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第五章 問題は尽きないようです

帰還そして仰天

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「………………あれ?」
気がつくと部屋へ戻っていた。

「ウチ様、無事お目覚めになられて良かったです」
熊澤さんを抱いたスイが覗き込んでいる。

「僕はどれくらい寝てた?」
「1時間ほどですかね。…………しかし……」
答えたスイが言葉を濁す。

「? 何かあったの?」
「あの……ウチ様………身体が透けているのですが……」
「は⁈」

驚いて手をかざしてみると……本当に透けている………。
透明では無いけれど、曇りガラス…磨りガラス越しに見ているように、向こう側の物の輪郭がうっすらと見える。

「はあ⁈何これ!」
驚きまくっている僕に、更なる追い討ちが……。

「後……浮いてますよ、ウチ様」
「へ?」

ギギギギーと、音がしそうに力んだまま首をひねると…………、揶揄的な意味でなく、物理的に浮いています、僕。
ベッドから10センチほど浮き上がっちゃってますよ!

「はーーーーーーー⁇⁇」

僕の叫び声は夜の城下町に響き渡った……。


*****


「何でこんなになってんの?」
スイに詰め寄るけれど、寝ている僕の身体を見張っていただけのスイにわかるはずがない。

「ニヤ、ピヤ、どう言うことか説明して!」
大きな声で呼ぶと、二人は近づいて来て、首をかしげる。

『説明?』

「何で僕透けてるの?」

『んとね、んー……【体内の水分を湖の水と入れ替えた】?だって』

「はぁー?」

『とうちゃんの中を湖の水にしたの。
だこら湖と同じなの。
だから湖から離れてもとうちゃんの側にいると湖と同じなの。
だから消えないの』

何勝手にしくさりやがったんですか、あの方は!
人の身体の60%は水分だとか言われてるけれど、それを湖の水と入れ替えた?
それってもう人間じゃないじゃん!

『身体の中身がちょっと変わっただけで、とうちゃんはとうちゃんのままなんだって』

いや、絶対違うし!

『中身はとうちゃんなの、でも身体は違うから透けてるの。
ついでに浮くの』

ついでじゃないって!
こんな透けてて浮いてたら日常生活できないじゃん!

『大丈夫だよ、ちょっと透けてて浮いてるけど、影の子でくっきりできるし、重力の子で浮かなくできる……はず?』

『それに浮いてるの、お揃いなの』

ニヤはなんだか嬉しそうに顔の前で宙返りするけれど、金眼ってだけで浮いてるのに(揶揄的な意味で)、物理的にも浮くなんて、聞いてないし、許可してないんだけど⁈

「一体何処へ行かれて何方(どなた)とお会いされたのですか?」
スイに聞かれて、別に口止めもされてないから、正直に答える。

「どこか不思議な場所で水に浮いてたんだ。
そこでこの世界に溶け込んだって言う人……存在と会話してきた」
「神とお会いされたのですか?」
「神……なのかなぁ、本人?は神と言われたくないみたいだったけど……」

ちょっともやっとしたものが残る会話だったよな……。

「スイ……スイにとって神ってどんな存在?」
問いかけてみると、不思議そうな顔をしたけれど、真面目に考え込んで、答えてくれた。

「高みに居られる大いなる存在……でしょうか?」
僕の考えと違う。

あの存在の言った『人それぞれ』の意味が実感できた気がした。






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