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貴族?無理です
しおりを挟むはい、質問です。
あなたは興奮して大声を出すことがありますか?
キレて怒鳴ることありますか?
おかしくて歯を見せて大声で笑い転げることありますか?
お腹空いてついがっついてしまうことありますか?
気持ちを表情に出すことありますか?
テンション上がって小躍りすることありますか?
機嫌が良くて鼻歌歌うことありますか?
思いっきりくしゃみをして周りが引いたことありますか?
いつも背筋を伸ばして立ってますか?
一日に何度も着替えたいですか?
勉強好きですか?
愛想笑い得意ですか?
起きている間中コルセットを締めていられますか?
ムリムリムリムリ!!
え?一体何が聞きたいかって?
あー、今更感満載ですみませんけど、やっちゃったと言うかやられたと言うか、しちゃったんですよ、異世界転生。
ありふれた乙女ゲーム転生。
ヒロイン転生。
で、今日、まさに今、夢の中で前世を思い出して目を覚ましたところ。
なので、最初の質問ですよ。
貴族な生活なんて絶対ムリ!
え?偏見だって?
でも大体あんなモンでしょ?
で、今私14歳なんだけど、15歳になるとお迎えが来るんですよ、男爵家から。
確か本妻さんと別れたからって、母親と一緒に迎えるって。
で、それがゲームのオープニング。
ゲームが始まるのが16歳で学園入学から。
ゲームの名前とかさておき、イケメン攻略者を順にクリアして、全員制覇したけど、あれはゲームだからいいんであって、現実にはムリ。
だって貴族だよ?
前世も一般小市民だったのに、ウフフと笑う貴族だよ?
思いっきり笑ったり、大声出したり、走り回ったり、ついつい踊り出しちゃったり、歩きっ屁とかした日には、どうなることやらだわ。
前世の私って、感情のアップダウン激しくて、結構キレやすいし、ムカついたら大声で怒鳴ることもあったし、楽しくなると鼻唄歌ったり、小躍りしたり。
周りから少しは隠せよって言われるほど開けっぴろげだったのよね。
勉強嫌いだし、テーブルマナーねぇ……。
バナナをナイフとフォークで食べるとかバカじゃない?
スイカってかぶり付いて食べるモノだよね?
ティースプーンにコーヒースプーン、シュガースプーンにイチゴ用、グレープフルーツ用、アイスクリーム用、スープ用とか使い分けてる知り合い(友達だとは言いたくない)居たけど、コンビニのプラスプーン一本で上等!
ってのが私だよ?
生まれ変わったからって、庶民だったし、前世の記憶が満載の私にマナーなんて無茶振り。
で、コルセット!
あれなんの気無しに検索で調べてみたことあるんだけど、アホかって思ったよ。
内臓圧迫どころか、肋骨を損傷したりするんだよ?
ガードル履くのも嫌で、何だったらブラだって家に帰ったら一番に外す程締め付け嫌いだったのに、コルセットって、どんな拷問だよ。
(二番目は靴下)
攻略する相手ってほぼ貴族、例外は貿易会社の息子だけど、それだって貴族との付き合いある設定だった。
つまり、ゲームに関わると100%マナーとコルセットが付き纏う。
ゲームの中だから「うほほぅ♪」ってイケメン落としてたけど、現実で考えると有り得ない。
親兄弟や親戚、周囲の目とかだって、絶対に何かやらかすたびに
『これだから庶民わ』
とか言われるんだよ、それこそ死ぬか別れるまで。
ムリやわー。
ネット小説とかだと、ゲームの記憶を元に、好き勝手にフラグを立てたり折ったり、イベント回避とかしながらイケメンとくっつくけど、ぶっちゃけ面倒。
それにイケメンは見るに限る。
下手にイケメンとくっつくと、いつ浮気されるかとか心配になるし、周りの女の嫉妬とか、僻みとか、嫌がらせとか、とか、とか、メチャクチャ面倒なんだよ。
【見るならイケメン、付き合うならフツメン】ですよ、いや、マジで。
【付き合うな そのイケメンで 鬱病だ】ですよ、ガチ目に。
だから、結局何が言いたいかって……
三十六計…………
「母さん、この前貰った手紙の話、受けてみようよ」
「ご迷惑になるかもしれないから断るってこの前決めたでしょ?」
隣に住んでいた老夫婦が、息子と暮らすと引っ越して行ったって事があった。
息子さんは商人さんで、業務拡大したいから従業員を探してるって手紙もらった事があったんだ。
でも、老夫婦と付き合いはあっても、息子さんとは関わりなかったからと、お断りをしたのが先月の話。
訳あり母子家庭だから、迷惑になるのでは、と母親が内心思っている事には気づいたけど、記憶を思い出す前の私は「そうだよね」としか思わなかった。
それに多分何らかの未練があったとみた!
合わせねぇよ。
息子さんとは関わり無くても、老夫婦とは良い関係だったんだし、向こうから誘ってきてくれたんだからアリでしょう。
流石に隣の国に行けばゲームのヒロインから逃げられるでしょう。
そこまで追ってくる程の情熱のある父親なら、こんなに長年ほっとく事ないでしょう。
と言う事で逃げる!
渋る母親を説得して、タイムリミットの2ヶ月前に無事国を脱出できた。
元気な大きな声や、顔いっぱい使った笑顔、鼻歌歌いながら商品並べて、悪い客は箒を持って追いかける。
メッチャ生き生き働いて、お客のフツメンと結婚した私は今三児の母親。
乙女ゲームのヒロインなんてならなくても、とても幸せに生きている私って、私の人生の主役(ヒロイン)だよね。
フツメンの旦那がヒーローって言うのは似合わないけどね。
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