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第一章 旅立ち
【第33話:闇の尖兵 その3】
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ギルドを飛び出したオレは通りを疾駆しながら、このままじゃ間に合わないと、
「パズ!きっと本気出せばお前の方が早いだろ?先にいってリリルを頼む!」
と、パズにリリルを守ってやってくれと頼む。
するとパズは、
「ばうっぅ!」
と、一吠えするとオレの「頭の上」から飛び降りて残像を残すようなスピードで走り出す。
「愛しの人は任せろとか、そんなセリフどこで覚えたーー!」
と、オレの叫び声を置き去りにして走り去っていくのだった…。
~
その時、
「ユウト殿!どうなったでござるか!」
と、キントキに跨って追いかけてきたメイと合流する。
そしてそのまま走りながら、
「メイ!緊急事態だ!北の森でゴブリンの大群が発生していて、この街に向かって進行を始めようとしている!」
まずは『第三の目』で見えている内容をメイに伝える。
「な!?本当でござるか!?」
そして、驚くメイには悪いが時間がないので手短に伝える。
「本当だ!だからギルドと衛兵にこの事を伝えてくれ!それと、悪い知らせだがその森にリリルがいる!先にパズを向かわせているがオレもこのまま後を追う。だから街の方は頼む!」
メイは本当は自分もリリルを救いに向かいたかったが、
「!? わかったでござる!リリル殿を頼むでござるよ!」
そう言って、オレからはなれてギルドに向かっていくのだった。
~
パズは走っていた。
魔力炉を稼働し、全身に溢れんばかりの魔力を纏い、馬より早く走っていた。
そして街を飛び出し街道に出ると、更に2段階ほどギアをあげて街道を北にひた走る。
もう地上でパズよりも早く走れるものはいないのではないか?そう思える速度だった。
途中すれ違った馬車は、急にあがった砂ぼこりに驚くが、もうそこには何の姿も確認できなかった。
風のごとく疾駆しながらパズは転生した時を思い出していた。
セリミナ様に救ってもらった時、パズは普通のチワワよりも高い知能を一緒に授かっていた。
そしてユウトを助けてあげなさいと。
この力と頭でユウトを助けてあげれると思うと、パズは嬉しくてしかたなかった。
ただ、『朴念仁なユウトの為に一肌脱ぐか~』とか、チワワらしからぬ事を考えていたのは触れないでおこう…。
~
パズはユウトから送られてくるだいたいの場所のイメージに向かって疾駆している。
そしてあっという間に街道を駆け抜け問題の森の前にたどり着くと、すぐにリリルの匂いをキャッチする。
「ばう!」
と、一吠えするとパズの目の前に高速で回転する円状の氷の刃がいくつか出現する。
それを自分が向かう方向に飛ばすと、パズは再びその氷の刃を追うように駆け出すのだった。
ザザザザザ!!
複数の氷の刃が行く手の邪魔な草木を刈り取っていく。
その後ろを追うように走るパズは、森の中とは思えないような速度で駆け抜けていた。
そして、刈り取るのは草木だけではなかった。
「ギャギャ!」
突然現れるゴブリンたちを、鎧袖一触 氷の刃で切り刻んでいくのだ。
そしてその数が百体に届こうかという頃、ようやく目的の人物の元へとたどり着いたのだった。
~
リリルはいつまでたってもやってこない『痛み』と『死』に、不思議に思い目を開ける。
すると、迫っていたゴブリンが微動だにせず彫刻のように固まっていた。
いや…彫刻のようにではなく、ゴブリンは実際に氷の彫刻と化していたのだ。
「いったい…これってまさか!?」
そしてそのまさかが胸に飛び込んできた。
「きゃっ! パズくん!!」
「ばぅわぅ!」
パズを受け止めきれずに腰をつくリリルは、その小さな体を抱きしめる。
頬を舐められて、
「きゃ!くすぐったいよ。パズくん。ありがとー!」
と言って、パズを頭の上に持ち上げる。
そして肩の痛みがない事、あちこちの体の痛みが消えていることに気付いて、
「パズくん。治してくれたのね。ありがと!」
と言って、もう一度抱きしめるのだった。
~
自分の命がまだある事を噛みしめたリリルは、ユウトの姿を自然に探していた。
「パズくん。ユウトさんは一緒じゃないの?」
そうパズに尋ねると、パズは
「ばわぅばぅ」
と答えるのだが、やはりリリルには理解できなかった…。
「あぁ。ちょっとわかんないかな?パズくん、ごめんね」
と苦笑しパズにあやまると、自分の体の調子を確かめ立ちあがり、落とした杖を見つけて拾い上げる。
「パズくんがここにいるって事は、きっとユウトさんも近くにいるはずですよね」
そう呟いて移動を再開しようとした時だった。
