上 下
101 / 161
第四章 そしてこれから

帰宅?しました

しおりを挟む

城へ戻って来ました。

到着した日は、長旅で疲れただろうからと、ゆっくり過ごしてくれと言う言葉に甘える。
ご飯も部屋で取らさせてもらい、のんびりゴロゴロして、ゆっくり眠った。

そして翌日は、自分が思うより疲れが溜まってたのか、朝食の時間に起きれず、目が覚めると昼前だった。

早めに昼を準備してもらって部屋で食べていると、スイが部屋に入って来た。

「おはようございます、疲れは取れましたか?
王への報告は私達で済ませました。
ただウチ様からも直接話しを伺いたいとの事でして、午後に都合をつけ、執務室へ出向くようにとの事でした」

あー、もしかしなくても失礼だったかな、戻ってから一度も王様と顔を合わせていないってのは。
衣食住の世話になってるのに、いくらゆっくりしてくださいと言われたからって、帰宅?の挨拶もしないとか、社会人として問題だよな。

「勿論伺います。
すぐ挨拶に伺うべきだったのに、申し訳ありませんでしたと伝えてもらえますか?」
スイに伝言を頼んだんだけど、ニッコリとスイスマイルを浮かべて答える。

「大丈夫ですよ、慣れぬ馬車での長旅と、見知らぬ人々と短期間での出会いでお疲れだと言うことは、王にもご理解いただいております。
必要な報告は済んでおりますので、ウチ様と直接お会いして話がしたいのだと思いますよ」

あそこに行ってあれをしたとか、誰それと会ってこうしたとか、その辺りの話は済んでるのか。
なら本当に挨拶と感想とかだけで良いのかな。

気負う事なく王様と話が出来る下準備済みとは、流石スイだ。
それなら面談の時間まで、もう少しのんびりしていよう。


*****


「どうだった、英雄家系の各家を回られて。
良き出会いは有ったか?」
執務室で王様と対面してお茶を飲む。

「そうですね、ご存命の方々とは全てお会いしました。
個性豊かな方々ですね」
田舎の農家のお爺ちゃん風な八木さんに、真面目で発明好きの岸さん、それにマッキーとアッキーは……個性豊かで済ませられないものが有ったけど。

「色んな方の話も聞けましたし、各家の書も見せてもらいました。
皆さん偉業を成していて、同じ世界から来た事に誇りを持てます。
そして、僕にも出来ることが有れば何か力になりたいなと思いました」
与えてもらうだけじゃ良い関係は築けないからね。

「いや、君の場合はこちらの不手際のせいで招いてしまったのだから、全面的に援助するのが当然だ。
気負うことなく、生活を楽しんでくれるのが、こちらとしても一番ありがたい。
それで、後見となる家は決まったかね?」
「そうですね、お世話になりたいお宅はいくつかありますが、まだ決めかねています。
もう暫くこちらにお世話になってしまう事になりますけれど、宜しいでしょうか」

八軒、七ヶ所を回って、暮らしたい場所は三つ程有るけれど、先を考えてしっかりと決めたい。
ここが良いと言った後、やっぱり辞めたあっちにする、とはいかないだろう。

長い人生なんだから、ダメになってやり直す事も有るだろうけれど、よくよく考えて、長く居られる場所を選ばなけれはダメだと思う。
ノリで決めるものではない。

「勿論じっくり考えて、そなたの一番良いようにするが良い。
無論城を出た後の援助もさせていただこう」
大丈夫です、と言いたいけれど、実質一文無しだから、ありがたく受けておく。

「それで話は変わるが、オダ家で【石】を見たそうだな」
「はい、他の家の書と違って初代様の記憶の記録で、当時の事を詳しく知る事が出来ました」
僕が答えると、王様はニッコリ笑って、
「あれは元々城に有った【王家の石】を基にしておるとは聞いたと思う。
その【王家の石】を見てみたいと思わないか?」
イタズラっぽく笑う王様に、ビックリして尋ねる。

「え?良いんですか?一般人がそんな貴重な物を見るなんて」
「はははは、君は一般人ではないだろう。
それに【王家の石】と言うと大層なものに感じるけれど、要はこの国の歴史書の様なものだからの。
見たい者には見せる事にしておる。
無論国民に限るがな」

えー、そんな簡単な物なの?
誰でも見れるなんて、良いの?
こう……国家機密とか、門外不出とか、厳重に管理されているものじゃ無いんだ。

まあ、そうそう普通の人が王宮まで来て、国の歴史を教えてくれ、なんて事は無いだろうから、キリキリしないで大丈夫………なのか?

