なんで僕がサギットさんを殺す必要が?」
フォレンティーヌさんを攫ったのがサギットさんと言うならまだしも、おそらく同志か何かだとわかったサギットさんを殺す理由なんてあるわけもなく。
「ちょちょ……処刑人じゃなくてもグリムベルのものが裏切者を生かしておけねぇだ……ろ? ……あ!? も、もしかしてダインは『離脱者』なのか!?」
何かどんどん僕の知らない言葉が出てきますね。
「すみませんが、さっきから『処刑人』とか『離脱者』とかわからない言葉が出てくるのですが、先にそちらの意味を教えて貰えませんか?」
たぶんそのあたりを把握した方が話しが早そうですし。
「ほ、ほんとに知らねぇみたいだな……」
「だから、さっきからそう言っているじゃないですか? そもそも僕が有利なこの状況で嘘をつくメリットがないですよ」
その言葉に「た、確かに」と納得の言葉をこぼし、サギットさんはようやく説明をしてくれたのでした。
~
まず、何度も出てきた『処刑人』と言うのは、グリムベルの主勢力である本部から派遣される暗殺者の事で、暗殺や対人戦に特化した異能を有する者たちのようです。
同じグリムベルに所属する裏切者や、この世界での反抗勢力、グリムベルにとって邪魔なあらゆる存在を消すために、世界中に派遣されているのだとか。
怖い人たちですね。
続いて『離脱者』と言うのは、先に挙げた『処刑人』に狙われるような、グリムベルを裏切って任務を放棄して逃げ出した者の事を指す言葉だそうです。
しかし、やはり僕にはわからない事があります。
「あの、サギットさん。『処刑人』や『離脱者』と言うのがどういう人を指す言葉かと言うのはわかりました。ただ、そもそもの話なんですが……グリムベルって何なんですか?」
そして、おとずれる3度目のデジャヴのとき。
「はっ???」
「は?」
ところで、3度目もデジャヴって言って良いのかな?
「ちょちょ!? ダイン! それ本気で言っているのか!?」
「本気と言うのが僕の知っている本気と言う意味なら、僕は本当にこの世界のグリムベルっていうのが、どういう組織なのかがわからないです」
僕はここにくる前の記憶は無いですが、なぜか知識はほぼ残っています。
それに記憶も曖昧ではあるけど、断片的に少しずつ戻りつつあります。
しかし、そのどの記憶を辿ってみても、それは前に僕のいた世界での話であり、この世界になぜグリムベルという組織があるのか? そもそもそのグリムベルという組織が、僕の記憶に度々出てくるグリムベル孤児院と同じ組織なのかが結びつきません。
その辺りの話をサギットさんにしてみました。
「ちょちょ、ちょっと待て……そういえばお前、さっき第13孤児院とか言ったよな? 俺も混乱しているし、聞き間違いかと思って聞き流しちまっていたが……ダイン、お前……オリジナルの一人か?」
僕のその言葉に目を伏せ、悔しそうに歯をくいしばるサギットさん。
「くっ……やはりグリムベルのものだったんだな。しかし、まさかここまで強いとは……」
そう言いながら、何とか逃れようと後ずさるサギットさんに詰め寄り、まずはその素性を問い詰めます。
「もう逃げられないですよ。サギットさん。あなたはいったい何者なんですか?」
しかし、僕のその質問に少し不思議そうな表情を見せ、
「何者って、わかってるんじゃねぇのか?」
サギットさんを解析して、所持しているのがギフトではなく、3つの異能である事はわかっていますが、さすがに素性まではわかりません。
「あなたが異能を持つグリムベル出身の人だという事しか知りませんよ?」
「あん? どういう事だ? おめぇグリムベルから派遣された処刑人じゃねぇのか?」
んん? 何か話しが噛み合わないぞ?
