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プレゼントを渡したよ

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来客が帰り、家族だけになった夕食後(リズヴァーンは居る)、家族からのプレゼントを渡した。

祖父母からは、領地用の牝馬一頭厩務員付き。
これは早く戻って来いよって言う無言のプレッシャーだと思う。

両親からは兄専用のライフル。
今までは家の共用ライフルを使っていた。
この世界のライフルは、魔力を込めて弾の替わりに魔力を発射する【魔銃】だ。
込める魔力によっては、威嚇用にもなる。

リズヴァーンからは剣の手入れ道具一式。
自分が使っていて具合の良いものだからって言うけど、要はお揃いなんだね。
そして俺の番が回ってきてしまった。

「お兄様、19歳おめでとうございます。
私からはこちらになります」
片手に乗るほどの大きさの包みを手渡す。

「ありがとうキャシー。
開けてみても?」
本当はやめて欲しいけど、ここに居るメンバーにはいずれバレるんだから、説明するには良いタイミング……と思っておこう。

包みを開けて中身を取り出す。
「これは剣帯に付ける小物入れだね。
ありがとう、使わせてもらうよ」
「お兄様…小物入れは付属品なのです。
私からのプレゼントは、初めて付与をしたお守りなんです」

中に入っている事を告げると、「キャーの初めて……」とかなんとか呟きが聞こえてきたのはスルーです。

小物入れの蓋を開けると、中には手作りの巾着が。
頑張って兄の名前を刺繍しましたよ。
その巾着を開けると、紙に包まれた……。

「なんだこれ、光ってる?」
はいー、光っています。ピカピカと。
暗い夜道でもピカピカとして役に立ちそうな、赤鼻のトナカイかよ!って感じに光ってます。
だから光が漏れないように紙で包んで中に入れたんですー。

「キ…キャシー……これは一体…………」
うん、本当これは一体なんなんだろうね。
三日前の神殿での出来事を、正直に話す。

「体力回復のはずが、複数付与だと?
キャシーは天才なのか?」
「でもその後試してみても、普通の付与だけだったのでしょ?
なら何かの偶然がかさなったのでしゃうね」
「神に愛された子なのかもしれないぞ」

両親…と言うか父が大興奮でうざい。
母は冷静に受け止めてくれてる。
とっさの出来事に対するのは、女性の方が冷静だよね。

両親の反応はあったけど、何故か兄が無反応だ。
不思議に思いそちらを見ると、……なんだかぷるぷる震えていた。

「………父様、母様、聞きましたか?
キャシーが!僕のために!奇跡を起こすほどの!愛情を込めて!!作ってくれたのですよ!」
何一言ずつ区切って力説してんの?

「ああ、キャシー、この輝きはお前の私に対する、清らかな愛情の現れなんだね。
キャシーがこれほど僕のことを思ってくれていたなんて……。
今までで一番素敵な、最高のプレゼントだよ。
寝る時も、お風呂の時も肌身離さず持ち歩くからね」 

いや、寝るときはまだしも、風呂には持ち込むなよ。

「ああ、こんなに素晴らしい贈り物を貰えるなんて……もう思い残すことはないな」
「思い残すことはって、何をおっしゃっているの、お兄様。
このお守りでこれからも色々なことを、無理せず頑張ってくださいね」
「ああ、そうだね。
この素晴らしいお守りの効果を身をもって堪能し、世界中に広げなければ」
「やめてください!
その魔石のことはここだけの秘密にしてください」
広げるなんてやめてくれ、マジに。

「何を言っているんだい?
こんなに素晴らしいものなんだから、ゆくゆくは家宝として子孫代々………」
「本当にそれはやめてください!」

何かが決壊した兄の暴走が怖い!
その暴走を止めてくれたのは、リズヴァーンだ。

「キャスティーヌの言う通り、他人には知らせない方がいいと思う」
「何を言うんだい、リズ」
「キャスティーヌが付与したそれは、初めて付与した者が作り出すなんてのは、常識的に有り得ない物だ。
そんな物が他人の目に触れてしまうと、最悪王家に取られるぞ」

ピキッ!と音を立てて兄が固まる。
深く頷いた母が、リズヴァーンの言葉を引き継ぐ。

「それにキャスティーヌも監禁されるかも知れないわよ。
今回偶然に多重付与が出来たのだとしても、もしかすると何千、何万と付与をすれば、同じレベルのものができるかも知れないと思われて、拉致されて監禁されたり…………」
「そうだな、優れた才能の持ち主は狙われるから、この事は公にしない方がいい」
父が渋い顔で大きく頷いた。

何それ!本気のマジで怖すぎるんだけど!!






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