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第14話 探索と討伐
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冒険者ギルドをあとにして1時間ほど。
ようやくファングボアが生息していると教えて貰った場所にたどり着いた。
どちらの討伐対象の生息地も隣接する『古代の森』の低層から中層にかけての境界付近。
空を飛べば一瞬だったのだが、せっかくだから地理を覚えるために歩いて向かった。
いや、正確に言うと歩いてはいないか。
歩いて向かうと4時間ほどかかると聞いていたので、途中で見かけた魔物はすべてやり過ごして駆け抜けてきた。
ちなみにこの古代の森は、エルフの国のある『精霊の森』、それに隣接している『魔の森』にならぶ、この世界では3番目に大きな森だ。
古代の森では、低層、中層、深層と区分けがされており、基本的には低層はF~Dランクの一般冒険者が、中層はC~Aの高ランク冒険者が受け持つ形になっている。
そして深層は、特別な理由がない限り立ち入りが禁止されており、低層や中層と呼ばれているエリアの何倍もの大きさがあるそうだ。
「じゃぁ、さっそく探してみるか」
普通は狩人の追跡術のような技能がなければ、この討伐対象を見つけるまでが大変だったりするのだが、オレは長年魔の森で戦ってきたので並の狩人よりもその手の技能はすぐれている。
だから、普通に探しても難しくないはずだ。
ただ、今回は初めての依頼だしさっさと終わらせたいので……。
「シルフよ。ちょっと手分けしてファングボアとサーベルキャットを探してきてくれないか?」
と声に魔力を乗せてお願いする。
すると、ひらひらと宙を舞う半透明の少女が次々に現れ、楽しそうにオレに微笑みかけると四方へと散っていった。
これですぐに何匹かの居場所はわかるだろう。
ほかにも人族が使う探索系の魔法でもやれないことはないのだが、魔物の種類まで判別するのは難しいので使わなかった。
特に今回のように実際に会ったことのない魔物だと、魔力の反応を見て判断するのがさらに難しい。
上位種なら魔の森にもいたのだが、ファングボアやサーベルキャットなどの弱い魔物は、あそこでは生きていけないから生息していなかったのだ。
そんなことを考えていると、耳元で囁きが聞こえた。
「おっと……もう見つけたのか」
精霊は基本的に声に出して話すことはできない。
だがシルフに関しては、風を操ることで遠く離れていても会話が可能なため、このような偵察や探索任務にすごく向いている。
「見つかったのはファングボアか」
報告してくれたシルフの場所なら、走ればここから10分とかからないだろう。
ほかのシルフたちにはそのまま探索を続けてもらい、オレは走ってその場所へと向かった。
◆
森を疾風のごとく駆け抜け、想定通り10分ほどでたどり着くと、そこには二頭のファングボアが睨み合っていた。
普段は単独で行動するファングボアだが、そういえばさっき見せてもらった資料に縄張りを作る習性があると書いてあったのを思い出す。
どうやら縄張り争いのようだ。
「横槍入れて悪いが依頼なんでな」
オレは腰から細身の剣を抜くと、ファングボアがこちらに気づく前に一息で間合いを詰め、逆袈裟にまずは一頭の首を狙って斬り上げた。
「まずはいっぴき……」
ファングボアは牛ほどの大きさがあり、比較的頑丈な身体を持っているが、魔力を纏った刀身にはなんの抵抗も感じられなかった。
上位種でも梃子摺るような相手ではないので、こんなものだろう。
オレは意識をすこし離れた場所で驚愕する二頭目のファングボアに切り替え、立ち直る前にまた一息で間合いを詰める。
そして……さきほどの焼き直しのように剣を天へと振り抜いた。
「はい。かんりょ」
さすがに1000年もの間、魔の森で魔物と戦い続けていたので初めての討伐依頼といっても感じるものは特になにもなかったな。
「あ……だけどこれ、よく考えたらどうやって納品するんだ?」
討伐依頼にはおおまかに2種類のパターンがある。
危険な魔物を討伐すること自体が目的の依頼と、素材が目的の依頼だ。
ファングボアの場合は後者だ。
次元収納にいれるので血抜きなどせずに格納しても問題はない。
中に入れたものの時間が停止するし、血や汚れがどこかに付いて汚れるようなこともないからだ。
だけど、ギルドでそのまま取り出してしまうとまた血が流れ始めるので、周りを汚してしまうことになるだろう。
「凍らせとくか」
魔の森の魔物は死王の力とするためにすべて贄として捧げていたが、まだその力を編み出す前、他の種族の者たちと戦っていた頃は、人族の魔法使いがよく凍らせて持ち帰っていたのを思い出した。
『万物を構成する数多の元素よ。あらゆる振動を停止し、仮初めの永遠の中へといざなえ!』
体内にマナサークルを作り、魔力を言葉にのせて呪文として発動する。
『”絶対零度”』
すると、二頭のファングボアが一瞬で白く染まり冷気を放った。
人族が用いる魔法のひとつ『属性魔法』だ。
「これでよしと」
オレはファングボアが凍っているのを確認するとさっさと次元収納に格納する。
今回は魔法の効果範囲を魔物の身体だけに絞って発動させたので、はやく次元収納に入れてしまわないと溶けてしまう。
ちなみに次元収納のような魔法は『幻想魔法』と呼ばれ、こちらは呪文を必要としない。
それぞれ長所と短所があるのでオレは状況によって使い分けているが、幻想魔法の方はなかなか使える者がいないらしい。
「さて……次はサーベルキャットを狩るかな」
