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【第26話:妖精の囁き】
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「うおぉぉ!!」
雄たけびをあげて先頭を走っていたサギットさんは、駆ける勢いそのままに魔物の群れに突っ込んでいきました。
鬼蜘蛛無双によって、遠巻きに鬼蜘蛛を囲むような魔物の円が出来上がっているのですが、その一角を崩しにかかります。
「どりゃぁ!!」
おぉ!? サギットさん、まさかの右ストレートです!!
そう言えばサギットさんだけ何も武器持っていませんでしたね。
あれでげんこつ喰らったら痛そうです。
マリアンナさんが『鉄人』のギフト持っていなくて良かったね。セリア。
「サギットに続けぇ!!」
おっと、僕も見てるだけって訳にはいきません。
右手に魔銃、左手に剣を持って斬りかかり……違いました、殴りかかります!
まずは近くにうじゃうじゃいるヘビィラビットの群れからですかね。
ヘヴィラビットは小型の兎の魔物ですが、普通の兎と比べるとかなり巨大で、その体長は1m前後あります。
耳は短めで遠目に見れば可愛く見えなくもないですが、その脚力は凄まじく、魔物の例にもれず肉食なので鋭い牙を持っており、家畜の牛や羊が蹴り殺される被害が多く出ていると聞きました。
牛が蹴り殺されるほどなので、その力が普通の人に振るわれればで命は無いでしょう。
まぁ、サギットさんは蹴られてもものともせずに鉄拳制裁を続けていますが……。
「悪いけど、刈り取るよ」
僕も負けじと殴り倒していきます。
跳ねるヘヴィラビットは耳や目に魔銃を撃ち込んで、その隙に接近して剣で撲殺です。
それはもうボコスカと。
もう少し忌避感があるかと思ったのですが、あまり感情は動きませんでした。
「これで7匹目っと」
「ダインお前何者なんだ?」
周りにいたヘヴィラビットを倒し切ったタイミングで、サギットさんが話しかけてきました。
「何者って、ただの守護者養成学校の生徒ですが?」
「だだの見習いにこんな事出来ねぇよ!? ギフトによって身体能力が凄いのはまだわかるが……なんなんだその身のこなしは! どこでそんな洗練された動きを身に着けたんだ?」
あれ? 出来ないのか。見習いの普通を今度図書館で調べないといけないですね。
「ん~? 僕は1年以上前の記憶が無いのでわからないですが……」
「あぁ、すまねぇ。そんな事情があんのか」
何か気を遣わせてしまったのかな? 少しサギットさんの表情が曇ります。
「いえいえ。全く気にしてないので大丈夫ですよ。それと戦闘技術は……たぶん孤児院で?」
「いやいや!? どこにそんな高度な戦闘技術叩き込む孤児院があんだよ!?」
ん~? たぶん本当に孤児院で身に着けたんだと思うんですが?
