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第五章 問題は尽きないようです

戻って来たら腕の中なのは微妙にダメージかと…

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男は動かした視線で僕を見つけ、声を上げる。

「おい、お前!何をしておる!我を助けぬか!」

……コイツまだ自分の状態がわかっていないのか?
思わずイラッとしたのは僕だけじゃ無いようで、何かしたのか男の顔色が赤黒くなっていく。

「く……苦し…い…………助け……てくれ…………。
わかった…思い出し……た、我が為す事………だから……潰さな…でくれ」

『顔を見るのも不快だわ、さっさと送り返しましょう』

空の人の声と共に男が消える。

『命が大事なら、言い付けを守るだろうけど、もしダメなら葬るから。
君や君の国に迷惑かけない様にするつもりだけど、何かあったらどうにかするけれど、迷惑かけたらごめんな』

国と国が遠く離れてるから大丈夫だと思うよ。

『いざとなったら切り取り線の出番だ』

……ソウデスネ、結構気に入られていますね。

『あの地形を見た時から何かあればと思っていたからな』

どうしょうもなくなった時にはお願いに上がります。

『うむ、ではまたな』

『あなたの国の進化を楽しみに見守っているわ』

『いつでも遊びにおいで』

3人に見送られて意識がホワイトアウトする…………。


*****


「お帰りなさいませ、今回も無事に戻ってこられた様で何よりです」

スイの腕の中で目が覚める……そうだった、目覚めたくない状態でのトリップだったっけ。
ネイもこちらを覗き込み、僕に聞いてくる。

「あの男も今しがた気がつきました。
何やら気を失う前とは様子が違う様で、すぐさま国の民へ演説をすると申していますが、どうなったのですか?」

「んー、自分達が神の血を引くという事が間違っていたという事を教え込まれたみたいだね。
それどころか他の種族と比べて劣等種だって、意識と身体に教えられたみたい」

はっきり聞いたわけではないけれど、あの空間は時間の概念が無いのではないだろうか。
多分僕が空の人と話していた時間の数倍の時間、調教されていたのではないかな、と。

埋められて身動きが取れない状況で、あのかいつまんだ話を事細かに頭の中へと流し込まれたのだろうから、人格も変わるだろうな。
体感的にどれほどの時間だったのかは聞かないでおいてやろう。

「……劣等種…ですか?」
「うん、細かい説明は国へ戻ってからね。
まずゴタゴタを片付けよう。
………………その前に下ろして……」

僕はスイの腕の中から下りて男の元へと歩み寄り、縛られて悄然としている男へ声をかける。

「これからどうすれば良いかわかるよね?」
男の視線が僕を捉え、「ひっ!」と声を上げられた。
失礼な。

「民の前で我らの間違いをつまびらかにします。
我らは神の血統ではなく、模して作られただけであると、たまたま降り立った場所にいると言うだけだと、他の動物と同じ存在であると……、逆に今まで貶めていた魔物こそが、動物から進化した優越種であり、進化を放棄している我らより優れているのだと…。
それを対峙した神々に教えられたと民へ伝えます。
考えを改めなければ天罰が下る事も必ず伝えます」

あんな恐ろしい死に方はしたくない…、との男の言葉に、どれだけ怖いイメージを与えたのか、興味はないことはないけれど、知りたくないかな。

とりあえず改心はしている様だから、あの場所へ連れて行って丸投げして正解だった様で良かった良かった。





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