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Ⅰ ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~
【第107話:頑張ろう】
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あの王城での一幕から、既に十日が過ぎようとしていた。
そうだ。先に言っておこう。
あの映像はオレは覚えていないし、オレは何も見ていない。
……良し……話を進めよう。
謁見の後、すぐに大陸全ての国に、公式な国際魔法郵便で魔王を倒した旨が告げられた。
最初は突拍子もない内容に信じていない国もあったようなのだが、聖エリス神国からも魔王が女神の使徒たちによって滅ぼされたと神託がくだったと知らされ、手のひらを返したように使節団が組織されていた。
まだどの国の使節団も到着していないが、オレはその人たちと会わなければいけないらしく、未だ王都で足止めをくらっていた。
一応、オレたちのホームタウンはドアラの街だったはずなんだが、学術都市に行ったばっかりに全然帰れないでいる。
各国から派遣される使節団を待っている間も暇をしていたわけではなく、結局また貴族向けに式典と言う名のパーティーが開かれ、そこでオレは名誉子爵から昇爵して子爵位を授かった。
つまりオレの家は子爵家となった。
先日、母さんには名誉子爵となった時に手紙は出しておいたのだが、今度はちょっと会いに行って説明しないといけないだろう。
母さん驚くだろうな……。
いつかはA級冒険者になってドラゴンをテイムする! と言って、村を出てからまだ1年も経っていない。
それなのにドラゴンは規格外のをテイムしてるし、冒険者ランクはS級、月下の騎士の称号を受けた上に、魔王を倒して子爵となっている。
そして与えられた領地は村を含む、実家近辺。そこに街を作って統治する予定ときたものだ。
きっと証拠になるものをいっぱい持って行かないと、信じて貰えないのではないだろうか……。
他にも獣人族や竜人、妖精族の事とか……あ、あと母さんも貴族になったって報告もあるな。
家名を勝手に決めたら怒るだろうから、それも母さんと相談しないといけない。考えると今から頭が痛い。
女神の使徒の件は報告するべきかな……出来れば隠したいが……。
そう言えば、使徒は女神様から直接神託がくだると説明を受けたけど、あれから何もない。
以前、ジルに女神様を知っているか聞いてみた事があるが、何故か知らないようだった。
この世界の神様ではないということだろうか?
さすがにジルが知らなければ他に手がかりは無いので、もう神託がおりるのを待つしかないのだが。
そして今オレは……。
~
王都の門をくぐって街の中に入ると、どうやって知ったのかリルラが待ち構えていた。
「コウガ様! 酷いです!! 『静寂の丘』のトロールを全て片付けて帰ってきたらいないなんて!!」
馬車が作った轍に躓いてこけそうになりながらも、駆け寄ってきたリルラは ぽふっとオレの腰に抱きついた。
「こんな所で待っててくれたのか?」
「当たり前です! コウガ様と十日も離れる事になるなんて思ってもみませんでした!」
そんなの聞いてなかったです! と抗議の声をあげる。
「めっ! リルラはすぐそうやってコウガに抱きつく! 反則……にゃ」
「リルラばっかりズルい……にゃ」
そしてべりべりと引きはがされるリルラ……。
若干涙目になっているが、リリーとルルーもそこは容赦しなかった。
「それでコウガ。上手くいったの?……にゃ」
「あの空間は時間の流れが遅いだけじゃなくて、ジルさんが色々いじわるしてくるから本当に大変だったの……にゃ」
そう。オレはこの少し空いた時間を利用して、数十年分の特訓をしていたのだ。
ちょっとだけ肉体改造されちゃったので、肉体のスペックにあわせた動きや反応、技が繰り出せるようにと特訓をしていたのだ。
特訓相手は杏と柚が中心となり、大技などの実践練習はジルの呼び出す化け物共相手に行っていた。
「ご主人様。行く手を阻むこの者どもを駆逐してもよろしいでしょうか?」
「よろしくないから!? 仲間相手に駆逐禁止!!」
そうだった。テトラも何故か特訓について来て、杏と柚と一緒にオレの練習相手になってくれていた。
魔改造したオレの身体を以てしても、最初は全く歯が立たないほどの強さだったので、ジルがいなかったら世界の危機だった……と思ったら、ジルが邪竜の加護を与えていやがった。
ちなみに『恒久の転生竜』のメンバー、リリーとルルー、そしてリルラやヴィーヴルも、全員に邪竜の加護を与えて貰ったようだ。
ただ、以前のオレと同じで、加護の力を全て解放してしまうと肉体が持たないので、その効果はかなり押さえて貰っている。
「そう言えばコウガ。ジルさんはどこにいる?……にゃ」
「まさか……置いてきた!?……にゃ!?」
早とちりしたリリーとルルーが慌てだす。
そして子猫サイズになって足元にいたセツナまで少し慌てていた……。
「違う違う。なんかクイに呼ばれてな。妖精界に行っているよ」
こっちの世界に戻るときは、絶対にオレに場所とタイミングを確認するように言ってあるので、恐らく大丈夫だろう。
それに、何故か妖精たちとジルは意外と仲が良いのだ。
この世界で唯一ジルを預けていても安心できる場所が出来たのだ。その点は本当に妖精たちに感謝だった。
「そう言えば……ヴィーヴル達は冒険者の初心者講習、ちゃんと受けに行ったのか?」
いきなりS級スタートのヴィーヴルとB級スタートのゼクト達には、ネギさんのはからいで専属のA級冒険者パーティーが指導役で付いている。
ついているのだが……実は初心者講習はこれで2度目だ。
前回はヴィーヴルたちを初心者扱いした教官役のB級冒険者が瞬殺されたので、今回は王都唯一のS級冒険者であるナギさんと、その指導役のA級冒険者パーティーも教官役に加わって行われたはずだ。
「うん。大丈夫だったよ。ナギさんとヴィーヴルが死闘を繰り広げて、ちょっと鍛錬場が一つダメになったぐらい」
「リルラ……それは大丈夫だったとは言わない……にゃ」
そうなんですか? と言うリルラに、前に適当な事を教えて怒られたルルーが、悪戦苦闘しながら頑張って説明している。
最近はリルラが非常識なことを言っていると、すぐに訂正するようになったのだ。
きっとリルラが常識を身につける日も近い……はず。
「ま、まぁ、あまり大丈夫では無さそうだが、とりあえずは初心者講習は終わったようだし、あいつらも誘って飯でも行こうか?」
「はい! コウガ様と久しぶりのご飯です♪」
「「皆でご飯食べるの久しぶりです。嬉しい……にゃ」」
あんな大変な事態に巻き込まれても、変わらずついて来てくれる仲間がいる。
それが何だが無性に嬉しかった。
「そうだな! 皆で美味いものを食べて、ぷち祝勝会と行こう!!」
後でジルが拗ねる原因になってしまったが、何だかやっと日常が戻ってきたようで、本当に楽しい集まりだった。
~
まだまだこれからやらなければならない事は山積みだ。
だが、魔王も倒し……て隣に行儀よく控えているが、とにかく倒した。
この数か月を振り返ると本当に信じられないような事の連続で、今思い返しても現実に起こった事なのかと疑ってしまうほどだ。
でも……世界の脅威が去ったのは事実だ。
魔王がいなくなったことで魔王軍は統制を失って瓦解し、逃げ延びたと思われる6魔将の2人の生き残りにも目立った動きはみられない。
例え何か企んだとしても、妖精族が常に監視の目を光らせている。遅れをとる事は無いだろう。
これからは平和に領地運営を頑張ろう。
そして皆でまったりと生きていくんだ。
ちょっと思っていたのと違う人生を歩んでいる気がするが、ジルだって悪い奴ではない。
常識が無さ過ぎるだけで、話せばだいたいオレのいう事を聞いてくれる。
そもそもジルがいなければ多くの人が亡くなっていただろうし、世界は魔王に支配されていたかもしれない。
オレの相棒のジル。
その本当の名は『邪竜ジルニトラ』。本人は未だに『神竜ジルニトラ』だと思っているのは内緒の話だ。
*************************************************
これにて第一部、
『~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~』編
は、終わりとなります。
ここまでお読み頂き、本当にありがとうございました!
感謝です! 本当に泣きそうなぐらい感謝です!(*ノωノ)
続きは第二部、
『槍使いのドラゴンテイマー Ⅱ ~勇者が暴走したので邪竜で蹴散らしておこうと思う~』
として、よりパワーアップした内容でお届けいたしますので、引き続きこちらもご愛読よろしくお願いいたします!
あと宣伝になりますが、
・こげ丸初の感動ライトノベルファンタジー『忘れられた元勇者~絶対記憶少女と歩む第二の人生』
・こげ丸初の女性主人公の妖怪退治コメディ『着ぐるみ少女は土地神さまに物申す!!』
も好評連載中ですので、よろしくお願いいたします<(_ _")>
※アルファポリス様ではシリーズ管理が無いので、章で代用してこのまま連載は続きます。
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そうだ。先に言っておこう。
あの映像はオレは覚えていないし、オレは何も見ていない。
……良し……話を進めよう。
謁見の後、すぐに大陸全ての国に、公式な国際魔法郵便で魔王を倒した旨が告げられた。
最初は突拍子もない内容に信じていない国もあったようなのだが、聖エリス神国からも魔王が女神の使徒たちによって滅ぼされたと神託がくだったと知らされ、手のひらを返したように使節団が組織されていた。
まだどの国の使節団も到着していないが、オレはその人たちと会わなければいけないらしく、未だ王都で足止めをくらっていた。
一応、オレたちのホームタウンはドアラの街だったはずなんだが、学術都市に行ったばっかりに全然帰れないでいる。
各国から派遣される使節団を待っている間も暇をしていたわけではなく、結局また貴族向けに式典と言う名のパーティーが開かれ、そこでオレは名誉子爵から昇爵して子爵位を授かった。
つまりオレの家は子爵家となった。
先日、母さんには名誉子爵となった時に手紙は出しておいたのだが、今度はちょっと会いに行って説明しないといけないだろう。
母さん驚くだろうな……。
いつかはA級冒険者になってドラゴンをテイムする! と言って、村を出てからまだ1年も経っていない。
それなのにドラゴンは規格外のをテイムしてるし、冒険者ランクはS級、月下の騎士の称号を受けた上に、魔王を倒して子爵となっている。
そして与えられた領地は村を含む、実家近辺。そこに街を作って統治する予定ときたものだ。
きっと証拠になるものをいっぱい持って行かないと、信じて貰えないのではないだろうか……。
他にも獣人族や竜人、妖精族の事とか……あ、あと母さんも貴族になったって報告もあるな。
家名を勝手に決めたら怒るだろうから、それも母さんと相談しないといけない。考えると今から頭が痛い。
女神の使徒の件は報告するべきかな……出来れば隠したいが……。
そう言えば、使徒は女神様から直接神託がくだると説明を受けたけど、あれから何もない。
以前、ジルに女神様を知っているか聞いてみた事があるが、何故か知らないようだった。
この世界の神様ではないということだろうか?
さすがにジルが知らなければ他に手がかりは無いので、もう神託がおりるのを待つしかないのだが。
そして今オレは……。
~
王都の門をくぐって街の中に入ると、どうやって知ったのかリルラが待ち構えていた。
「コウガ様! 酷いです!! 『静寂の丘』のトロールを全て片付けて帰ってきたらいないなんて!!」
馬車が作った轍に躓いてこけそうになりながらも、駆け寄ってきたリルラは ぽふっとオレの腰に抱きついた。
「こんな所で待っててくれたのか?」
「当たり前です! コウガ様と十日も離れる事になるなんて思ってもみませんでした!」
そんなの聞いてなかったです! と抗議の声をあげる。
「めっ! リルラはすぐそうやってコウガに抱きつく! 反則……にゃ」
「リルラばっかりズルい……にゃ」
そしてべりべりと引きはがされるリルラ……。
若干涙目になっているが、リリーとルルーもそこは容赦しなかった。
「それでコウガ。上手くいったの?……にゃ」
「あの空間は時間の流れが遅いだけじゃなくて、ジルさんが色々いじわるしてくるから本当に大変だったの……にゃ」
そう。オレはこの少し空いた時間を利用して、数十年分の特訓をしていたのだ。
ちょっとだけ肉体改造されちゃったので、肉体のスペックにあわせた動きや反応、技が繰り出せるようにと特訓をしていたのだ。
特訓相手は杏と柚が中心となり、大技などの実践練習はジルの呼び出す化け物共相手に行っていた。
「ご主人様。行く手を阻むこの者どもを駆逐してもよろしいでしょうか?」
「よろしくないから!? 仲間相手に駆逐禁止!!」
そうだった。テトラも何故か特訓について来て、杏と柚と一緒にオレの練習相手になってくれていた。
魔改造したオレの身体を以てしても、最初は全く歯が立たないほどの強さだったので、ジルがいなかったら世界の危機だった……と思ったら、ジルが邪竜の加護を与えていやがった。
ちなみに『恒久の転生竜』のメンバー、リリーとルルー、そしてリルラやヴィーヴルも、全員に邪竜の加護を与えて貰ったようだ。
