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第三章 異世界の馬車窓から

僕だって癒されたい

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三時のお茶の時間には、五男のナカは仕事に戻って行った。

残ったテムさんから、ユゲ家の治める町、上弓削町の話を聞いた。
町での生活や、どんな仕事を主に行っているかなど。

町は国の南方に有り、主に魔獣が国に侵入して来ない様に、国境に罠を仕組んだり、狩をして生計を立てているそうだ。

狩った魔獣は毛皮や肉、骨まで無駄なく使っているそうだ。

そして魔獣の肉は料理次第でとても美味しくなると。
元の世界で言うジビエみたいな感覚の様だ。
しかし魔獣…響きが何とも言えないな。

書物にも有ったけど、ユゲの苗字は村の名前で、戻れない故郷の名前を、拝領した領地に付けたそうだ。

同時に召喚された四人のうち、領土を貰ったのはユゲ家と、着物姿の若者だけで、フジ家はそのまま城下町で医療院を始め、今でも続いているとの事。

因みに、この着物姿の若者は、【初代様】と呼ばれているそうだ。
召喚された四人のリーダー的存在だったと。

最後の一人は、初代様の町に移り住んだということだ。

「まあ、詳しい事はその家の書物を見せて貰えば分かるし、その方が楽しいだろ」
テムの言う事は最もだと思う。
どのみち各家を回るのなら、楽しみがあった方が良いもんな。

そんな話をしながら時を過ごし、仕事から戻ったレニさんとナカも交えて夕食タイムだ。

……戻った二人に当然のように抱っこされ、ドサクサに紛れてテムにも抱きすくめられ…………。

いや、レニさんに抱っこされるのは、それはそれで問題が有るけど(人妻だし、旦那さんと子供の目の前だから)でもやっぱりマッチョなおっさん達に、ぎゅーぎゅーされる方が嫌だ。

そう、この二人抱っこと呼ぶには生温い、小さな子供がお気に入りの縫いぐるみを力任せに……状態なんだよ。
それを考えると、やはり城の中の人達は、随分大人しかったんだなと思う。

「それはやはり人の目と立場が有りますから」
とはスイの言葉だ。
城の中は仕事場だからハジケられないって事かな。

そう言えば、
「スイって全然触って来ないよね」

ニトでさえ、何だかんだと触って来てた。
まあ触ったと言っても、頭ポンポンや、急いでいる時に抱えてとかが殆どだけどね。

「フフフフ」

口元を隠して忍び笑いをするスイ……

え?何?滅茶苦茶怖いんですけど!

背筋を寒いものが走ったので、この話は突っ込まない事にする。
うん、封印だよ。


*****


ユゲ家に滞在したのは五泊。
その間レニのお子さんが順に顔を出した。

滞在の六日間で、抱っこ&抱きしめにも随分と慣らされてしまった……。
慣れてしまったが、ストレスは感じる。

そしてユゲ家を出た僕は、一旦城へ馬車移動。
馬車の中で落ち着く間も無く城へ到着。

こんなにも城の近くなんだから城から通っても良くない?

と思ったけど、王宮勤めでもない者はそうそう城に入れないし、素の姿を見るには、相手の懐に入るのが一番です、とスイが言う。

あー、ホームだと地が出るけど、アウェイだと取り繕うよね。
成る程成る程。

城へ戻り王様に挨拶して今日は城でゆっくりして、明日次の家へ行くそうだ。
次は城下町で仕事をしていると言うフジ家へ、同じく五泊の予定で出かける。

今日はゆっくりしようと言う事で、時間潰しも兼ねて厩舎へ行ってみた。

この体型だと馬はサイズ的にデカすぎてちょっと怖いけど、今は動物に癒されたいんだよ。
城内に居るのが馬だけだから、デカくても仕方ない。
兎に角動物に触れて癒されたい。

スイは次に行く家の人との打ち合わせや、今回の報告で離れて居るので、今日のお供はニトだ。

「いやー、ホラ、ウチって小さいからさ、蹴飛ばされたら危ないだろ」
と抱っこ移動だ。

……この五日間の抱っこ塗れを癒されたかったのに、抱っこ…。
まあ、仕方ないけどさ。
馬が顔を擦り寄せてくるだけでひっくり返ってしまう幼児体形なんだから。

ニトに、せめて手を繋ぐくらいにしてくれないかと問うと、
「ほら、お前だって動物に触ったら癒されるだろう?
ここには居ないけど、犬や猫みたいな小動物居たら抱っこするだろう?
それと同じ事じゃん。
なんだかそんな気分にさせるお前が悪い。
だから抱っこさせろよ」

小動物は抱っこしたくなると言うニトの言い分は分かる。
分かるが理解出来ても納得出来ないんだよ!

自分が僕の立場になったらわかるよ、このトホホ感。


あ~~、何か小動物飼いたいな。





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