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【第22話:刈り取るよ】
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「きゃぁ!? ダイン! あれ! あれ見て!!」
近くで聞こえた魔物の咆哮に気配を探ろうとした時、僕の横にいたセリアが何かを指さして大声をあげます。
その視線の先にいたのは……、
「アーマーボア!?」
鎧のような外皮に覆われた大型の猪の魔物であるアーマーボアでした。
本によると大きいものは3mを超えると書いてありましたが、今まさにその大きさの個体が遠くの通りを悠然と歩いているのです。
しかも、何匹も……。
「じょ、城壁が破られたの!?」
信じられないという表情を浮かべて蒼ざめるローズ。
さすがに強がってどうこうなる状況ではなく、身体を小刻みに震わせ、立っているのがやっとの状態のようです。
「お、お姉ちゃん……腰が抜けちゃった……」
「どどど、どうしよう。えっとえっと……」
ようやく皆を落ち着かせる事が出来たのに、ちびっこ二人もあまりの怖さに抱き合うようにして座り込んでしまっています。
ここは男の僕がなんとかしないといけないですね。本にそう書いてたし。
「ローズ、セリア、それからソニアにリンス。大丈夫だから。僕が何とかするから落ち着いて」
皆の瞳を順番に見つめ、僕は一人一人に頷きを返しながら、皆に言い聞かせるように話しかけます。
「ちょっとこれから、僕の方からうって出るよ。この近所の人たちにはお世話になっているし、助けにいかないといけないしね」
「そ、そんなぁ!?」
セリアが泣きそうな顔で声をあげますが、そっと頭を撫でで落ち着かせます。
ちょっと背伸びしたのは内緒です……。
「大丈夫。僕はどうやらかなり強いみたいだから。それから僕が出たあと、孤児院はさっきの『次元遮断』で隔離しちゃうから、みんなは家で待ってて。この中なら絶対安全だから安心して」
そう説明している間にも、あちこちから魔物の声があがっているのがわかります。
僕がその事に少し焦りを覚えていると、ローズが僕からセリアをひきとって、
「ダイン……あなたが規格外に強いのはわかっているわ。というか、わからされたわ。でも、それでも心配なものは心配なの。私もセリアも信じて待っているから、だから必ず無事に帰ってきてね」
そう言って両腕でセリアを包み込むと、そっと抱きしめます。
「うん。魔物は任せて。だからみんなは、ここで僕の帰りを待っていて欲しい。僕の帰るべき場所は孤児院だから」
「「うん!」」
その言葉に、みんなが無理やり笑顔を作って元気な返事を聞かせてくれました。
「それじゃぁ行ってくる!」
最後にそう告げると、僕は身体強化と気功法衣を強化して駆け出したのでした。
~
「少し大きめに隔離した方がいいかな? 『次元遮断』」
孤児院の門を抜けると、僕はすぐに孤児院全体を守護結界ごと隔離しました。
そして、既に起動してあった『衛星射撃』の第二の視界を使って周りを確認します。
「うっ……凄い数の魔物が入り込んでるよ……」
とりあえずは小型な魔物で位置的に撃ち抜いて周りに被害のなさそうな奴から倒していきます。
最小出力で倒せそうな小型の魔物を見つけては片っ端からロックオンし、
「1、2、3、4…………17、18匹、ロックオン!……撃て!」
一気に撃ち抜きました。
上空から18本の細い閃光が迸り、狙いたがわず小型の魔物の頭を撃ちぬく事を確認。成功ですね。
「あっ……最小出力で撃ったのに……」
それでも石畳などに穴が開いてしまったようです。
どうしよう……べ、弁償させられたりしないよね……?
