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まったりランチ
しおりを挟む今日はヤスハルと二人だけでランチだ。
兄とクリスティーナとコウエンジは難しい話をしているけど、俺には関係ないからね。
ヤスハルとまったりさせてもらうよ。
スカーレットは王子とデートだし、リズヴァーンはいつもの如く兄に憑いて……付いていってる。
今日は焼きそばと焼きおにぎり。
炭水化物と炭水化物?
そんなの気にしない~。
お好み焼きでもご飯食べる派だからね。
なんなら、ナポリたんでもご飯デス。
「交渉人ってね、僕のお姉ちゃんなの。
コウちゃんのお兄ちゃんと結婚して、お兄ちゃんが遠出ができない分、お姉ちゃんがあちこちに行ってるんだよ。
今回は丁度僕に会いに来る予定だったから、この仕事受けてくれたの」
ほう、二人の兄や姉も婚姻関係か。
でも、ヤスハルの姉って、お姫様なんだよね?
働くお姫様か~、アリだね。
「お兄ちゃんの分担は、国内の職人さんや技師さん達で、よその国で力試ししたいって人を探すこと。
それでコウちゃんとか、コウちゃんの親戚さんがあちこちの国へ行って、うちの国の宣伝をするの。
そこで興味を持った人にお姉ちゃん達が出向いて間を取り持つんだよ」
ヤスハルの国は国土が小さいそうだ。
職人や技師が良い品を作っても、国が小さく、国民も少なければ、消費が間に合わない。
だからと言って伝統を閉ざすのはもってのほか。
だから国外で仕事を探す事にしたそうだ。
その交渉を王家が、人員や物を運び広げることをコウエンジ家が受け持っているとか。
勿論コウエンジ家が最王手なだけで、他にも商人と提携してる海運会社とかもあるらしい。
行った先々で職人達は弟子をとり、その国の良いところを積極的に取り入れるそうだ。
伝統技実に新しい物を取り入れて、新しい物とその技術を国に戻す。
そうやって発展させているとかどうとか。
国造りは俺には専門外で話が耳を滑っていくよ。
でも凄いと言うことはわかる。
ふと思ったことを聞いてみた。
「わざわざ行った先の人を巻き込まずに、商会を作ってご自分達で店を出す方が早くないですか?」
一々その国で店を出してくれそうな人を探して、人を派遣する交渉をして、仕入れルートなどを話し合って…って面倒じゃない?
「そっちの方が早いかもしれないけど、そうすると何かあったときに逃げ遅れるからね」
「何かって?」
「戦争とか、クーデターとかあった時に、雇われ人ならさっさと逃げ出せるでしょ?
それに知らない国で何が売れるそうかデータを取って、色々根回しして、周りに顔を売って、時間と労力をかけて店を出した途端、戦争がおきちゃったりしたら、目も当てられないよ。
せっかく店を出したからって逃げるに逃げられなくなるより、雇われ人の方が広く見れば厄介ごとが少ないからね」
なる程、自分の国ならまだしも、他国のゴタゴタに巻き込まれたくないよね。
逃げ出すことを考えると、雇われ人の方がいいかも?
でもその国に根を張らないって事だよね。
しかし考えるスケールがでかいと言うか、物騒と言うか…。
元日本人にはちょっと不可解な思考だね。
「勿論職人さん本人が、ずっとその国で働きたいって言うのなら協力するけど、ほとんどの人が出稼ぎ感覚で、ゆくゆくは国に戻って先祖代々の土地で眠りたいって言うんだ」
んー、島国感覚とでも言うのかな。
故郷で眠りたいって気持ちは、なんとなくわかる。
こうやって話してると、どんなに幼く見えても、やっぱヤスハルは王族なんだなって思えるよ。
「そう言えばこの前のコウちゃんのお茶会、キャスティーヌ様って随分楽しんでたね」
「え?あの時ヤスハル様はいらっしゃらなかったですよね?」
「居たよ」
「え?」
あの時居たのって俺たち3人と、コウエンジの同級生二人と、見知らぬ女の子だけだったよね?
覗き見してたのか?
「えー、全然気付かなかったの?」
え?まさか?
「あの水色のドレスの……」
茶色いセミロングの髪に大きな水色のリボンを付けた女の子?
マジか?
「そう、それ。
コウちゃんがたまに自分のドレスを僕に着せるんだよ。
コウちゃんはドレス嫌いなのに、お兄ちゃん達がドンドン買っちゃうんだって。
勿体無いからってたまに着せられるんだ」
男装の麗人に女装?
しかもヤスハルの顔を見ると嫌がっていない?
歪んでないか、この二人。
いや、人の性癖に口は出さないけど、つい聞いてしまった。
「あの…、ドレスを着せられるの嫌じゃないのですか?」
ヤスハルは首を振り、
「ううん、だって似合うでしょ?」
と、笑って言う。
いや、確かに似合ってたよ、ヤスハルだつてわからないほどにね。
「コウちゃんって本当に女の子の格好嫌いだから、お兄ちゃん達の嫌がらせだって言うけど、それはお兄ちゃん達のセンスがないからだけだと思うんだ。
だって、コウちゃんに似合わないフリフリなのや、ふわっとしたデザインばかりなんだもん。
もっとシュッとしたデザインだったら似合うと思うんだ。
名前も似合わなくないのに嫌がるから、家の外では呼ぶのはダメだって言うし」
名前?そう言えば知らないな。
「コウエンジ様のお名前は学園祭でも呼ばれていませんわね」
「僕はぴったりだと思うんだけど、嫌だって言うんだよ」
「………因みになんと言われるのですか?」
「コウちゃんに怒られるから内緒なんだ」
「そこまで言ってそれはないですわ」
焦らすヤスハルに詰め寄ると、内緒だよと教えてくれた。
「高円寺 乙姫って言うんだよ。
海の女神様の名前なんだ」
乙姫って女神だっけ?
海神(わだつみ)の娘だから女神でいいのか?
それより、この世界でこんなにがっつり日本神話を入れていいのか?
でもまあ
「コウエンジ様に似合いのお名前ですね」
「でしょ?
強くて優しくて、いつも前に進んでいく僕の女神様なんだ」
嬉しそうに笑うヤスハルに、釣られて俺も笑顔になる。
でもさ、漢字表記しなければ【乙姫】の【姫】が【プリンセス】の意味があるってわからないだろうから、気にしなくていいと思うんだけどなぁ。
まあ本人が嫌がっているんだったら、これからも名字で呼ぶ事にしておこう。
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