微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する

こげ丸

文字の大きさ
上 下
2 / 54

【第2話:罠】

しおりを挟む
 ちょ、ちょっと待ってくれ……こいつ、本気で言ってるのか?

「え? じょ、冗談だよな?」

 突然のことに呆気にとられ、オレがバクスに詰め寄ろうとしたその時、後ろから別の声が割り込んできた。

「ぷくくく。冗談なわけないじゃん?」

 同じ『猛き大斧』のパーティーメンバーで双剣使いのチャモだ。

「チャモ、お前……知っていたのか?」

 筋肉むきむきの大男であるバクスと違い、チャモは筋肉質だが細身の長身で、すらりとしたシルエットをもつ優男だ。
 その性格も見た目同様ちょっと軽いのだが、それでも話のわかる奴だと思っていた。

 だけど、それはオレの独りよがりだったようだ……。

「パーティーから誰かを追放キックするにはさぁ。リーダー以外にもう一人、他のメンバーの同意が必要だろ? もちろん僕は喜んで協力させて貰ったさ~」

 と言って、軽薄な笑みを浮かべた。

 バクスとは普段からよく意見を衝突させていたし、暴挙に出るのも彼の性格を考えるとまだ納得できる。

 だけど、気のいいチャモにまで煙たがられているとは思いもしなかった。

「いつも気に入らなかったんだよね~。魔法使いと言っても冒険者としては役に立たない補助魔法使いなのに、いつもいろいろ意見してさぁ」

 それは、オレが依頼の準備や調査を丸投げされていたからじゃないか!

 そう怒鳴り返そうかと思ったのだが……。

「おい、チャモ。おめぇ、誰と話してんだ? パーティーメンバーでも何でもない、知らない奴と話しちゃ駄目って、ママに教わらなかったか~? くっ……ぎゃはははは! ダメだ! 我慢できねぇ! ぎゃはははは」

「おっと、僕としたことが……。突然見ず知らずの男に話しかけられたから、つい反応してしまったよ。僕って優しいからさぁ。ぷくくく」

 無理にパーティーに残るのも馬鹿らしくなって、黙り込んでしまった。

 うん。もういいか……。

 今から半年前、ローリエと一緒に村から出て王都に来たときに、最初に声を掛けてくれた冒険者だった。

 だから、今までは色々無茶な事を言われても、全部我慢してやって来た。
 だけどもう、これ以上我慢するのも馬鹿らしい。

「わかったよ。もうお前らとは一緒にやってられない。ローリエと一緒にまた一から出直すよ」

 だから、そう言って酒場を去ろうとしたのだが、次のバクスの話に言葉を失ってしまった。

「あぁん? 何馬鹿なこと言ってんだ? ローリエを連れて行かせるわけねぇだろ?」

「ローリエちゃんはさぁ、回復魔法使いはさぁ、パーティーに必要でしょ? 君と違って優秀なんだから」

 オレとローリエは同じ村の出身だ。
 同い年の幼馴染で、二人で冒険者になるのを夢見て、一緒に村を飛び出してきた。
 だから、オレがパーティーから追放キックされたというのに、ローリエがそのパーティーに残るわけがなかった。

 だと言うのに……なんだ? こいつらの自信たっぷりな顔は……。

「ど、どういうつもりだ? ローリエが残るわけないだろ……」

「頭の回転早いくせに、こういう話には弱いよね~」

「な、なんだよ? チャモ? 何を言って……」

「パーティーメンバーが怪我をした時ってさぁ、パーティー資金から出すのが一般的だよねぇ? あれれ? でも~、パーティーを抜けちゃったらさぁ、お金出す必要なくならないかなぁ?」

 間抜けにも、そこまで言われて、オレはようやく理解した。
 こいつらに嵌められたんだと……。

「……わざとか? お前ら! わざと魔物の群れにつっこんで、ローリエが怪我するように仕向けたのか!?」

 半年前、冒険者になりたてであるオレたち二人とパーティーを組む条件として、衣食住の面倒をみてやる代わりに、半年間は分け前はゼロだと告げられた。

 明らかに足元を見た条件だったのだが、「補助魔法使いと組んでくれる冒険者は中々いないよ」、「半年ぐらいは我慢しようよ」などとローリエが気を使ってくれて、オレは迂闊にもこれを了承してしまった。

 つまり、今パーティーを抜けてしまうと、オレもローリエも治療費を払うお金を持っていないということだった。

 そうなると最悪の場合、借金奴隷にされてしまう可能性だってある。

 きっと、約束の半年間の期限が切れれば、オレたちに分け前を払わないといけなくなるし、二人でお金を貯めるかもしれないなどと思ったのだろう。

 だからこいつらは……期限が切れる直前に行動を起こしたのだ!

 オレはあまりの卑劣な考えに、もう抑えきれなくなってしまい、チャモに殴りかかっていた。

「お前ら、嵌めたのかぁ!?」

 だけど……オレの拳はかすりもせず、あっさりと避けられてしまった。

「ぷくくく。スピード重視の双剣使いに、当たるわけないでしょ~? 僕のこと舐めてるのかな?」

「くそっ! くそっ! なんで当たらないんだ!?」

 ただでさえ実力が劣るのに、怒りで冷静な動きが出来ていないオレの拳が、チャモに当たるわけがなかった。

 そしてそこへ……。

「死んでも化けてでるなよっ! おらぁ!! 死ねやぁ!」

 ただでさえ勝てる見込みが薄いというのに、そこへバクスが加わると……もう勝負にもならなかった。

 結局オレは何も出来ず、気を失うまで二人に殴られ続けたのだった。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

パーティーの役立たずとして追放された魔力タンク、世界でただ一人の自動人形『ドール』使いになる

日之影ソラ
ファンタジー
「ラスト、今日でお前はクビだ」 冒険者パーティで魔力タンク兼雑用係をしていたラストは、ある日突然リーダーから追放を宣告されてしまった。追放の理由は戦闘で役に立たないから。戦闘中に『コネクト』スキルで仲間と繋がり、仲間たちに自信の魔力を分け与えていたのだが……。それしかやっていないことを責められ、戦える人間のほうがマシだと仲間たちから言い放たれてしまう。 一人になり途方にくれるラストだったが、そこへ行方不明だった冒険者の祖父から送り物が届いた。贈り物と一緒に入れられた手紙には一言。 「ラストよ。彼女たちはお前の力になってくれる。ドール使いとなり、使い熟してみせよ」 そう記され、大きな木箱の中に入っていたのは綺麗な少女だった。 これは無能と言われた一人の冒険者が、自動人形(ドール)と共に成り上がる物語。 7/25男性向けHOTランキング1位

聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!

さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ 祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き! も……もう嫌だぁ! 半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける! 時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ! 大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。 色んなキャラ出しまくりぃ! カクヨムでも掲載チュッ ⚠︎この物語は全てフィクションです。 ⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!

コストカットだ!と追放された王宮道化師は、無数のスキルで冒険者として成り上がる。

あけちともあき
ファンタジー
「宮廷道化師オーギュスト、お前はクビだ」  長い間、マールイ王国に仕え、平和を維持するために尽力してきた道化師オーギュスト。  だが、彼はその活躍を妬んだ大臣ガルフスの陰謀によって職を解かれ、追放されてしまう。  困ったオーギュストは、手っ取り早く金を手に入れて生活を安定させるべく、冒険者になろうとする。  長い道化師生活で身につけた、数々の技術系スキル、知識系スキル、そしてコネクション。  それはどんな難関も突破し、どんな謎も明らかにする。  その活躍は、まさに万能!  死神と呼ばれた凄腕の女戦士を相棒に、オーギュストはあっという間に、冒険者たちの中から頭角を現し、成り上がっていく。  一方、国の要であったオーギュストを失ったマールイ王国。  大臣一派は次々と問題を起こし、あるいは起こる事態に対応ができない。  その方法も、人脈も、全てオーギュストが担当していたのだ。  かくしてマールイ王国は傾き、転げ落ちていく。 目次 連載中 全21話 2021年2月17日 23:39 更新

豊穣の巫女から追放されたただの村娘。しかし彼女の正体が予想外のものだったため、村は彼女が知らないうちに崩壊する。

下菊みこと
ファンタジー
豊穣の巫女に追い出された少女のお話。 豊穣の巫女に追い出された村娘、アンナ。彼女は村人達の善意で生かされていた孤児だったため、むしろお礼を言って笑顔で村を離れた。その感謝は本物だった。なにも持たない彼女は、果たしてどこに向かうのか…。 小説家になろう様でも投稿しています。

ぬいぐるみばかり作っていたら実家を追い出された件〜だけど作ったぬいぐるみが意志を持ったので何も不自由してません〜

望月かれん
ファンタジー
 中流貴族シーラ・カロンは、ある日勘当された。理由はぬいぐるみ作りしかしないから。 戸惑いながらも少量の荷物と作りかけのぬいぐるみ1つを持って家を出たシーラは1番近い町を目指すが、その日のうちに辿り着けず野宿をすることに。 暇だったので、ぬいぐるみを完成させようと意気込み、ついに夜更けに完成させる。  疲れから眠りこけていると聞き慣れない低い声。 なんと、ぬいぐるみが喋っていた。 しかもぬいぐるみには帰りたい場所があるようで……。     天真爛漫娘✕ワケアリぬいぐるみのドタバタ冒険ファンタジー。  ※この作品は小説家になろう・ノベルアップ+にも掲載しています。

