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第三章 異世界の馬車窓から
オワリ滞在の終わり
しおりを挟むその夜就眠前ベッドの上で仰向けに寝転がり、胸の上に乗せた熊澤さんを撫でながら、いつもの様に妖精達へのチャージタイム中、ニヤとピアに話を聞いた。
人側からではなく、ニヤ達妖精から見た当時の事を教えて貰う。
記録の石で見たものとは違った面から見た、当時の様子や、初代様の普段の生活などを教えて貰った。
「ニヤ達はさ、あんな凄い人に祝福与えて一緒に居たのに、次が僕ってガッカリじゃ無いの?」
だって信長の次だよ?
こんな一般人って、ギャップあり過ぎだよ。
『んー、上さまは上さまで、とうちゃんはとうちゃんなの』
『上さまは好きーだけど、お話しできるとうちゃんは大好き』
『とうちゃんだけなの、名前付けてくれたの』
『話が出来て楽しいよ』
『だからとうちゃんが好きで好きなの』
二人で左右から持ち上げられて、照れる。
何だか言わせてる感がある気もするけど、素直に嬉しい。
でも、ピアがポツリと漏らした言葉は、どう返して良いかわからなかった。
『だから…ボクはとうちゃんと一緒に消えたいな』
僕が答えられずにいると、ニヤが代わりに慰めてくれた。
『大丈夫なの、とうちゃんはうーーんとうーーーーーんと長生きするから、ずーーーっと一緒なの。
だからそんな先の事考えなくてもいいの』
そうだよ、何百年、何千年って生きていくんだから、すーっと一緒だよ。
そんな気持ちを込めて、ピアの頭を指先で撫でる。
「しかし第六天魔王と魔王の子って、メチャクチャ凄い子だったんだろうな」
魔王か…ゲームやら小説の挿絵のイメージからだと、肌色部分の多い、ボンテージの衣装を見に纏った、スタイル抜群の美女、って感じだな。
こう、女王様チックな感じだったのかな。
『違うの』
おっと、妄想に突っ込みが入ってしまった。
『魔王は女の人じゃないの』
「……え?だって運命の人で信長と夫婦になったんだよね?」
『そうだけど違うの。
魔王は男でも女でも有って、男でも女でも無いの』
「ドユコト?
無性とか両性とかなの?」
『魔王ってね、具現化した意思なの』
???
『魔物の人達の祈りが形になって、肉体を持ったんだよ。
だから子供も伴侶の人との意思で作り上げたの。
でも子供はちゃんとしたハーフの人だよ』
うーん、わからん。
生物じゃ無いの?てか性別無いのにハーフが生まれる?
常識的にあり得なくないか?
考えてもわかんないし、まぁ、そんな事もある世界なんだと思っておこう。
*****
翌日から色々体験させてもらった。
竹籠を編んでみたり、団子を丸めてみたり、木の人形…こけしもどきに顔を書き込んだりもしたけど、これは大変芸術的作品になり、ニトに取り上げられた……。
きっと、いや絶対にからかわれる道具(ネタ)になるんだろうな。
因みに僕の編んだ竹籠は、サイズの合う座布団を買って、熊澤さんのベッドにする事にした。
団子は上手くいったよ。
色々な職業体験をさせてもらったけど、流石に鍛治の手伝いはさせてもらえなかった。
ちょっと残念。
それと王宮の訓練所では見られなかったネイの殺陣も見せてもらった。
居合い斬りとか生で見たら、興奮しちゃうって!
しかも!ネイってサービス精神が溢れてるのか、袴姿での実演だよ!
カッコイイとしか言いようがない!
しかもしかも!僕と目を合わせても大丈夫だからか、パチン…と刀を鞘に収めた後、こちらを見てニッコリ微笑むなんて!
僕男なんだけど、迂闊にもトキメイてしまったよ!
これで僕が女の子だったら、確実に惚れてるよ!
何だかムカついてきたよ、チキショー!
こういうのって確か「イケメンの無駄遣い」って言うんだよね。
あんな微笑みは女の子に向けるべきだよ。
スイと言いネイと言い、普段表情筋が仕事をして居ない人の笑顔の破壊力ときたら…。
そんなこんなで、楽しくオワリの町の日々は過ぎていった。
オダ家とトモ家の人々に見送られて、帰路へ着く。
なんだかんだで楽しい滞在だった。
帰りの馬車の中でも、ネイがずっと話しかけてくれて、退屈する暇なく旅ができた。
人と目を合わせて話せないってのがよっぽどストレスだったのかな。
こんなににこやかな人だと思わなかった。
しかし、僕はストレスです。
何故って、団員さんの嫉妬の視線が…………。
人気者独り占め状態になってしまってて、視線が痛い痛い。
ニトは面白がってニヤニヤしてるだけだし。
スイが何とか取りなしてくれて無かったら、視線だけでは済まなかったのでは?
だからと言って、ネイを無視したりはできないから、視線をスルーするスキルが欲しいです、マジで。
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