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【第42話:真魔王ラウム その8】
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古都リ・ラドロアの王城、謁見の間にて、二人の魔王が向かい合っていた。
一人は真魔王軍『天』を率いる真の魔王ラウム。
「人族で魔王という身の丈に合わない力を入れた事で、どうやら勘違いしちゃったようねぇ。魔物の魔王でもなく、この真の魔王ラウムに喧嘩を売りに来るなんて、自惚れも甚だしいわ」
もう一人は『叛逆の魔王軍』を率いる、魔王であり勇者でもあるステルヴィオ。
「ん? 魔物の魔王なら、もう何匹か倒してるぞ? まぁお前には直接の恨みは無いんだけど、ちょっと契約でお前たち真魔王を全員倒さないといけないんで……諦めて死んでくれ」
「真魔王全員を倒すですって!? 本当に人の身で下手に力を持つと、呆れるほど自惚れるのね。いいわ。私が呆気なく殺してあげるから、ありがたく死になさい!」
真魔王ラウムは、強大な力の解放と共に魔王覇気を展開する。
その魔王覇気は、今までにステルヴィオが戦った魔物の魔王たちとは比べ物にならないほどの密度で、恐らく普通の勇者であれば聖光覇気を纏っていたとしても、その圧倒的な威圧の力だけで、膝を屈したかもしれない。
しかし、身近にそれ以上の魔王覇気を放つ者がいるステルヴィオにとっては、そこまで驚くようなものではなかった。
「へぇ~。やっぱり真魔王とかいうだけあって、魔王もどきとは比べ物にならない覇気を纏うな」
「くっ!? 憎たらしい餓鬼め……。その余裕な態度がいつまで続くか楽しみだわ!」
「まぁ、そういうなよ。オレもそこまで余裕をもって勝てる相手だなんて思ってないし」
「そもそもこの魔王覇気の威圧を受けて、まだ勝つ気でいるのが憎たらしいのよ!?」
永き時を生きる真魔王ラウムにとって、勇者を相手にするのは一度や二度ではない。
今まで幾度となく勇者と対峙し、その悉くを圧倒的な差を見せつけて葬ってきた。
いや、その差が大きすぎて、今まで戦って敗れていった勇者たちは、その差を理解することすらできなかったかもしれない。
ただ、魔王覇気の威圧を受けただけで、戦意を喪失していたのだから。
「そりゃぁそうだろ? 勝つつもりじゃないのに、魔王に戦いを挑むって、どこの自殺志願者だよ?」
だと言うのにステルヴィオは、本気で展開した魔王覇気の威圧を受けても、眉一つ動かさなかった。
「まぁでも、こっちも本気で望まないと勝てそうにないのは把握したよ」
そして、ステルヴィオも魔王覇気を身に纏った。
「腹立たしいけど、中々の魔王覇気ね……でも、その程度では私の魔王覇気は破れないわよ!」
真ラウムは言葉と共に更に魔王覇気を強めると、床を爆散させて、一瞬でステルヴィオの前まで踏み込み、鋭利な爪を伸ばした手を振り抜いた。
「ぐっ!?」
ステルヴィオは予想を上回る速さに一瞬驚きを見せつつも、素早く魔剣を引き抜き受け流す。
「さっさと死になさい!」
「いやなこった!」
ふざけた幼稚な言い合いは先ほどから変わらないが、そのスピードは周りにいる側近の魔族たちの目を以てしても、まったく捉えらないほどの攻防だった。
「私のスピードについて来るなんて!? でも……これなら、どうかしら!!」
真魔王ラウムが踏み込むと見せかけて、一瞬で距離を取って天井付近まで舞い上がると、右手を突き出し、黒い炎を放ってきた。
「ちっ!? そいつは勘弁だ!」
その炎は、黒い火の粉を散らしながらステルヴィオを包み込むように迫ってきたのだが、ステルヴィオは両掌を前に突き出すと……、
