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第四章 そしてこれから
国の始まり
しおりを挟む夕食は王様に招かれてご一緒した。
王妃達にも久々にお会いして、食事後、請われるまま今回まわった家々の話をした。
視察という名目で訪れる事はあるそうだが、挨拶程度の交流しかないそうで、皆さん面白そうに話を聞いてくれた。
まだ親戚のユゲ家以外行ったことのないカイ王子とルル姫は、真剣に聞き入っている。
聞き入ってはいるのだが、カイ王子はまだ僕に思うところがあるのか、時折はっとした顔をして「興味ありません」みたいにそっぽを向くのだけれど、気がつけば目をキラキラさせて聞いている。
これは所謂【ツンデレ】ってやつだね。
話は王子達の従者が風呂の時間だと迎えに来るまで続いた。
*****
翌日の朝食後、約束通り【王家の石】を部屋に持って来てくれたのは、レンさんだ。
「王に聞きましてね、丁度用があって登城ていたので、私がお持ちしましたよ」
宰相さんとは、昨日夕食前に偶然お会いしたので、挨拶はしたけれど、レンさんはお宅訪問してから一度も顔を合わせる事が無かったから、ちょっと久し振りだ。
「ナチ君はお元気ですか?」
「ええ、頑張って勉強はしていますが、部屋にこもりがちで。
今度遊びに来てくださいませんか?」
「僕で気分転換になるのなら、お伺いさせていただきます」
和やかに挨拶を交わした後、レンさんがテーブルの上に【王家の石】を置いた。
オダ家の石よりふたまわりほど大きい。
色は半透明の乳白色だ……透明感のある練乳?
どうぞとレンさんが頷くので、そっと手を触れてみる。
記憶は五百年前の賢王と呼ばれていたタシ・テス・ヤカから後の王達の記憶だ。
それより前は書物で残っていたみたいだけど、質の良くない紙で劣化していたので、セス王が纏めて記録させたそうだ。
その纏めによると、元々タシ家は五大国の一つ、ルスプスの司祭の家系だったそうだ。
当時の主人の名前はタシ・レフ・シン、一千年前の人だ。
【ある日商人から【悪しき者】と、複数の魔物の親子を引き渡される。
悪しき者に神罰をと、周りの司教や司祭が魔物の親子を拷問にかける姿を見て、これは神に仕える者のする所業ではないと、残った魔物を秘密裏に逃してしまう。
逃した事が密告によりバレてしまい、神に背く異端者として扱われる。
立場上ただ国外追放とするわけにもいかず、
「未開の地で布教をする」
という名目で一族郎党国を出される事となる。
彼を慕う信者と共に中央の二つの山脈と大河を超え、大陸の南の地へ入る。
そこには、シンより先に、五大国から追い出された者達が、国を作り暮らしていた。
しかしそこでシンが目にしたのは、国を追い出されたストレスをぶつけるように、魔物をいたぶる人々だった。
名目上、布教の為大陸の南へ来たのだが、人々の魔物に対する扱いに心を痛めたシンは、全ては無理だとわかっていても、目にした者だけでもと、全財産をはたいて魔物を解放する。
そして、この地に留まることは出来ないと、更に南下をし、大陸南の中央辺りの大森林で道に迷ってしまう。
行けども行けども深い森の中、それでも彼について来た者達は、不平不満も漏らさず、一人として欠ける事なくついて行く。
そんなある時、一匹の魔物が彼らの前へ現れ、清い湖に導く。
その魔物は言葉を残して立ち去る。
「この辺りに国を作ればいい。
但しこれより南へは来てくれるな。
湖を汚す事もならぬ」
魔物に感謝をし、その湖から少し離れた川辺を切り開き、家を建て、畑を作り、そこに根付く事となった。
それがラグノルの始まり……
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