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第五章 問題は尽きないようです
もちの次はしゅういちろう
しおりを挟むウグイスは僕の部屋で飼っていたんだけど、独特の鳴き声が気になるらしく、トキ家の人々だけでなく、お客さん達からも
「あれば何の音?」
と聞かれるので、昼間は店先に籠を置き、看板鳥になってもらっている。
「へー、あの聞きなれない音は鳥の鳴き声だったのか。
見たことない鳥だなあ」
「僕のいた世界の鳥で、ウグイスって言うんですよ」
「珍しい色をしているのね。
それでこの子のお名前は?」
名前……そう聞かれて、咄嗟に思い浮かんだ物を口走ってしまった…。
「もちです」
ウグイスと言われたら、鶯餅しか思い浮かばない僕って、もしかして残念な奴だろうか…。
熊沢さんに食べないよう言い聞かせて、僕の家族が増えました。
なんて言ってた一月後、店にまたネイが生き物を持ち込んだ。
「ウチ様、今回はとても珍しく、可愛い生き物が見つかったので、是非受け取って下さい」
前回と同じ大きさの竹カゴに入ったその生き物は……。
「え?モモンガ?」
やっぱり日本固有種のモモンガだ。
大陸モモンガとは違う、日本の固有種。
動物園にも十匹くらい居たなぁ。
しかし、こんなに頻繁に日本の動物がこちらの世界に来るなんて、何か異変があるのか?
真面目に考えようとしたけど……あ、ダメだ、モモンガのつぶらな瞳にノックダウンです。
かーっわいいよな~、モモンガって!
夜部屋の中でデレデレと眺めていると、ヤキモチを妬いた熊澤さんに耳を齧られてしまった。
勿論このモモンガも看板モモンガになったんだけど、店先に出してると、皆が皆、
「ウチにそっくり~~!」
と言うんだけど……こんなつぶらな瞳のモモンガと、五十路のおっさんを一緒にしないで!
因みにモモンガの名前は、満場一致で、【しゅういちろう】になってしまった。
いや、こちらの世界では下の名前は名乗らないけど、僕の名前をそのまま付けるのはやめて欲しかった……。
だって、
「しゅういちろう、今日も可愛いね」
ならともかく、
「あ、しゅういちろうが寝てる」
とか、僕がサボってるみたいじゃないか。
それより何より、
「あー、しゅういちろうがウンチしてる!」
とか子供が叫ぶのは、羞恥プレイ以外の何物でもないよ!
でも、一緒に暮らしてるうちに、熊澤さんと仲良くなってくれたから、ありがたい。
また僕の家族が増えた……動物ばかりだけどね。
「しかし何でまたこうも日本の動物がやってくるんだ?」
モモンガと聞いて、牧さんがわざわざマモランドからやって来た。
モフを実感したいがために。
「それも全部北の方から来てるみたいなんだって」
実はあの後、北方の国に潜入しているトモ家の人から、鳥と犬の死体がオダ家へ持ち込まれた。
もしかして、これらも地球から来たのか確かめるため、オワリへと呼ばれ確認したところ、鳥はキジだし、犬は柴犬だし。
「やっぱりゲートでも開いてるんですかねえ」
「んー、それだけならいいけどね~」
しゅういちろうをつつきながら、珍しく真面目な顔の牧さん。
「何ですかその不穏な言い方」
「ん~~、俺の妄想だから、杞憂で終わればいいんだけどね~」
牧さんの言葉が頭の隅に引っかかったまま、二ヶ月程経った頃、最悪の事態が露見した。
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