とりあえず、明日の午前中に部屋へ持って来てくれると言う話になり、その後は見聞きした面白かった事などの雑談で会談の時間が終わった。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました

遥 かずら
ファンタジー
冒険者ギルドに所属しているエンジは剣と魔法の才能が無く、文字を書くことだけが取り柄であった。落ちこぼれスキル【転写】を使いギルド帳の筆記作業で生計を立てていた。そんなある日、立ち寄った勇者パーティーの貴重な古代書を間違って書き写してしまい、盗人扱いされ、勇者によってギルドから追放されてしまう。 追放されたエンジは、【転写】スキルが、物やスキル、ステータスや魔法に至るまで何でも【コピー】できるほどに極められていることに気が付く。 やがて彼は【コピー】マスターと呼ばれ、世界最強の冒険者となっていくのであった。

俺がマヨネーズ男爵だとぅ!?~異世界でおっさん領主は奴隷ちゃんと結婚したい

武蔵野純平
ファンタジー
美少女性奴隷と幸せに暮らすため、おっさんは異世界で成り上がる! 平凡なおっさんサラリーマンの峰山真夜は、ある日、自室のドアが異世界につながっている事を知る。 異世界と日本を行き来し、異世界では商売を、日本ではサラリーマンの二重生活を送る。 日本で買ったアイテムを異世界で高額転売し金持ちになり、奴隷商人のススメに従って美少女性奴隷サラを購入する。 愛する奴隷サラと幸せに暮らすため、おっさんサラリーマン・ミネヤマは異世界で貴族を目指す。 日本ではかなえられなかった立身出世――成り上がりに邁進する!

魔境暮らしの転生予言者 ~開発に携わったゲーム世界に転生した俺、前世の知識で災いを先読みしていたら「奇跡の予言者」として英雄扱いをうける~

鈴木竜一
ファンタジー
「前世の知識で楽しく暮らそう! ……えっ? 俺が予言者? 千里眼?」  未来を見通す千里眼を持つエルカ・マクフェイルはその能力を生かして国の発展のため、長きにわたり尽力してきた。その成果は人々に認められ、エルカは「奇跡の予言者」として絶大な支持を得ることになる。だが、ある日突然、エルカは聖女カタリナから神託により追放すると告げられてしまう。それは王家をこえるほどの支持を得始めたエルカの存在を危険視する王国側の陰謀であった。  国から追いだされたエルカだったが、その心は浮かれていた。実は彼の持つ予言の力の正体は前世の記憶であった。この世界の元ネタになっているゲームの開発メンバーだった頃の記憶がよみがえったことで、これから起こる出来事=イベントが分かり、それによって生じる被害を最小限に抑える方法を伝えていたのである。  追放先である魔境には強大なモンスターも生息しているが、同時にとんでもないお宝アイテムが眠っている場所でもあった。それを知るエルカはアイテムを回収しつつ、知性のあるモンスターたちと友好関係を築いてのんびりとした生活を送ろうと思っていたのだが、なんと彼の追放を受け入れられない王国の有力者たちが続々と魔境へとやってきて――果たして、エルカは自身が望むようなのんびりスローライフを送れるのか!?

農家は万能!?いえいえ。ただの器用貧乏です!

鈴浦春凪
ファンタジー
HOT最高は12位? 以上 ですがお気に入りは付かない作風です ある日突然、異世界の草原で目を覚ました主人公。 記憶無し。食べ物無し。700km圏内に村も無し。 無いもの尽くしの不幸に見舞われた主人公には、名前もまだ無い。 急な災難に巻き込まれた少年が、出会う人々の優しさにより。 少しずつ異世界へと馴染み、やがて、現代日本の農業とグルメ。近代知識を生かして人生を歩む話。 皮肉家だが、根はやさしい少年が、恩人から受けた恩をこの世界へ返してゆく *ステータスは開示されず、向いた職業の啓示を受ける世界です

神々の娯楽に巻き込まれて強制異世界転生ー1番長生きした人にご褒美有ります

ぐるぐる
ファンタジー
□お休みします□ すみません…風邪ひきました… 無理です… お休みさせてください… 異世界大好きおばあちゃん。 死んだらテンプレ神様の部屋で、神々の娯楽に付き合えと巻き込まれて、強制的に異世界転生させられちゃったお話です。 すぐに死ぬのはつまらないから、転生後の能力について希望を叶えてやろう、よく考えろ、と言われて願い事3つ考えたよ。 転生者は全部で10人。 異世界はまた作れるから好きにして良い、滅ぼしても良い、1番長生きした人にご褒美を考えてる、とにかく退屈している神々を楽しませてくれ。 神々の楽しいことってなんぞやと思いながら不本意にも異世界転生ゴー! ※採取品についての情報は好き勝手にアレンジしてます。  実在するものをちょっと変えてるだけです。

異世界は流されるままに

椎井瑛弥
ファンタジー
 貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。  日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。  しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。  これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。

【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成) エロなし。騎士×妖精 ※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? いいねありがとうございます!励みになります。

処理中です...