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第三章 追憶と悔恨

【第129話:通過儀礼?】

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「つ、疲れた……。危うく騎士団に突き出される所だった……」

 オレは冒険者ギルドで従魔登録しようとしただけなのだが、街にケルベロスを侵入させて転覆を謀ろうとしているのではないかと受付嬢に勘ぐられ、信じてもらうのに凄く時間がかかったのだ。

「ま、まぁ仕方ないですよ。誰だって恐怖の象徴でもあるケルベロスが、小さくなって街中歩ているなんて思いもしないですし」

 とリリルも苦笑しながらこたえる。

「しかし、あの受付嬢め……オレがプラチナランクの冒険者だとギルドカードを見せても偽造だ何だと全然信じないし参ったよ……」

「何か新人受付嬢みたいで、やる気が先走って空回りしちゃってましたね」

 と少し思い出しながら今度はフフフと可愛く笑う。
 先日受けたプラチナランクのランクアップ試験の後に入ってきた子で、人の話まったく聞かない子だった。

「空回りと言うより暴走だな……。結局奥からギルドマスター飛んできて頭はたかれてたし」

 まぁちょっとした騒動はあったけど、無事に(?)従魔登録を終えたオレ達は、皇国までの旅路で必要な保存食などを買いこみ獣人の村に戻ったのだった。

 ~

 数日後、サルジ皇子はリリルの回復魔法とズックの導きの光によって、歩けるまでに回復していた。

「もう大分良くなりましたね」

 リハビリがてら獣人の村の中を歩いていたサルジ皇子を見つけて声をかけると、横にいたグレスが嬉しそうに

「もう大丈夫っちね。明日出発しても大丈夫なぐらいっち」

 とこたえる。

「ユウト達には本当に世話になるな。本当に皇都ゲルディアまで送ってもらって良いのか?」

「気にしないでください。魔人ゼクスは正直足取りが掴めないですし、世界の裏側の動きもあれから目立ったものがなくなったようですから」

 あれだけ攻勢をかけていた闇の軍勢が鳴りを潜めているのは少し不気味だが、セリミナ様ですら何故か一旦活動が沈静化したという事しかわからないようだった。
 なので、オレ達が考えても仕方ないと割り切る事にしている。

「それでもやはりすまない。感謝する。私の方はグレスが言うようにもう体調は大丈夫だから、明日出発でも問題ない」

「そうですか。もう旅路の準備は出来ていますし、明日出発という事にしましょうか」

 こうしてオレ達はサルジ皇子を送り届ける為、明日、ゲルド皇国の首都「皇都ゲルディア」に向けて出発する事になった。

 ~

 出発当日、村人総出で見送りに来ている獣人達から一歩進み出てシラーさんが話しかけてくる。

「本当に行ってしまわれるのですね。……あの……神獣様だけでも残りませんか?」

 すっかり神獣様として崇められてしまっているパズだが、全く気に留める様子もなく、

「ばぅ」

 と吠えて右前足みぎてをあげて軽い別れの挨拶をすると、【神器:草原の揺り籠】で呼び出した馬車ソリに乗り込んでしまう。

「「「あぁぁぁ……神獣様~……」」」

(な、何か申し訳ないな……)

 ちなみにパズが馬車ソリを牽くと若干危険なので、自ら立候補したケリーに牽いてもらう事になっている。
 ちなみにキントキは器用に馬車の屋根に上って寝そべっている。

「シラーさん、色々とお世話になりました!」

 何だかんだと獣人の村には本当にお世話になってしまったので、オレは改めてお礼を言って深々と頭をさげた。

「何を言っているのです。私たちの村はあなた達のお陰で救われたようなものなのです。色々規格外な事には驚きの連続でしたが」

 そう言って笑いながら逆にお礼を言ってくるその姿がちょっと見惚れてしまった。

(リリルが美少女過ぎるからあまり意識しなかったが、モフモフな耳×美少女なシラーさんはきっと日本なら熱烈なファンがいっぱい出来るだろうなぁ)

 などと益体やくたいの無い事を考えていたのは内緒です……。

 そして皆の別れの挨拶も終わり、オレ達はケリーに牽かれていよいよ出発する事となる。

「皆さま。本当にお気をつけて!」
「「「お気をつけてー!」」」

「本当にお世話になりました!絶対また尋ねますね!!」

 こうしてサルジ皇子の救出を成功させたオレ達は、獣人の皆に見送られ村を後にする。

 ただ……、ケルベロスのケリーに牽かれた馬車ソリは本気じゃない時のパズに負けず劣らずのスピードで、サルジ皇子の顔がひきつっていたのは通過儀礼って事にしておいて欲しい……。
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