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【第25話:鉄人】
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サギットさんって確かさっき「ヘルハウンドにやられた!」とか言われていた人ですよね?
「サギットさん、ヘルハウンドから逃げ切れたんですね!」
だから「良かったですね」って伝えたんですが……。
「そうじゃねぇよ!? って、その通りなんだが、運よく逃げ切れたんだが……でも、そうじゃねぇよ!?」
うん。言っている事が支離滅裂で良くわからないですね。
「ちょちょ!? そんな憐れむような目で見るんじゃねぇよ!? それより、こいつの目を撃ち抜いたのは坊主なのか!?」
「はい。そうですけど……? あ、とりあえず止めを刺しておきますね」
そう言って今度は剣を抜くと、魔力を込めて後頭部に鈍器の一撃を加えて止めを刺しておきます。
「マジで鈍器として……」
あれ? 何故か周りにいた守護者の人たちがざわつきはじめました。
「俺は夢見てんのか……」
「おいおい、嘘だろ?」
「いや、だってお前、今のこの目で見てただろ?」
そんな中、サギットさんは頭をくしゃくしゃと掻きながら僕に近づいてくると、
「見た目で判断して悪かったな。坊主は名前なんてぇんだ? 魔物退治を協力して貰うのに名前ぐらい教えてくれよ」
そう言うと、今度は僕の頭をわしゃわしゃし始めました。
よくわからないですけど、何か一緒に戦うのを認めて貰えたようですね。
「僕はダインです。守護者養成学校の生徒ですが、よろしくお願いします」
でも、そろそろ頭をわしゃわしゃするのはやめて欲しいです……。
「ダインか。俺の名前はもうわかってそうだが……俺の名は『サギット』だ。これでもシグルス第18席なんだぜ」
シグルスで18番目に強い守護者というのはちょっと意外ですね。
でも、優男風の青い髪や人の良さそうな顔とは違い、その佇まいは中々強者の風格が出ています。
ちなみに、ようやく頭から手を放してくれました。
もう髪の毛がくちゃくちゃですが……。
「とりあえず樹氷の嬢ちゃんが木を置いてってくれたから、ひとまずここを防衛線として魔物を迎え撃つ! ダインも協力してくれ!」
「はい。もちろんです。ただ……鬼蜘蛛がもうあそこで戦闘中なんですけど……」
僕は若干呆れながらも鬼蜘蛛の暴れている所を指さします。
「なんだありゃ……」
頬を引き攣らせながらサギットさんが何か呟いていますね。
鬼蜘蛛は、僕がサギットさんと話してる間に単騎で魔物の群れに突っ込んでいったようで、魔物を相手に無双状態です。
たしかに「前方の魔物を刈り取るんだ!」とか言って命令は出しましたが……何かはしゃいでないですか?
嬉々として戦闘を楽しんで大暴れしているように見えるのですが……。
もしかして……式神って自我を持っているんでしょうか?
「と、とりあえず、防衛線をもう少し上げた方が良くないですか?」
もっと前に出ないと、ここで待っていても魔物がやってきそうにありません。
脇を抜けてこちらに向かおうとした魔物も、鉄の網で絡めとってしまっています……。
「た、確かに、ここを防衛線にしても魔物がたどり着けそうにねぇな……」
そんな風にサギットさんが前方の状況を確認していると、痺れをきらした守護者の人たちが勢いづいていました。
この現場のリーダー格であるサギットさんに、前に出ようと詰め寄ってきます。
「おい! サギット! 前に出ねぇのか!」
「あんなつえぇゴーレムいるなら、早く前に出て樹氷の援護してやろうぜ! 早く援護しねぇと下手したら死んじまうぞ!?」
あれ? フォレンティーヌさん一人で倒せるのかと思ってたけど、そうでもないのかな?
