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【第10話:守護者養成学校】

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「え? それじゃぁ水晶使った時に見たのは、昔の記憶なの?」

 僕たちは守護者ギルドを後にすると、養成学校に向かって歩いていました。
 その道すがら、導きの水晶を使った時に何が起こったのかを二人に話しているところです。

「うん。たぶんだけど、アレは僕の昔の記憶が関係する気がするんだ……」

「へぇ~! 昔のダインってどんなだったの! 聞きたいな~?」

 守護者ギルドに向かっている時は、あんなにモンスターウェーブを怖がっていたのに、何かすっかりいつもの調子を取り戻したみたいだ。
 まぁ下手に怖がって冷静な判断を失うより良いよね。
 それに僕ら一般市民には、モンスターウェーブに備えて出来る事なんてほとんどないし……。

「記憶を思い出したっていうより、場面場面を切り取ったような光景を見ていただけだから、昔の僕がどんな奴だったかまではわからないな」

 そう言えば僕はただ突っ立ってただけだったな。
 あ、でも最後は何か壁を破壊して……だめだやっぱりその先は思い出せないや。

 でも、壁壊したのアレは僕がやったのかな……? ……弁償とかないよね?

「そっかぁ~ちょっと残念だけど、少しでも思い出せたんなら良かったね! でも、少しは思い出せたんだし、そのうち何かの拍子にまた思い出すかも!」

「ははっ、だと良いんだけどね~」

 セリアと話していると、何か難しい問題も何とかなるような気がしてくるから不思議だ。
 僕たちは何がおかしいのかわからないけど、何だかおかしくなって、2人そろって笑い出していた。

「あなた達ねぇ……仲が良いのは良いんだけど、肝心なこと忘れてない?」

 そんな僕たちに少し呆れるように溜息をついて、ローズは苦笑いを浮かべていた。

「え? 私たち何か忘れてる?」

「指摘しても気づかないのね……それで、結局ギフトはあったの? 無かったの?」

 そう言えばギフトの事をすっかり忘れてた……。

「えっと……どうなんだろ……」

 ギフトを授かっていれば見えるって言われた映像は見えたけど、あれはギフトと関係ないよね……。
 僕がどう判断するべきか悩んでいると、ローズが光について聞いてきた。

「魔力を込めた時、水晶玉はキラキラ光ってた?」

 そう言えばギフトのあるなしはキラキラ光るかどうかで判断して、その後の映像でどういったギフトを授かったかの内容がわかるって話だっけ?

「あぁ……キラキラと言うか……ギラギラ?」

「「ぎ、ギラギラって……」」

「ハハハ。直視してたら目がつぶれるかと思ったよ~」

 笑いながらそう言うと、ローズに耳を引っ張られた。

「痛い!? ローズ痛いって!?」

 ローズは痛がる僕を無視して僕の耳に顔を近づけると、

「その事も誰にも言っちゃダメだから。後で詳しく教えて」

 僕にだけ聞こえるような声音でそう言うと、ようやく耳を放してくれた。

「痛いなぁ……」

 僕が耳をさすっていると、何故かセリアが魂が抜けたみたいな顔になっています……。

「ローズが……ローズがダインに……」

「あぁぁもうぉぉ! あなた達本当に面倒臭いわね!」

 そう言って今度はセリアの耳を引っ張って、

「変な使い方して壊れたのかもしれないから、内緒にしなさいって言っただけよ! わかった!?」

「きゃぁ!? 痛い!? わかった! わかったから!!」

 そうやって無理やり話を終わらせるのでした。

 え? 僕って水晶壊したかもしれないの!?

 ~

 結論から言うと、僕は水晶を壊した訳では無いようです。
 良かった……あれ高そうだったし……。

 それで、ローズが何を心配していたのかと言うと、水晶がキラキラ光るかどうかでギフトの有無がわかるんだけど、さらにその光が強ければ強いほどギフトが特殊だったり、強力だったり、複数のギフトを授かっていたりする傾向にあるらしい。

 つまり僕は異世界からきたはずなのに、何らかの強力なギフト持ちって事になるのかな?
 ボク、なんだかワクワクしてきたぞ!

 あっ、でも……嬉しいけど、そうすると前いた世界の神様とこっちの神様は同じ神様ってこと?

 う~ん、よくわからないけど、またこれもバレたら特待生にされるかもしれないらしいので、口外しない事にしました。

 ~

 目の前には、横に大きな3階建ての建物が建っていました。

 ここがシグルスで唯一の守護者養成学校です。

 ここには入学前に「下見したい!」ってセリアが言いだしてきかなかったので、一度見に来ています。
 その時も思ったけど、校舎以外にも訓練用の施設や広場が併設されているので、敷地面積はかなりの大きさだと思う。

 シグルスには、他にも色んな学校がいくつもあるけど、それらの学校と比べても大きいそうです。

「ふぅ……やっと養成学校に着いたわ……」

「ローズ何だか疲れてるわね? 普段本ばかり読んでるから体力ないんじゃないの?」

「あなた達二人に疲れたのよ!?」

「えぇ? 僕なにかしたかなぁ?」

「も、もういいわ……それより、一旦職員室まで来なさい。そこで一緒に事情説明してあげるから」

 そうだった。
 朝早めに出たのに、もう昼近い時間だ。

 今から集合場所の教室に行っても、誰もいないか、他のことに使用されているよね……。

「助かるよ。ローズ」

「気にしないでいいわよ。私もその方が助かるから」

「ほぅ? 何が助かるのじゃ?」

「何って……え?……」

 声のした方に振り向くと、小さなお爺さんがニコニコしながらこちらに近づいてくる所でした。

 もうかなり高齢に見えるけど、その足取りは凄く軽快です。
 背は僕より低く小柄で、顎には長く白い髭をたくわえていて、好々爺といった感じのお爺さんだった。

「エロ爺、じゃなくて校長……」

 前言撤回。好々爺撤回。エロ爺らしいです……。

「今、エロ爺って!? エロ爺って言わなかったかいのぉ!?」

「気のせいじゃないでしょうか? それよりどうされたのですか? 徘徊ですか?」

「まだボケとらんわ!? それより、そっちの二人が同じ孤児院の子か?」

「はい。そうですが、セリアの半径1m以内に近づいたら施設に入って貰いますよ?」

「うっ!? わかった! わかったから! 不用意に近づいたりせんから話を聞かんか!」

「・・・・・・」

 何か、ローズの目が座っていて、凄く怖い……。

「なんかすごく視線が痛いのじゃが……まぁ良い。襲撃警報のあと、衛兵から連絡があってな。お主らが警報発動したらしいことを聞いたから心配して待ってただけじゃ。とりあえず話を聞きたいから着いてきなさい」

 こうしてこの後、僕たちは校長室に行くことになったのだけど、

((ローズは絶対に怒らさないようにしよう……))

 僕とセリアは心の中でそう誓うのでした。
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