槍使いのドラゴンテイマー

こげ丸

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Ⅰ ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~

【第74話:あの? どの?】

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 まずオレの目に飛び込んできたのは巨大なドラゴンゾンビの姿だった。

 その巨躯はジルにこそ及ばないが、映像で見た金色こんじきの竜王『セイドリック』に迫る大きさで、生前はきっと名のある竜だったのではないだろうか?

 元々綺麗な緑色だったであろうその皮膚はただれ、輝いていたであろうその姿は今はもう見る影もない。

 しかし、鱗もかなり剥げ落ちているのにもかかわらず、瘴気が全身を覆っているのか、周りから放たれるを全てはねのけていた。

 そしてオレはその周りに目をやる。

 そこには5の竜の姿があった。

 いや……正確には竜のような姿をしたの姿があった。

「ダメだ!! ゼトラ! 一旦ひこう! このままではジリ貧だ!」

「俺も竜化がもう解ける! 一旦下がるぞ!」

「ダメだ! ここでひいたらもうグリンを止めれる者がいなくなっってしまう! 何としてでもここで仕留めるんだ!」

「くそぉ!! そうは言ってもよう! もう打つ手がねぇぞ!!」

 ん~これが見知った人種なら話しかけて譲ってもらっても良いのだが、どうするべきか……。

 オレも母さんから少し話を聞いただけなので確証はないのだが、彼らは竜人ドラゴニュートという種族じゃないだろうか?

 人が今のような繁栄を遂げる以前、とある傷ついた古代竜を助けた村があった。
 しかし、その村は程なくして魔物の襲撃を受けて滅んでしまう。
 その事を知った古代竜は怒り悲しみ、すぐに村に駆けつけると魔物の群れを全滅させるのだが、そこで近くの祠に隠されていた数人の赤子を見つける。
 古代竜はその赤子らに加護を与え、さらには自らの血、すなわち『竜の血』を与えて眷属とすると、竜の住む地に連れ帰り共に暮らしたという話だ。

 そのもの達は何度か時代の節目に現れ、過去には共に魔王軍とも戦ったとの記録がある。
 そこに記された姿が半人半竜の姿だったとされ、竜人ドラゴニュートという名がつけられたそうだ。

 今目の前で戦いを繰り広げている者たちの姿は、まさに半人半竜と呼べるだろう。
 どちらかと言うと人に近く、顔などは部分的に鱗に包まれているが人そのものだ。
 しかし、すらりと伸びた大きな尻尾や巨大な手足の爪、全身を覆う鱗の鎧などから普通の人でないのは一目瞭然である。

 やはり彼らは竜人ドラゴニュートだろう。

 その竜人ドラゴニュート達が巨大なドラゴンゾンビを取り囲み、二本足で地を駆け、手足の爪やブレスで攻撃をしかけてドラゴンゾンビのターゲットを奪うと、今度は別の者が同じ事を死角から繰り返す。

 連携も上手く一見すると圧倒しているように見える彼らだが、残念なことに攻撃そのものが効いていない。

 オレがその様子を観察していると、1人の竜人ドラゴニュートがこちらを振り返り、

「誰だ!! ゼトラ! 冒険者か何かが迷い込んでるぞ!」

 と叫びオレの方に向けて指を指す。

「なに!? くっ!? そこに隠れている奴! 危ないからここから離れるんだ!」

 どうやらバレてしまったようだ。
 しかしこのまま帰るわけにはいかいないし、覚悟を決めて出るか。

「オレはトリアデン王国冒険者ギルド所属のA級冒険者、『恒久の転生竜』のコウガ! そのドラゴンゾンビを一人で討伐する依頼を受けているのだが譲って貰えないだろうか?」

 そして訪れる沈黙。

 あれ……? 何かおかしな事言っただろうか?

「はぁ!? お前バカか!?」

「俺たちは竜人なんだぞ!? その俺たちが歯が立たないドラゴンゾンビこいつを1人で倒すつもりか!?」

 竜人だ? そもそも竜人の事自体あまり知らないから「あの」も「どの」も無いのだが。

「もしお前がドラゴンを倒した事があるとしても、こいつは普通のドラゴンゾンビではない! 竜王までもう少しの所まで成長していた最上位の竜の成れの果てだ! 普通のドラゴンより遥かに強いのだ!」

 そう言われても譲って貰えないと俺の依頼が、S級冒険者になる試験が失敗になってしまう。

「まぁまぁ。オレの強さが通用しないかどうか試させて貰って、通用しなければ大人しくあなた達の言う事を聞きます。だから少しだけ時間をくれませんか?」

 さすがにオレもこの竜人たちと対立するつもりはないので、何とか譲ってもらえるように頼んでみる。

「話を聞いていないのか!? おい! ゼトラ! 面倒くさいがオレがこいつを気絶させて遠くに連れていくから少しこの場を任せて良いか?」

「いや待て! ……こいつ……意外と強いぞ! 面白い! コウガとやら! 死んでも責任持てないがそれでも良いか!」

「な!? ゼトラ本気か!?」

「あぁ! こいつお前より強いかもしれんぞ?」

 なんだとー!とか言い合っているが、どうやらチャンスを貰えるようだ。

「もちろん問題ない! それじゃぁ5秒後に突撃するからあなた達は一旦ひいて下さい!」

「わかった!お前達もそれで良いな!」

 どうやらゼトラとか言う竜人がリーダーのようで皆を説得してくれる。

「それではいくぞ! ……4!……3!……2!……1!交代だ!」

「ありがとう! 黒闇穿天こくあんせんてん流槍術りゅうそうじゅつ、【月歩げっぽ】!」

こうしてオレのドラゴンゾンビとの戦いは始まった。
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