「そうよ! いくら七枚盾って言ってもベヒモス一人って言うのは荷が重すぎるわ!」
「フォレンティーヌさんにもしもの事があったらどうするんですか! 早くお姉さまの援護にいきましょうよ!!」
この世界での強さはギフトや魔法の才能などの方が影響が大きいので、守護者の中には女性も多くいます。
ただ、フォレンティーヌさんのように七枚盾に入るほどの女性は中々いないので、男性だけでなく女性ファンも多いようですね。
黄色い声で「早くお姉さまの援護に!」と声が続きます。
「わかった! このまま完全に城壁の外に押し返すぞ! 防御系のギフト持ち! 前に出ろ!」
僕も防御系の異能があるので前に出ましょうかね。
既に整列している守護者10人ほどと一緒に前に出て並びます。
「……ダイン? お前防御系のギフトも持ってやがるのか?」
「はい。僕の事はお構いなく」
「わ、わかった。お前が危ない時は俺が責任もって守るから、一緒に突っ込むぞ!」
「サギット! な~にカッコつけてんだよ!」
「うっせーな! こんな小さい子が命を懸けてんだぞ! 大人が守ってやらねぇでどうする!」
サギットさんのこういう態度は、確かツンデレとか言うんでしたっけ?
前にセリアに貸して貰った本に書いていたのを思い出しました。
「と、とにかく行くぞ!! 『鉄人』!」
横目にちらりとサギットさんを見ると、皮膚がみるみる鉄のような色を帯びていきます。
どうも身体を鉄と化すことができるギフトのようですね。
「おぅさ! 『水の盾』!」
「おっしゃぁ! 『身体硬化』!」
「『風の障壁』! 準備OKよ!」
みんな次々と防御系のギフトを発動して準備完了ですね。
あ、そう言えば異能と違ってギフトは口に出して発動するんでした。
「じゃぁ僕も……『気功法衣』! っと」
口だけで何もしてないですけど、フォレンティーヌさんも毎回口にしてましたし真似てみました。
「サギットさん! 我々は後方から援護します! あのベヒモスをなんとかお願いします!」
衛兵は第2ライフル小隊という隊がここにはいるようですが、そちらは命令系統が違うのでここから援護する事を決めたようですね。
「おぉ! 任せておけ!」
こうして僕たちは、魔物の群れがひしめき、ベヒモスが待ち構える本当の戦いの場へと向かったのでした。
「サギットさん、ヘルハウンドから逃げ切れたんですね!」
だから「良かったですね」って伝えたんですが……。
「そうじゃねぇよ!? って、その通りなんだが、運よく逃げ切れたんだが……でも、そうじゃねぇよ!?」
うん。言っている事が支離滅裂で良くわからないですね。
「ちょちょ!? そんな憐れむような目で見るんじゃねぇよ!? それより、こいつの目を撃ち抜いたのは坊主なのか!?」
「はい。そうですけど……? あ、とりあえず止めを刺しておきますね」
そう言って今度は剣を抜くと、魔力を込めて後頭部に鈍器の一撃を加えて止めを刺しておきます。
「マジで鈍器として……」
あれ? 何故か周りにいた守護者の人たちがざわつきはじめました。
「俺は夢見てんのか……」
「おいおい、嘘だろ?」
「いや、だってお前、今のこの目で見てただろ?」
そんな中、サギットさんは頭をくしゃくしゃと掻きながら僕に近づいてくると、
「見た目で判断して悪かったな。坊主は名前なんてぇんだ? 魔物退治を協力して貰うのに名前ぐらい教えてくれよ」
そう言うと、今度は僕の頭をわしゃわしゃし始めました。
よくわからないですけど、何か一緒に戦うのを認めて貰えたようですね。
「僕はダインです。守護者養成学校の生徒ですが、よろしくお願いします」
でも、そろそろ頭をわしゃわしゃするのはやめて欲しいです……。
「ダインか。俺の名前はもうわかってそうだが……俺の名は『サギット』だ。これでもシグルス第18席なんだぜ」
シグルスで18番目に強い守護者というのはちょっと意外ですね。
でも、優男風の青い髪や人の良さそうな顔とは違い、その佇まいは中々強者の風格が出ています。
ちなみに、ようやく頭から手を放してくれました。
もう髪の毛がくちゃくちゃですが……。
「とりあえず樹氷の嬢ちゃんが木を置いてってくれたから、ひとまずここを防衛線として魔物を迎え撃つ! ダインも協力してくれ!」
「はい。もちろんです。ただ……鬼蜘蛛がもうあそこで戦闘中なんですけど……」
僕は若干呆れながらも鬼蜘蛛の暴れている所を指さします。
「なんだありゃ……」
頬を引き攣らせながらサギットさんが何か呟いていますね。
鬼蜘蛛は、僕がサギットさんと話してる間に単騎で魔物の群れに突っ込んでいったようで、魔物を相手に無双状態です。
たしかに「前方の魔物を刈り取るんだ!」とか言って命令は出しましたが……何かはしゃいでないですか?