「サギットさん。そんな事より、こっち優勢に戦えてますし、僕はちょっとフォレンティーヌさんのとこに行ってきますね」
周りの守護者たちは、無双する鬼蜘蛛を上手く利用して立ち回る事で、優位に戦いを進めています。
これなら僕がここを離れても問題ないでしょう。
「なっ!? さすがにベヒモスは危険すぎる! それはオレが行くからお前はここでいいだろ!?」
僕の身を案じてくれているようですが、やはりフォレンティーヌさんを助けに行くのは僕の方が良いでしょう。
かなり苦戦しているようで、ここからでも既に肩で息をしているのがわかりますし。
「サギットさん。フォレンティーヌさんは僕の担当教官(予定だけど)なので、僕に行かせてください」
いよいよこれから教えて貰うって時に、怪我をされても困りますからね。
「た、担当教官?? あの樹氷がよく引き受けたな? いや、そうじゃなくて、だからと言ってベヒモスの相手はやはり俺が……って、あれ? ダイン??」
僕は既にベヒモスに向けて駆け出していました。
また、それと同時に『次元遮断』と『妖精の囁き』の異能も発動します。
次元遮断は、フォレンティーヌさんとベヒモスの間を遮るように展開して障壁代わりに。
そして妖精の囁きは……、
『すみません。もうフォレンティーヌさんが危なそうなので先に向かわせて貰いました』
サギットさんとフォレンティーヌさんに声を届けるために。
「ちょちょ!? なんだ!? この声は!?」
『えっと……これは僕のギフトです。それより、僕が向かった方が良いと思うんです。そっちには鬼蜘蛛を残していきますので、後はお任せしますね』
そしてサギットさんに納得してもらうために。
この『妖精の囁き』には二つの能力があります。
一つ目が対象に声を届ける能力。
これは相互でも、一方向でも使えるので、普通に遠距離での意思疎通にも使えますし、相手の声だけを僕に届ける事で諜報活動にも使えます。
そうそう。あとは嫌がらせで、ずっと僕の声を届け続けるとかも出来ますね。うん。
そして二つ目が幻惑の能力です。
完全に相手の意志をコントロールする事は出来ませんが、意識を誘導する事や、僕の話す言葉を何となく信用してしまうようになる効果です。
ただこの辺りは、強固な意志や思考を持つ人や、精神力の強い人にはほとんど通じないのですが……。
「確かに! ダインが向かった方が良いよな! 俺はこっちでもうひと暴れするぜ!」
やっぱりサギットさんなら、あっさり通じると思ってました。良い意味でですよ?
とりあえずサギットさんはこれで良いとして、フォレンティーヌさんにも早く説明しないといけません。
僕の次元遮断に驚いて焦っていますからね。
『フォレンティーヌさん、落ち着いて下さい。障壁、僕の異能なので』
「え!? 異能って……まさか、ダインなの!?」
「はい。そのダインです」
そう言って、フォレンティーヌさんのすぐ後ろから話しかけたのでした。
雄たけびをあげて先頭を走っていたサギットさんは、駆ける勢いそのままに魔物の群れに突っ込んでいきました。
鬼蜘蛛無双によって、遠巻きに鬼蜘蛛を囲むような魔物の円が出来上がっているのですが、その一角を崩しにかかります。
「どりゃぁ!!」
おぉ!? サギットさん、まさかの右ストレートです!!
そう言えばサギットさんだけ何も武器持っていませんでしたね。
あれでげんこつ喰らったら痛そうです。
マリアンナさんが『鉄人』のギフト持っていなくて良かったね。セリア。
「サギットに続けぇ!!」
おっと、僕も見てるだけって訳にはいきません。
右手に魔銃、左手に剣を持って斬りかかり……違いました、殴りかかります!
まずは近くにうじゃうじゃいるヘビィラビットの群れからですかね。
ヘヴィラビットは小型の兎の魔物ですが、普通の兎と比べるとかなり巨大で、その体長は1m前後あります。
耳は短めで遠目に見れば可愛く見えなくもないですが、その脚力は凄まじく、魔物の例にもれず肉食なので鋭い牙を持っており、家畜の牛や羊が蹴り殺される被害が多く出ていると聞きました。
牛が蹴り殺されるほどなので、その力が普通の人に振るわれればで命は無いでしょう。
まぁ、サギットさんは蹴られてもものともせずに鉄拳制裁を続けていますが……。
「悪いけど、刈り取るよ」
僕も負けじと殴り倒していきます。
跳ねるヘヴィラビットは耳や目に魔銃を撃ち込んで、その隙に接近して剣で撲殺です。
それはもうボコスカと。
もう少し忌避感があるかと思ったのですが、あまり感情は動きませんでした。
「これで7匹目っと」
「ダインお前何者なんだ?」
周りにいたヘヴィラビットを倒し切ったタイミングで、サギットさんが話しかけてきました。
「何者って、ただの守護者養成学校の生徒ですが?」
「だだの見習いにこんな事出来ねぇよ!? ギフトによって身体能力が凄いのはまだわかるが……なんなんだその身のこなしは! どこでそんな洗練された動きを身に着けたんだ?」
あれ? 出来ないのか。見習いの普通を今度図書館で調べないといけないですね。
「ん~? 僕は1年以上前の記憶が無いのでわからないですが……」
「あぁ、すまねぇ。そんな事情があんのか」
何か気を遣わせてしまったのかな? 少しサギットさんの表情が曇ります。
「いえいえ。全く気にしてないので大丈夫ですよ。それと戦闘技術は……たぶん孤児院で?」
「いやいや!? どこにそんな高度な戦闘技術叩き込む孤児院があんだよ!?」
ん~? たぶん本当に孤児院で身に着けたんだと思うんですが?
