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第三章 異世界の馬車窓から
秋彦アワー(前編)
しおりを挟む食事は文句無しに美味しかった。
仕事があるので(店は閉まっても片付けや明日の準備、今日仕入れた物の選別など)一度に集まることは出来なかったみたいだけれど、土岐家の人々は、入れ替わり立ち替わり挨拶に来てくれた。
皆さん商売人らしく、とても愛想の良い人達なんだけど、一度に沢山の人と挨拶しても、正直覚えられない。
誰が誰なんだか……。
直接会話をしたズルさん達は勿論分かるよ。
でもその孫にまで行くと人数多すぎて。
しかも従業員の人達も、料理持ち込みで参加してるから一層分からないのは仕方ないよね?
それだけ人数が多いので、安全対策の為に、僕はずっとスイの膝の上だ……。
不特定多数の人の抱っこより、スイ一人の方が全然マシだからね。
開始から随分時間も経った頃、お酒を飲んだのか、アルコール臭のする上機嫌の秋彦さんが近寄って来た。
「どうよ、食べてるかい?」
「はい、どれもこれも美味しいですね」
「だろー。
リサイクルショップやる前の仕事が役に立ってるよ」
「前職は料理人か何かなんですか?」
喫茶店の厨房とかかな?と思って聞いてみたら、意外……と言うか、予想外の答えが返ってきた。
「違う違う、ショップの前はジゴロやってたんだわ」
ジゴロ?
そこから始まる秋彦アワー……。
*****
「俺さ、ハイスクールドロップアウトしてんだよね。
田舎暮らしが嫌で嫌で、ダチ公とバンドを組んで上京したわけよ。
東京でヴィジュアルバンドやっててね、そこそこ人気も出て、毎日グルーピーの娘(こ)とにゃんにゃんしてウハウハだったんだ。
でもさ、二十歳超えた頃メンバーが次々と就職しちゃってね。
でも俺って何の特技もなくってさ、グルーピーの娘のヒモやってたんどけど、バンドが無くなったらその子達も居なくなってさ。
そんな時に飲み屋で意気投合したマダムに気に入られちゃって、そのまま愛人関係さ。
でも貰ってばかりだとまたすぐ追い出されるから、家事を覚えてね、そのマダムと別れた後も、色んな女の人の元を転々としながら暮らしてたわけ。
勿論家事やら何やらのご奉仕はしたから、ギブアンドテイクだよね。
んである時リサイクルって言うのが取りざたされる様になってさ、これは!って思ったわけよ。
女の子達が貢くんに貰ったDCブランドなんかを質屋に持って行くの見てて、安く買ったものを定価とそう変わらない値段で売ってるだろ?
だけど質屋って聞こえ悪いじゃん。
だから【リサイクルショップ】って名前で、先ずは小さい店で女の子の不用品売ってたんだけど、これが大当たりしてさ、取材とか来て一気にチェーン展開して、勝ち組の仲間入りさ。
ギロッポンの億ションで次から次へと寄って来るチャンネーとヘブンな生活してたんだけどさ…。
ある日店から帰ると億ションの入り口にマヌカンの女の子が居てさ『他の子と別れて!』とか言い出して、無視を決め込んでたら、後ろからグサーってね。
慌てて逃げて部屋まで戻ると、そこにはお立ち台ギャルが居て『結婚してくれないのなら死んで!』って横からブスーってやられて、何とか振り切って部屋に入ると、スナックの姉ちゃんが中に居て『一緒に死にましょう、そして来世で幸せになりましょう』って、ブロンズ像でタンスじゃなくて、頭をゴン!
そこでまだ生きてると分かったら追いかけて来るから、ベランダに逃げてそのままヒューーーベチャ!だよ。
んで気づけば、時代劇に出てくるお百姓さんみたいなおっちゃんと床に這い蹲ってた、と。
その後はまぁ、リサイクルショップのノウハウで国の人の不用品を、他国のそれを必要とする人に渡して現金収入や、八木さんの育てた食物を輸出したりで、国庫を増やすお手伝いをして、その褒美に店をださせて貰って今に至る、って感じだね」
……所々わからない言葉なんか有ったりしたけど、話を聞いて一言言うなら…………この人サイテー。
どんだけ女の人に迷惑かけてんだよ。
僕のジト目に気づいた秋彦さんは、「いやいやでも……」と言い訳を始める。
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