「あら~。その従魔凄いわね~。加護持ちを始末しようと思ったら変なのが釣れちゃったわ~」
そこに聞き覚えのある声が響き渡ったのだった。
「パズ!きっと本気出せばお前の方が早いだろ?先にいってリリルを頼む!」
と、パズにリリルを守ってやってくれと頼む。
するとパズは、
「ばうっぅ!」
と、一吠えするとオレの「頭の上」から飛び降りて残像を残すようなスピードで走り出す。
「愛しの人は任せろとか、そんなセリフどこで覚えたーー!」
と、オレの叫び声を置き去りにして走り去っていくのだった…。
~
その時、
「ユウト殿!どうなったでござるか!」
と、キントキに跨って追いかけてきたメイと合流する。
そしてそのまま走りながら、
「メイ!緊急事態だ!北の森でゴブリンの大群が発生していて、この街に向かって進行を始めようとしている!」
まずは『第三の目』で見えている内容をメイに伝える。
「な!?本当でござるか!?」
そして、驚くメイには悪いが時間がないので手短に伝える。
「本当だ!だからギルドと衛兵にこの事を伝えてくれ!それと、悪い知らせだがその森にリリルがいる!先にパズを向かわせているがオレもこのまま後を追う。だから街の方は頼む!」
メイは本当は自分もリリルを救いに向かいたかったが、
「!? わかったでござる!リリル殿を頼むでござるよ!」
そう言って、オレからはなれてギルドに向かっていくのだった。
~
パズは走っていた。
魔力炉を稼働し、全身に溢れんばかりの魔力を纏い、馬より早く走っていた。
そして街を飛び出し街道に出ると、更に2段階ほどギアをあげて街道を北にひた走る。
もう地上でパズよりも早く走れるものはいないのではないか?そう思える速度だった。
途中すれ違った馬車は、急にあがった砂ぼこりに驚くが、もうそこには何の姿も確認できなかった。
風のごとく疾駆しながらパズは転生した時を思い出していた。
セリミナ様に救ってもらった時、パズは普通のチワワよりも高い知能を一緒に授かっていた。
そしてユウトを助けてあげなさいと。
この力と頭でユウトを助けてあげれると思うと、パズは嬉しくてしかたなかった。
ただ、『朴念仁なユウトの為に一肌脱ぐか~』とか、チワワらしからぬ事を考えていたのは触れないでおこう…。
~
パズはユウトから送られてくるだいたいの場所のイメージに向かって疾駆している。
そしてあっという間に街道を駆け抜け問題の森の前にたどり着くと、すぐにリリルの匂いをキャッチする。
「ばう!」
と、一吠えするとパズの目の前に高速で回転する円状の氷の刃がいくつか出現する。
それを自分が向かう方向に飛ばすと、パズは再びその氷の刃を追うように駆け出すのだった。
ザザザザザ!!
複数の氷の刃が行く手の邪魔な草木を刈り取っていく。
その後ろを追うように走るパズは、森の中とは思えないような速度で駆け抜けていた。
そして、刈り取るのは草木だけではなかった。
「ギャギャ!」
突然現れるゴブリンたちを、鎧袖一触 氷の刃で切り刻んでいくのだ。
そしてその数が百体に届こうかという頃、ようやく目的の人物の元へとたどり着いたのだった。
~
リリルはいつまでたってもやってこない『痛み』と『死』に、不思議に思い目を開ける。
すると、迫っていたゴブリンが微動だにせず彫刻のように固まっていた。
いや…彫刻のようにではなく、ゴブリンは実際に氷の彫刻と化していたのだ。
「いったい…これってまさか!?」
そしてそのまさかが胸に飛び込んできた。
「きゃっ! パズくん!!」
「ばぅわぅ!」
パズを受け止めきれずに腰をつくリリルは、その小さな体を抱きしめる。
頬を舐められて、
「きゃ!くすぐったいよ。パズくん。ありがとー!」
と言って、パズを頭の上に持ち上げる。
そして肩の痛みがない事、あちこちの体の痛みが消えていることに気付いて、
「パズくん。治してくれたのね。ありがと!」
と言って、もう一度抱きしめるのだった。
~
自分の命がまだある事を噛みしめたリリルは、ユウトの姿を自然に探していた。
「パズくん。ユウトさんは一緒じゃないの?」
そうパズに尋ねると、パズは
「ばわぅばぅ」
と答えるのだが、やはりリリルには理解できなかった…。
「あぁ。ちょっとわかんないかな?パズくん、ごめんね」
と苦笑しパズにあやまると、自分の体の調子を確かめ立ちあがり、落とした杖を見つけて拾い上げる。
「パズくんがここにいるって事は、きっとユウトさんも近くにいるはずですよね」
そう呟いて移動を再開しようとした時だった。
「あら~。その従魔凄いわね~。加護持ちを始末しようと思ったら変なのが釣れちゃったわ~」
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