138 / 161
第五章 問題は尽きないようです
帰還そして仰天
しおりを挟む「………………あれ?」
気がつくと部屋へ戻っていた。
「ウチ様、無事お目覚めになられて良かったです」
熊澤さんを抱いたスイが覗き込んでいる。
「僕はどれくらい寝てた?」
「1時間ほどですかね。…………しかし……」
答えたスイが言葉を濁す。
「? 何かあったの?」
「あの……ウチ様………身体が透けているのですが……」
「は⁈」
驚いて手をかざしてみると……本当に透けている………。
透明では無いけれど、曇りガラス…磨りガラス越しに見ているように、向こう側の物の輪郭がうっすらと見える。
「はあ⁈何これ!」
驚きまくっている僕に、更なる追い討ちが……。
「後……浮いてますよ、ウチ様」
「へ?」
ギギギギーと、音がしそうに力んだまま首をひねると…………、揶揄的な意味でなく、物理的に浮いています、僕。
ベッドから10センチほど浮き上がっちゃってますよ!
「はーーーーーーー⁇⁇」
僕の叫び声は夜の城下町に響き渡った……。
*****
「何でこんなになってんの?」
スイに詰め寄るけれど、寝ている僕の身体を見張っていただけのスイにわかるはずがない。
「ニヤ、ピヤ、どう言うことか説明して!」
大きな声で呼ぶと、二人は近づいて来て、首をかしげる。
『説明?』
「何で僕透けてるの?」
『んとね、んー……【体内の水分を湖の水と入れ替えた】?だって』
「はぁー?」
『とうちゃんの中を湖の水にしたの。
だこら湖と同じなの。
だから湖から離れてもとうちゃんの側にいると湖と同じなの。
だから消えないの』
何勝手にしくさりやがったんですか、あの方は!
人の身体の60%は水分だとか言われてるけれど、それを湖の水と入れ替えた?
それってもう人間じゃないじゃん!
『身体の中身がちょっと変わっただけで、とうちゃんはとうちゃんのままなんだって』
いや、絶対違うし!
『中身はとうちゃんなの、でも身体は違うから透けてるの。
ついでに浮くの』
ついでじゃないって!
こんな透けてて浮いてたら日常生活できないじゃん!
『大丈夫だよ、ちょっと透けてて浮いてるけど、影の子でくっきりできるし、重力の子で浮かなくできる……はず?』
『それに浮いてるの、お揃いなの』
ニヤはなんだか嬉しそうに顔の前で宙返りするけれど、金眼ってだけで浮いてるのに(揶揄的な意味で)、物理的にも浮くなんて、聞いてないし、許可してないんだけど⁈
「一体何処へ行かれて何方(どなた)とお会いされたのですか?」
スイに聞かれて、別に口止めもされてないから、正直に答える。
「どこか不思議な場所で水に浮いてたんだ。
そこでこの世界に溶け込んだって言う人……存在と会話してきた」
「神とお会いされたのですか?」
「神……なのかなぁ、本人?は神と言われたくないみたいだったけど……」
ちょっともやっとしたものが残る会話だったよな……。
「スイ……スイにとって神ってどんな存在?」
問いかけてみると、不思議そうな顔をしたけれど、真面目に考え込んで、答えてくれた。
「高みに居られる大いなる存在……でしょうか?」
僕の考えと違う。
あの存在の言った『人それぞれ』の意味が実感できた気がした。
1
お気に入りに追加
48
あなたにおすすめの小説
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました
遥 かずら
ファンタジー
冒険者ギルドに所属しているエンジは剣と魔法の才能が無く、文字を書くことだけが取り柄であった。落ちこぼれスキル【転写】を使いギルド帳の筆記作業で生計を立てていた。そんなある日、立ち寄った勇者パーティーの貴重な古代書を間違って書き写してしまい、盗人扱いされ、勇者によってギルドから追放されてしまう。
追放されたエンジは、【転写】スキルが、物やスキル、ステータスや魔法に至るまで何でも【コピー】できるほどに極められていることに気が付く。
やがて彼は【コピー】マスターと呼ばれ、世界最強の冒険者となっていくのであった。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
倒したモンスターをカード化!~二重取りスキルで報酬倍増! デミゴッドが行く異世界旅~
乃神レンガ
ファンタジー
謎の白い空間で、神から異世界に送られることになった主人公。
二重取りの神授スキルを与えられ、その効果により追加でカード召喚術の神授スキルを手に入れる。
更にキャラクターメイキングのポイントも、二重取りによって他の人よりも倍手に入れることができた。
それにより主人公は、本来ポイント不足で選択できないデミゴッドの種族を選び、ジンという名前で異世界へと降り立つ。
異世界でジンは倒したモンスターをカード化して、最強の軍団を作ることを目標に、世界を放浪し始めた。
しかし次第に世界のルールを知り、争いへと巻き込まれていく。
国境門が数カ月に一度ランダムに他国と繋がる世界で、ジンは様々な選択を迫られるのであった。
果たしてジンの行きつく先は魔王か神か、それとも別の何かであろうか。
現在毎日更新中。
※この作品は『カクヨム』『ノベルアップ+』にも投稿されています。
俺がマヨネーズ男爵だとぅ!?~異世界でおっさん領主は奴隷ちゃんと結婚したい
武蔵野純平
ファンタジー
美少女性奴隷と幸せに暮らすため、おっさんは異世界で成り上がる!
平凡なおっさんサラリーマンの峰山真夜は、ある日、自室のドアが異世界につながっている事を知る。
異世界と日本を行き来し、異世界では商売を、日本ではサラリーマンの二重生活を送る。
日本で買ったアイテムを異世界で高額転売し金持ちになり、奴隷商人のススメに従って美少女性奴隷サラを購入する。
愛する奴隷サラと幸せに暮らすため、おっさんサラリーマン・ミネヤマは異世界で貴族を目指す。
日本ではかなえられなかった立身出世――成り上がりに邁進する!
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
魔境暮らしの転生予言者 ~開発に携わったゲーム世界に転生した俺、前世の知識で災いを先読みしていたら「奇跡の予言者」として英雄扱いをうける~
鈴木竜一
ファンタジー
「前世の知識で楽しく暮らそう! ……えっ? 俺が予言者? 千里眼?」
未来を見通す千里眼を持つエルカ・マクフェイルはその能力を生かして国の発展のため、長きにわたり尽力してきた。その成果は人々に認められ、エルカは「奇跡の予言者」として絶大な支持を得ることになる。だが、ある日突然、エルカは聖女カタリナから神託により追放すると告げられてしまう。それは王家をこえるほどの支持を得始めたエルカの存在を危険視する王国側の陰謀であった。
国から追いだされたエルカだったが、その心は浮かれていた。実は彼の持つ予言の力の正体は前世の記憶であった。この世界の元ネタになっているゲームの開発メンバーだった頃の記憶がよみがえったことで、これから起こる出来事=イベントが分かり、それによって生じる被害を最小限に抑える方法を伝えていたのである。
追放先である魔境には強大なモンスターも生息しているが、同時にとんでもないお宝アイテムが眠っている場所でもあった。それを知るエルカはアイテムを回収しつつ、知性のあるモンスターたちと友好関係を築いてのんびりとした生活を送ろうと思っていたのだが、なんと彼の追放を受け入れられない王国の有力者たちが続々と魔境へとやってきて――果たして、エルカは自身が望むようなのんびりスローライフを送れるのか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる