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第三章 異世界の馬車窓から

人と妖精と魔物と魔獣と動物と

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城へ戻った僕はまず、熊澤さんの事を報告に、謁見の間へと行く事となった。

タタンジュの熊澤さんは、見た目マルチーズなんだけど、それは長い毛でそのように見えるだけで、本体は顔の見た目通りのフェレット体型だ。
但し足が長い。

普通のフェレットの2倍以上の足の長さなんだけど、体毛で隠れているので、パッと見た目はわからない。
体毛の長さは15センチくらいで、めちゃくちゃツルツルスベスベだ。

毛が長いと絡まったり、ホコリやゴミが付きそうなんだけど、ツルツル過ぎて絡まらないし、汚れも付かないみたい。

見分ける為に首輪を付けろと言われたけど、毛に埋もれてしまうので、土鈴を作ってもらって首輪に付けた。
熊澤さんが走るとカロンコロンと素朴な音がする。
そんな熊澤さんの定位置は、僕の首だ。

たたたと身体を登り、首に巻き付き、一見毛足の長いマフラーを着けている様に見える。
重さもそんなに重くないし、何よりスベスベの毛が気持ちよく、熊澤さんの好きにさせている。

そんな僕と熊澤さんを見てスイは溜息を吐くけど、気にしないよ。

王様や宰相さんや、他の大臣さんに熊澤さんを紹介して、毒抜き?をキチンとする事を誓い、土鈴の音が目印である事を伝えた。

出来れば檻に入れるか、鎖で繋ぐ様に言われたのは、いくら毒を抽出していても、鋭い牙と爪は脅威に思えるだろうから仕方ない。

なので部屋の外で、首に巻き付いていない時は紐で繋ぐ事を約束して何とか飼う事を認めてもらった。

流石に鎖は嫌なので、2メートル程の革の紐を準備してもらい、現物が届くまでは部屋から出さない様にと言われたのは仕方ない事だよな。

そのうち熊澤さんが危なくないと皆が認めてくれるといいなぁ。


*****


「うわー、本当にタタンジュだ」

部屋に戻る途中に会ったニトは、熊澤さんを見て笑いだした。

「いやー、本当にウチって退屈させないよな。
まさかタタンジュペットにするとか聞いた事無い。
しかも城で飼うのを認めさせるとか、変わった人だよね」
「失礼な、小動物を飼うってだけじゃん。
ただちょーっと爪と牙が鋭くて、毒が有るだけだろ」
「いやいや、それが問題だろ」
「だって熊澤さん賢いし、僕の言う事ちゃんと聞くし」
「え?タタンジュって意思疎通できるの?」
「勿論」

魔獣だって動物だ。
こちらが敵対しないと襲って来ないし、意思は伝わる。

熊澤さんの場合は、どうやら僕の言葉も理解しているし、ニヤ達に頼んだら会話もできる。

そう、ニヤ達は魔獣と言葉を交わせるそうなのだ。
動物とでも簡単な会話も意思疎通も出来るけど、魔獣は動物より賢くて、感情も有るので会話は成立するとの事だ。

ニヤ達以外の妖精や魔物の人は、魔獣と簡単な意思疎通は出来ても、会話はできないとの事。

んー、ややこしいけど、

・人は魔物と会話は出来るけど、魔獣や動物、妖精とは会話は出来ない。
伝えたい事の雰囲気が読める程度。

・魔物の人は妖精王、女王と会話は出来るけど、一般の妖精や魔獣とは簡単な意思疎通しか出来ず、動物とは分かり合えない。

・妖精王、女王は魔物の人と魔獣と会話が出来て、動物と意思疎通が出来る。
人とは会話が出来ないけれど、言っている事は分かる。

・一般の妖精は、魔物や魔獣と簡単な意思疎通は出来ても、会話は出来ない。
人の言葉は理解できるけど、動物の言葉は理解不能。

そして僕は全ての妖精と会話が出来て、魔獣と意思疎通が出来ている……のか?

ああああ、こんがらがってきた。

とりあえず熊澤さんは僕の言う事分かるし、熊澤さんの言いたい事はニヤ達に聞けば分かる、それだけ理解しておけば良いか。

なんだろう、ややこしいのか、僕がややこしく考えてしまってるのか、思考回路がショート寸前。

部屋に戻った僕は、熊澤さんのモフモフ…ではないな、ツルスベに癒されながらソファーでゴロゴロ怠惰な時間を過ごす。

頭を使い過ぎたのか、頭痛がしてきた。
え?こんなの頭使った内に入らないって?

きっとマンガやアニメの好きな山田さんなら
「こんな設定良くあるある」
とか理解早いのかも知れないけど、愛読書が【月刊生き物通信】な僕には理解の難しい世界なのだから、頭痛を起こしても仕方ないよね。

明日は一日のんびりして、明後日はヤギ家へ行く事となった様だから、今日はもう何も考えず癒されタイムを満喫しよう。







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