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第三章 異世界の馬車窓から
アニマルセラピー…かな
しおりを挟む始めの二、三日は距離が有った団員さん達とも打ち解けて、色々話をするようになった。
でも、団員さんより先に僕に寄ってきたのは馬達だけどね。
馬と言ってるけれど、地球の馬とは少し違う。
団員さんの乗っている馬は額に縦並びの二本の角が有る。
一本ならユニコーンみたいだよな。
体型は、中間種のスタンダードブレッドに良く似ている。
人を乗せている時は、指示によく従うけど、休憩している時などは、僕に寄ってくる。
馬車を引く馬はふた周り程大きく、ばんえい馬に似ている。
こちらには角は生えて居ない代わり、地球の馬との違いは尻尾が無い事かな。
無いと言うか、カットされたドーベルマンの様な短い尻尾が、お尻の上にちょこんと有るだけで、馬特有のフサフサ尻尾は無い。
そんな馬達がわらわらと僕を取り囲む光景は、自分としては慣れたものなのだけれど、団員さん達にしてみれば、主人の自分以外に擦り寄るのは珍しい事だと言われた。
「とても臆病な性質だから、パートナー以外には懐かないんだよ」
「そうだよ、まだパートナーになってない個体なら、厩舎の人達の世話も受けるけど、角が生えたら他の奴に体を触らせるのも嫌がるのにな」
感心したように団員さんは言う。
「そう言えば厩舎に行った時居た馬って角生えてなかったけど、同じ種類の馬だよね?」
あそこに居た馬の額に角なんか生えていなかったけど。
「ああ、あいつらは契約前だから角が無いんだよ」
「馬車を引く馬は脚は遅いけど力があって、こうして馬車を引いたり、開拓に使ったりする種類なんだ。
あいつらは性質も温厚で人懐こいんだけどね、俺達の馬…ピケット種って言うんだけど、パートナーと契約すると、成体になって角が生えるんだよ」
「そうなるとパートナー以外はその背に乗せないし、世話も受けない。
死ぬまでずっと一人のパートナーと添い遂げる…夫婦みたいなもんだね、雄でも雌でも」
ずっと一人の主人に仕えるのか…うん、主人と言うよりパートナーと言う方が似合うよな。
でも馬の寿命って長くて30年くらいじゃないの?
この世界って祝福持ちだと3桁の寿命はザラだから、長寿の人だと何頭ともパートナーを組む事になるのかな。
『あのね、この子達ってワタシ達と同じなの。
好きーって思ったら契約して、命が繋がるの。
だから好きが居ない子達はうーーんと生きるけど、契約した子は好きな人と一緒に死んじゃうの』
『そうそう、ボク達は好きな人が死んじゃう時、生きててって言われたら死なない事も有るけど、この子達は寂しさに負けちゃうから、死んじゃうんだよ。
でも次に生まれ変わっても同じ人を好きになるんだけどね』
輪廻転生か?
でも寿命まで左右する契約って、ロマンチックなのかもしれないけど、怖いよ。
「だからこうしてこいつが貴方に撫でられてるこの光景が、不思議に思えるんだよね」
擦り寄せてきた頭を撫でている馬のパートナーが、ため息つきながら、その背を撫でている。
「だよな、なんだか目の前で浮気されている気分だ」
僕の背後に座り込む馬のパートナーがボヤく。
他の団員さん達も全くだと言うように頷く。
あー、これも良くあったパターンだよな。
ペットが飼い主の自分より僕に懐くって腹を立てた友達が、何人僕から離れて行ったことやら……。
その事に関していじめられた事も苦い思い出だ。
まあ団員さん達がそんな事しないのは、やっぱりこの幼児な見た目のお陰もあると思う。
幼児体形で良かった。
見守って居てくれる周りの人や、ずっとその小さな体温で温もりをくれる熊澤さんや、繋がった心で色々フォローを入れてくれるニヤとピヤ、そして大きな温もりの馬達のお陰もあって、心の痛みは癒されていった。
そして予定通りに魔物の国へと到着した。
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