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第二章 色々やってみよう

妖術を教えてもらおう……の筈だったよね

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元の世界の夢を見た。


虎の飼育担当から話しかけられる夢だ。

「おーい東堂内、アムールトラの見合い相手来園するのって、来週だったよなあ」
「そうですね、水曜に到着ですよ」
「今年は可愛い子が生まれてくれるといいなあ」
「ですねぇ。でもこればっかりは相性とか運ですから」
「お前の所も早く可愛い子見せてくれよ」
「いやいや、うちはまだ結婚したばかりですよ」
「動物も良いけどやっぱり我が子は可愛いぞー」
「そうでしょうねぇ」
「やっぱり新婚だと子供よりイチャイチャの方が優先か?」
「何言ってるんですか、からかわないで下さいよ」
「いやー、新婚さんはからかわれる運命なんだよ」
「参ったなぁ」

そこで場面は切り替わり、僕の手の中には手紙と…………



はっと目を覚ますと城のでかいベッドの上で、僕の身体は光っていた。

「…………くっついて生気?を補給してるのかもしれないけどさぁ、寝てる時皆で一度に来られると、悪夢見るみたいだから、起きてる時に順番に来てくれない?」
身体を覆い尽くす光…妖精達に告げると

『はーい』

と素直に離れていった。
もしかして昨日寝起きが悪かったのも妖精のせい?

目が覚めてしまたついでに、軽く喉の渇きを覚えたので、ベッドサイドのテーブルに置いてくれている水差しで喉を潤す。

ふと、外が明るく感じたので、カーテンの隙間から外を見ると
「おおー、月が二つある。
微妙に色が違うか?うーん、異世界っぽいなあ」

ちょっと眩しいけどカーテンを開けて、月を見ながらもう一度眠りについた。


*****


「それでは妖術を試してみようか」
昨日に引き続きニトが講師だ。
勿論ニヤとピヤも呼んでいる。

「教えると言っても簡単な事なんだけどね。
頭の中でキッチリイメージする、ただそれだけ」

うんうんとニヤ達が頷く。

「詠唱?とかしたり、魔法名を叫んだりはしないのか?」

僕のイメージでは、学生の頃のツレが持ってた漫画の中の、エコエコ……とか、○○の力を秘めし…………とか、恥ずかしい事叫んだり、ファイア!とか杖を振って叫んだりとか、何かと恥ずかしい感じのイメージなんだけど。

「記述によると、昔は詠唱をしていた事があるらしい。
例えば……
【我を守護したる炎の妖精よ、その力を我が為に使い、敵を焼き尽くせ】
とか言ってた時代もあるそうだけど……恥ずかしいよね」

ニヤ達と一緒にうんうんと頷く。

「それに詠唱を相手に聞かれたら、何を発動するかバレるでしよ?
そうすると対応されてしまうからね」

そりゃそうだ。
ミサイルだって来るのが分かってたら迎撃するよな。

「そこで初代様が『繋がっていると言うのなら、頭の中で思うだけで術が使えるのではないのか?』と気付いてね。

凄いよね、大まかな意思の疎通が出来ても、会話なんて出来てなかったはずなのに、試してみたら見事に発動。
それからは頭の中でイメージ浮かべて心の中でお願いすると術が使えるようになったってわけ」

まぁ、七面倒くさい詠唱の呪文唱えたり、術の名前叫ぶより断然マシだな。

だってさ、三十超えたオヤジが魔法(この場合妖術だけど)の呪文を唱えるとか……痛々しいわ。

「ただし、口に出さずにイメージだけで伝えきれなければいけないから、イメージがあやふやだと発動しないし、思ったのと違う術になるからね」

納得出来るので素直に話を聞き続けていると、ニヤが耳元で補足してくれる。

『イメージしても祝福貰ってないとダメなの。
火の子と繋がって無いのに火の術をって言ってもダメなの。
でもとうちゃん皆んなと繋がっているから、何でも思う通りに出来るのよ』

「今女王が祝福以外の妖精の力は使えないって補足してくれたけど」
「当たり前だな。
風の祝福貰ってて水が出ないとかナンセンスな事言う奴は居ないけど、ただ水と氷とか、木と草花、土と木など似ている色の光だと、実際どの祝福か分からない事も多々有る」

成る程、普通は妖精の属性の色しか見えないし、話も出来ないから、光の色で判断しなきゃいけないのに、並べて比べれば分かる差でも、単品だと間違える事ありえるよな。

『なんだ、だからなのか。
たまに光の子に雷出せとか言う人いるんだけど、誰の祝福か分からなかったんだね』

ピヤが納得顔で頷いている。
やっぱり会話が出来ないと不便な事も多そうだな。
だからこそ通訳の仕事頼まれたんだろうけど。

「妖術はイメージで発動出来るけど、これが魔物の魔法だとまたちょっと違って、頭の中のイメージを練り込んで気合と共に発するから、発動までに少し時間がかかるし、魔法名も唱える事になる。

つまり人の力を借りて発動する妖術は簡単に強力な力を使えるんだ。
しかしその代償が力を貸してくれてる妖精の命にかかわるなんて、知らなかった事とは言え気軽に使って悪かった……申し訳なかったです」

ニトがニヤ達に頭を下げる。

「王も昨日の話を聞いて心を痛めております。
これからはなるべく妖術を使わないよう、国に触れを出すそうです」

真面目な顔と言葉遣いで謝罪するニトに、ピヤが伝えて欲しい言葉を僕に告げる。

「ニトさん、妖精達は術を使うのを控える事はしないで欲しいそうですよ。
自分達が力を貸すことで人々が喜んだり、暮らしが楽になる事が妖精達も嬉しいそうです。
繋がってるからこそ良かったとか、便利になって助かったって気持ちが、ダイレクトに伝わるのではないですか?

彼等は人が……繋がっている相手が大好きだから、嬉しい気持ちが伝わってくると、自分達も嬉しくなるんじゃないんですかねえ」

『そうそう、大好きだから、嬉しいだとワタシ達も嬉しいの。
だから気にしないで術使って、嬉しいをワタシ達に感じさせて欲しいの』

『それにね、戦いで使うみたいにいっぱいじゃないから、生活で使うくらいなら全然平気だから、今まで通り使ってって伝えてね』

「気を使って術を使わなくなる方が寂しいみたいですよ」

妖精って純粋なんだなぁ、と思いながら二人の意思を伝えると、ニトは少しホッとした顔をして、もう一度頭を下げた。

「今の言葉も後程王に伝えておきます。
妖精王と女王、ありがとうございます。
そしてウチもありがとな」

ニヤ達とは別に僕にも礼を言うけど、僕は伝えただけだし、礼を言われる程の事では無いから反応に困ってしまう。

「いや、大きい事だよ。
ずっと近くに居た存在なのに、言葉が通じないから、今までも色々取り返しのつかない事をしでかしてるかもしれない。
でもこれからは、ちゃんと話を聞いて、お互いが良い関係になるだろう。

妖精達をただの便利な存在としてではなく、良き隣人として尊重し合う関係を築いていく事が出来るだろうからね」

まあ、その意見は大いに賛成だ。
一方的に搾取する関係ではなく、お互い理解し合えて、お互いを尊重するには、会話による意思疎通は大事だろうからね。

勿論会話だけではダメだけど、お互いが相手の事を考えて行動出来ると、良い関係は築けるし、争いも起こらないしで平和な暮らしが出来るからね。


もしかして、僕は結構重要な仕事引き受けたのか?





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