ただ、以前のオレと同じで、加護の力を全て解放してしまうと肉体が持たないので、その効果はかなり押さえて貰っている。
「そう言えばコウガ。ジルさんはどこにいる?……にゃ」
「まさか……置いてきた!?……にゃ!?」
早とちりしたリリーとルルーが慌てだす。
そして子猫サイズになって足元にいたセツナまで少し慌てていた……。
「違う違う。なんかクイに呼ばれてな。妖精界に行っているよ」
こっちの世界に戻るときは、絶対にオレに場所とタイミングを確認するように言ってあるので、恐らく大丈夫だろう。
それに、何故か妖精たちとジルは意外と仲が良いのだ。
この世界で唯一ジルを預けていても安心できる場所が出来たのだ。その点は本当に妖精たちに感謝だった。
「そう言えば……ヴィーヴル達は冒険者の初心者講習、ちゃんと受けに行ったのか?」
いきなりS級スタートのヴィーヴルとB級スタートのゼクト達には、ネギさんのはからいで専属のA級冒険者パーティーが指導役で付いている。
ついているのだが……実は初心者講習はこれで2度目だ。
前回はヴィーヴルたちを初心者扱いした教官役のB級冒険者が瞬殺されたので、今回は王都唯一のS級冒険者であるナギさんと、その指導役のA級冒険者パーティーも教官役に加わって行われたはずだ。
「うん。大丈夫だったよ。ナギさんとヴィーヴルが死闘を繰り広げて、ちょっと鍛錬場が一つダメになったぐらい」
「リルラ……それは大丈夫だったとは言わない……にゃ」
そうなんですか? と言うリルラに、前に適当な事を教えて怒られたルルーが、悪戦苦闘しながら頑張って説明している。
最近はリルラが非常識なことを言っていると、すぐに訂正するようになったのだ。
きっとリルラが常識を身につける日も近い……はず。
「ま、まぁ、あまり大丈夫では無さそうだが、とりあえずは初心者講習は終わったようだし、あいつらも誘って飯でも行こうか?」
「はい! コウガ様と久しぶりのご飯です♪」
「「皆でご飯食べるの久しぶりです。嬉しい……にゃ」」
あんな大変な事態に巻き込まれても、変わらずついて来てくれる仲間がいる。
それが何だが無性に嬉しかった。
「そうだな! 皆で美味いものを食べて、ぷち祝勝会と行こう!!」
後でジルが拗ねる原因になってしまったが、何だかやっと日常が戻ってきたようで、本当に楽しい集まりだった。
~
まだまだこれからやらなければならない事は山積みだ。
だが、魔王も倒し……て隣に行儀よく控えているが、とにかく倒した。
この数か月を振り返ると本当に信じられないような事の連続で、今思い返しても現実に起こった事なのかと疑ってしまうほどだ。
でも……世界の脅威が去ったのは事実だ。
魔王がいなくなったことで魔王軍は統制を失って瓦解し、逃げ延びたと思われる6魔将の2人の生き残りにも目立った動きはみられない。
例え何か企んだとしても、妖精族が常に監視の目を光らせている。遅れをとる事は無いだろう。
これからは平和に領地運営を頑張ろう。
そして皆でまったりと生きていくんだ。
ちょっと思っていたのと違う人生を歩んでいる気がするが、ジルだって悪い奴ではない。
常識が無さ過ぎるだけで、話せばだいたいオレのいう事を聞いてくれる。
そもそもジルがいなければ多くの人が亡くなっていただろうし、世界は魔王に支配されていたかもしれない。
オレの相棒のジル。
その本当の名は『邪竜ジルニトラ』。本人は未だに『神竜ジルニトラ』だと思っているのは内緒の話だ。
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これにて第一部、
『~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~』編
は、終わりとなります。
ここまでお読み頂き、本当にありがとうございました!
感謝です! 本当に泣きそうなぐらい感謝です!(*ノωノ)
続きは第二部、
『槍使いのドラゴンテイマー Ⅱ ~勇者が暴走したので邪竜で蹴散らしておこうと思う~』
として、よりパワーアップした内容でお届けいたしますので、引き続きこちらもご愛読よろしくお願いいたします!
あと宣伝になりますが、
・こげ丸初の感動ライトノベルファンタジー『忘れられた元勇者~絶対記憶少女と歩む第二の人生』
・こげ丸初の女性主人公の妖怪退治コメディ『着ぐるみ少女は土地神さまに物申す!!』
も好評連載中ですので、よろしくお願いいたします<(_ _")>
※アルファポリス様ではシリーズ管理が無いので、章で代用してこのまま連載は続きます。
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