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【第32話:ヒトノタメ】
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「そうか。ダイン、お主も心当たりはないか……。わざわざ呼び出してすまんかったのぉ」
モンスターウェーブが発生してから、三日が経とうとしていました。
僕はセリアとローズと3人で毎日守護者養成学校に通っているのですが、その間もフォレンティーヌさんからは何の連絡もありません。
あれからフォレンティーヌさんの行方がわからなくなってしまったのです。
ワグナー校長も職員を何度かフォレンティーヌさんが借りている宿に派遣してくれているのですが、やはり未だにその消息がつかめていません。
もちろん僕も何もしなかったわけではありません。
次の日に会う約束をしていたのですし、ここでいきなり音信不通になるのは、あきらかにおかしいです。
だから、僕は僕で黒子に頼んで24時間体制で上空視点からこの街を探して貰っています。
しかし……この城塞都市国家シグルスは、一人の人間を探すには広すぎました。
僕の異能に特定の人物を探すような能力があればまた違ったのでしょうが、未だに発見にはいたっていません。
そんな中、昨日とうとう第2ウェーブが発生しました。
次のウェーブがいつ起こるかまでは『眠り巫女』の神託ではわからないため、第2ウェーブ発生直前の神託に頼る事になります。
今回は僕たち三人が孤児院に帰ってきてから予備警報が鳴ったので、前回よりは慌てずにすみました。
それに今回の第2ウェーブは、規模が第1ウェーブほどではなかったため、黒子にある程度自重させつつ衛星射撃をさせるだけで、何とか乗り越える事が出来ました。
しかし、このような状況では僕はあまり派手に動くわけにもいかず、今後どうするかは悩ましい所です。
「ダイン、どうしたの? 大丈夫?」
校長室の前の廊下を歩きながらこの三日間を振り返っていると、前方の廊下の角から現れたローズに声を掛けられました。
「大丈夫だよ。少し考え事していただけだし」
そう答えてローズに視線を向けると、胸に抱えたたくさんの書類が目に入ります。
「それにしてもたくさんの書類だね。ローズは校長室に?」
「大丈夫なら良いけど……。私の方はちょっとあのエロじ……校長に頼まれていた仕事があったから、今から行かないといけないの。ダインは今から修練場?」
この三日間、担当になって貰う予定だったフォレンティーヌさんと連絡がつかない僕は、午前中の座学と魔法訓練などはセリアと一緒に受けて、午後からは修練場で一人自主練習をしています。
「うん。今日もフォレンティーヌさんからの連絡は入って無いそうだから、またギフトの練習をしようと思ってる」
フォレンティーヌさんの事は心配ですが、僕も多くの異能を一度に手に入れたようなものなので、練習が出来るのはありがたく、時間を無駄にしないように訓練に励んでいました。
ペンダントのお陰で、所持している異能の事は知識としては全て把握しています。
ですが、実際に使ってみない事にはやはり感覚にズレのようなものがありますし、その差や違和感がなくなるよう、何度も実際に異能を使って体に覚えさせるようにしているのです。
「フォレンティーヌさんの事は私も心配だけど、ダインは普通の人より沢山練習しないといけないんだから、さぼらないでしっかり練習するのよ?」
「わかってるよ。いざという時に練習不足で、孤児院のみんなを守れないとかは嫌だからね」
僕がその表情を少し真剣なものに替えてそうこたえると、目線を逸らして頬を朱に染めるローズ。
「そ、そうね。じゃぁ、孤児院のみんなを守れるように頑張らないとね。でも……くれぐれもやり過ぎたりしないように! 昨日も保護結界破っちゃったんでしょ?」
「うっ……気を付けるよ」
昨日、鬼蜘蛛と模擬戦をやっていたら、鉄糸のブレスが保護結界を突き破っちゃったんだよね……。
でも、やり過ぎたのは鬼蜘蛛であって、僕ではないのにな。
「それじゃぁ私はエロ爺……エロ校長……あぁぁ、面倒ね。エロが待ってるからもう行くわ」
えっと……頑張れ、ワグナー校長……。
~
ローズと別れたあと、僕はまっすぐ修練場に向かったのですが、そこには僕を待っている人がいました。
「よう! ダイン! 元気してるか?」
人の好さそうな笑みを浮かべたその偉丈夫の顔と声は僕も覚えています。
「あっ! クラン『オヒトヨシ』のサギットさん?」
「ちょちょ!? お人好しじゃねぇよ!? クラン『ヒトノタメ』だ!」
あれ? 素で間違えてしまいました。
でも、似たようなものですよね?
「ちげぇから!? 今、似たようなもんとか思っただろ!?」
「おぉ~人の心を読むギフトですか?」
「そんなギフトは持ってねぇ!!」
サギットさん凄いですね。
ギフトも無いのに心を読まれてしまいます。
「なんかダインと話しているだけで疲れる気がするぞ……」
どうしてでしょう? 僕にそんな能力はないのですが?
「それよりサギットさん、こんな所にどうしたのですか?」
僕がそう尋ねると、自分の頭をガシガシとかきながら、こちらを一瞥し、
「ダイン……ちょっとお前……、俺と真剣に戦え」
そう言ったのでした。
モンスターウェーブが発生してから、三日が経とうとしていました。
僕はセリアとローズと3人で毎日守護者養成学校に通っているのですが、その間もフォレンティーヌさんからは何の連絡もありません。
あれからフォレンティーヌさんの行方がわからなくなってしまったのです。
ワグナー校長も職員を何度かフォレンティーヌさんが借りている宿に派遣してくれているのですが、やはり未だにその消息がつかめていません。
もちろん僕も何もしなかったわけではありません。
次の日に会う約束をしていたのですし、ここでいきなり音信不通になるのは、あきらかにおかしいです。
だから、僕は僕で黒子に頼んで24時間体制で上空視点からこの街を探して貰っています。
しかし……この城塞都市国家シグルスは、一人の人間を探すには広すぎました。
僕の異能に特定の人物を探すような能力があればまた違ったのでしょうが、未だに発見にはいたっていません。
そんな中、昨日とうとう第2ウェーブが発生しました。
次のウェーブがいつ起こるかまでは『眠り巫女』の神託ではわからないため、第2ウェーブ発生直前の神託に頼る事になります。
今回は僕たち三人が孤児院に帰ってきてから予備警報が鳴ったので、前回よりは慌てずにすみました。
それに今回の第2ウェーブは、規模が第1ウェーブほどではなかったため、黒子にある程度自重させつつ衛星射撃をさせるだけで、何とか乗り越える事が出来ました。
しかし、このような状況では僕はあまり派手に動くわけにもいかず、今後どうするかは悩ましい所です。
「ダイン、どうしたの? 大丈夫?」
校長室の前の廊下を歩きながらこの三日間を振り返っていると、前方の廊下の角から現れたローズに声を掛けられました。
「大丈夫だよ。少し考え事していただけだし」
そう答えてローズに視線を向けると、胸に抱えたたくさんの書類が目に入ります。
「それにしてもたくさんの書類だね。ローズは校長室に?」
「大丈夫なら良いけど……。私の方はちょっとあのエロじ……校長に頼まれていた仕事があったから、今から行かないといけないの。ダインは今から修練場?」
この三日間、担当になって貰う予定だったフォレンティーヌさんと連絡がつかない僕は、午前中の座学と魔法訓練などはセリアと一緒に受けて、午後からは修練場で一人自主練習をしています。
「うん。今日もフォレンティーヌさんからの連絡は入って無いそうだから、またギフトの練習をしようと思ってる」
フォレンティーヌさんの事は心配ですが、僕も多くの異能を一度に手に入れたようなものなので、練習が出来るのはありがたく、時間を無駄にしないように訓練に励んでいました。
ペンダントのお陰で、所持している異能の事は知識としては全て把握しています。
ですが、実際に使ってみない事にはやはり感覚にズレのようなものがありますし、その差や違和感がなくなるよう、何度も実際に異能を使って体に覚えさせるようにしているのです。
「フォレンティーヌさんの事は私も心配だけど、ダインは普通の人より沢山練習しないといけないんだから、さぼらないでしっかり練習するのよ?」
「わかってるよ。いざという時に練習不足で、孤児院のみんなを守れないとかは嫌だからね」
僕がその表情を少し真剣なものに替えてそうこたえると、目線を逸らして頬を朱に染めるローズ。
「そ、そうね。じゃぁ、孤児院のみんなを守れるように頑張らないとね。でも……くれぐれもやり過ぎたりしないように! 昨日も保護結界破っちゃったんでしょ?」
「うっ……気を付けるよ」
昨日、鬼蜘蛛と模擬戦をやっていたら、鉄糸のブレスが保護結界を突き破っちゃったんだよね……。
でも、やり過ぎたのは鬼蜘蛛であって、僕ではないのにな。
「それじゃぁ私はエロ爺……エロ校長……あぁぁ、面倒ね。エロが待ってるからもう行くわ」
えっと……頑張れ、ワグナー校長……。
~
ローズと別れたあと、僕はまっすぐ修練場に向かったのですが、そこには僕を待っている人がいました。
「よう! ダイン! 元気してるか?」
人の好さそうな笑みを浮かべたその偉丈夫の顔と声は僕も覚えています。
「あっ! クラン『オヒトヨシ』のサギットさん?」
「ちょちょ!? お人好しじゃねぇよ!? クラン『ヒトノタメ』だ!」
あれ? 素で間違えてしまいました。
でも、似たようなものですよね?
「ちげぇから!? 今、似たようなもんとか思っただろ!?」
「おぉ~人の心を読むギフトですか?」
「そんなギフトは持ってねぇ!!」
サギットさん凄いですね。
ギフトも無いのに心を読まれてしまいます。
「なんかダインと話しているだけで疲れる気がするぞ……」
どうしてでしょう? 僕にそんな能力はないのですが?
「それよりサギットさん、こんな所にどうしたのですか?」
僕がそう尋ねると、自分の頭をガシガシとかきながら、こちらを一瞥し、
「ダイン……ちょっとお前……、俺と真剣に戦え」
そう言ったのでした。
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