「サギットさん。そんな事より、こっち優勢に戦えてますし、僕はちょっとフォレンティーヌさんのとこに行ってきますね」
周りの守護者たちは、無双する鬼蜘蛛を上手く利用して立ち回る事で、優位に戦いを進めています。
これなら僕がここを離れても問題ないでしょう。
「なっ!? さすがにベヒモスは危険すぎる! それはオレが行くからお前はここでいいだろ!?」
僕の身を案じてくれているようですが、やはりフォレンティーヌさんを助けに行くのは僕の方が良いでしょう。
かなり苦戦しているようで、ここからでも既に肩で息をしているのがわかりますし。
「サギットさん。フォレンティーヌさんは僕の担当教官(予定だけど)なので、僕に行かせてください」
いよいよこれから教えて貰うって時に、怪我をされても困りますからね。
「た、担当教官?? あの樹氷がよく引き受けたな? いや、そうじゃなくて、だからと言ってベヒモスの相手はやはり俺が……って、あれ? ダイン??」
僕は既にベヒモスに向けて駆け出していました。
また、それと同時に『次元遮断』と『妖精の囁き』の異能も発動します。
次元遮断は、フォレンティーヌさんとベヒモスの間を遮るように展開して障壁代わりに。
そして妖精の囁きは……、
『すみません。もうフォレンティーヌさんが危なそうなので先に向かわせて貰いました』
サギットさんとフォレンティーヌさんに声を届けるために。
「ちょちょ!? なんだ!? この声は!?」
『えっと……これは僕のギフトです。それより、僕が向かった方が良いと思うんです。そっちには鬼蜘蛛を残していきますので、後はお任せしますね』
そしてサギットさんに納得してもらうために。
この『妖精の囁き』には二つの能力があります。
一つ目が対象に声を届ける能力。
これは相互でも、一方向でも使えるので、普通に遠距離での意思疎通にも使えますし、相手の声だけを僕に届ける事で諜報活動にも使えます。
そうそう。あとは嫌がらせで、ずっと僕の声を届け続けるとかも出来ますね。うん。
そして二つ目が幻惑の能力です。
完全に相手の意志をコントロールする事は出来ませんが、意識を誘導する事や、僕の話す言葉を何となく信用してしまうようになる効果です。
ただこの辺りは、強固な意志や思考を持つ人や、精神力の強い人にはほとんど通じないのですが……。
「確かに! ダインが向かった方が良いよな! 俺はこっちでもうひと暴れするぜ!」
やっぱりサギットさんなら、あっさり通じると思ってました。良い意味でですよ?
とりあえずサギットさんはこれで良いとして、フォレンティーヌさんにも早く説明しないといけません。
僕の次元遮断に驚いて焦っていますからね。
『フォレンティーヌさん、落ち着いて下さい。障壁、僕の異能なので』
「え!? 異能って……まさか、ダインなの!?」
「はい。そのダインです」
そう言って、フォレンティーヌさんのすぐ後ろから話しかけたのでした。
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