24 / 109
元旦(とは言わない)
しおりを挟む新年初日、二日とゆっくり過ごし、三日目は城での新年パーティーだ。
貴族全員参加ではなく、一応伯爵以上が参加となる。
パーティーに来ているキャラと言うと、兄とリズヴァーン、ランフェル王子とベルアルム(大神官の息子)、後はスカーレットだ。
伯爵以下の子爵、男爵、準男爵は参加できないので、ヒロイン不在です。
乙女ゲームの世界なのに、ヒロイン不在のイベントとは?
大商人の息子や留学生、教師や用務員なども、もちろん参加できない。
かろうじて壁際の護衛騎士が居るくらいだ。
国王の挨拶の後、上位貴族の挨拶(前王の弟さんや、現王の弟さん達の公爵家)と、教会から大神官の挨拶があり、今はフリータイム?
フロアでダンスを踊っている人達も居るし、挨拶回りに余念のない人達も居る。
カクテル片手に談笑したり、見た目の可愛いデザートを食べてるご婦人、自分の娘を少しでも金や力の有る家に売り込もうとしているおっさん。
割と皆自由にしている。
うちの家族は、リズヴァーンと行動を共にしている。
何故って、リズヴァーンの両親は領地に居て、うちは寮暮らしの彼の保護者代理っぽい感じだから。
領地への行き帰りも一緒に移動する事になる。
そんなリズヴァーンと、うちの兄は、年頃のご令嬢とその親に取り囲まれている。
同じ伯爵位でも、ピンキリだからね。
うちは何代か前、王妃が出た家だからね、今は普通の伯爵家で王族に何ら関わりも無いのに、縁を持とうとする人は多いんだと。
リズヴァーンは隣国を退けて英雄扱いされた人の息子だから、こちらも人気。
第一兄もリズヴァーンも、タイプは違えどイイ男、女性がほっとかないのは当たり前。
んで俺はと言うと……
「サリフォル殿、お久しぶりですな」
と、当たり障りのない挨拶を交わす、ニヤけ顔の男を連れたおっさんが、父達に挨拶をしている。
「これはうちの息子の◯◯◯です、今年26歳になるのですが、そろそろ後継として素敵な方と出会って欲しいものです。
しかしどうやら奥手のようで、なかなか女性と親しくなる事ができないみたいでして。
…………それで、そちらはサリフォル殿のお嬢様でしたよね?
確か成人したばかりとか……」
「そうですね、成人したばかりなので、まだまだ当面の間は私達だけの可愛い娘でいて欲しいものです」
ごちゃごちゃ飾り立てて回りくどく言ってるけど、つまるところ
「うちの息子の嫁探してんねん、あんたんとこの娘くれへんか?」
「なに言うてんねん、お前の息子なんかお呼びでないわ」
って感じだよね。
てかさ、奥手なんて絶対嘘やん。
めっちゃニヤけてキショイねん!
大体10も年上なんてオッサンやんか!
……関西弁もどきになってしまった。
あ、26歳はオッサンじゃないよね、お兄さんだよね……。
あ、そうだ!26歳って年齢で見るからダメなのか。
自分より10年上だからオッサンでよくない?
……いや、だが………男心も複雑だよ。
と、とにかく、俺にも言い寄ろうとしてくる男や、息子とくっつけようとするオッサンが寄ってくるんだけど、父親がことごとくシャットアウトしてくれている。
おばさん連中は母親が、にっこり笑って断ってくれてます。
……………笑顔が怖いなんて思ってないよ。
兄も心配そうにこちらを見てるけど、自分の周りを捌くので精一杯のようだ。
肉食系女性がボディタッチしようとしているのは、リズヴァーンがさりげにブロックしている。
俺の方に集まる男達は皆が皆、顔より何より胸元ガン見デスワ。
乳デカいもんね。
ドレスを綺麗に着るために、今日もコルセットギューギューだから、余計にバインバインデスワ。
そりゃあ男なら目が行くわな。
男から見るとこの二つの肉の塊りは、夢とロマンが詰まっているからね。
ただの脂肪なのに。
でもこの男性のエロ目線ツライ。
何でこんなに乳がデカいんだ!
俺がデザインしたキャラか!なら仕方なし!
