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Ⅰ ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~
【第73話:拍子抜け感が否めない】
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~リリー視点~
私たちは、2人でリルラとコウガの見送りをしてから出発する予定だったのですが……。
「「あぁ!? コウガ!?」」
リルラの後にコウガを転移させるっていう話をしていたんですが、ジルさんは同時にコウガも転移させてしまったみたいです。
別々の場所に転移魔法を並列で発動させた部分を驚けば良いのか、ジルさんのたまに見せる非常識さに驚けばいいのか迷う所です。
「行っちゃいました……にゃ」
「呆気に取られて別れの寂しさが吹っ飛んでしまった……にゃ」
私たちはジルさんをジト目で見つめるのですが、人の細かい表情を読めないジルさんには効果はありませんでした。
何かちょっと悔しいです……。
「別れのキスをとか思ってたのに残念……にゃ」
ルルーが抜け駆けしようとしていた事を呟いています。
まぁ私も同じような事を考えていたのですが、もう転移させてしまったので今更いろいろ言っても始まらないと諦める事にしました。
「もうコウガが転移してしまったので気持ちを切り替えましょう。それじゃぁジルさん。私たちも出発しましょうか? ……にゃ」
≪うむ。それでは向かうとするか。一応最後に確認しておくが本当に良いのだな?≫
「はい。もう覚悟は出来ています。神獣様の元にお願いします……にゃ」
そう。私たちの本当の目的地は獣人の里ではありません。
獣人の里の更に奥にある神獣様の森が本当の目的地なのです。
≪うむ。まぁたとえ死にそうな怪我を負っても我が治してみせるから、安心して試練に挑むと良い≫
そして私たちの本当の目的は、白き獣の獣人に伝わる神獣降臨の儀を執り行い、更なる高みを目指すこと。
ジルさんに飛竜サイズになってもらうと、ルルーと2人で背に跨ります。
最初は少し怖かったのですが、今では空の旅は大好きになったので少しわくわくします。
「「それじゃぁジルさん! お願いします! ……にゃ」」
そして私たちは、ジルさんと共に風のように飛びたったのでした。
~コウガ視点~
オレは跪いて胃が落ち着くのを待っていた……。
「うぅ……気持ち悪い……」
ただでさえ転移と言うのは気分が悪くなるのに、心構えもなくいきなり飛ばされたので輪をかけて気持ち悪かったのだ。
オレは吐き気をなんとか抑えつつ当たりを見渡す。
「えっと……いったい……ここはどこなんだ?」
ジルにはあらかじめ飛ばす場所は伝えてあったし間違える事は無いと思うのだが、ギルドマスターから聞いていた『欺瞞の迷宮』の情報と全く一致しなかった。
ギルドマスターの説明では『欺瞞の迷宮』は蔦の絡まる緑に覆われた石造りの迷宮と言う話だったのだが、オレの目に映るこの迷宮の姿に緑は一つも存在していなかった。
オレは背に固定していた雷槍『ヴァジュランダ』を手に持ち構えると、警戒のランクを一段あげておく。
「これはどう見ても何か争った後だよな……」
オレは迷宮の入り口付近の安全な場所に転移してもらっていたのだが、周りの木々は全て枯れるか焼け落ち、迷宮の壁には石が焦げたような黒い跡が散見される。
ちなみにこの『欺瞞の迷宮』は蔦が壁を覆い、その成長した木々が視界を阻み、昼間の太陽の光さえ届きにくいという話を聞いていたのだが……その光景は存在していなかった。
通路まで浸食した蔦が行く手を阻むという話だったがのだがそれもない……。
「あ、明るいな……そして凄い奥まで通路が見通せるのだが……」
どちらかと言うとドラゴンゾンビより迷宮に一人で挑む事に不安を感じていたので、オレとしては大助かりなのだが正直ちょっと拍子抜け感が否めない。
まぁこれで迷う心配がなくなったし、ドラゴンゾンビは迷宮最奥にいると言う話だったから有難く進ませてもらおう。
~
迷宮に足を踏み入れて5時間ぐらい歩いた時だろうか。
少し遠くで何か争うような音が聞こえてきた。
「なんだ……? 複数の爆発音や金属音、それにこれは……ブレスの音だ! 誰かとドラゴンゾンビが戦っているのか!?」
オレは複雑に入り組んだ迷宮の壁を【月歩】で飛び越え、ショートカットで音の聞こえる方に壁から壁へと飛び移りながら駆けていく。
今まではどこでドラゴンゾンビと出会うかわからないので体力を温存していたのだが、そのような場合ではないだろう。
高い迷宮の壁に遮られてその戦いの様子は中々見えないが、戦いの音が段々と近づいてきているのでこちらで間違いない。