オレは討伐中も次々と入ってきていた囁きから、一番近いサーベルキャットの元へとふたたび駆け出したのだった。
ようやくファングボアが生息していると教えて貰った場所にたどり着いた。
どちらの討伐対象の生息地も隣接する『古代の森』の低層から中層にかけての境界付近。
空を飛べば一瞬だったのだが、せっかくだから地理を覚えるために歩いて向かった。
いや、正確に言うと歩いてはいないか。
歩いて向かうと4時間ほどかかると聞いていたので、途中で見かけた魔物はすべてやり過ごして駆け抜けてきた。
ちなみにこの古代の森は、エルフの国のある『精霊の森』、それに隣接している『魔の森』にならぶ、この世界では3番目に大きな森だ。
古代の森では、低層、中層、深層と区分けがされており、基本的には低層はF~Dランクの一般冒険者が、中層はC~Aの高ランク冒険者が受け持つ形になっている。
そして深層は、特別な理由がない限り立ち入りが禁止されており、低層や中層と呼ばれているエリアの何倍もの大きさがあるそうだ。
「じゃぁ、さっそく探してみるか」
普通は狩人の追跡術のような技能がなければ、この討伐対象を見つけるまでが大変だったりするのだが、オレは長年魔の森で戦ってきたので並の狩人よりもその手の技能はすぐれている。
だから、普通に探しても難しくないはずだ。
ただ、今回は初めての依頼だしさっさと終わらせたいので……。
「シルフよ。ちょっと手分けしてファングボアとサーベルキャットを探してきてくれないか?」
と声に魔力を乗せてお願いする。
すると、ひらひらと宙を舞う半透明の少女が次々に現れ、楽しそうにオレに微笑みかけると四方へと散っていった。
これですぐに何匹かの居場所はわかるだろう。
ほかにも人族が使う探索系の魔法でもやれないことはないのだが、魔物の種類まで判別するのは難しいので使わなかった。
特に今回のように実際に会ったことのない魔物だと、魔力の反応を見て判断するのがさらに難しい。
上位種なら魔の森にもいたのだが、ファングボアやサーベルキャットなどの弱い魔物は、あそこでは生きていけないから生息していなかったのだ。
そんなことを考えていると、耳元で囁きが聞こえた。
「おっと……もう見つけたのか」
精霊は基本的に声に出して話すことはできない。
だがシルフに関しては、風を操ることで遠く離れていても会話が可能なため、このような偵察や探索任務にすごく向いている。
「見つかったのはファングボアか」
報告してくれたシルフの場所なら、走ればここから10分とかからないだろう。
ほかのシルフたちにはそのまま探索を続けてもらい、オレは走ってその場所へと向かった。
◆
森を疾風のごとく駆け抜け、想定通り10分ほどでたどり着くと、そこには二頭のファングボアが睨み合っていた。
普段は単独で行動するファングボアだが、そういえばさっき見せてもらった資料に縄張りを作る習性があると書いてあったのを思い出す。
どうやら縄張り争いのようだ。
「横槍入れて悪いが依頼なんでな」
オレは腰から細身の剣を抜くと、ファングボアがこちらに気づく前に一息で間合いを詰め、逆袈裟にまずは一頭の首を狙って斬り上げた。
「まずはいっぴき……」
ファングボアは牛ほどの大きさがあり、比較的頑丈な身体を持っているが、魔力を纏った刀身にはなんの抵抗も感じられなかった。
上位種でも梃子摺るような相手ではないので、こんなものだろう。
オレは意識をすこし離れた場所で驚愕する二頭目のファングボアに切り替え、立ち直る前にまた一息で間合いを詰める。
そして……さきほどの焼き直しのように剣を天へと振り抜いた。
「はい。かんりょ」
さすがに1000年もの間、魔の森で魔物と戦い続けていたので初めての討伐依頼といっても感じるものは特になにもなかったな。
「あ……だけどこれ、よく考えたらどうやって納品するんだ?」
討伐依頼にはおおまかに2種類のパターンがある。
危険な魔物を討伐すること自体が目的の依頼と、素材が目的の依頼だ。
ファングボアの場合は後者だ。
次元収納にいれるので血抜きなどせずに格納しても問題はない。
中に入れたものの時間が停止するし、血や汚れがどこかに付いて汚れるようなこともないからだ。
だけど、ギルドでそのまま取り出してしまうとまた血が流れ始めるので、周りを汚してしまうことになるだろう。
「凍らせとくか」
魔の森の魔物は死王の力とするためにすべて贄として捧げていたが、まだその力を編み出す前、他の種族の者たちと戦っていた頃は、人族の魔法使いがよく凍らせて持ち帰っていたのを思い出した。
『万物を構成する数多の元素よ。あらゆる振動を停止し、仮初めの永遠の中へといざなえ!』
体内にマナサークルを作り、魔力を言葉にのせて呪文として発動する。
『”絶対零度”』
すると、二頭のファングボアが一瞬で白く染まり冷気を放った。
人族が用いる魔法のひとつ『属性魔法』だ。
「これでよしと」
オレはファングボアが凍っているのを確認するとさっさと次元収納に格納する。
今回は魔法の効果範囲を魔物の身体だけに絞って発動させたので、はやく次元収納に入れてしまわないと溶けてしまう。
ちなみに次元収納のような魔法は『幻想魔法』と呼ばれ、こちらは呪文を必要としない。
それぞれ長所と短所があるのでオレは状況によって使い分けているが、幻想魔法の方はなかなか使える者がいないらしい。
「さて……次はサーベルキャットを狩るかな」
オレは討伐中も次々と入ってきていた囁きから、一番近いサーベルキャットの元へとふたたび駆け出したのだった。
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