取り囲まれていたのが落ち着いた頃、俺に向かって来る一組の男女がいた。
王子とスカーレットだ。
王子は少し離れたところで立ち止まり、スカーレットが近寄って来た。
「キャスティーヌ様、少しお時間よろしいかしら」
おおぅ、美しさに磨きがかかって迫力のある笑顔だ。
「ええ、かまいませんわ。
お父様、少し外しますわね」
父に一言告げて、二人で近くのバルコニーへ出る。
愛されてますオーラと言うか、自信に溢れたオーラと言うか、存在感が凄いと言うか、とにかく輝いている。
「この後国王陛下から発表があるのですけれど、この度わたくし、ランフェル殿下と婚約致しますの」
あ~、やっぱりくっついたか。
「まあ、そうなのですね。
おめでとうございます」
カーテシー(カテーテルじゃなかったよ)で優雅に頭を下げる。
クリスティーナ、ゴメンよ、王子様ルート完全消失だよ。
「でもよろしかったのですか?
発表前に私が聞いても」
こういう時、俺がヒロインなら「オーッホッホ!王子は私がいただくわ!」とか勝ち誇られたり、ライバルなら断罪シーンとか何だろうけど、ヒロインの友達ポジのモブですよ?
なぜ俺に宣言する?
「…………殿下と親しくお話しするようになったきっかけが、貴女の事でしたから、一番にお伝えするべきかと……。
いえ、ただのきっかけですから、関係無いですわね。
今のは独り言ですわ、忘れて下さい」
あー、俺を庇ったのが仲良くなったキッカケで、その事に対して、性格的に黙ってられなかったってヤツか。
気にしなくて良いのに、黙ってられない真っ直ぐな性格、好きだな。
王子は人を見る目があるって事だ。
「私が何かしたわけではないですわ。
スカーレット様の素晴らしさに、殿下がお気付きになっただけの事ではないのでしょうか」
俺がそう言うと、「貴族っぽくない方ですわね」と小声で呟いているのが聞こえた。
まぁ一般的に、ライバルの足をいかに引っ張るかが、貴族の女性の考えだからね、恐ろしい事だけど。
「とにかく、婚約はしますけれど、まだ卒業まではクラスメイトですから、お互い自分を磨きましょう」
「そうですわね、これからもよろしくお願いします」
「それと…貴女は春まで領地に行かれるのですよね?
王都へ戻っていらっしゃったら、お茶会へお招きしてもよろしいかしら?」
「え?お誘いいただけるのですか?」
スカーレットは取り巻きも居ないし、お茶会を開くことなんて滅多にないのに、招いてくれると?
「ええ、とも………クラスメイトですから」
今言いかけた言葉の続き、こちらから言っても良いよね?
「嬉しいですわ、ありがとうございます。
それで…宜しければ私とお友達になっていただけませんか?」
下からお願いしてみる。
言葉遣いも、身長的にも、地位的にも。
「そ…そうですわね、貴女は今までわたくしに近づいて来た方々と違いますし、貴女がどうしてもと仰るのなら、なってあげてもよろしくてよ」
いや、なにこの娘!
赤くなって、ちょっと早口で可愛いんですけど!
「是非ともお願いしたいですわ」
「そ、そこまで仰るのなら仕方ありませんわ。
お茶会にはお友達として招かせていただきます」
「光栄です」
にっこりしながらカーテシーで頭を下げる。
可愛い友達ゲットだぜ!
………って、ちょっと頭から抜けてたんどけど、ヒロインのライバルと友達になるのって良いのか?
色んな意味でゴメン、クリスティーナ……。
5
お気に入りに追加
35
あなたにおすすめの小説
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
転生ヲタク光秀~本能寺、したくなあぁあ~~い!
👼天のまにまに
ファンタジー
細かい設定はしてあるけど、歴史知識全くなくても笑えてたのしめる作品です。
基本ギャグで構成されています。
ショタ体形の光秀が、中身ヲタ+セコイ+怖がりなんだけど、周りが勝手に勘違いして盛り上げて天下を取らせちゃう?
鉄砲の才能(きっとゲーセンで鍛えた)と異能の才(ヲタク趣味)を信長から認められて、とんとん拍子の出世。
秀吉の得るはずであった、役回り、名誉、娘を全て横からかっさらっても、気づかない。
天下取りなんか、めんどい。
俺は元いた六畳一間のヲタク空間を取り戻したいだけなんだ!
おまいら、勝手に妄想して陰謀すな!
怖いじゃないか!
