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【第2話:罠】
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ちょ、ちょっと待ってくれ……こいつ、本気で言ってるのか?
「え? じょ、冗談だよな?」
突然のことに呆気にとられ、オレがバクスに詰め寄ろうとしたその時、後ろから別の声が割り込んできた。
「ぷくくく。冗談なわけないじゃん?」
同じ『猛き大斧』のパーティーメンバーで双剣使いのチャモだ。
「チャモ、お前……知っていたのか?」
筋肉むきむきの大男であるバクスと違い、チャモは筋肉質だが細身の長身で、すらりとしたシルエットをもつ優男だ。
その性格も見た目同様ちょっと軽いのだが、それでも話のわかる奴だと思っていた。
だけど、それはオレの独りよがりだったようだ……。
「パーティーから誰かを追放するにはさぁ。リーダー以外にもう一人、他のメンバーの同意が必要だろ? もちろん僕は喜んで協力させて貰ったさ~」
と言って、軽薄な笑みを浮かべた。
バクスとは普段からよく意見を衝突させていたし、暴挙に出るのも彼の性格を考えるとまだ納得できる。
だけど、気のいいチャモにまで煙たがられているとは思いもしなかった。
「いつも気に入らなかったんだよね~。魔法使いと言っても冒険者としては役に立たない補助魔法使いなのに、いつもいろいろ意見してさぁ」
それは、オレが依頼の準備や調査を丸投げされていたからじゃないか!
そう怒鳴り返そうかと思ったのだが……。
「おい、チャモ。おめぇ、誰と話してんだ? パーティーメンバーでも何でもない、知らない奴と話しちゃ駄目って、ママに教わらなかったか~? くっ……ぎゃはははは! ダメだ! 我慢できねぇ! ぎゃはははは」
「おっと、僕としたことが……。突然見ず知らずの男に話しかけられたから、つい反応してしまったよ。僕って優しいからさぁ。ぷくくく」
無理にパーティーに残るのも馬鹿らしくなって、黙り込んでしまった。
うん。もういいか……。
今から半年前、ローリエと一緒に村から出て王都に来たときに、最初に声を掛けてくれた冒険者だった。
だから、今までは色々無茶な事を言われても、全部我慢してやって来た。
だけどもう、これ以上我慢するのも馬鹿らしい。
「わかったよ。もうお前らとは一緒にやってられない。ローリエと一緒にまた一から出直すよ」
だから、そう言って酒場を去ろうとしたのだが、次のバクスの話に言葉を失ってしまった。
「あぁん? 何馬鹿なこと言ってんだ? ローリエを連れて行かせるわけねぇだろ?」
「ローリエちゃんはさぁ、回復魔法使いはさぁ、パーティーに必要でしょ? 君と違って優秀なんだから」
オレとローリエは同じ村の出身だ。
同い年の幼馴染で、二人で冒険者になるのを夢見て、一緒に村を飛び出してきた。
だから、オレがパーティーから追放されたというのに、ローリエがそのパーティーに残るわけがなかった。
だと言うのに……なんだ? こいつらの自信たっぷりな顔は……。
「ど、どういうつもりだ? ローリエが残るわけないだろ……」
「頭の回転早いくせに、こういう話には弱いよね~」
「な、なんだよ? チャモ? 何を言って……」
「パーティーメンバーが怪我をした時ってさぁ、パーティー資金から出すのが一般的だよねぇ? あれれ? でも~、パーティーを抜けちゃったらさぁ、お金出す必要なくならないかなぁ?」
間抜けにも、そこまで言われて、オレはようやく理解した。
こいつらに嵌められたんだと……。
「……わざとか? お前ら! わざと魔物の群れにつっこんで、ローリエが怪我するように仕向けたのか!?」
半年前、冒険者になりたてであるオレたち二人とパーティーを組む条件として、衣食住の面倒をみてやる代わりに、半年間は分け前はゼロだと告げられた。
明らかに足元を見た条件だったのだが、「補助魔法使いと組んでくれる冒険者は中々いないよ」、「半年ぐらいは我慢しようよ」などとローリエが気を使ってくれて、オレは迂闊にもこれを了承してしまった。
つまり、今パーティーを抜けてしまうと、オレもローリエも治療費を払うお金を持っていないということだった。
そうなると最悪の場合、借金奴隷にされてしまう可能性だってある。
きっと、約束の半年間の期限が切れれば、オレたちに分け前を払わないといけなくなるし、二人でお金を貯めるかもしれないなどと思ったのだろう。
だからこいつらは……期限が切れる直前に行動を起こしたのだ!
