槍使いのドラゴンテイマー

こげ丸

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Ⅰ ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~

【第76話:何してるんですか】

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 オレがドラゴンゾンビの瘴気の守りを【雷樹】でもって晴らしたのを見計らうように、その6人目の新たに現れた竜人ドラゴニュートが飛び込んできた。

「な!? ちょっと待て!?」

 オレの制止する声も聞こえているようだが、その竜人ドラゴニュートはかまわず瘴気を散らした部分に飛び込んで行き、その横顔に笑みを浮かべると何かの技を撃ち放つ。

≪塵と化せ! 【煉獄の裁き】!≫

 それは竜言語魔法の中で最も強力なものの1つ。
 最高クラスのブレスだった。

「これは!? ジルと同じブレス!?」

 その圧倒的な火力はドラゴンゾンビの体を一瞬で崩壊させて塵と化していく。
 威力やその範囲はジルのものと比べてかなり弱く狭い範囲だったが、それでも並のドラゴンブレスより遥かに強力なものだった。

「どう! 私の竜言語魔法にかかればこんなものよ!」

 その竜人ドラゴニュートはこちらを振り返って胸を張ってちょっと得意げにそう言い放つ。
 何か関わり合いにならない方が良い気がしてきたが、一応文句の1つも言っておかなければいけない。

 しかし、先に周りにいた竜人ドラゴニュートたちが声をあげていた。

「ヴィーヴル様! なぜここに!?」

「あれほど着いてきてはダメだと言ったではないですか!!」

「何抜け出してきてるんですか!?」

 そしてようやく驚きから立ち直った竜人ドラゴニュートたちが詰め寄ると、口々に抗議の声をあげる。

 しかし、抗議の声をあげたいのはオレの方だ。
 せっかく交渉して譲って貰ったのに結局ドラゴンゾンビを倒されてしまったのだから。

 しかもオレが瘴気を散らした絶好のタイミングで邪魔をされたのだ。

「ちょっと待ってください! 人が苦労して作ったチャンスを横から何してくれてるんですか!?」

 オレがちょっとイラっとしながらそう声をあげると、ゼトラが申し訳なさそうに謝ってくる。

「コウガ。本当にすまない。このお転婆姫様にはオレ達も本当に手をやいていてな」

 まぁオレもドラゴンゾンビをまた蘇らせろというつもりもないし、文句を言ったからってどうなるものでもないのはわかっている。

 ちょっとイラっとしただけだから言わずにいられなかっただけだ。
 そう思って「仕方ないな」と声をかけようとした時だった。

「何を謝っているの!? こんな人族に上位のドラゴンゾンビが討てるものですか! 私が倒さなかったら死んでたかもしれないんですからお礼を言って欲しいぐらいだわ!」

 そう言ってヴィーヴルと呼ばれた竜人ドラゴニュートがオレの前に舞い下りてきた。

「な!? ちょっと下手に出てたら酷い言い様ですね!! そもそもあそこでギフトが決まっていた……ら……え?……」

 オレもちょっとS級試験を失敗した事に売り言葉に買い言葉で言い返していると、ヴィーヴルの額に薄っすらと紋章が浮かんでいるのが目に入る。

「まさか……」

 そう言ってオレは左手の甲を見るとやはり紋章が浮かんでいる。

 ……どういう事だ……?

 亜竜に通じないぐらいなのだから当然竜人ドラゴニュートになんて通じるわけがないと思っていたのだが、オレの【竜を従えし者ギフト】が成功したと言うのか……。

「なによ! ギフトがって……あれ?……何か変な気分なんだけど……」

 ヴィーヴルの方も何かおかしい事に気付いたようだ。
 さっきまでこちらを見下すような目を向けていたヴィーヴルだったが、オレのギフトが効いているのか困惑した眼差しにかわっている。

「ヴィーヴル様? どうされました?」

 オレ達が喧嘩でもはじめるのかと慌てて飛び込んできたゼトラだったが、ヴィーヴルの様子が何かおかしい事に気付いてそう尋ねる。

「あぁ……ゼトラさん、落ち着いて聞いてください。たぶんですが、オレのギフトが効果を発揮して……オレと主従契約されてしまったかもしれないです……」

 ~

「はぁ!? それは本当かよ!?」

 オレはこのまま隠しておくわけにもいかず、オレがギフトもちで竜を従える能力を持っている事を打ち明けていた。

「本当です。でも、まさか竜人ドラゴニュートに効果を発揮するなんて思いもしませんでしたが……」

「そそ、それで……わわ私はどうすれば良いの? 何かあなたが側にいると落ち着かない気持ちになるのだけれど……」

 落ち着かないとはどういう事だろう? ジルからはそのような話は聞いた事がない。

「落ち着かない気持ちと言うのは仲間の竜からも聞いた事が無いのでわかりませんが、契約を破棄する事も出来るので大丈夫です」

「よ、良かったわ。何かあなたの側にいると胸が苦しくなって困ってたのよ」

「え!? 大丈夫ですか!?」

 良く見ると顔も赤い。何か体調に異変が起こっているのかもしれない。

「コウガよ! 急いで解除してくれないか!? もしかするとドラゴンハーフである我らだとギフトが何か悪影響を与えているのかもしれない!」

 ゼトラの言うように完全な竜ではないヴィーヴルと主従契約が結ばれている事自体が予想外の出来事だ。
 これは早めに解除した方が良いだろう。

「わかりました! それじゃぁ、すぐに契約を解除するからこちらに来てください!」

 ギフトの詳細まではわからないが、その使い方は自然と理解できている。
 契約の解除を行う場合は、紋章の現れているオレの左手をヴィーヴルの額にそっと添え、ただ解除を念じれば良いはずだ。

 オレはヴィーヴルの額に左手を添えて解除を実行する。

 すると、一瞬ほのかに紋章が光を発するのだが、何故か成功した時の手応えが無い。
 意識をしてもやはりヴィーヴルとの絆が絶たれた気配がない。

「あれ? おかしいな……もう一度!」

 しかし、その後何度繰り返しても結果は同じだった。

「コウガ! どうなっている!?」

「お前! わざとやっているんじゃないだろうな!」

 オレが上手く解除できないでいるのをわざとではないかと周りの竜人ドラゴニュート達が騒ぎ出す。

「ちょっと待ってくれ! オレは本当に解除しようとしている! しかし、なんでだ!」

「コウガよ。ギフトなら使い方やその使用条件などは自然と理解できているはずだろ? その使用条件などは何かないのか?」

 竜人ドラゴニュートの中で唯一まだ冷静なゼトラが確認してくる。

「そ、そうだな。特に解除の条件などは……ただ単に紋章を重ねてお互い解除を望めば……え?……」

 オレは手が少し引っ張られた事に驚き言葉を止める。

「えっと……何してるんですか……?」

 跪いているヴィーヴルが、オレの手を取って頬にスリスリしている所で目が合う。

 すると、「きゃっ♪」と言って真っ赤な顔を両手で顔を隠すヴィーヴル。

「コウガさん! 一生仕えさせて頂きます!」

「……へっ?……」

 どうなっているんだ……?
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