槍使いのドラゴンテイマー

こげ丸

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Ⅰ ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~

【第36話:カリンちゃんの憂鬱 その2】

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 ~少し遡ってカリン視点~

 私は今日も一日頑張って仕事を終え、『妖精の呼子亭自宅』に帰ってきました。
 今日も沢山の可愛い妖精たちに迎えられ、一日の疲れが吹き飛ぶようです。

「うん!妖精コレクションは、いつ見ても可愛いな♪」

 この宿が繁盛しているのもきっと、がお客様を迎えてくれているからでしょう!
 また、雑貨屋さんを巡って妖精のオブジェを買わないと♪

 ~

 しかし、私のさっきまでの楽しい気分も一気に沈んでしまいます。

「お母さん、今日もコウガさん帰ってきていないの?」

 コウガさんは昨日に続いて今日も宿に帰ってきていないようです。本当に心配です……。

「心配しなくても大丈夫よ~。あらかじめ3日ぐらいは帰らないかもって聞いてるんだから」

 お母さんはそう言いますが、街の外で一夜明かすのがどれほど危険な事かわかっていないのです。
 それにさっきお母さんに聞いた話では、リリーさんとルルーさんも帰ってきていないと言うではないですか!?

 これは緊急事態です!
 別の意味でコウガさんが危険です!

 私もギルドの受付嬢ではなく冒険者ならと、少し二人が羨ましいです……。

 そして私は決めました!
 もうこれ以上は待てません!

 そう!カリン捜索隊を組織し、コウガさんを探しに行くのです!

「と言っても、働き始めたばかりのの私にそんな権限ないですし……どうしましょう……」

 私は自室でオロオロしながらも何か良い案がないか必死に考えます。

「リリリリ~~♪」

 その時でした。どこかから何か鈴の音のような澄んだ綺麗な音が聞こえてきました。

「何でしょう?」

 私はその音を頼りに探ってみると、どうやら窓の外から聞こえてくるようです。
 私は窓に近づくとカーテンを開けて、窓を開いたのですが……、

「リリリリ~~♪」

 すると何かが勢いよく飛び込んでくるではないですか。

「きゃっ!?ぁ痛っ!?」

 私は驚き、思わず尻餅をついてしまいます。

「痛~い……いったいなにぃ?」

 お尻をさすりながら立ち上がった私でしたが、今度は別の驚きで固まってしまいます。

「リリリリ~~♪」

 なんと私の周りをが、ぐるぐると飛び回っているではないですか!

 この世界では妖精さんは幸せを運んでくる実在する生物としてとても有名です。
 私がまだ子供の頃、亡くなったお父さんに貰った絵本に出てくる妖精のお話が大好きで、お母さんに毎晩のように読んで貰っていました。
 しかし、その希少性から一生会う事はないだろうと思っていたのですが、まさか妖精さんの方から私の部屋に飛び込んで来てくれるなんてまるで夢のようです!……夢?

「あ!もしかして夢でしょうか?……あ痛!?」

 頬を思いっきりつねってみましたが夢ではなかったようです。
 もう少し加減してつねれば良かったです……頬がちょっと赤くなってしまいました。

「でも……本物の妖精さんだぁ~♪」

 妖精さんはキラキラとまるで鱗粉のような光の粒を振りまきながら、嬉しそうに私の部屋の中を飛び回っています。
 暫くその幻想的な光景に見とれていた私でしたが、

「あ!妖精さんはもしかして私と友達になってくれるのでしょうか?」

 本に書かれていた事を思い出し、友達になってもらえるのかと尋ねてみます。
 本の中では妖精さんと友達になる事が出来れば、色々なお願いを聞いてくれるとありました。

「リリリリ~~♪」

 どうやら妖精さんは友達になってくれるようです!
 え?何でわかるのかって?何となくそう言っている気がするんです!

「リリリリ~~♪」

「え?契約?何か良くわからないですが、友達契約ですね!もちろんOKですよ!」

 やっぱり私は妖精さんが言ってる事がわかるようです。そこの疑った人!本当なんですから反省してください。

 話がそれました。

「リリリリ~~♪」

 私は妖精さんの言う通り、左手の甲を上にして手を水平に伸ばします。
 すると、妖精さんはくるりと宙を舞うと私の手の甲の上まで飛んできて、そっと口づけをしたのです。

「……え?」

 一瞬左の手の甲が光ったかと思うと、何か綺麗な紋章のようなものが見えてそのまま手の甲に吸い込まれるように消えていきます。

「リリリリ~~♪」

 妖精さんも何か凄く喜んでくれているようで、部屋の中を舞うように飛び回っています。
 私も妖精さんと何か絆のようなものが繋がった感覚がありました。

 まさか本の中の御伽噺おとぎばなしとばかり思っていた妖精さんと絆が結べるなんて!今日は何て最高の日なのでしょう♪

「そうだ!妖精さん妖精さん!私のお願い事を聞いてくれませんか?」

 ちょっと友達になったばかりで図々しいかと思いましたが、背に腹は代えられません。

「リリリリ~~♪」

 良かった。妖精さんも喜んできいてくれるそうです。

「実はですね。私の大切な冒険者さんの行方がわからないのです……」

 私が事情を話すと、妖精さんは「任せて!」って気持ちを伝えてきます。
 どうやら妖精さんは『妖精の眼フェアリーアイ』というギフトを持っているようで、いつでもそっと気付かれずに思い人の様子を伺う事ができるそうです。
 残念ながら私が直接覗き見る事はできないようですが、これでいつでも大切な冒険者コウガさんの様子がわかります!

「担当受付嬢たる者、しっかりと様子を把握しておかないと いけないですからね!」

 これは受付嬢としての責務です!義務です!使命です!

 さぁとりあえず双子の姉妹リリーさん達と一緒にいない事……無事な事はわかりましたし、これからもしっかりと監視サポートしていかないと!
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