嬉々として戦闘を楽しんで大暴れしているように見えるのですが……。
もしかして……式神って自我を持っているんでしょうか?
「と、とりあえず、防衛線をもう少し上げた方が良くないですか?」
もっと前に出ないと、ここで待っていても魔物がやってきそうにありません。
脇を抜けてこちらに向かおうとした魔物も、鉄の網で絡めとってしまっています……。
「た、確かに、ここを防衛線にしても魔物がたどり着けそうにねぇな……」
そんな風にサギットさんが前方の状況を確認していると、痺れをきらした守護者の人たちが勢いづいていました。
この現場のリーダー格であるサギットさんに、前に出ようと詰め寄ってきます。
「おい! サギット! 前に出ねぇのか!」
「あんなつえぇゴーレムいるなら、早く前に出て樹氷の援護してやろうぜ! 早く援護しねぇと下手したら死んじまうぞ!?」
あれ? フォレンティーヌさん一人で倒せるのかと思ってたけど、そうでもないのかな?
「そうよ! いくら七枚盾って言ってもベヒモス一人って言うのは荷が重すぎるわ!」
「フォレンティーヌさんにもしもの事があったらどうするんですか! 早くお姉さまの援護にいきましょうよ!!」
この世界での強さはギフトや魔法の才能などの方が影響が大きいので、守護者の中には女性も多くいます。
ただ、フォレンティーヌさんのように七枚盾に入るほどの女性は中々いないので、男性だけでなく女性ファンも多いようですね。
黄色い声で「早くお姉さまの援護に!」と声が続きます。
「わかった! このまま完全に城壁の外に押し返すぞ! 防御系のギフト持ち! 前に出ろ!」
僕も防御系の異能があるので前に出ましょうかね。
既に整列している守護者10人ほどと一緒に前に出て並びます。
「……ダイン? お前防御系のギフトも持ってやがるのか?」
「はい。僕の事はお構いなく」
「わ、わかった。お前が危ない時は俺が責任もって守るから、一緒に突っ込むぞ!」
「サギット! な~にカッコつけてんだよ!」
「うっせーな! こんな小さい子が命を懸けてんだぞ! 大人が守ってやらねぇでどうする!」
サギットさんのこういう態度は、確かツンデレとか言うんでしたっけ?
前にセリアに貸して貰った本に書いていたのを思い出しました。
「と、とにかく行くぞ!! 『鉄人』!」
横目にちらりとサギットさんを見ると、皮膚がみるみる鉄のような色を帯びていきます。
どうも身体を鉄と化すことができるギフトのようですね。
「おぅさ! 『水の盾』!」
「おっしゃぁ! 『身体硬化』!」
「『風の障壁』! 準備OKよ!」
みんな次々と防御系のギフトを発動して準備完了ですね。
あ、そう言えば異能と違ってギフトは口に出して発動するんでした。
「じゃぁ僕も……『気功法衣』! っと」
口だけで何もしてないですけど、フォレンティーヌさんも毎回口にしてましたし真似てみました。
「サギットさん! 我々は後方から援護します! あのベヒモスをなんとかお願いします!」
衛兵は第2ライフル小隊という隊がここにはいるようですが、そちらは命令系統が違うのでここから援護する事を決めたようですね。
「おぉ! 任せておけ!」
こうして僕たちは、魔物の群れがひしめき、ベヒモスが待ち構える本当の戦いの場へと向かったのでした。
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