「処刑人って何ですか? そもそも、フォレンティーヌさんをどうしたんですか?」
「はっ???」
「は?」
側から見れば、僕たちは少し間の抜けた表情を浮かべて見えたかもしれません。
なんだかお互い勘違いがあるようですね。
「もしかして、サギットさんってフォレンティーヌさんの同志とかなのですか?」
僕は最初、フォレンティーヌさんが失踪したこのタイミングに問答無用で戦闘を仕掛けてきたサギットさんが、攫った張本人なのかと疑っていました。
しかし、サギットさんと少し話しただけで、そうでは無いというのがわかりました。
嘘が下手だと言うのはきっと本当なのでしょう。
人の表情を機微を読むのが苦手な僕でもわかるぐらいですから。
そうなると、同じくグリムベルのやり方に不満を持つ同志なのじゃないかと思ったのです。
「ちょちょ、ちょっと待て……本当にダインは処刑人じゃねぇのか? フォレンティーヌを攫ったんじゃねぇのか? いや、でも、お前たしかに異能を使ったよな?」
「異能は使えますよ。記憶は曖昧ですが、グリムベル第13孤児院の出身であるのも間違いないと思います。でも、さっきからサギットさんが言っている『処刑人』とか言うのでは無いと思いますよ?」
「そ、そうか……フォレンティーヌの行方がわからなくなったのがダインと接触した翌日だったから、俺はてっきりお前が本部から派遣された処刑人かと思ったんだが……くそっ! 勘違いで死ぬことになるとはな……」
「え? なんで死ぬことになるんですか?」
僕がそうたずねると、
「はっ???」
「は?」
また二人で少し間抜けな表情を晒してしまいます。
「俺を殺ろさねぇのか?」
「なんで僕がサギットさんを殺す必要が?」
フォレンティーヌさんを攫ったのがサギットさんと言うならまだしも、おそらく同志か何かだとわかったサギットさんを殺す理由なんてあるわけもなく。
「ちょちょ……処刑人じゃなくてもグリムベルのものが裏切者を生かしておけねぇだ……ろ? ……あ!? も、もしかしてダインは『離脱者』なのか!?」
何かどんどん僕の知らない言葉が出てきますね。
「すみませんが、さっきから『処刑人』とか『離脱者』とかわからない言葉が出てくるのですが、先にそちらの意味を教えて貰えませんか?」
たぶんそのあたりを把握した方が話しが早そうですし。
「ほ、ほんとに知らねぇみたいだな……」
「だから、さっきからそう言っているじゃないですか? そもそも僕が有利なこの状況で嘘をつくメリットがないですよ」
その言葉に「た、確かに」と納得の言葉をこぼし、サギットさんはようやく説明をしてくれたのでした。
~
まず、何度も出てきた『処刑人』と言うのは、グリムベルの主勢力である本部から派遣される暗殺者の事で、暗殺や対人戦に特化した異能を有する者たちのようです。
同じグリムベルに所属する裏切者や、この世界での反抗勢力、グリムベルにとって邪魔なあらゆる存在を消すために、世界中に派遣されているのだとか。
怖い人たちですね。
続いて『離脱者』と言うのは、先に挙げた『処刑人』に狙われるような、グリムベルを裏切って任務を放棄して逃げ出した者の事を指す言葉だそうです。
しかし、やはり僕にはわからない事があります。
「あの、サギットさん。『処刑人』や『離脱者』と言うのがどういう人を指す言葉かと言うのはわかりました。ただ、そもそもの話なんですが……グリムベルって何なんですか?」
そして、おとずれる3度目のデジャヴのとき。
「はっ???」
「は?」
ところで、3度目もデジャヴって言って良いのかな?
「ちょちょ!? ダイン! それ本気で言っているのか!?」
「本気と言うのが僕の知っている本気と言う意味なら、僕は本当にこの世界のグリムベルっていうのが、どういう組織なのかがわからないです」
僕はここにくる前の記憶は無いですが、なぜか知識はほぼ残っています。
それに記憶も曖昧ではあるけど、断片的に少しずつ戻りつつあります。
しかし、そのどの記憶を辿ってみても、それは前に僕のいた世界での話であり、この世界になぜグリムベルという組織があるのか? そもそもそのグリムベルという組織が、僕の記憶に度々出てくるグリムベル孤児院と同じ組織なのかが結びつきません。
その辺りの話をサギットさんにしてみました。
「ちょちょ、ちょっと待て……そういえばお前、さっき第13孤児院とか言ったよな? 俺も混乱しているし、聞き間違いかと思って聞き流しちまっていたが……ダイン、お前……オリジナルの一人か?」
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