超優秀な家臣どもが、名だたる戦国武将をぶっ飛ばしていくのを、冷や汗もので見ている主人公をお楽しみください。
最初のシーンは桶狭間の戦いです。
小学校の社会科レベルの知識で読めます。
ほかも適当に流してください。
それではお楽しみください。
18禁の乙女ゲームの悪役令嬢~恋愛フラグより抱かれるフラグが上ってどう言うことなの?
KUMA
恋愛
※最初王子とのHAPPY ENDの予定でしたが義兄弟達との快楽ENDに変更しました。※
ある日前世の記憶があるローズマリアはここが異世界ではない姉の中毒症とも言える2次元乙女ゲームの世界だと気付く。
しかも18禁のかなり高い確率で、エッチなフラグがたつと姉から嫌って程聞かされていた。
でもローズマリアは安心していた、攻略キャラクターは皆ヒロインのマリアンヌと肉体関係になると。
ローズマリアは婚約解消しようと…だが前世のローズマリアは天然タラシ(本人知らない)
攻略キャラは婚約者の王子
宰相の息子(執事に変装)
義兄(再婚)二人の騎士
実の弟(新ルートキャラ)
姉は乙女ゲーム(18禁)そしてローズマリアはBL(18禁)が好き過ぎる腐女子の処女男の子と恋愛よりBLのエッチを見るのが好きだから。
正直あんまり覚えていない、ローズマリアは婚約者意外の攻略キャラは知らずそこまで警戒しずに接した所新ルートを発掘!(婚約の顔はかろうじて)
悪役令嬢淫乱ルートになるとは知らない…
【R18】殿下!そこは舐めてイイところじゃありません! 〜悪役令嬢に転生したけど元潔癖症の王子に溺愛されてます〜
茅野ガク
恋愛
予想外に起きたイベントでなんとか王太子を救おうとしたら、彼に執着されることになった悪役令嬢の話。
☆他サイトにも投稿しています
転生したらただの女子生徒Aでしたが、何故か攻略対象の王子様から溺愛されています
平山和人
恋愛
平凡なOLの私はある日、事故にあって死んでしまいました。目が覚めるとそこは知らない天井、どうやら私は転生したみたいです。
生前そういう小説を読みまくっていたので、悪役令嬢に転生したと思いましたが、実際はストーリーに関わらないただの女子生徒Aでした。
絶望した私は地味に生きることを決意しましたが、なぜか攻略対象の王子様や悪役令嬢、更にヒロインにまで溺愛される羽目に。
しかも、私が聖女であることも判明し、国を揺るがす一大事に。果たして、私はモブらしく地味に生きていけるのでしょうか!?
ヒロインの最推しキャラになったが、どっちかっていうと悪役令嬢の方が好き
狼蝶
恋愛
『かわいいドォリィ・・・かわいい、かわいい。食べてしまいたいほどに』
危ない思考に陥ったとき、突如として前世の記憶が頭の中に流れ出した。自分の小さな手を眺め、『俺は成人男性だったはず・・・。ハッ!妹の下僕として仕事帰りに予約した新作ゲームを受け取った帰りに、死んだわ――』と思い出していたら、可愛らしい黒髪の幼女が俺を心配そうに見つめ『さい・・・?』と言う。
そうだ。俺は妹がトチ狂いながらプレイしていたゲーム、『星降る夜の乙女』の攻略キャラ、サイレント・ジョセスタインに転生したんだ。そして隣にいる天使と見紛うほどの可愛らしい幼女は・・・なななんと悪役令嬢のドリータ・サンドレア!!?ングゥ゛あ゛ぁ゛がわ゛い゛い゛・・・・・・!!!
学園で会ったヒロインはまさかの転生者で、しかも"俺”が最推しらしいんだけど、俺はドォリィしか推しません!!!ヒロインよ、勝手に王子と結ばれてくれ!!!
転生したら美醜逆転世界だったので、人生イージーモードです
狼蝶
恋愛
転生したらそこは、美醜が逆転していて顔が良ければ待遇最高の世界だった!?侯爵令嬢と婚約し人生イージーモードじゃんと思っていたら、人生はそれほど甘くはない・・・・?
学校に入ったら、ここはまさかの美醜逆転世界の乙女ゲームの中だということがわかり、さらに自分の婚約者はなんとそのゲームの悪役令嬢で!!!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる