110 / 141
Ⅱ ~勇者が暴走したので邪竜で蹴散らしておこうと思う~
【第3話:何か意外】
しおりを挟む
領主になって約1ヶ月、ようやく街が完成した。
正確に言うと住人を除く街が完成した。
今はまだオレたち『恒久の転生竜』のメンバーと、ゼクトたち5人を含む10数名の竜人。
一部、手伝いに来てくれている妖精族と、母さんぐらいだ。
ちなみにゼクトたち5人のパーティー名は『輝く竜の爪』という名にしたようだ。
彼らは竜言語魔法による強力な魔法も使えるが、どちらかと言うと竜化してその翼を活かした機動力を駆使し、爪で戦うスタイルがメインなので、特徴を捉えていて良いパーティー名だと思う。
そう言えば、あと忘れてはいけない人たちがいた。
王様がよこしてくれている執政官やら家庭教師やら領地運営していく上での指導、教育役の人たちだ。
この人たちがいないと領地運営など不可能なのだから。
「しかし、凄いな……」
オレは誰かに伝えるためというわけでもなく、領主館から見下ろす街並みを見て自然にそう言葉を発していた。
しかしその呟きに、オレの後ろでいつも控えているテトラがこたえる。
「ご主人様に相応しい素晴らしい街でございます」
街にいる間は、だいたいオレのそばにいて色々な仕事をこなして仕えてくれている。
最初は少し遠慮していたのだが、遠慮する方が悲しむので最近は何かあれば頼むようにしてる。
今の彼女からは想像もつかないが、元原初の魔王であり邪神でもある彼女が本気になれば、ジルほどではないにしても小国ぐらい一人で滅ぼしてしまうんじゃないだろうか……?
そんな緑の髪の美少女の頭には、クルリと巻いたツノが見えるのだが、これはジルの強力な隠蔽魔法によって普通の人は見えていても見えなくなる。簡単に言えば見えていてもそれを認識出来なくなる。
「相応しいと言うより、オレには過ぎた街だよ」
街の名は『竜に守られし街 ジルニトラ』。
この世界では初となる最初から区画整理されたこの街は、おそらくこれから訪れるであろう多くの人を驚かすことになるだろう。
領主館と言う名の白亜の城を中心に、東西南北には広い石畳の道が伸び、円状に広がる漆喰の壁の家々とそれを取り囲むように聳え立つ第2城壁。
耕作地はその第2城壁の外にあるが、この場所が静かなる森の中でそれなりの数の魔物が出るため、その耕作地を取り囲む第1城壁がさらに周りを固めている。
「コウガ様に言われた通り、街の中には一定間隔で樹木も植えましたし『公園』?という広場にも緑をたくさん植えましたよ!」
どう? 褒めて! と話しかけてくるリルラの頭をわしゃわしゃと撫でてやる。
「またリルラばかりずるい……にゃ」
「それよりコウガ。今日はコウガの村の人たちや私たち獣人族、ヴィーヴルたち竜人を迎え入れるんだからゆっくりしている暇はないんじゃない?……にゃ」
ルルーが軽く拗ねている横で、リリーが今日の予定を告げてくる。
「そうだったな。まずはオレの村の人たちを迎えにいく事になっているから、もう広場の方に移動しようか?」
オレの故郷である名もなき村では集会が開かれ、話し合いの結果、今の村を捨てて全員こちらの街に移り住む事になっている。
ほとんどの人が農民か狩人の村だから、仕事は変えずに続けられるだろう。
しかし、ほぼ森の中と言っていい村で育った、山の中を駆け回って遊んでいた幼馴染たちが、この近代的な街でやっていけるのだろうかと、若干の不安があった。それが顔に出ていたのだろう。
「大丈夫です……にゃ」
「私たち双子も大森林の中で育ったけど、ひと月もすれば街での暮らしに慣れてましたから……にゃ」
そう言うものなのだろうか。
オレには前世の近代的な都会で育った記憶があるから、その辺りの感覚がいまいちわからなかった。
「リリーたちがそう言うのなら、そう言うものなのかもしれないな。とりあえずなんとか生活の基盤を作ってもらって、まずは街として機能するように頑張らないとだな」
「大丈夫です! ジル様もいますし、私たち仲間がいるんですから!」
リルラがそう言ってまたオレの腰に抱きつこうとするが、ルルーに止められていた……。
「わかったよ。みんなありがと。じゃぁ、戯れていないで本当に向かおう!」
オレはそう言うと、竜言語魔法を唱える。
≪導け! 【泡沫の翼】!≫
オレの力ある言葉によって作り出された見えない何かが、周りにいる皆を包み込む。
すると、そのまま今いるバルコニーから飛び立ち、遠くに見えていた広場までの移動が完了した。
「もう! それ使う時はちゃんと言ってください!……にゃ」
リリーはこの集団移動魔法があまり好きじゃないようで、いつも使うと嫌そうな顔をする。
「リリー。でも、コウガ様のこの魔法凄く移動に便利ですよ?」
リルラが何で嫌がるの? と言った顔で尋ねると、
「た、高い所はあまり好きではないだけです……にゃ」
と小声で恥ずかしそうに答えるリリー。
何か意外だなと思っていると、目の前の空間が大きく歪み始めた。
「お。ちょうど来るみたいだな」
名もなき村には、妖精女王のクイと母さんが皆を迎えにいってくれていて、ここに『妖精の通り道』を使って集団移動する手はずになっていた。
オレは久し振りに会う事になる皆の顔を思い浮かべ、その時を待つのだった。
正確に言うと住人を除く街が完成した。
今はまだオレたち『恒久の転生竜』のメンバーと、ゼクトたち5人を含む10数名の竜人。
一部、手伝いに来てくれている妖精族と、母さんぐらいだ。
ちなみにゼクトたち5人のパーティー名は『輝く竜の爪』という名にしたようだ。
彼らは竜言語魔法による強力な魔法も使えるが、どちらかと言うと竜化してその翼を活かした機動力を駆使し、爪で戦うスタイルがメインなので、特徴を捉えていて良いパーティー名だと思う。
そう言えば、あと忘れてはいけない人たちがいた。
王様がよこしてくれている執政官やら家庭教師やら領地運営していく上での指導、教育役の人たちだ。
この人たちがいないと領地運営など不可能なのだから。
「しかし、凄いな……」
オレは誰かに伝えるためというわけでもなく、領主館から見下ろす街並みを見て自然にそう言葉を発していた。
しかしその呟きに、オレの後ろでいつも控えているテトラがこたえる。
「ご主人様に相応しい素晴らしい街でございます」
街にいる間は、だいたいオレのそばにいて色々な仕事をこなして仕えてくれている。
最初は少し遠慮していたのだが、遠慮する方が悲しむので最近は何かあれば頼むようにしてる。
今の彼女からは想像もつかないが、元原初の魔王であり邪神でもある彼女が本気になれば、ジルほどではないにしても小国ぐらい一人で滅ぼしてしまうんじゃないだろうか……?
そんな緑の髪の美少女の頭には、クルリと巻いたツノが見えるのだが、これはジルの強力な隠蔽魔法によって普通の人は見えていても見えなくなる。簡単に言えば見えていてもそれを認識出来なくなる。
「相応しいと言うより、オレには過ぎた街だよ」
街の名は『竜に守られし街 ジルニトラ』。
この世界では初となる最初から区画整理されたこの街は、おそらくこれから訪れるであろう多くの人を驚かすことになるだろう。
領主館と言う名の白亜の城を中心に、東西南北には広い石畳の道が伸び、円状に広がる漆喰の壁の家々とそれを取り囲むように聳え立つ第2城壁。
耕作地はその第2城壁の外にあるが、この場所が静かなる森の中でそれなりの数の魔物が出るため、その耕作地を取り囲む第1城壁がさらに周りを固めている。
「コウガ様に言われた通り、街の中には一定間隔で樹木も植えましたし『公園』?という広場にも緑をたくさん植えましたよ!」
どう? 褒めて! と話しかけてくるリルラの頭をわしゃわしゃと撫でてやる。
「またリルラばかりずるい……にゃ」
「それよりコウガ。今日はコウガの村の人たちや私たち獣人族、ヴィーヴルたち竜人を迎え入れるんだからゆっくりしている暇はないんじゃない?……にゃ」
ルルーが軽く拗ねている横で、リリーが今日の予定を告げてくる。
「そうだったな。まずはオレの村の人たちを迎えにいく事になっているから、もう広場の方に移動しようか?」
オレの故郷である名もなき村では集会が開かれ、話し合いの結果、今の村を捨てて全員こちらの街に移り住む事になっている。
ほとんどの人が農民か狩人の村だから、仕事は変えずに続けられるだろう。
しかし、ほぼ森の中と言っていい村で育った、山の中を駆け回って遊んでいた幼馴染たちが、この近代的な街でやっていけるのだろうかと、若干の不安があった。それが顔に出ていたのだろう。
「大丈夫です……にゃ」
「私たち双子も大森林の中で育ったけど、ひと月もすれば街での暮らしに慣れてましたから……にゃ」
そう言うものなのだろうか。
オレには前世の近代的な都会で育った記憶があるから、その辺りの感覚がいまいちわからなかった。
「リリーたちがそう言うのなら、そう言うものなのかもしれないな。とりあえずなんとか生活の基盤を作ってもらって、まずは街として機能するように頑張らないとだな」
「大丈夫です! ジル様もいますし、私たち仲間がいるんですから!」
リルラがそう言ってまたオレの腰に抱きつこうとするが、ルルーに止められていた……。
「わかったよ。みんなありがと。じゃぁ、戯れていないで本当に向かおう!」
オレはそう言うと、竜言語魔法を唱える。
≪導け! 【泡沫の翼】!≫
オレの力ある言葉によって作り出された見えない何かが、周りにいる皆を包み込む。
すると、そのまま今いるバルコニーから飛び立ち、遠くに見えていた広場までの移動が完了した。
「もう! それ使う時はちゃんと言ってください!……にゃ」
リリーはこの集団移動魔法があまり好きじゃないようで、いつも使うと嫌そうな顔をする。
「リリー。でも、コウガ様のこの魔法凄く移動に便利ですよ?」
リルラが何で嫌がるの? と言った顔で尋ねると、
「た、高い所はあまり好きではないだけです……にゃ」
と小声で恥ずかしそうに答えるリリー。
何か意外だなと思っていると、目の前の空間が大きく歪み始めた。
「お。ちょうど来るみたいだな」
名もなき村には、妖精女王のクイと母さんが皆を迎えにいってくれていて、ここに『妖精の通り道』を使って集団移動する手はずになっていた。
オレは久し振りに会う事になる皆の顔を思い浮かべ、その時を待つのだった。
0
お気に入りに追加
2,322
あなたにおすすめの小説
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
異世界なう―No freedom,not a human―
逢神天景
ファンタジー
クラスメイトと共に異世界に召喚された主人公、清田京助。これから冒険譚が始まる――と思った矢先、とある発言により城から追い出されてしまった。
それにめげず「AG」として異世界を渡り歩いていく京助。このままのんびりスローライフでも――なんて考えていたはずなのに、「神器」を手に入れ人もやめることになってしまう!?
「OK、分かった面倒くさい。皆まとめて俺の経験値にしてやるよ」
そうして京助を待ち受けるのは、勇者、魔王、覇王。神様、魔法使い、悪魔にドラゴン。そして変身ヒーローに巨大ロボット! なんでもありの大戦争! 本当に強い奴を決めようぜ! 何人もの主人公が乱立する中、果たして京助は最後まで戦い抜くことが出来るのか。
京助が神から与えられた力は「槍を上手く扱える」能力とほんの少しの心の強さのみ! これは「槍使い」として召喚された少年が、異世界で真の「自由」を手に入れるための救世主伝説!
*ストックが無くなったので、毎週月曜日12時更新です。
*序盤のみテンプレですが、中盤以降ガッツリ群像劇になっていきます。
*この作品は未成年者の喫煙を推奨するモノではありません。
転生した俺が神様になるまで
HR
ファンタジー
ゲーム廃人の佐藤裕は強盗に銃で撃たれて、異世界に転生!
・・・の前に神様とあって
「すべての職業になったら神になれるよ。」
と言われた佐藤裕改め、テル=ハングルはアルファ王国を支えるハングル家に転生して神様になる
っていう感じの作品です。
カクヨムと、小説家になろうでも連載しています。
面白いと思ったら
ブックマーク、感想、レビュー、評価をお願いします。
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
クラスメイトのなかで僕だけ異世界転移に耐えられずアンデッドになってしまったようです。
大前野 誠也
ファンタジー
ー
子供頃から体の弱かった主人公は、ある日突然クラスメイトたちと異世界に召喚されてしまう。
しかし主人公はその召喚の衝撃に耐えきれず絶命してしまった。
異世界人は世界を渡る時にスキルという力を授かるのだが、主人公のクラスメイトである灰田亜紀のスキルは死者をアンデッドに変えてしまうスキルだった。
そのスキルの力で主人公はアンデッドとして蘇ったのだが、灰田亜紀ともども追放されてしまう。
追放された森で2人がであったのは――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる