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第三章 異世界の馬車窓から
初代様の記録〜其の陸〜
しおりを挟むその後(のち)我等は個別に部屋へと通された。
「今日はもう遅いですので、続きは明日にしましょう。
皆様も違う世界へと喚ばれてお疲れでしょうから。
食事を準備しますので、それまで部屋でお寛ぎ下さい」
王の言葉でその場はお開きとなった。
部屋の中は見たことも無い物で溢れており、その用途などを説明してもらい、案内の者が出て言った後、伴が部屋に入って来る。
「上様、誠に彼奴(あやつ)らに力をお貸しになるのですか」
「……伴よ、上様はよせ、今の我はただの信長ぞ」
「それは聞けぬ事、上様は上様です。
それで、あの無礼者供に力をお貸しになるのですか」
「ふむ……そうさの…妖供だけでなく、国に寄生する者も一掃するのも良いやも知れぬな。
伴よ、明日兵と国の重臣を集める様、あの王に伝えて来い。
その後的方の動向を探れ」
「はっ!」
すぐさま駆け出す伴を見送り、身が沈みそうな寝床へ横になる。
爆ぜて死んだと思うたら、面白き処に居るとは、人生何が起こるかわからぬものよ。
翌日、朝餉ののち野外の踊り場へと通される。
外には多数の男供が群れておる。
装いからして兵か。
室内には昨日居た者供がおるのだが、肥えた男と煩い男の姿はない。
小者は脚を引っ張るだけだからな、居なくて結構。
「兵士と貴族を集めましたが、これでよろしかったですか?」
「兵士はわかりますが、重臣…貴族を集めたのは何故でしょうか」
王とその息子と紹介された若者が問うてくる。
「ふむ、昨日医師の男も申しておったろ、膿は早く出すに限る」
我は集う者供に声を上げた。
「聞けい、者供、 我等はこの国の為、遠き所から呼ばれた者だ。
今より戦さの指揮は我が取る。
魔物供を抑え、敵の大将を会見の場まで連れてきてみせよう。
為れど、この世では卑怯と呼ばれておる策も取る。
我は如何なる手であろうと、勝つ為に使う事を良しとする。
それに従えぬと言う奴は指揮が下がるだけの足手まといとなる故、今すぐこの場より去るが良い」
我の口上に場がざわめく。
部屋の中の者供も騒いでおるが、是非も非ず。
「だが誓おう、必ずこの国の行く先を閉ざす事はせぬとな」
その後、兵は半数近く、貴族と言う輩は過半数去りおった。
貴族とは公家の様なものとの事。
古き考えに凝り固まった者共は、新しき時代の足を引く存在となりよるからな。
取り除くなら早いうちが良い。
昼前には伴が戻って来たので、将軍と隊長を交えて策を練る。
殲滅するわけでなし、敵の頭と会合を持つ為なのだから、闇に乗じて一気に抑えれば良い。
敵を分散させる為に、近辺で陽動すれば、簡単な事であろう。
兵の振り分けは将軍に任すとし、後は時を待つのみ。
幸い天気も崩れて来た。
こちらの世でも、天は我に味方するか。
これなら夜まで待つ必要も無い。
目先の悪い雨の中、我の闇の妖術を使えば良い事だ。
策は単純だとしても、気をぬく事だけはせぬ様、兵供にも徹底させる。
慢心は敗北に繋がることもある故。
さて、我等の準備も整えぬとな。
そして、戦いの火蓋は落とされた。
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