槍使いのドラゴンテイマー

こげ丸

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Ⅱ ~勇者が暴走したので邪竜で蹴散らしておこうと思う~

【第3話:何か意外】

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 領主になって約1ヶ月、ようやく街が完成した。
 正確に言うとが完成した。

 今はまだオレたち『恒久の転生竜』のメンバーと、ゼクトたち5人を含む10数名の竜人ドラゴニュート
 一部、手伝いに来てくれている妖精族と、母さんぐらいだ。

 ちなみにゼクトたち5人のパーティー名は『輝く竜の爪』という名にしたようだ。
 彼らは竜言語魔法による強力な魔法も使えるが、どちらかと言うと竜化してその翼を活かした機動力を駆使し、爪で戦うスタイルがメインなので、特徴を捉えていて良いパーティー名だと思う。

 そう言えば、あと忘れてはいけない人たちがいた。
 王様がよこしてくれている執政官やら家庭教師やら領地運営していく上での指導、教育役の人たちだ。
 この人たちがいないと領地運営など不可能なのだから。

「しかし、凄いな……」

 オレは誰かに伝えるためというわけでもなく、領主館から見下ろす街並みを見て自然にそう言葉を発していた。
 しかしその呟きに、オレの後ろでいつも控えているテトラがこたえる。

「ご主人様に相応しい素晴らしい街でございます」

 街にいる間は、だいたいオレのそばにいて色々な仕事をこなして仕えてくれている。
 最初は少し遠慮していたのだが、遠慮する方が悲しむので最近は何かあれば頼むようにしてる。

 今の彼女からは想像もつかないが、元原初の魔王であり邪神でもある彼女が本気になれば、ジルほどではないにしても小国ぐらい一人で滅ぼしてしまうんじゃないだろうか……?

 そんな緑の髪の美少女の頭には、クルリと巻いたツノが見えるのだが、これはジルの強力な隠蔽魔法によって普通の人は見えていても見えなくなる。簡単に言えば見えていてもそれを認識出来なくなる。

「相応しいと言うより、オレには過ぎた街だよ」


 街の名は『竜に守られし街 ジルニトラ』。


 この世界では初となる最初から区画整理されたこの街は、おそらくこれから訪れるであろう多くの人を驚かすことになるだろう。

 領主館と言う名の白亜の城を中心に、東西南北には広い石畳の道が伸び、円状に広がる漆喰の壁の家々とそれを取り囲むように聳え立つ第城壁。

 耕作地はその第2城壁の外にあるが、この場所が静かなる森の中でそれなりの数の魔物が出るため、その耕作地を取り囲む第1城壁がさらに周りを固めている。

「コウガ様に言われた通り、街の中には一定間隔で樹木も植えましたし『公園』?という広場にも緑をたくさん植えましたよ!」

 どう? 褒めて! と話しかけてくるリルラの頭をわしゃわしゃと撫でてやる。

「またリルラばかりずるい……にゃ」

「それよりコウガ。今日はコウガの村の人たちや私たち獣人族、ヴィーヴルたち竜人ドラゴニュートを迎え入れるんだからゆっくりしている暇はないんじゃない?……にゃ」

 ルルーが軽く拗ねている横で、リリーが今日の予定を告げてくる。

「そうだったな。まずはオレの村の人たちを迎えにいく事になっているから、もう広場の方に移動しようか?」

 オレの故郷である名もなき村では集会が開かれ、話し合いの結果、今の村を捨てて全員こちらの街に移り住む事になっている。

 ほとんどの人が農民か狩人の村だから、仕事は変えずに続けられるだろう。

 しかし、ほぼ森の中と言っていい村で育った、山の中を駆け回って遊んでいた幼馴染たちが、この近代的な街でやっていけるのだろうかと、若干の不安があった。それが顔に出ていたのだろう。

「大丈夫です……にゃ」

「私たち双子も大森林の中で育ったけど、ひと月もすれば街での暮らしに慣れてましたから……にゃ」

 そう言うものなのだろうか。
 オレには前世の近代的な都会で育った記憶があるから、その辺りの感覚がいまいちわからなかった。

「リリーたちがそう言うのなら、そう言うものなのかもしれないな。とりあえずなんとか生活の基盤を作ってもらって、まずは街として機能するように頑張らないとだな」

「大丈夫です! ジル様もいますし、私たち仲間がいるんですから!」

 リルラがそう言ってまたオレの腰に抱きつこうとするが、ルルーに止められていた……。

「わかったよ。みんなありがと。じゃぁ、戯れていないで本当に向かおう!」

 オレはそう言うと、竜言語魔法を唱える。

≪導け! 【泡沫うたかたの翼】!≫

 オレの力ある言葉によって作り出された見えない何かが、周りにいる皆を包み込む。
 すると、そのまま今いるバルコニーから飛び立ち、遠くに見えていた広場までの移動が完了した。

「もう! それ使う時はちゃんと言ってください!……にゃ」

 リリーはこの集団移動魔法があまり好きじゃないようで、いつも使うと嫌そうな顔をする。

「リリー。でも、コウガ様のこの魔法凄く移動に便利ですよ?」

 リルラが何で嫌がるの? と言った顔で尋ねると、

「た、高い所はあまり好きではないだけです……にゃ」

 と小声で恥ずかしそうに答えるリリー。

 何か意外だなと思っていると、目の前の空間が大きく歪み始めた。

「お。ちょうど来るみたいだな」

 名もなき村には、妖精女王のクイと母さんが皆を迎えにいってくれていて、ここに『妖精の通り道』を使って集団移動する手はずになっていた。

 オレは久し振りに会う事になる皆の顔を思い浮かべ、その時を待つのだった。
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