「うそでしょ!?」
驚く魔王の目の前で、同じく放った黒い炎で以て相殺してみせた。
そして、相殺と言っても黒い炎が小さくなったわけではないため、拮抗した黒い炎は溢れ、広い謁見の間を埋め尽くすように一気に広がり、側近の魔族たちの半数を巻き込んで死滅させた。
「!? よ、よくもやったわね!?」
「知らねえよ!? ってか、敵なんだから当たり前だろ!」
しかしステルヴィオも、出来れば王城をこれ以上破壊したくないため、どうしようかと思案していた。
そして、なんとか戦いの場を他に移せないかと考えていると、そこへ見知った声が耳に届く。
「まったく……考えなしですぐに感情的に行動するのは変わっていませんねぇ」
魔物の掃討戦を部下に任せて駆け付けたゼロだった。
「ったく、おせぇよ! 魔物の軍なんて最初から部下たちに任せても余裕だったろ?」
「まぁまぁ、そう怒らないで下さい。数人強い魔族がまじっていたので、被害が出ないように数人倒してから来たのですよ」
「そ、そうか。まぁそれなら仕方ねぇけど、もう始めちまったぞ?」
「どうですか? 手応えは?」
「ん~……なんとかなるとは思うんだが、出来れば場所を変えたい。ここで本気でやりあったら、王城が吹っ飛ぶし、街にも相当被害が出そうだ」
当たり前のように繰り広げられるステルヴィオとゼロの会話。
だが、それを信じられない思いで見つめる真魔王ラウムの姿があった。
「うそ……でしょ……。バエルだと、言うの……」
「ん? 久しぶりですね。ラウム。何百年? いや、何千年? ぶりでしょうか? 積もる話もあるかと思いますが、ちょっと戦いの場を移させて頂きますよ」
ラウムが、ゼロのその何でもないような返事を受けて固まる中、
「では……魔王領域に、引きずり込ませて頂きます」
そう言って、謁見の間にいた者たちを丸ごと、いや、その空間ごと魔王領域へと引きずり込んだのだった。
一人は真魔王軍『天』を率いる真の魔王ラウム。
「人族で魔王という身の丈に合わない力を入れた事で、どうやら勘違いしちゃったようねぇ。魔物の魔王でもなく、この真の魔王ラウムに喧嘩を売りに来るなんて、自惚れも甚だしいわ」
もう一人は『叛逆の魔王軍』を率いる、魔王であり勇者でもあるステルヴィオ。
「ん? 魔物の魔王なら、もう何匹か倒してるぞ? まぁお前には直接の恨みは無いんだけど、ちょっと契約でお前たち真魔王を全員倒さないといけないんで……諦めて死んでくれ」
「真魔王全員を倒すですって!? 本当に人の身で下手に力を持つと、呆れるほど自惚れるのね。いいわ。私が呆気なく殺してあげるから、ありがたく死になさい!」
真魔王ラウムは、強大な力の解放と共に魔王覇気を展開する。
その魔王覇気は、今までにステルヴィオが戦った魔物の魔王たちとは比べ物にならないほどの密度で、恐らく普通の勇者であれば聖光覇気を纏っていたとしても、その圧倒的な威圧の力だけで、膝を屈したかもしれない。
しかし、身近にそれ以上の魔王覇気を放つ者がいるステルヴィオにとっては、そこまで驚くようなものではなかった。
「へぇ~。やっぱり真魔王とかいうだけあって、魔王もどきとは比べ物にならない覇気を纏うな」
「くっ!? 憎たらしい餓鬼め……。その余裕な態度がいつまで続くか楽しみだわ!」
「まぁ、そういうなよ。オレもそこまで余裕をもって勝てる相手だなんて思ってないし」
「そもそもこの魔王覇気の威圧を受けて、まだ勝つ気でいるのが憎たらしいのよ!?」
永き時を生きる真魔王ラウムにとって、勇者を相手にするのは一度や二度ではない。
今まで幾度となく勇者と対峙し、その悉くを圧倒的な差を見せつけて葬ってきた。