【完結】特別な力で国を守っていた〈防国姫〉の私、愚王と愚妹に王宮追放されたのでスパダリ従者と旅に出ます。一方で愚王と愚妹は破滅する模様

岡崎 剛柔
ファンタジー
◎第17回ファンタジー小説大賞に応募しています。投票していただけると嬉しいです 【あらすじ】  カスケード王国には魔力水晶石と呼ばれる特殊な鉱物が国中に存在しており、その魔力水晶石に特別な魔力を流すことで〈魔素〉による疫病などを防いでいた特別な聖女がいた。  聖女の名前はアメリア・フィンドラル。  国民から〈防国姫〉と呼ばれて尊敬されていた、フィンドラル男爵家の長女としてこの世に生を受けた凛々しい女性だった。 「アメリア・フィンドラル、ちょうどいい機会だからここでお前との婚約を破棄する! いいか、これは現国王である僕ことアントン・カスケードがずっと前から決めていたことだ! だから異議は認めない!」  そんなアメリアは婚約者だった若き国王――アントン・カスケードに公衆の面前で一方的に婚約破棄されてしまう。  婚約破棄された理由は、アメリアの妹であったミーシャの策略だった。  ミーシャはアメリアと同じ〈防国姫〉になれる特別な魔力を発現させたことで、アントンを口説き落としてアメリアとの婚約を破棄させてしまう。  そしてミーシャに骨抜きにされたアントンは、アメリアに王宮からの追放処分を言い渡した。  これにはアメリアもすっかり呆れ、無駄な言い訳をせずに大人しく王宮から出て行った。  やがてアメリアは天才騎士と呼ばれていたリヒト・ジークウォルトを連れて〈放浪医師〉となることを決意する。 〈防国姫〉の任を解かれても、国民たちを守るために自分が持つ医術の知識を活かそうと考えたのだ。  一方、本物の知識と実力を持っていたアメリアを王宮から追放したことで、主核の魔力水晶石が致命的な誤作動を起こしてカスケード王国は未曽有の大災害に陥ってしまう。  普通の女性ならば「私と婚約破棄して王宮から追放した報いよ。ざまあ」と喜ぶだろう。  だが、誰よりも優しい心と気高い信念を持っていたアメリアは違った。  カスケード王国全土を襲った未曽有の大災害を鎮めるべく、すべての原因だったミーシャとアントンのいる王宮に、アメリアはリヒトを始めとして旅先で出会った弟子の少女や伝説の魔獣フェンリルと向かう。  些細な恨みよりも、〈防国姫〉と呼ばれた聖女の力で国を救うために――。

失われた力を身に宿す元聖女は、それでも気楽に過ごしたい~いえ、Sランク冒険者とかは結構です!~

紅月シン
ファンタジー
 聖女として異世界に召喚された狭霧聖菜は、聖女としての勤めを果たし終え、満ち足りた中でその生涯を終えようとしていた。  いや嘘だ。  本当は不満でいっぱいだった。  食事と入浴と睡眠を除いた全ての時間で人を癒し続けなくちゃならないとかどんなブラックだと思っていた。  だがそんな不満を漏らすことなく死に至り、そのことを神が不憫にでも思ったのか、聖菜は辺境伯家の末娘セーナとして二度目の人生を送ることになった。  しかし次こそは気楽に生きたいと願ったはずなのに、ある日セーナは前世の記憶と共にその身には聖女としての癒しの力が流れていることを知ってしまう。  そしてその時点で、セーナの人生は決定付けられた。  二度とあんな目はご免だと、気楽に生きるため、家を出て冒険者になることを決意したのだ。  だが彼女は知らなかった。  三百年の時が過ぎた現代では、既に癒しの力というものは失われてしまっていたということを。  知らぬままに力をばら撒く少女は、その願いとは裏腹に、様々な騒動を引き起こし、解決していくことになるのであった。 ※完結しました。 ※小説家になろう様にも投稿しています

パワハラ騎士団長に追放されたけど、君らが最強だったのは僕が全ステータスを10倍にしてたからだよ。外れスキル《バフ・マスター》で世界最強

こはるんるん
ファンタジー
「アベル、貴様のような軟弱者は、我が栄光の騎士団には不要。追放処分とする!」  騎士団長バランに呼び出された僕――アベルはクビを宣言された。  この世界では8歳になると、女神から特別な能力であるスキルを与えられる。  ボクのスキルは【バフ・マスター】という、他人のステータスを数%アップする力だった。  これを授かった時、外れスキルだと、みんなからバカにされた。  だけど、スキルは使い続けることで、スキルLvが上昇し、強力になっていく。  僕は自分を信じて、8年間、毎日スキルを使い続けた。 「……本当によろしいのですか? 僕のスキルは、バフ(強化)の対象人数3000人に増えただけでなく、効果も全ステータス10倍アップに進化しています。これが無くなってしまえば、大きな戦力ダウンに……」 「アッハッハッハッハッハッハ! 見苦しい言い訳だ! 全ステータス10倍アップだと? バカバカしい。そんな嘘八百を並べ立ててまで、この俺の最強騎士団に残りたいのか!?」  そうして追放された僕であったが――  自分にバフを重ねがけした場合、能力値が100倍にアップすることに気づいた。  その力で、敵国の刺客に襲われた王女様を助けて、新設された魔法騎士団の団長に任命される。    一方で、僕のバフを失ったバラン団長の最強騎士団には暗雲がたれこめていた。 「騎士団が最強だったのは、アベル様のお力があったればこそです!」  これは外れスキル持ちとバカにされ続けた少年が、その力で成り上がって王女に溺愛され、国の英雄となる物語。

処理中です...