オレはあまりの卑劣な考えに、もう抑えきれなくなってしまい、チャモに殴りかかっていた。
「お前ら、嵌めたのかぁ!?」
だけど……オレの拳はかすりもせず、あっさりと避けられてしまった。
「ぷくくく。スピード重視の双剣使いに、当たるわけないでしょ~? 僕のこと舐めてるのかな?」
「くそっ! くそっ! なんで当たらないんだ!?」
ただでさえ実力が劣るのに、怒りで冷静な動きが出来ていないオレの拳が、チャモに当たるわけがなかった。
そしてそこへ……。
「死んでも化けてでるなよっ! おらぁ!! 死ねやぁ!」
ただでさえ勝てる見込みが薄いというのに、そこへバクスが加わると……もう勝負にもならなかった。
結局オレは何も出来ず、気を失うまで二人に殴られ続けたのだった。
「え? じょ、冗談だよな?」
突然のことに呆気にとられ、オレがバクスに詰め寄ろうとしたその時、後ろから別の声が割り込んできた。
「ぷくくく。冗談なわけないじゃん?」
同じ『猛き大斧』のパーティーメンバーで双剣使いのチャモだ。
「チャモ、お前……知っていたのか?」
筋肉むきむきの大男であるバクスと違い、チャモは筋肉質だが細身の長身で、すらりとしたシルエットをもつ優男だ。
その性格も見た目同様ちょっと軽いのだが、それでも話のわかる奴だと思っていた。
だけど、それはオレの独りよがりだったようだ……。
「パーティーから誰かを追放するにはさぁ。リーダー以外にもう一人、他のメンバーの同意が必要だろ? もちろん僕は喜んで協力させて貰ったさ~」
と言って、軽薄な笑みを浮かべた。
バクスとは普段からよく意見を衝突させていたし、暴挙に出るのも彼の性格を考えるとまだ納得できる。
だけど、気のいいチャモにまで煙たがられているとは思いもしなかった。
「いつも気に入らなかったんだよね~。魔法使いと言っても冒険者としては役に立たない補助魔法使いなのに、いつもいろいろ意見してさぁ」
それは、オレが依頼の準備や調査を丸投げされていたからじゃないか!
そう怒鳴り返そうかと思ったのだが……。
「おい、チャモ。おめぇ、誰と話してんだ? パーティーメンバーでも何でもない、知らない奴と話しちゃ駄目って、ママに教わらなかったか~? くっ……ぎゃはははは! ダメだ! 我慢できねぇ! ぎゃはははは」
「おっと、僕としたことが……。突然見ず知らずの男に話しかけられたから、つい反応してしまったよ。僕って優しいからさぁ。ぷくくく」
無理にパーティーに残るのも馬鹿らしくなって、黙り込んでしまった。
うん。もういいか……。
今から半年前、ローリエと一緒に村から出て王都に来たときに、最初に声を掛けてくれた冒険者だった。
だから、今までは色々無茶な事を言われても、全部我慢してやって来た。
だけどもう、これ以上我慢するのも馬鹿らしい。
「わかったよ。もうお前らとは一緒にやってられない。ローリエと一緒にまた一から出直すよ」
だから、そう言って酒場を去ろうとしたのだが、次のバクスの話に言葉を失ってしまった。
「あぁん? 何馬鹿なこと言ってんだ? ローリエを連れて行かせるわけねぇだろ?」
「ローリエちゃんはさぁ、回復魔法使いはさぁ、パーティーに必要でしょ? 君と違って優秀なんだから」
オレとローリエは同じ村の出身だ。
同い年の幼馴染で、二人で冒険者になるのを夢見て、一緒に村を飛び出してきた。
だから、オレがパーティーから追放されたというのに、ローリエがそのパーティーに残るわけがなかった。
だと言うのに……なんだ? こいつらの自信たっぷりな顔は……。
「ど、どういうつもりだ? ローリエが残るわけないだろ……」
「頭の回転早いくせに、こういう話には弱いよね~」
「な、なんだよ? チャモ? 何を言って……」
「パーティーメンバーが怪我をした時ってさぁ、パーティー資金から出すのが一般的だよねぇ? あれれ? でも~、パーティーを抜けちゃったらさぁ、お金出す必要なくならないかなぁ?」
間抜けにも、そこまで言われて、オレはようやく理解した。
こいつらに嵌められたんだと……。
「……わざとか? お前ら! わざと魔物の群れにつっこんで、ローリエが怪我するように仕向けたのか!?」
半年前、冒険者になりたてであるオレたち二人とパーティーを組む条件として、衣食住の面倒をみてやる代わりに、半年間は分け前はゼロだと告げられた。
明らかに足元を見た条件だったのだが、「補助魔法使いと組んでくれる冒険者は中々いないよ」、「半年ぐらいは我慢しようよ」などとローリエが気を使ってくれて、オレは迂闊にもこれを了承してしまった。
つまり、今パーティーを抜けてしまうと、オレもローリエも治療費を払うお金を持っていないということだった。
そうなると最悪の場合、借金奴隷にされてしまう可能性だってある。
きっと、約束の半年間の期限が切れれば、オレたちに分け前を払わないといけなくなるし、二人でお金を貯めるかもしれないなどと思ったのだろう。
だからこいつらは……期限が切れる直前に行動を起こしたのだ!
オレはあまりの卑劣な考えに、もう抑えきれなくなってしまい、チャモに殴りかかっていた。
「お前ら、嵌めたのかぁ!?」
だけど……オレの拳はかすりもせず、あっさりと避けられてしまった。
「ぷくくく。スピード重視の双剣使いに、当たるわけないでしょ~? 僕のこと舐めてるのかな?」
「くそっ! くそっ! なんで当たらないんだ!?」
ただでさえ実力が劣るのに、怒りで冷静な動きが出来ていないオレの拳が、チャモに当たるわけがなかった。
そしてそこへ……。
「死んでも化けてでるなよっ! おらぁ!! 死ねやぁ!」
ただでさえ勝てる見込みが薄いというのに、そこへバクスが加わると……もう勝負にもならなかった。
結局オレは何も出来ず、気を失うまで二人に殴られ続けたのだった。
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