「やっぱり面倒がらずに一匹ずつ倒していこう……」
そもそも、さっき見つけたアーマーボアのような大きくて頑丈な魔物は、最大出力でしか倒せないでしょうし、そうなると周りの建物にも大きな被害が出る事が目に見えています。
僕は第二の視界で残りの魔物の場所を確認して、まずは目当てのアーマーボアの群れを倒す事にしました。
場所は結構近かったのですが、通りを挟んだ向こう側のようです。
「おじさん、勝手に登ってごめんなさい」
この家に住んでるおじさんの顔を思い浮かべて謝りながら、屋根に飛び乗り、屋根伝いに直線でアーマーボアの元まで駆けていきます。
「ん~? お? いたいた……って、まずい!? 『次元遮断』!」
ようやく屋根の上から見えたアーマーボアですが、今まさに僕の大好きな駄菓子屋さんの家を破壊しようとしているではないですか。
これは絶対に許せません。
次元遮断でその突進を止めると、屋根から飛び降り、頭をぶつけてふらつくアーマーボアに駆け寄ります。
「悪いけど、刈り取るよ」
そう言って訓練用の剣をひき抜くと、魔力を込めて強度をあげて無理やり頭を斬りかかったのですが……。
「かった~い!?」
カッコよく斬り倒そうと思ったのに、カッコ悪いですね……。
訓練用の剣は間違って人を斬ってしまわないように、刃先が潰されているだけでなく、保護結界の応用で斬れないような効果が施されているのを忘れていました。
それでも頭をぶつけてふらついているところを、身体強化された僕に殴られる形になったので、その衝撃で横倒しにする事は成功したようです。
ただ……、
「あぁぁ!? 剣に罅がはいっちゃった!?」
握った剣に少し違和感を感じて視線を向けると、さすがに訓練用の剣でアーマーボアに斬りかかるのは無理があったようで、罅が入ってしまっていました。
「うん。これで良し!」
もちろんすかさず『時の箱舟』で無かった事にしましたが。
「でも、この剣じゃさすがに倒すのは骨が折れそうだな……」
折れても直せるのは安心ですが、こんな巨大な魔物を撲殺するのはさすがに面倒です。
どうやって倒すか迷っていると、仲間意識でもあるのか、二匹目、三匹目のアーマーボアが集まってきました。面倒ですね。
なるべく街に被害がでないように倒すにはどうすれば良いか迷いましたが、あの映像で見た異能で対応する事にしました。
「『式神奏者』! 起動せよ! 擬人機甲式『20式鬼蜘蛛機甲』!」
僕の前に光の旋風が巻き起こると、光は一瞬で収束し、その場には巨大な鋼鉄の蜘蛛の姿がありました。
あの映像で見た『20式鬼蜘蛛機甲』です。
「ふぅ。上手くいってよかった。それじゃぁ鬼蜘蛛! アーマーボアを刈り取るよ!」
近くで聞こえた魔物の咆哮に気配を探ろうとした時、僕の横にいたセリアが何かを指さして大声をあげます。
その視線の先にいたのは……、
「アーマーボア!?」
鎧のような外皮に覆われた大型の猪の魔物であるアーマーボアでした。
本によると大きいものは3mを超えると書いてありましたが、今まさにその大きさの個体が遠くの通りを悠然と歩いているのです。
しかも、何匹も……。
「じょ、城壁が破られたの!?」
信じられないという表情を浮かべて蒼ざめるローズ。
さすがに強がってどうこうなる状況ではなく、身体を小刻みに震わせ、立っているのがやっとの状態のようです。
「お、お姉ちゃん……腰が抜けちゃった……」
「どどど、どうしよう。えっとえっと……」
ようやく皆を落ち着かせる事が出来たのに、ちびっこ二人もあまりの怖さに抱き合うようにして座り込んでしまっています。
ここは男の僕がなんとかしないといけないですね。本にそう書いてたし。
「ローズ、セリア、それからソニアにリンス。大丈夫だから。僕が何とかするから落ち着いて」
皆の瞳を順番に見つめ、僕は一人一人に頷きを返しながら、皆に言い聞かせるように話しかけます。
「ちょっとこれから、僕の方からうって出るよ。この近所の人たちにはお世話になっているし、助けにいかないといけないしね」
「そ、そんなぁ!?」
セリアが泣きそうな顔で声をあげますが、そっと頭を撫でで落ち着かせます。
ちょっと背伸びしたのは内緒です……。
「大丈夫。僕はどうやらかなり強いみたいだから。それから僕が出たあと、孤児院はさっきの『次元遮断』で隔離しちゃうから、みんなは家で待ってて。この中なら絶対安全だから安心して」
そう説明している間にも、あちこちから魔物の声があがっているのがわかります。
