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第二章 激動

【第56話:エルフの里】

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 はじまりの森の道を進むこと3時間。
 時間はまだ夕方には少し早かったのだが、高い木々のせいで夜のとばりがおりようとしていた。

「しまったな。このままじゃ里に着く前に日が暮れそうだ」
「そうですね。ユウトさんの地図だとあと少しで着きそうなんですけど…」

 リリルがオレから借り受けた魔法の地図を見ながらそう答える。
 そこでオレはある物を思い出す。

「あっ!あれがあった♪」

 オレはリュックからナイフを取り出し魔力をこめると、魔力の量に応じて鞘が眩しいほどに明るく光りだす。

「へ~。凄いわね。それもマジックアイテム?」

 とメアリが少し驚き聞いてくる。

「そそ。ナイフ自体は何の変哲もないナイフなんだけど、鞘は魔力を込めると光を灯すマジックアイテムなんだよ」

 オレはもともと変わったもの好きなので、なんかこういうグッズはワクワクしてしまう。
 しかし、メアリは

「な~んだ。凄い光だから聖なるナイフとか何か凄いの期待しちゃった」

 と、少年の心を踏みにじるのだった…。
 乾いた笑いで落ち込むオレを見たリリルの

「と、とりあえず明るいのは凄く助かりますし、照らすのお願いしますね!あ、明るいと夜になっても安心ですね~!」

 という気遣いが、更にオレの心をえぐるのだった…。
 ~
 そこから更に40分ほど馬車を走らせたところでメアリが

「あれよ!」

 と、指をさす。

 深い森の中に突然現れたその姿はまるで自然の要塞であった。
 地面から生えた木がそのまま集落の防壁になっており、その防壁の周り50mほどだけは木々が無く開けた空間となっている。
 その周りも何故か背の低い草木しか生えておらず、深い森の中に突然開けた空間があらわれたかと思うと、今度は自然の要塞が出現したように見えるため、初めて見る者にはより驚きを強くする。
 里自体はコルムスの街よりさらに一回り小さいのだが、その姿は森の中で威容を放っており、思わず息を飲むような迫力があった。
 エルフの里の人口などは公表されていないのでわからないが、2000人いないのではないかと言われていた。

 オレ達が進む道の先には大きな木の門があり、そこにはエルフと思われる戦士数人の姿が確認できた。
 馬車が門の近くまでたどり着くと、戦士風の男が

「スターベアの馬車とは珍しいですね。冒険者の方ですか?とりあえず身分証をお願いします」

 と話しかけてくる。
 コルムスの街から商人たちがよく訪れるらしいので、思ったより友好的なようだ。
 オレたちはギルドカードを提示し、

「すみません。オレたちはコルムスの街から使者として参りました。急を要する話なので族長にお取り次ぎ願えますか」

 と言ってロイ様から頂いた書簡を見せる。
 男は書簡に押されている封蝋印が本物なのを確認すると、お待ちくださいと言って急いで走り去るのだった。

 その時、横にいた別のエルフの女性が突然驚きの声をあげる。

「え!?メアリ様!?メアリ様じゃないですか!」
(ん?メアリ「様」?様付けって事はどこかいいとこの出なのかな?)

 しかし、答えるメアリの声は力なく

「ごめんなさい。もう二度とここを訪れるつもりはなかったのだけど…」

 と謝る声は消え入りそうだった。

「メアリ殿は偉い人なのでござるか?」

 メイが空気を読まずに質問すると、近寄ってきた別のエルフの女性が、

「偉いも何も我が里の族長のお嬢様です!」

 と、驚きの真実を伝えてくるのだった。
 ~
 メアリを取り囲むエルフの戦士たち。
 その皆に慕われている光景を見て

「え?…でも…って事は族長の娘を追放したのか?」

 とオレは思わず呟いてしまう。
 一瞬しまったと思うがエルフたちは口々に庇う様に

「そ、それは!?族長の独断なのです!」
「族長は厳しすぎるのです!メアリ様!気になさらないように!」
「我々は皆反対したのに族長が押し切ったのです!」
「そうです!メアリ様!気になさらずに帰ってきてください!」
「お嬢様お帰りなさいませ!」

 とエルフ達は次々に訴えてくる。

「あなた達…ありがとうね…」

 と、小さくほほ笑むメアリ。
 オレはそんなメアリを見て、

「メアリ…。部外者のオレの勝手な意見だけど、一度話し合ってみたらどう?」

 この後使者として会う事になるだろうし と話してみる。
 すると、メイが

「そうでござる!それにユウト殿の力なら、妹君も目覚める事間違いなしでござるよ!」

 楽勝でござる!とオレにプレッシャーをかけてきた…。

(何言ってんねん!?これでオレの力が通じなかったらどうするねん!)

 と内心でエセ関西弁のツッコミを入れる。
 それを聞いたリリルが

「メイちゃん。私たちの治癒が効くかどうかまだわからないんだからね」

 と言い聞かせるのだが、それでも目覚める可能性が出てきたとエルフ達は喜ぶのだった。

 そしてメアリがようやく族長ともう一度話してみる気になった頃、最初に対応してくれたエルフが戻ってくる。

「お待たせしました!族長たちがお会いするそうです!」
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