そうして壁から壁へと駆け出して数分、ようやくその戦いの様子が見えてきたのだった。
「なんだ!? あいつらは!?」
私たちは、2人でリルラとコウガの見送りをしてから出発する予定だったのですが……。
「「あぁ!? コウガ!?」」
リルラの後にコウガを転移させるっていう話をしていたんですが、ジルさんは同時にコウガも転移させてしまったみたいです。
別々の場所に転移魔法を並列で発動させた部分を驚けば良いのか、ジルさんのたまに見せる非常識さに驚けばいいのか迷う所です。
「行っちゃいました……にゃ」
「呆気に取られて別れの寂しさが吹っ飛んでしまった……にゃ」
私たちはジルさんをジト目で見つめるのですが、人の細かい表情を読めないジルさんには効果はありませんでした。
何かちょっと悔しいです……。
「別れのキスをとか思ってたのに残念……にゃ」
ルルーが抜け駆けしようとしていた事を呟いています。
まぁ私も同じような事を考えていたのですが、もう転移させてしまったので今更いろいろ言っても始まらないと諦める事にしました。
「もうコウガが転移してしまったので気持ちを切り替えましょう。それじゃぁジルさん。私たちも出発しましょうか? ……にゃ」
≪うむ。それでは向かうとするか。一応最後に確認しておくが本当に良いのだな?≫
「はい。もう覚悟は出来ています。神獣様の元にお願いします……にゃ」
そう。私たちの本当の目的地は獣人の里ではありません。
獣人の里の更に奥にある神獣様の森が本当の目的地なのです。
≪うむ。まぁたとえ死にそうな怪我を負っても我が治してみせるから、安心して試練に挑むと良い≫
そして私たちの本当の目的は、白き獣の獣人に伝わる神獣降臨の儀を執り行い、更なる高みを目指すこと。
ジルさんに飛竜サイズになってもらうと、ルルーと2人で背に跨ります。
最初は少し怖かったのですが、今では空の旅は大好きになったので少しわくわくします。
「「それじゃぁジルさん! お願いします! ……にゃ」」
そして私たちは、ジルさんと共に風のように飛びたったのでした。
~コウガ視点~
オレは跪いて胃が落ち着くのを待っていた……。
「うぅ……気持ち悪い……」
ただでさえ転移と言うのは気分が悪くなるのに、心構えもなくいきなり飛ばされたので輪をかけて気持ち悪かったのだ。
オレは吐き気をなんとか抑えつつ当たりを見渡す。
「えっと……いったい……ここはどこなんだ?」
ジルにはあらかじめ飛ばす場所は伝えてあったし間違える事は無いと思うのだが、ギルドマスターから聞いていた『欺瞞の迷宮』の情報と全く一致しなかった。
ギルドマスターの説明では『欺瞞の迷宮』は蔦の絡まる緑に覆われた石造りの迷宮と言う話だったのだが、オレの目に映るこの迷宮の姿に緑は一つも存在していなかった。
オレは背に固定していた雷槍『ヴァジュランダ』を手に持ち構えると、警戒のランクを一段あげておく。
「これはどう見ても何か争った後だよな……」
オレは迷宮の入り口付近の安全な場所に転移してもらっていたのだが、周りの木々は全て枯れるか焼け落ち、迷宮の壁には石が焦げたような黒い跡が散見される。
ちなみにこの『欺瞞の迷宮』は蔦が壁を覆い、その成長した木々が視界を阻み、昼間の太陽の光さえ届きにくいという話を聞いていたのだが……その光景は存在していなかった。
通路まで浸食した蔦が行く手を阻むという話だったがのだがそれもない……。
「あ、明るいな……そして凄い奥まで通路が見通せるのだが……」
どちらかと言うとドラゴンゾンビより迷宮に一人で挑む事に不安を感じていたので、オレとしては大助かりなのだが正直ちょっと拍子抜け感が否めない。
まぁこれで迷う心配がなくなったし、ドラゴンゾンビは迷宮最奥にいると言う話だったから有難く進ませてもらおう。
~
迷宮に足を踏み入れて5時間ぐらい歩いた時だろうか。
少し遠くで何か争うような音が聞こえてきた。
「なんだ……? 複数の爆発音や金属音、それにこれは……ブレスの音だ! 誰かとドラゴンゾンビが戦っているのか!?」
オレは複雑に入り組んだ迷宮の壁を【月歩】で飛び越え、ショートカットで音の聞こえる方に壁から壁へと飛び移りながら駆けていく。
今まではどこでドラゴンゾンビと出会うかわからないので体力を温存していたのだが、そのような場合ではないだろう。
高い迷宮の壁に遮られてその戦いの様子は中々見えないが、戦いの音が段々と近づいてきているのでこちらで間違いない。
そうして壁から壁へと駆け出して数分、ようやくその戦いの様子が見えてきたのだった。
「なんだ!? あいつらは!?」
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