僕がその事に少し焦りを覚えていると、ローズが僕からセリアをひきとって、
「ダイン……あなたが規格外に強いのはわかっているわ。というか、わからされたわ。でも、それでも心配なものは心配なの。私もセリアも信じて待っているから、だから必ず無事に帰ってきてね」
そう言って両腕でセリアを包み込むと、そっと抱きしめます。
「うん。魔物は任せて。だからみんなは、ここで僕の帰りを待っていて欲しい。僕の帰るべき場所は孤児院だから」
「「うん!」」
その言葉に、みんなが無理やり笑顔を作って元気な返事を聞かせてくれました。
「それじゃぁ行ってくる!」
最後にそう告げると、僕は身体強化と気功法衣を強化して駆け出したのでした。
~
「少し大きめに隔離した方がいいかな? 『次元遮断』」
孤児院の門を抜けると、僕はすぐに孤児院全体を守護結界ごと隔離しました。
そして、既に起動してあった『衛星射撃』の第二の視界を使って周りを確認します。
「うっ……凄い数の魔物が入り込んでるよ……」
とりあえずは小型な魔物で位置的に撃ち抜いて周りに被害のなさそうな奴から倒していきます。
最小出力で倒せそうな小型の魔物を見つけては片っ端からロックオンし、
「1、2、3、4…………17、18匹、ロックオン!……撃て!」
一気に撃ち抜きました。
上空から18本の細い閃光が迸り、狙いたがわず小型の魔物の頭を撃ちぬく事を確認。成功ですね。
「あっ……最小出力で撃ったのに……」
それでも石畳などに穴が開いてしまったようです。
どうしよう……べ、弁償させられたりしないよね……?
「やっぱり面倒がらずに一匹ずつ倒していこう……」
そもそも、さっき見つけたアーマーボアのような大きくて頑丈な魔物は、最大出力でしか倒せないでしょうし、そうなると周りの建物にも大きな被害が出る事が目に見えています。
僕は第二の視界で残りの魔物の場所を確認して、まずは目当てのアーマーボアの群れを倒す事にしました。
場所は結構近かったのですが、通りを挟んだ向こう側のようです。
「おじさん、勝手に登ってごめんなさい」
この家に住んでるおじさんの顔を思い浮かべて謝りながら、屋根に飛び乗り、屋根伝いに直線でアーマーボアの元まで駆けていきます。
「ん~? お? いたいた……って、まずい!? 『次元遮断』!」
ようやく屋根の上から見えたアーマーボアですが、今まさに僕の大好きな駄菓子屋さんの家を破壊しようとしているではないですか。
これは絶対に許せません。
次元遮断でその突進を止めると、屋根から飛び降り、頭をぶつけてふらつくアーマーボアに駆け寄ります。
「悪いけど、刈り取るよ」
そう言って訓練用の剣をひき抜くと、魔力を込めて強度をあげて無理やり頭を斬りかかったのですが……。
「かった~い!?」
カッコよく斬り倒そうと思ったのに、カッコ悪いですね……。
訓練用の剣は間違って人を斬ってしまわないように、刃先が潰されているだけでなく、保護結界の応用で斬れないような効果が施されているのを忘れていました。
それでも頭をぶつけてふらついているところを、身体強化された僕に殴られる形になったので、その衝撃で横倒しにする事は成功したようです。
ただ……、
「あぁぁ!? 剣に罅がはいっちゃった!?」
握った剣に少し違和感を感じて視線を向けると、さすがに訓練用の剣でアーマーボアに斬りかかるのは無理があったようで、罅が入ってしまっていました。
「うん。これで良し!」
もちろんすかさず『時の箱舟』で無かった事にしましたが。
「でも、この剣じゃさすがに倒すのは骨が折れそうだな……」
折れても直せるのは安心ですが、こんな巨大な魔物を撲殺するのはさすがに面倒です。
どうやって倒すか迷っていると、仲間意識でもあるのか、二匹目、三匹目のアーマーボアが集まってきました。面倒ですね。
なるべく街に被害がでないように倒すにはどうすれば良いか迷いましたが、あの映像で見た異能で対応する事にしました。
「『式神奏者』! 起動せよ! 擬人機甲式『20式鬼蜘蛛機甲』!」
僕の前に光の旋風が巻き起こると、光は一瞬で収束し、その場には巨大な鋼鉄の蜘蛛の姿がありました。
あの映像で見た『20式鬼蜘蛛機甲』です。
「ふぅ。上手くいってよかった。それじゃぁ鬼蜘蛛! アーマーボアを刈り取るよ!」
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