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付与してみたらこうなった

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聖杯に満たされた聖水に魔石を浸し、教えられた祝詞を唱え、渡す相手(兄)を思い描きながら、魔石に付与したい効果(体力回復)を心を込めて願い、魔力を高め聖杯に注ぐ。

兄の美少女フェイスを思い浮かべ、兄のことを考える。

学園の勉強だけではなく、父の仕事の補佐を補佐をしたり、領地運営を爺様から教わったりしながら、リズヴァーン相手に鍛錬も怠らず、他の貴族連中との交流も無難に行っているのに、成績優秀なんてチート過ぎるだろう。

……いや、そんなんじゃ無いってわかってるよ。
簡単にやってのけているように見えるけれど、遅くまでお付きに集めてもらった資料で学んだり、朝早くから剣を振ってるのも知ってる。
陰で努力しているのは、家族皆知ってるよ。
でもそこは見て見ぬふりをしないといけないんだって。

でもさ、でもまだ十代だよ?
若さゆえの体力で乗り切っているんだろうけど、そのうち倒れそうで怖いんだよ。
過労死なんて現代社会人だけのものじゃ無いんだからね。

だから、兄が倒れる事なく、健やかに、自分の思う事をできるよう、少しでも力になれるように………。

一生懸命に祈っていると、体からふわっと何かが抜けていく感覚があった。
これって魔力がごそっと抜けている感覚かな?

聖杯がうっすら光っている。
その光が消えたと同時に、めちゃくちゃ倦怠感に襲われて、体が傾く。

ヤバイ、倒れる!

って思ったけど、壁際にいたベルアルムがいつの間にか側にいて、支えてくれたから、倒れるのは回避された。

「ありがとうございます」
お礼を言って体を起こす。
「あの…付与は無事に終わりましたでしょうか?」
こんだけ疲れる事をして、失敗してたら目も当てられない。

ベルアルムは俺をソファーに座らせて、聖杯に近づくと中を覗き込んだ。

「貴女は何を考えてお祈りを捧げましたか?」
え?何?失敗してるの?
何だか怪訝な顔つきなんだけど。

「私は……兄の事しか考えていませんけど…」
網杓子みたいなもの?で魔石を掬い、布張りのトレーみたいな物の上に乗せ、俺の所まで持って来てくれた。

え?ナニコレ?

それは薄ら銀色に輝く碧色をしている。
アルバートの髪と瞳の色だ。
でも魔石ってこんなに光ってたっけ?

「詳しくは鑑定して見ないとわかりませんが、体力回復以外の力を感じます」
「え?それではやはり失敗なのですか?」
また魔石を買うところからやり直し?
そろそろ家に帰らないとまずい時間なのに、やり直しなの?

「体力回復としては失敗かもしれませんね……」
少しお待ちくださいと言い残し、ベルアルムが小部屋から出て行った。
うわー、やり直しか。

背もたれに体を預け、魔力が回復するのを待ちながら、気力も復活させる。

ダメならやり直せば良いさ。
時間は少なくても、コツは掴んだからね。

よし!と気合入れていると、ベルアルムが戻ってきた……一人の男性を連れて。


「こちらは上位神官のドゥーラ様です。
鑑定も使えますので、先ほどの魔石を見て頂きました」

ドゥーラと呼ばれた神官が、頭を下げたので、俺も立ち上がり挨拶をしようとしたけど、そのままでと止められた。
ありがたく座ったまま挨拶を返す。

向かいにベルアルム達が並んで座り、間のローテーブルに光る魔石が置かれた。

「こちらを鑑定させていただきました。
こちらへの付与はが貴女がなされたのですね?」
確認されて頷く。

「こちらの魔石にはまず【体力回復大】【気力回復大】【精神安定大】の三つの効果がそれぞれ中で付いています」

え?俺の魔力ではそんなに付けれないはずでは?
思わずベルアルムに視線を向けると、微笑んでる………いや、ニヤついている?

「それとあと一つ、【不屈小】も付与されています。
全部で四つですね。
これはかなりの魔力のある……、魔法省に勤めている、上位魔術師でも難しいかと思われます。
あるいは付与魔法を生業とする方、しかもかなりの経験と魔力を持つ方でないと、この大きさの魔石にこれだけの付与は難しいと思います」
えええー?ナニソレ?マジにナニソレ?!

「更にですよ、使用人指定まで施されているとは、貴女は一体何者なのですか?」
普通の人間です。

ちょっと前世がおっさんな、この世界がゲーム内世界と知ってて、ヒロインの友達ポジで、ゲーム進めた所までの世の中のおおよその出来事と、登場人物の大まかな個人データを知ってるだけの、ただのおっさん転生令嬢です!

……………あ?普通じゃない?
いや、神様に会ったわけでない、チートも無い、前世の文明をこの世界に持ち込むこともない、魔王になるわけでも、王妃になるわけでもない、飯テロも内政チートもハーレムもない、普通の転生者だよね?

あれ?……………普通とは?


いやいやいやいや、マジに変な能力なんて無いんだって!
ドゥーラからは疑いの目で、ベルアルムからは面白い珍獣を見る目で見られている。

「私は……、いつも努力を怠らず、常に前を目指すお兄様の力に、少しでもなりたいと思って祈りを捧げていただけです」
そう、それだけだよ、マジに。

「貴女の兄君への想いを祈りに乗せただけと仰るのですか?」
それ以外にないから頷く。

ドゥーラが何か考え込んだあと、聖杯を乗せているテーブルの引き出しから小瓶を持ってくる。

「こちらは魔力回復薬です。
こちらを飲んでいただき、今一度魔石に付与をしていただけませんか?」
「何故ですか?」
何か陰謀めいたものを感じるんだけど。

「……そうですね、貴女が普通の人であるという確認のため、ですかね」






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