いや、その差が大きすぎて、今まで戦って敗れていった勇者たちは、その差を理解することすらできなかったかもしれない。
ただ、魔王覇気の威圧を受けただけで、戦意を喪失していたのだから。
「そりゃぁそうだろ? 勝つつもりじゃないのに、魔王に戦いを挑むって、どこの自殺志願者だよ?」
だと言うのにステルヴィオは、本気で展開した魔王覇気の威圧を受けても、眉一つ動かさなかった。
「まぁでも、こっちも本気で望まないと勝てそうにないのは把握したよ」
そして、ステルヴィオも魔王覇気を身に纏った。
「腹立たしいけど、中々の魔王覇気ね……でも、その程度では私の魔王覇気は破れないわよ!」
真ラウムは言葉と共に更に魔王覇気を強めると、床を爆散させて、一瞬でステルヴィオの前まで踏み込み、鋭利な爪を伸ばした手を振り抜いた。
「ぐっ!?」
ステルヴィオは予想を上回る速さに一瞬驚きを見せつつも、素早く魔剣を引き抜き受け流す。
「さっさと死になさい!」
「いやなこった!」
ふざけた幼稚な言い合いは先ほどから変わらないが、そのスピードは周りにいる側近の魔族たちの目を以てしても、まったく捉えらないほどの攻防だった。
「私のスピードについて来るなんて!? でも……これなら、どうかしら!!」
真魔王ラウムが踏み込むと見せかけて、一瞬で距離を取って天井付近まで舞い上がると、右手を突き出し、黒い炎を放ってきた。
「ちっ!? そいつは勘弁だ!」
その炎は、黒い火の粉を散らしながらステルヴィオを包み込むように迫ってきたのだが、ステルヴィオは両掌を前に突き出すと……、
「うそでしょ!?」
驚く魔王の目の前で、同じく放った黒い炎で以て相殺してみせた。
そして、相殺と言っても黒い炎が小さくなったわけではないため、拮抗した黒い炎は溢れ、広い謁見の間を埋め尽くすように一気に広がり、側近の魔族たちの半数を巻き込んで死滅させた。
「!? よ、よくもやったわね!?」
「知らねえよ!? ってか、敵なんだから当たり前だろ!」
しかしステルヴィオも、出来れば王城をこれ以上破壊したくないため、どうしようかと思案していた。
そして、なんとか戦いの場を他に移せないかと考えていると、そこへ見知った声が耳に届く。
「まったく……考えなしですぐに感情的に行動するのは変わっていませんねぇ」
魔物の掃討戦を部下に任せて駆け付けたゼロだった。
「ったく、おせぇよ! 魔物の軍なんて最初から部下たちに任せても余裕だったろ?」
「まぁまぁ、そう怒らないで下さい。数人強い魔族がまじっていたので、被害が出ないように数人倒してから来たのですよ」
「そ、そうか。まぁそれなら仕方ねぇけど、もう始めちまったぞ?」
「どうですか? 手応えは?」
「ん~……なんとかなるとは思うんだが、出来れば場所を変えたい。ここで本気でやりあったら、王城が吹っ飛ぶし、街にも相当被害が出そうだ」
当たり前のように繰り広げられるステルヴィオとゼロの会話。
だが、それを信じられない思いで見つめる真魔王ラウムの姿があった。
「うそ……でしょ……。バエルだと、言うの……」
「ん? 久しぶりですね。ラウム。何百年? いや、何千年? ぶりでしょうか? 積もる話もあるかと思いますが、ちょっと戦いの場を移させて頂きますよ」
ラウムが、ゼロのその何でもないような返事を受けて固まる中、
「では……魔王領域に、引きずり込ませて頂きます」
そう言って、謁見の間にいた者たちを丸ごと、いや、その空間ごと魔王領域へと引きずり込んだのだった。
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